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夜の街ー。


人通りの少ない路地裏ー

男子高校生の

藤森 徹也(ふじもり てつや)は、面倒臭そうに呟いたー


「ーー懲りねぇやつだなー…炭林(すみばやし)ー」

とー。


徹也は、家庭環境が荒れていてー

中学生時代から、”不良”と呼ばれるような、

そんな行為を繰り返していたー


何とか高校には入学できたもののー

高校に入ってからも喧嘩に明け暮れる毎日ー。


そんな徹也は、今日もー

地元のワル・炭林 三郎に絡まれていたー。


「ーーテメェにつけられたこの傷の恨みー

 ぜってぇに忘れねぇからなー」

三郎がそう言い放ちながら、鉄パイプを手に、

徹也に近付いてくるー


徹也はため息をつきながら

「ーお前から襲い掛かってきて、

 お前が勝手に金網に激突したんじゃねぇか」と、言い放つー。


「ーうるせぇ!」

逆ギレする三郎ー。


「今日こそテメェの頭をポップコーンみてぇに

 ハジケさせてやるー!」


そう叫びながら鉄パイプを手に、

本気で殺す気で襲い掛かってくる三郎ー


しかしー

徹也は”喧嘩の腕”だけは確かだったー


いや、そうならざるを得なかったー

と、でも言うべきだろうかー。


小さい頃から、若い頃は”ワル”だったという父親から

家庭内暴力を受けて来た徹也は

”力”を身に着けることでしか、

自分を守る術がなかったのだー。


「ーーうらァ!」

徹也が、三郎に拳を叩きつけると、

三郎は鉄パイプと一緒に、路地裏の端に積まれていたダンボールに

激突して、そのままノックアウトされてしまうー。


「へっー口だけ野郎がー。

 俺が気に入らないなら、何度でもかかって来いよー。

 その都度お前をぶちのめしてやるー」


徹也はそう言うと、三郎の返事を聞くこともなく

その場から立ち去って行ったー。


まさかーーー

”明日のこの時間”には、

女の子になっている、などとは夢にも思わずにー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


昼休みの始まりを知らせるチャイムが鳴るー。


クラスメイトの大半は、

空腹を満たすことを楽しみにしたり、

友達と遊ぶことを楽しみにしたり、

自分一人ののんびりとした時間の訪れに喜んだりー、

明るい反応をしている。


しかしー

廊下側の座席にいる女子生徒ー

笹野 夏海(ささの なつみ)にとっては、

そうではなかったー。


夏海は、可愛らしい感じの少女であるものの、

見た目からして、”大人しそうなオーラ”を感じるタイプの子ー。


昼休みが始まると同時に、怯えたような表情を見せているー。


そしてー

すぐにその”元凶”が、夏海の近くにやってきたー


「ーじゃあ、いこっか」

笑顔で言い放つのはー

大島 杏花(おおしま きょうか)ー。


おしゃれな感じの女子生徒であるものの、

その顔立ちからは、少しキツそうな性格が滲み出ているー。


「ーーーあ…あの…」

何かを言おうとする夏海ー。


しかし、杏花はそれを許すことなく、

夏海を、少し離れた場所の、今は使われていない空き教室へと

連れていくー。


そう、夏海は”いじめ”を受けていたー。


毎日のように繰り返される”いじめ”ー


髪の毛を引っ張られたりー、

モノを取られたり、

トイレに閉じ込められて水を掛けられたりー、

虫を机の中に入れられたりー、

酷い仕打ちは数えきれないほど、受けて来たー。


どうしてこんなことするのだろうー。

夏海には”こんなことされる”ような心当たりは何もなかったし、

もしかしたら杏花たちにも、理由が分からないのかもしれないー。


「あははははは!ほら~!自分からお願いしなよ~!

