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作品の性質上、地震災害の描写などが存在します。

苦手な方は、ご注意ください!

作中で発生する地震災害、場所、物語は全てフィクションデス!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーーーーー……」

彼は、一人だったー。


両親も、妹も、全てー

自然の力によって、奪われたー


誰を憎めばいいのかも分からないー

誰にこの悔しさをぶつければいいのかも分からないー


そんな、地獄の中でー

一人、生き延びてしまった彼は、

孤独に苦しみ、一人、座り込んでいたー。


「ーー君ーー…一人かい?」


そんな時だったー


家族を失い、絶望の淵にいた、

まだ少年だった彼に救いの手を差し伸べる人物が

現れたのはー


「ーーー……親も、妹も、死にましたー」

俊樹が言うー。


「ーーーー……」

俊樹に声をかけた人物ー

当時、まだそれほど大きくなかった製薬会社の会長だった彼はー

そんな俊樹に救いの手を差し伸べたー


「ーーー…」

俊樹は、意味が分からずその人物、宮尾会長のほうを見つめるー


「ー私も、同じだよー」

宮尾会長は寂しそうにー

けれど、俊樹と同じ悲しみをその目に浮かべて、

手を差し伸べたー


彼もまた、俊樹の家族が死んだ震災と同じ震災に巻き込まれー

家族を失っていたー。


だからこそー

家族を失った少年の苦しみが、彼にはよく、理解できたのかもしれないー。


そしてー

”同じ苦しみを背負う大人”に声を掛けられたからこそー

俊樹はその救いの手を、素直に掴むことができたのかもしれないー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


主な登場人物


月森 彩香(つきもり あやか)

高校3年生。修学旅行中に地震に巻き込まれる。俊樹と入れ替わっている。


日向 俊樹(ひゅうが としき) 

彩香を助けた男。彩香と入れ替わっている。とある会社に勤務していた。


的場 聡(まとば さとし) 

高校3年生。彩香の彼氏。不穏な行動を被災地で取り続けている。


木下 響子(きのした きょうこ)

高校3年生。彩香の親友。地震発生後は消息不明。


早乙女 美穂(さおとめ みほ)

高校3年生。大人しいタイプの子。赤岩と入れ替わってしまう。


赤岩 紀夫(あかいわ のりお)

危険な風貌の男。美穂と身体を入れ替えて、その身体を奪ってしまう。


神代主任(かみしろしゅにん)

製薬企業・宮尾製薬の研究主任。入れ替わりの原因の”試薬”の開発者。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


★あらすじ


蒼月市沿岸部の建設中の工場地帯で、

彩香(俊樹)と俊樹(彩香)は、

元に戻るため、神代主任と対峙するー。


彩香(俊樹)は神代主任と直接対峙ー、

俊樹(彩香)と協力を申し出た彩香の彼氏・聡は

”入れ替わり”のための試薬を探すー。


そんな中、高齢で既にほとんど自分の意識がなかったはずの

宮尾会長が、突如入れ替わりの試薬を撒きー、

自分の会社を利用しようとした神代主任と身体を入れ替えて、

その身体を奪ってしまうー。


死の間際にいる老人の身体になってしまった神代主任は

発狂しながら逃亡ー


神代主任の身体になった宮尾会長は、

彩香(俊樹)に対して”すまなかったなー”と申し訳なさそうに言葉を口にしたー。


”今まで不穏な行動をとってきた彩香の彼氏・聡”


そしてー

”クラスメイトの美穂の身体を奪った危険人物・赤岩”ー


不穏な空気が漂う中、元に戻るための最後の戦いを

彩香と俊樹は続けるー…。


必ず生きて、元の生活に戻るためにー。


★前回はこちら↓★

<入れ替わり>崩壊都市㉒~取引~

作品の性質上、地震災害の描写などが存在します。 苦手な方は、ご注意ください! 作中で発生する地震災害、場所、物語は全てフィクションデス! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 入れ替わってからー 時折、”妙に鮮明な夢”を見るー。 あれは、”本当に夢”なのだろうかー。 今までに見た光景は、3つー。 一つめはー、...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーー久しぶりに、晴れ晴れとした気分だよー」


