Home Artists Posts Import Register

Content

「ー美咲は、ホントよく頑張ってるよなぁ~

 ホントに俺の妹なのか~?って思うぐらいに、さー」


とある家ー。

大学生の長男・佐久間 真守(さくま まもる)が、

そんな言葉を呟きながら笑うー。


そんな兄の言葉に、妹の美咲(みさき)は、

「ホントに妹だから大丈夫!」と、笑うー。


先日、美咲の通う高校で行われたテストが戻ってきて、

ちょうど、その点数について話しているところだったー。


真守は良く言えば”細かいことは気にしない”タイプで、

悪く言えば”適当”なタイプの大学生で

成績はほどほどー。


しかし、妹の美咲は小さい頃から努力家で、

優しく、真面目で、友達からも慕われるような

兄の真守から見ても”完璧すぎる…”と思ってしまうような、

そんな妹だったー

最近では、自分の部屋で飼い始めたハムスターのモフちゃんのことを

とても可愛がっているー。


「ーでも、ホント、よかったよー

 俺の妹が美咲でー。


 だってー

 俺みたいな兄だと、普通、”キモイ!”とか

 言われそうだしー


 俺の大学の友達も妹が口を利いてくれない!

 みたいなやつ、何人かいるし」


真守が苦笑いしながら言うー。


妹の美咲は”容姿”にも恵まれていて、

兄の真守が言うのも変だけれども、本当に”かわいい”ー

流石に妹である以上、兄として”守ってあげたい”というような

感情は湧いても、”恋愛感情”とかそういったものが

沸くことはないものの、

自分とは本当に大違いだと、いつも感じていたー


一方の真守は”普通ー”

いやー、中の下ぐらいな感じで、決してイケメンではないー。

いい加減な性格も加わり、ファッションセンスもあまりないため、

妹から”キモイ”と言われても仕方がないー

…と、本人はそんな風にも思っていたー


けれど、美咲は思春期と呼ばれる年齢になっても

兄・真守のことを嫌うような素振りは一切見せずに

今でも小さい頃と同じように”お兄ちゃん”を呼んで

慕っているー


当然、両親との関係も良好ー。


そんな美咲には、3か月ほど前に

同じ高校に通う彼氏ができたもののー

彼氏が出来てからも、兄に対する態度が悪くなったりだとか

そういったこともなかったー。


「ーーーも~!またそんなこと言って~!

 周りはどうでも、わたしにとってお兄ちゃんは

 死ぬまでたった一人のお兄ちゃんなんだから、

 もっと自信持って! ね!」


美咲の言葉に、

真守は「俺の妹がこんなに天使でいいのだろうかー」と

独り言をボソッと呟くー


「か、勝手に人外の存在にしないで!?」

笑いながら美咲が言うと、時計を見て、

「あ、そろそろ勉強しなくちゃー」と、言いながら

兄の真守や、両親と少し雑談を交わし、

そのまま部屋に戻って行ったー


真守は苦笑いしながらー

”ホント、俺にはもったいない妹だよー”と、

笑みを浮かべたー。



だがー

そんな、”花”のような妹がー

闇に染まっていくー


そんな日が、間近に迫っているとは、

真守もー

いや、美咲本人も夢にも思っていなかったー。


・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


いつものように学校にやってきた美咲ー


昼休みには、

親友の加奈(かな)と一緒に

昼食を食べながら

趣味の話や勉強の話、恋愛の話、

色々な話をしながら盛り上がるー。


加奈は病弱な体質で、学校を時々休むことがあり、

最初はなかなかクラスに馴染めずにいたところ、

美咲が声を掛けたことをきっかけに仲良くなった子だー。

今ではすっかり親友同士で、美咲を通じて

加奈もクラスに馴染むことが出来ているー。


放課後にはー

彼氏の亮太(りょうた)と色々な話をしたー。


亮太は3か月前から付き合い始めた隣のクラスの男子生徒で、

生徒会の書記としても活動している美咲が

生徒会活動を通じて親しくなった男子生徒だー。

とても穏やかな性格の持ち主で、

一緒にいると、安心できる存在だったー。


そんな、”いつものような日常”を送りー、

1日を終えた美咲ー。


夕暮れの校舎を後にして、

学校の正門をくぐり、学校の正門の横で、

スマホに連絡が来ていないかどうか、

立ち止まって確認をしてから、

ひと息ついて歩き出すー。


今日は、彼氏の亮太や、親友の加奈ー、

他の友達もそれぞれ用事があり、タイミングが

合わなかったため、美咲は一人で帰路につき始めるー。


このあともー

”いつものように”美咲は家に到着するはずだったー。


だがー

”いつもの日常”とは、

ある日、急に壊されてしまうものなのかもしれないー。


自らの行動で壊してしまう者もいれば、

理不尽な出来事で壊してしまう者もいるー。


”帰ったらまず、モフちゃんに餌をあげてー…”