ショートヘアーの森田 恵美子(もりた えみこ)が笑うー


杏花の友達で、騒がしいタイプの女子だー。

もちろん、彼女もいじめに加わっている女子の一人ー


「ーーい…いや…」

夏海が弱弱しい声で呟くー


だが、そんな夏海の様子を見ていた杏花が、

笑いながら「ーイケメンに触って貰えるんだから、ほらー

お願いしますって言いなよ?」と、脅すような口調で

夏海のほうを睨みつけるー。


空き教室には夏海と恵美子以外にも、

もう一人、男子生徒がいたー。


土方 陽介(ひじかた ようすけ)ー。

杏花の彼氏で、表向きは成績優秀のイケメンだー。


しかしー

”先生の前ではいい顔”をするタイプの厄介な男子生徒で、

裏では夏海を始め、複数の生徒に嫌がらせをしている、

という噂もあるー。


笑いながら近づいてくる陽介ー。


「ほら、イケメンの僕にお願いしてごらん」

優しい口調で陽介はそう言い放つー


杏花・恵美子・陽介らいじめグループは

”夏海に無理やりあるお願いをさせようと”していたー。


当然、夏海本人はそんなこと望んでいないのも分かっているし、

”それをあえてお願いさせる”ことに

杏花たちは快感を感じているー


「ーほらほら早くぅ~!

 ”わたしの胸を触って下さい”って言いなよぉ~!」

おしゃべりな恵美子が笑いながら言うー


夏海はー

陽介に対して、”胸を揉んでほしい”とお願いするように

強要されていたー。


必死に拒もうとするも、恵美子に髪を引っ張られてー

杏花に脅されー、夏海はついに折れてしまうー。


「ーーわ…わたしの…む…む、、ねを揉んでください…」

夏海が震えながら、小声で呟くと、

陽介はニヤァ、と笑みを浮かべながら

「聞こえないなぁ?もっと僕に大きな声でお願いしてご覧?」と

イヤらしく呟くー


「ーわ…わたしの…胸を揉んでください!!!」

涙を流しながら叫ぶ夏海ー。


ニヤニヤしながら、陽介は夏海の胸を触るー。

その様子を、陽介の彼女である杏花と、杏花の親友の恵美子は

あざ笑うようにして見つめるー。


彼女のー

夏海の昼休みに、安らぎなどない。

あるのは、地獄のみー。


やがてー

昼休みは終わりに近づきー、

偶然通りがかった先生が

「今、誰か泣いてなかったか?」と空き教室の外に出て来た

陽介たちに聞くと、

陽介は「いえ、誰も泣いてませんよー」と、笑顔で答えたー


”成績優秀の優等生”