21:15-


波の音が聞こえる蒼月市沿岸部の建設現場でー、

神代主任の身体を奪った宮尾会長は、

彩香(俊樹)の前に立ち、言葉を交わしていたー


「ーー老いというのは、悲しいものだなー」

神代主任(宮尾会長)は悲しそうにそう呟くと、

彩香(俊樹)は「会長…」と、寂しそうに言い返したー。


俊樹にとって、宮尾会長は、

恩人であり、家族を失ってからの親代わりでもあり、

家族同然の存在だったー。


「ーー神代が、私の会社の技術を用いて

 海外を拠点に活動している犯罪組織のいくつかに

 危険な薬品を売りつけようとしていることは分かっていたー


 だがー、身体も、頭も、もう追いつかなかったー。

 私は老いていく一方ー。

 理解はしていながらも、神代主任に会社を掌握され、

 もう私は何もできない状態だったー」


神代主任(宮尾会長)がそう言うと、

彩香(俊樹)は、少しだけ苦笑いしたー。


「ー神代の姿で、そんなことを言われるとー

 なんだか、戸惑いますねー」


とー。


親子同然のような関係でもあった俊樹と、宮尾会長は

会社以外ではよく雑談することもあったし、

冗談を言い合うようなこともあったー


ここ数年は、もうそんなこともできなかったがー

今、こうして再び”懐かしい雰囲気”を味わうことが出来ているー。


「ーーーははっ…お前なんか、女子高生じゃないかー。俊樹」

神代主任(宮尾会長)が笑うー。


「まぁ、神代の怪しげな薬のおかげで、

 こうしてお前ともう一度話すことが出来てよかったー。


 もう、私の身体ではまともに話すことも、理解することも、

 動くこともできなかったからなー」


神代主任(宮尾会長)はそこまで言うと、

「蒼月市の地震ー…大変だな」と、呟くー。


何もできない状況ながら、自分の身体で見て来たことから、

蒼月市の現状は理解しているー


「ーええ…」

彩香(俊樹)は頷くと、

神代主任(宮尾会長)は少しだけ表情を歪めたー。


「ーどうしました?」

彩香(俊樹)の言葉に、「いや」と呟くと、

少しだけ満足そうに微笑む神代主任(宮尾会長)ー


「ーーその子に身体を返すために、

 ここに試薬を取りに来たんだったなー?」

神代主任(宮尾会長)の言葉に、

彩香(俊樹)は「はい」と答えるー。


「ーーー俺の身体になった彩香ー…この子が

 今、彼氏と一緒に、神代が試薬をどこに保管しているのか、

 探していますー」


彩香(俊樹)の言葉に、神代主任(宮尾会長)は頷くー。


神代主任は”大事なもの”を肌身離さず”自分の側”に置いておかないと

気が済まない人間だー。

だからー、必ず新しい工場の建設現場に視察に来ている以上ー

”この建設現場のどこかに試薬はある”のだー。


神代主任の”過剰なまでに神経質な性格”故ー、

ここに試薬がないことは、あり得ないー。


「ーーー俊樹ー」

神代主任(宮尾会長)は、穏やかな表情を浮かべながら呟いたー


「ーお前と、もう一度話せて、本当によかったー」


とー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーはぁ…はぁ…はぁ…

 くそっ…ジジイ… うぅぅぅぅぅ…くそっ!動け!くそっ!」


宮尾会長の身体になってしまった神代主任は、

執念で宮尾会長の身体を動かしー、

車いすで逃亡を続けていたー


”研究所に残してきた試薬を回収して、誰の身体でもいいー

 とにかく身体を奪ってやるー!

 こんなジジイの身体でいたらー死んでしまうー!”


