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事故に巻き込まれた娘の架純。

その架純を事故に巻き込んだ運転手・茂ー。


茂はその事故で死亡したものの、

目を覚ました架純は”茂に憑依された状態”になっていて、

”身体は最愛の娘”

”中身は最も憎い男”と、いう最悪の状況にー。


そんな中、父・明夫は夢を見るー。

その夢の中で、娘の架純は、まるで別れを告げるような言葉を

口にしていたー。


その夢を見た明夫の中での不安は、さらに強まっていくー。


★前回はこちら↓★

<憑依>憎悪の狭間③~娘の言葉~

事故を起こした相手に憑依されてしまった娘の架純は 退院の日を迎えたー。 父・明夫が必死に頼み込んだことにより、母・真美子の前では ”娘”として振る舞う”憑依された架純”ー 身体は最愛の娘ー 中身は”娘を事故に巻き込んだ憎き男”ー そんな、最悪の状況の中、家族としての生活は続いていくー。 ★前回はこちら↓★ ・・・...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


”わたし…もう…帰れないー…ごめんねー”


そんな夢を見た明夫は、

架純の部屋に向かい、扉を開けたー。


「ーーーあ?なんだよ?」

架純がうすら笑みを浮かべるー。


「ーー…おいおいー

 お父さんよー。

 いきなり”年頃の娘”の部屋にノックもせずに入って来るなんてー」


そこまで架純が言葉を口にするも、

近付いてきた明夫は、目に涙を浮かべながら、

これまで以上に強い怒りを感じさせる目で、

架純を睨みつけたー


「ー今すぐ…娘を開放しろ!」

明夫の言葉に、架純は少し戸惑った様子を見せながらも、

「ーーだから、俺は気づいたらこの子に憑依していて、

 この子から出て行く方法も、この子の意識がどこにあるのかも

 分からないって言っただろー?」

と、これまで説明してきた通りの言葉を呟くー。


だがー

明夫は引き下がらなかったー


「早く娘を返せ!早く!」

明夫は焦っていたー。


このまま、娘の架純の”この状況”が続けば、

本当に架純が消えてしまうのではないかとー。


「ーその身体は、お前の身体じゃない!」

そう叫ぶ明夫ー。


ふと、架純の目に涙の跡のようなものが見えるー。


あまりの怒りに、驚いているのだろうかー。

だが、架純を事故に巻き込み、挙句の果てに

その身体を支配までした、この男を許すことはできなかったー


「ーいいから早く、娘から出て行け!

 頼む!!頼むから!!出てってくれ!」


明夫が怒り狂った様子で叫ぶー


架純は反論することなく、明夫のほうを見つめていると、

明夫は「出て行け!!!!!!!!!」と、

架純の胸倉を掴んだー。


「ー朝から荒れてるなぁ…”お父さんー”」

架純は、ようやくそう言葉を口にすると、

明夫は、怒りのあまり、架純を突き飛ばしたー。


机に腰を打ちつけて、苦痛の表情を浮かべる架純を見て、

明夫は「頼むから…架純を返してくれー」と、

怒りと悲しみが混ざり合って、もうどうすることもできない、という

表情を浮かべながらひたすらに、架純に向かって嘆願したー。


”娘を返してほしい”

とー。


「ーーー…」

架純は、そんな明夫を見下すような目線で見つめると、


「ーーへへへー返してやるよー

 この女の意識が戻って来れば、なー」


架純は明夫の肩を小馬鹿にした様子で叩くと、

「でも考えてみろー」と、目を細めながら

半分脅すような口調で呟くー。


「ー今、俺が”架純ちゃん”として振る舞うのをやめたら

 どうなると思うー?」


架純がニヤニヤと笑うー。


明夫は目に涙を浮かべながら架純のほうを見つめるー


”こんないじわるそうな表情を浮かべた娘の姿”を

見たくなかったー。


「ありがとうお父さんー」

いつもの架純の笑顔を思い出す明夫ー。


”同じ顔”なのに、まるで別人のような笑みー。


「ーーーこの子の身体は”抜け殻”になるー

 そうなりゃどうなる?