自分の部屋で飼育中のハムスターのことを考える美咲ー。


しかしー


「ーーー!?」

美咲があまり人通りのない通りを歩いていたその時だったー


後ろから突然、黒いマスクをつけた男が近づいてきたー


咄嗟の身の危険を感じる美咲ー

だがー

次の瞬間ー

美咲に”針”のようなものが打ち込まれてー

美咲は声を上げる間もなく、意識を失いー、

その場に崩れ落ちたー


まるでー

”脱ぎ捨てられた着ぐるみ”のようになってー。


「ーーークククククク」

男は、笑みを浮かべるー


黒いマスクの位置を指で調節すると、

「ー人が闇に染まる瞬間は、美しいー」と、

不気味な声で囁いたー。


・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーあ……」


美咲が意識を取り戻すー。


「ーーあ…あれ…わたしー…」

美咲は頭のあたりを抑えながら、周囲を見渡すー。


さっきまで自分が歩いていたあまり人通りのない通りの

バス停近くのベンチに座っていることを把握した美咲は、

首を傾げるー


さっきー

”黒いマスクの男”に何かされた気がするー


「ーーー……」

けどー、周囲にそんな人間は見当たらないし、

ここは、さっきまで自分が歩いていた場所のすぐ近くだー。


「ーーーーー…何だったんだろうー…」

美咲は不安そうに呟くー。


確かに、背後から黒いマスクの男に襲われたような

気がするー。


しかし、誰かに襲われたのなら”何もされずに”

ここに座っている状態で目を覚ますのもまた、おかしい気がするー


美咲はすぐにハッとして、

自分の鞄の中を漁るー。


”何かを盗まれたのではないか”と、

そう思ったからだー。


しかし、何かを盗まれた、ということもなく

美咲の鞄に入っている私物は、何も無くなっていなかったし、

漁られた様子もなかったー


「ーーー…疲れてたのかな…?」

美咲は首を傾げながらも、自分の身体がちゃんと動くことー

異常がないことを、身体を動かしながら確認すると、

「ーー…家に帰ったら、今日はゆっくり休もっとー」

と、呟きながら

歩き始めようとしたー。


だがーーー


”ーー人が闇に染まっていく様子は、実に美しいー”


「ーー!?」

背後から、不気味な声がして、美咲は咄嗟に振り返ったー


「ーーえっ…」

しかし、美咲の”すぐ背後”からしたような気がする”声の主”は

どこにもいなかったー


美咲は不安になって、その場からすぐに立ち去ろうとするー

この先の道は、開けた大通りになっていて、人通りも

それなりに多いー。


”ーー花が綺麗であればあるほどー

 花が純粋で、美しければ美しいほどー

 それを穢していく様子はー

 まさに究極の芸術となるー”


男の声が、美咲に響き渡るー


美咲は背後を振り返りー、

左右をキョロキョロとするも、

やはり、”声の主”の姿はないー。


大通りに入り、人通りの多い場所に出た美咲ー。


しかし、男の声は一向に止まずー

美咲は「ど…どちら様ですか!?」と、

不安そうに叫ぶー。


”俺かー?

 クククー

 俺は、”ガーデナー”だー。”


男は、庭師を意味する”ガーデナー”を名乗ったー


”花を闇に染めるー

 そう、闇のガーデナーとでも呼んでもらおうか”


男の言葉に、美咲は不安そうにキョロキョロと周囲を見渡すー


先程から美咲に”語り掛けて来る男”の姿が見えないのだー。


”クククー俺がどこにいるかって?

 俺はーお前の中にいるー”


「ーーえ…」

大通りで車が行きかう中、美咲は不安そうに立ち止まって

闇のガーデナーの言葉に耳を傾けるー。


”ーークククー

 まぁ”皮にされている間の記憶”はないのだから、

 無理もないー”


ガーデナーはそう呟くと、

言葉を続けたー


”俺はお前を”皮”にして、お前を着たー。

 遊園地のショーとかで、着ぐるみを見たことがあるだろう?

 あの中に、人間が入っているのと同じだー


 今のお前は、その”着ぐるみ”と同じだー

 お前は”皮”にされて、中に”俺”がいるー。”


その言葉に、美咲は

「え…ど…どういうー…」と呟くとー

次の瞬間ー

美咲の身体の自由が全く利かなくなりー

美咲は勝手に歩き始めたー


そしてー

美咲の腕も勝手に動き、美咲は歩きながら

自分の左胸を揉み始めたー


”えっ…な…なにこれ…?”