そんな表の顔を持つ陽介がいじめグループにいるー。

これだけでも、もはや夏海に勝ち目はなかったしー、

夏海は”諦めて”いたー。


昼休みが終わりー

教室に戻ると、夏海の”唯一の理解者”である

幼馴染の緑川 璃々(みどりかわ りり)が、

心配そうに”大丈夫?”と声を掛けて来たー。


璃々は、小学生時代から一緒の子で、

夏海のことを何かと心配してくれているー。


「ーーーうんうんー辛かったねー」

璃々が、夏海の頭を優しく撫でるー。


だがーーー

夏海は知らないー。


璃々はー

”小学生の時”も、

”中学生の時”も、

そして”今”もー、

”味方”のフリをして夏海から話を聞き、

その話をいじめっ子たちに告げ口しているー

”最悪の存在”であることをー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


放課後ー。


夏海は、杏花・恵美子・陽介らに

”ちょっと付き合ってよ”と言われて、

無理矢理遊びに付き合わされていたー。


行きたくもないハンバーガー店に連れていかれて

奢らされた上に、

ゲームセンターに連れていかれて、

パシリのような扱いを受けるー。


そしてーーー


「ーねぇねぇ、アイツ、やばくない?」

恵美子が笑いながら、ゲームセンター内の階段の側で

煙草を吸っている金髪の男を指さすー


「うわぁ…いかにもヤバそうな感じー」

杏花がそう呟くとー、

それを聞いていた”イケメン”男子の陽介が

「ーおい、お前、ちょっとアイツを背中から押してやれよ」と、

夏海に対して言い放つー


「えっ…え?」

おろおろとする夏海ー。


「ーーあはっ!おもしろ! やってきなよ!」

杏花は、彼氏の陽介の提案に、笑いながら賛同すると、

夏海に”いかにもヤバそうな不良”を、背後から押してくるように

”命令”するー。


「ーーそ…そんなのー…無理だってばー」

夏海が泣きそうになりながら言うー。


だが、杏花も、恵美子も、陽介も、

夏海を追い詰めるような言葉を口にして、

容赦なく脅したー


夏海は泣きそうになりながら、

明らかにヤバそうな感じの不良の方に向かっていくー


「ーーあはは…ボコボコにされちゃうんじゃない?」

恵美子が笑いながら言うと、

杏花は「ーそれならそれで、面白いじゃん?」と、笑うー。


性格の悪さを丸出しにする二人ー。


イケメンの陽介も、笑いながらそんな様子を見つめているー。


”何が起きるのか”を楽しみにしているようなー、

そんな、顔だー。



「ーーーーー」

三人から少し距離のある階段のところにいる不良の背後から

忍び寄る夏海ー。


身体はガクガクと震えているー。

”いじめっ子たちの言いなり”になり続けたその先に

”良い未来”が待っているわけがないー。


そんなことは分かっているー。


でもー


「ーーーーー」

目を瞑りながらー

その不良の背中を押す夏海ー。


だがー

パニックになっていたからか、力加減が分からずー、

思った以上に勢いよく不良の背中を押してしまうー


「ーおわっ!?」

不良が声を上げると同時に、

あまりにも力を入れすぎた勢いで、自分も不良共々、

階段を転がり落ちてしまうー



「やっばー…あの子、バカでしょ!」

「ーマジで押しすぎ!」

「ーーか、帰ろうー」


いじめっ子の杏花・恵美子・陽介の三人は、

夏海が不良共々階段から転落してしまったのを見て、

”ヤバい”と思ったのか、そそくさと

ゲームセンターから退散していくー



「ーーって~……」

階段では、転落した不良がー

頭を掻きむしりながら、怒りの形相で叫んだー


「ーテメェ!何しやがる!!!」


とー。


だがー


「ーーえっ…?」


「ーーー!?」


怒りの形相で叫んだのはー

不良ではなくー

夏海だったー。


普段、弱弱しい表情の夏海が

鬼のような形相でーーー

目の前にいる不良を睨みつけて

そう叫んだのだー。


そしてー

乱暴な言葉を吐きだした夏海自身も、

驚いた表情を浮かべながらー

自分の身体を見て

「うぉっ!?なんだこれ!?」と、大声で叫ぶー。


自分がー

高校のー

しかも、女子の服を着ているー


「ーうおっ!?おっぱい!?」

驚いて自分の胸を揉み始める夏海ー。


「ーーー…ひっ…な…なんで…?」

一方、不良は、ガタガタと身体を震わせながら、

胸を揉む夏海のほうを見つめていたー。


二人はー

階段から転落したはずみで、

”身体が入れ替わって”しまっていたー



「ーーっ…テメェには聞きたいことが色々あるー」

夏海(不良)は、胸を揉み終えると、怒りの形相でそう呟きー、

ゲームセンターの自販機がある前のスペースに

不良の身体になってしまった夏海を連行したー。


「ーーーで…?これはどういうことなんだよ?