 ”お母さん”も悲しむだろうし、

 学校にも行けなくなるしー、

 もし、”架純ちゃん”の意識が戻ったとしてもー」


「ーわかった!もういい!」

明夫はそれだけ言うと、悔しそうに架純のほうを見つめるー。


「ーーー…」

架純は「ふん」と、呟くと、

「ーあ~あ、お前に突き飛ばされたせいでケツが痛いぜ」と、

不満を口にしながら、ベッドに座って足を組むー。


「ーーーー…」

しばらくの沈黙ー


「ーーーで?何でそんな苛立ってんだよ」

架純がそう呟くと、明夫は「お前には関係ない」と、

不貞腐れた様子で呟くー。


「ーーー…教えろよ。

 何かあったんだろ?」


架純がもう一度言うー。

今度は嫌味な様子ではなく、真剣な様子で呟いた架純のほうを見て、

明夫もようやく話す気になったのか、

ゆっくりと口を開き始めたー。


「夢を、見たんだー」

明夫が言うと、架純は「夢?」と、表情を歪めるー。


「ーーあぁ…架純が…本当の架純が、

 俺に別れを言いにくる夢をー」


「ーーーーーー」

架純は目を細めながら、何かをボソッと呟くー。


だが、その内容は聞き取れず、明夫は言葉を続けるー。


「ーーー夢で、架純に言われたんだー

 ”わたしはもう帰れない”ってー

 ……早く…早くお前を架純の身体から

 追い出さないと、架純が消えてしまう気がするんだー…!」


そこまで言うと、明夫は落ち込んだ様子で

それ以降は口を閉ざしたー。


架純の部屋に置かれている時計の針の音だけが

響き渡るー。


「ーーーー」

しばらくすると、架純は髪をうんざりした様子で

掻きむしりながら、

”わかったよー”と、だけ呟いたー。


「ーでもな、お前の娘の架純ちゃんは、

 今は本当に”意識がない”状態なんだー。

 この身体の中にいるのかも、分からないー。


 いつ、目覚めるのかもわからないー。

 だから冷静になれー」


架純が言うと、明夫は「お前に命令されなくても、なるさー」と、

だけ呟くと、そのまま立ち上がったー。


「ーー……お前の娘が返ってくるまで、

 お前の前以外では、この子のフリを続けるからー

 分からないことがあれば、お前に聞くし、

 周囲の反応を見ながら、俺なりに勉強していく」


架純の言葉に、明夫は立ち止まるー。


”架純の声”で、そんな言葉を呟かれると、

やはりどうしても気になってしまうしー、

架純に”お前”と言われている気持ちにもなってしまうー


”姿”と”声”ー…

仮に中身が違っても、その二つが一致してしまうと、

どうしても、”中身は別人”だと分かっていても、

頭が混乱してしまうー。


「ーーーー少しでも、変化があったら隠さずに

 俺に教えろー。いいな」


 明夫がそれだけ言うと、架純は無言でうなずくー。


そして、明夫が部屋の出口に向かおうとしたその時、

架純は呟いたー


「ーーー悪かった」


「ーーー」

明夫が無言で振り返るー。


「ーーースマホを見ながら運転してー

 お前の娘を巻き込んでー…

 悪かったー」


架純の言葉に、明夫は「ふざけるな」と、言い放つー。


「ーーそんな言葉だけで、

 俺や架純が、お前を許すと思うかー?」

明夫の言葉に、架純は頷くー


「ーーはは…親子揃ってー」


それだけ呟くと、架純は明夫のほうを見つめて

「ーこう見えても俺、そこそこ反省してるんだぜ?」と呟いたー


「ーーーー……反省しても、俺はお前を絶対に許さないー」

明夫が力強く、言い放つー。


「ーそれにー」

明夫はそこまで言うと、

「ー謝るときは、自分の身体で、だー。

 俺の娘の姿で勝手に謝るなー。」

と、睨みつけながら架純に言い放ったー。


「ーーーーへへ…そうだな…

 ま、俺の身体はもうないからー…

 それは、できないんだけどなー」


架純のそんな言葉を聞きながら

明夫は「とにかく、架純の意識が戻ったりしたら、すぐに知らせろ」と、

再度強い口調で言うと、そのまま部屋の外へと向かったー。


一人、部屋に残された架純は

「あ~~~あ」と、呟くと、ベッドにそのまま雑に寝転んで

天井を見上げながら、なんとなく胸を揉み始めるー。


「ーーーせっかく女子高生になったんだしー

 好き放題してぇけど、そうもいかねぇもんだなー」


胸を揉みながら、架純はそう呟くと、深々とため息をついたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーー」


それからも、架純本人の意識は、なかなか戻らない日々が続くー。

毎日のように、明夫は架純の部屋に行き、

”憑依された架純”から話を聞くー。


”約束通り”

架純に憑依した茂という男は、架純の父である明夫の前以外では

”素”を出すことはなく、

母の真美子や、学校では、”あくまでも架純として”振る舞っていたー。


”架純がどう振る舞っていたのか”

分からないことがあれば、その都度明夫に確認してきてー

明夫は「ーー娘の個人情報を本当はお前のようなやつに

一つたりとも教えたくないんだがな」と、うんざりしながらも、

”架純が意識を取り戻したときのため”、架純の情報を

知る限り、教えていくー。


”どうせ、架純ちゃんが意識を取り戻せば、俺はもう帰る身体もないから

 消えるんだ”