美咲はそう言葉を発しようとしたがー

言葉すら自分の意志で発することはできなかったー。


それどころか美咲はー

自分の口から「ふふっ…わたしのおっぱい…気持ちイイ…」と

気持ち良さそうに呟いたー


”ーー!?!?!?!?”

美咲が困惑していると、ガーデナーの声が聞こえて来たー


”ーこれで分かっただろう?

 お前は俺に着られた着ぐるみー。

 俺がその気になれば、お前の身体を自由に操ることも、

 お前の口でどんなことを喋ることもー


 いいやー、お前の意識も全部乗っ取って

 俺自身がお前になることもできるんだー”


その言葉に、美咲は

「わ…わ…わたしをどうするつもりなんですかー…!?」と、

困惑の表情で叫んだー


今度は、ちゃんと声が出たー


”クククー

 まぁ、そう怯えるなー。

 

 俺は、”ガーデナー”ー。

 花が闇に染まっていく様子を見たいだけだー”


その言葉と同時に、美咲の身体の”自由”が戻るー


身体も動くし、

声も出るー。


”ーーあえて、お前に身体の自由もー

 何もかも、与えてやろうー”


ガーデナーはそう呟くー


”皮にされた美咲”は、

いつでもこの男が自由に操ることができるし、

完全に支配することもできるー。


しかし、”あえて”それを行わず

ガーデナーを名乗る男は、美咲の中に”潜むだけ”ー。


「ーーど…どういうー…」

美咲は、震えながら”自分の中にいる男”に対して言い放つー


”どうせ、誰にも信じてもらえないと思うが、

 俺のことは誰にも言うなよ”


ガーデナーが呟くー


美咲が震えながら、その言葉を聞いていると、

ガーデナーは続けたー


”これからお前は、”自分の意思”で俺の命令に従って

 動くんだー

 俺は別に強制しないし、お前の身体を支配したりもしないー。

 だが、お前は俺の命令に”自らの意思”で従っていくことになる”


ガーデナーの言葉の、美咲は「ふ…ふざけないでください!」と

涙目で叫ぶー。


”ふざけてなんかいないさー

 俺はお前のような、”希望に満ちた人間”を

 闇に落としていくのが大好きでねー


 ”花を闇に染める瞬間ー”

 いいや、染まっていく過程は実に美しいー


 お前は、俺にどのような”染まっていく過程”を

 見せてくれるのかー

 期待しているよー”


”庭師”を名乗る男は、それだけ呟くと、

美咲の口を乗っ取り、美咲の声で呟いたー


「ー俺の命令に従わなければ

 俺がお前の身体を完全に支配してー

 親も、恋人も、友達も、家族も、全員殺すー

 お前の身体でなー」


美咲の声は、低く、美咲とは思えないような

恐怖に満ちていたー


すぐに口の主導権が美咲に戻りー

美咲は「やめて…」と、呟くー


”さぁ、俺に見せてくれー

 闇に染まっていくのをー”


肉体を支配して強引にやらせるのではなくー

内側から支配して”自分の意思”でやらせるー


それこそが、闇に染まっていく最高の芸術ー


そのまま帰宅した美咲ー


兄の真守が「おかえり!…あれ?何かあったのか?」と、

少し暗い表情の美咲を見て、声を掛けるー


”ーわかってるな?”

ガーデナーは美咲の中から美咲に対して言い放つー


”言えば、俺はお前の身体でアイツを殺すー”

とー。


「ーーー…な、なんでもないよー」

美咲は影のある笑顔でそう答えると、

そのまま自分の部屋へ向かうー


”おぉー”

部屋の中に入ると、ガーデナーが声を漏らしたー


美咲以外に、ガーデナーの声は聞こえないー


”ーー闇に染まる第1歩だー。

 まずはー

 そのハムスターを殺してもらおうか”


ガーデナーの”無情”な命令ー。


美咲は、あまりの驚きに目に涙を浮かべるー


”安心しろ”人殺し”を命じたりはしないー

 だが、お前が俺の命令に従わなければ

 俺はお前の身体で大切な人を全員殺すー


 それは嫌だろう?


 さぁ、闇に染まる第1歩だー。

 そのハムスターを、殺せ”


ガーデナーの恐ろしい命令に、

美咲は震えながら、その場にへなへなと座り込んだー



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


”いつでも支配できる状況”で

内側から命令を下す悪魔のような男…!


次回以降はもっと大変なことになりそうですネ~!


お読み下さりありがとうございました~!

続きはまた次回デス~!

Files

Comments

No comments found for this post.