 俺がお前の身体で、お前が俺の身体になってるー

 俺に何をしやがった?」


夏海(不良)が、ゲームセンター内の椅子に座って

足を組んだままうんざりとした様子で呟くー


「わ……わ…わたしにも…わ、わかりませんー」

震えながら不良(夏海)は呟くー。


「ーー……ったくー…じゃあ、何で俺のことをいきなり

 後ろから押した?」

夏海(不良)が言うと、

不良(夏海)は泣きそうになりながら

「あの…その…」と、呟くー。


それを見た夏海(不良)は、

うんざりとした様子でため息をつきながら、

「ーーーいじめられてるのか?」と、言葉を続けたー


「えーー…あ、、あ、、あの…その」

不良(夏海)が目に涙を浮かべながら言うと、

「俺の身体でそんな顔すんなって!」と、夏海(不良)が

声を荒げるー


その言葉に、ビクッとしながらも、不良の身体になってしまった

夏海は、観念したのか、ようやく言葉を振り絞ったー。


自分がいじめを受けていることー

そのいじめっ子たちに背中から押すように命令されたことー


全てを、正直に話したー


「ーーーーーったく……何だよー

 情けねぇやつだなー」


夏海(不良)はそう呟くと、

「ーご…ごめんなさい…わたしのせいで…」と、

不良(夏海)はそう呟いたー。


「ーーーーお前、名前は?」

夏海(不良)が言うと、

不良(夏海)は怯えながら自分の高校と、名前を名乗るー。


それを聞いた夏海(不良)は、自分の通う高校名を明かし、

「俺は藤森ー、藤森徹也だー」と、自分の名前を呟いたー。


「ーーへへ…しかしまさか、俺がこんなかわいい子に

 なっちゃうなんてなぁ…」


自販機横にある鏡を見つめながら笑みを浮かべる夏海(徹也)ー


弱弱しそうな雰囲気なのに、その表情には

いつもとは違い自信に満ち溢れていてー、

不良になった夏海は、対照的に弱弱しそうな表情を浮かべているー


「ーー男とヤッたり、メイドカフェでバイトしたりー

 色々やってみてえなぁ へへー」


夏海(徹也)がニヤニヤしながらそう言うと、

徹也(不良)が泣きそうになっているのを見て

「ーじ、冗談に決まってんだろ!そんな顔すんなって!」と、

慌てて言葉を口にしたー。


喧嘩に明け暮れている不良・徹也ー。

しかし彼は、幼少期から父親に暴力を受け続けた経験やー、

その父から暴力を受けて、苦しんでいた妹や母親のことを

いつも守ってきたためにー

”虐げられている人”に対しては、優しさも持ち合わせていたー


「ーーー…泣くなよー

 別に何もしねぇし、

 お前には怒ってねぇからー」


夏海(徹也)がそう言うと、

徹也(夏海)が泣きながら頷くー


か弱そうな女子高生が、

いかにも不良な男子を慰めているー

周囲から見れば、そんな違和感のある光景にー


”え?あれなに?”

”何で男が泣いてんの?”


ゲームセンターの利用者の一部がヒソヒソと話始めるー


「うるせぇ!見世物じゃねぇぞ!あっちいけ!」

夏海(徹也)が大声で叫ぶと、

横にいた徹也(夏海)もビクッとするー


その様子を見て、夏海(徹也)はため息をついてから

「ーー驚かせて悪い」と、だけ呟くと、

徹也(夏海)の頭を撫でてからー、

「ーそういうことならー、俺はお前に怒ってないし、

 そんなに気にすんな。

 身体のことも、なんとか元に戻る方法、考えっから」

と、優しく言葉を呟いたー


頷く徹也(夏海)ー


だがー

夏海(徹也)は、言葉を付け加えたー


「でも、あいつらは許さねぇー」


ゲームセンターにいた徹也は、

入れ替わる前に、

夏海たちの姿も何度か視界に入っていて

”4人組の高校生たちがいること”は、把握していたー


夏海以外の三人の姿ー

杏花・恵美子・陽介を思い出しながら、

夏海(徹也)は不満そうに言葉を口にしたー


「ーー俺は奴らを許さないー」

とー。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


いじめられっ子の少女と不良少年の入れ替わり…!

②以降が本番(?)ですネ~!

どのような物語になっていくのか、

ぜひ楽しんでください~★!


今日もありがとうございました~!☆

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