と、個人情報を悪用するつもりはない、ということも確認したー。


架純が戻ってきたとき、架純に憑依した運転手の茂が

どうなるのかは、正直、明夫には全く分からなかったがー、

恐らくは、架純が戻ってきたときに、こいつはー…


だがー

最近、一つ気がかりなことがあったー


それはー

架純が”夜遅く”まで起きていることだー。


当初はー

こんなに夜遅くまで起きていなかったのだがー

あの日、明夫が架純の夢を見て、憑依された架純に

怒りをぶちまけた日ぐらいから、

深夜の2時か3時ぐらいまで、架純の部屋から

物音がするようになったー


架純の部屋の鍵は固く閉ざされていて、

深夜にノックしても、架純は返事をしようともしないー。


しかしー、

深夜ということもあり、あまり騒げば、

妻の真美子も当然気づくし、心配をかけてしまうー。


”そうなる”ことが分かって

深夜に”架純に憑依したあの男”は、何かをしているのだー。


「ーーーー」

部屋の扉を開けて、架純が外に出て来るー。


「ーーーんだよ」

架純が面倒臭そうに呟くー。


今日も、ホットパンツ姿で”この男の趣味”のままに

生足を晒させられている娘を見て、

明夫は怒りを覚えるー


「ー何をしてた?」


「ー別に」

架純はそれだけ答えると、そのまま廊下を歩いていくー


「ー何をしてた!」

妻の真美子が既に就寝しているため、大声を出すことはできないー。


けれども、不満の感情を露わにして、

そう呟く明夫ー。


「ーー勉強」

架純が呟くー。


部屋を覗くと、机の上には数学と英語の教科書が置かれているー。


「ーふざけるな 娘の身体で何をしてるー?」

明夫は、そう言い放つー。


だが、架純は面倒臭そうにー

「あのさ、小便行きたいんだけど?

 それとも、娘が漏らすのを見たいのかよ?」と、

言葉を返すー


明夫は拳を握りしめながらも

「ーー…とっとと行け」と、だけ言い放って

そのまま自分の部屋へと戻っていくー。


「ーーくそ…あいつは架純の身体で何をしてるんだー」

明夫が不満そうにそう口にするー。


一方、1階にあるトイレに到着した架純は

”すっかり慣れた”様子で便座に座ると、

「ーは~~~…この身体でトイレを済ませるのも、大分慣れたなー」


と、静かに囁いたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


それから、さらに数週間が経過したある日ー


「ーー今、何て言ったー?」

明夫が困惑の表情を浮かべると、

架純は、ニヤニヤしながら明夫のほうを見つめたー


「ーー言った通りだよー」

架純が笑うー。


「ーな、なんだってー?それは本当なのか?」

明夫が言うと、架純は「あぁ」と、頷くー。


「ーーーお前の大事な”架純ちゃん”の意識を

 最近、だんだんと感じるようになってきてなー…

 やっぱ、ちゃんとこの身体の中にいたんだな」


そんな言葉に、明夫は嬉しそうに「よかったー」と

何度も言葉を繰り返したー


「ーーー…」

だが、すぐに明夫は、「お前はー…どうなる?」と

言葉を続けるー


「まさか、架純の中に居座るつもりじゃないだろうな?」

明夫の釘を刺すような言葉に、

架純は「そうだと言ったら?」と、言葉を口にしながらも、

すぐに「ハハッ、冗談冗談」と、髪を触りながら言葉を続けたー


「ー架純ちゃんの意識が、ここ数日、だんだんハッキリと

 感じ取れるようになってきててなー…

 まだ、表に出て来れるほどじゃないみたいなんだけど、

 代わりに、俺がこの身体から抜けるような、そんな感じが

 強まってきたんだー。


 たぶんー

 俺はあと数週間ー

 いや、あと数日かもしれないー。


 この身体から追い出されて、俺は、消えるー。


 だから、安心しなよ」


架純がそう説明を終えると、明夫は

「信じていいんだなー?」と、言葉を口にする。


架純は「あぁ」と、頷くと、

「ー俺も正直、この女の身体にはもう飽きてたとこだー。

 お前みたいな親父も、うるさくてたまんねぇしな」

と、苦言を口にするー。


「ーま、あと数日ーいや、数週間かもしれねぇけど、

 お前の娘が表に出て来れるようになるまでは、よろしくなー」


そう言うと、架純は父・明夫の部屋から立ち去っていくー


一人部屋に残された明夫は、何度も何度も

「よかったー」と、言葉を口にし、

心底安心したような表情を浮かべたー。


だがー

明夫の部屋を出た架純が、少しだけ笑みを浮かべたことにー

明夫は気づいていなかったー


その笑みにも、

そして、それが”意味する”こともー。



⑤へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


次回が最終回になります~!☆

どんな結末になるかは…

最終回を見届けて下さいネ~!


本日もありがとうございました~!

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