宮尾会長(神代主任)は、そこまで考えて

ふと、表情を歪めたー


「ーーー…研究所ー……」

宮尾会長(神代主任)が、そう呟き、さらに険しい表情を浮かべるー


”研究所の位置が思い出せないー”


入れ替わった直後ー

まだ意識はハッキリしていたが、

次第に宮尾会長の身体による影響が強くなりー、

宮尾会長の衰えた脳でしか物事を思考できなくなりつつあったー


研究所の位置が、どうしても、思い出せないー


目から涙を溢れさせながら

「日向…俊樹ィ…」と、

俊樹への恨みを募らせる宮尾会長(神代主任)ー


「とにかく……研究所に…行かないとー!」

そう呟いたその時だったー


「ーーーー!」

暗闇から、誰かが姿を現したー


宮尾会長(神代主任)は警戒心を露わにするもー、

そこに現れたのは、いかにも大人しそうな少女だったー


”ち、ちょうどいいー”

宮尾会長(神代主任)は心の中でそう呟くと、

そのツインテールの少女のほうに向かって声をかけたー。


「ーーー…す…すまないー…

 ち、ちょっと、力を貸してくれー」


宮尾会長(神代主任)がやっとの思いで言葉を口にすると、

ツインテールの少女は「こんばんは」と、笑みを浮かべながら

宮尾会長(神代主任)に近付いてきたー


「おじいさんーこんな場所でどうしたんですか?」

ツインテールの少女の言葉に、

宮尾会長(神代主任)は「ーー実は…研究所に戻ろうとしてるんだがー

ば、場所が分からなくてー」と、

もごもごしながらようやく言葉を吐き出すー。


「ーわぁ…それは大変ですねー…」

ツインテールの少女の言葉に、

宮尾会長(神代主任)は少しだけ笑みを浮かべたー


”ちょうどいいー

 この小娘を利用して、研究所まで案内してもらってー

 そしたら私の試薬で、この女の身体をー”


だが、そこまで考えて

宮尾会長(神代主任)は、「ーー試薬って…なんだ…?」と、

呟いたー。


ツインテールの少女が、そんな宮尾会長(神代主任)を見て微笑むー。


「ーわたしが案内してあげますから、安心してください」

ツインテールの少女は、そう呟くと妙に乱暴に

車いすを動かし始めたー。


「ーーー…ありがとうー助かるー」

宮尾会長(神代主任)は、どんどん自分の思考が鈍っていることに

焦りを感じー”早く、研究所に戻らねばー”と、

心の中で呟くー。


だがー

少女が、沿岸部の崖になっている部分に車いすを移動させていくー


どう考えても、研究所の方向ではないー


「ーな…何をー?」

宮尾会長(神代主任)が混乱しながら、ツインテールの少女のほうを

振り返ろうとすると、

「ーもう十分生きただろ?死ね」

と、ツインテールの少女が冷たい口調で呟いたー


「ーー!?!?」

車いすごと、宮尾会長(神代主任)を崖から突き飛ばす

ツインテールの少女ー…


宮尾会長(神代主任)の身体が、車いすと共に崖から転落して、

そのまま海に消えていくー。


「ークククー

 会長も一応消しておいた方が、いいからなー」


宮尾会長(神代主任)の前に姿を現したのはー

赤岩に身体を入れ替えられて支配されてしまっていた美穂だったー


神代主任は、”美穂と赤岩が入れ替わっている”ということを

認識していなかったー

最も、認識していても、宮尾会長の身体では

遭遇してしまった時点で、どうすることもできなかったことに

変わりはないだろうけれどー。


そしてー

美穂(赤岩)自身も、まさか突き落とした宮尾会長の中身が

神代主任だとは知らずに突き落としたー。

とは言え、美穂(赤岩)にとって

既に、”どちらも始末すべき相手”でしかない以上、

そんなことは関係ないー。


「ーーー…へへへへ…兄貴とあの小娘もこの先の

 建設現場にいるはずだ…」


美穂(赤岩)は、穏やかそうな顔に狂気を浮かべながら

そのまま彩香や俊樹のいる場所へと歩き始めたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


建設中の工場内で、

神代主任が持ち込んでいた試薬を入手した

俊樹(彩香)と聡は、

試薬が置かれていた施設内から出て、

先程、彩香(俊樹)と神代主任たちが対峙していた

場所へと向かおうとするー。


「ーー!」

だが、聡たちの行く先に、神代主任の配下の人間たちが

ウロウロしていて、なかなか突破することができないー


「ー早く、あいつのところに戻って、

 彩香の身体を元に戻してやらないといけないのにー」

聡はそう呟きながらもー

俊樹(彩香)に触れようとはしないー。


俊樹(彩香)はそんな聡のほうを寂しそうに見つめるー。


蒼月市で地震が発生してから、聡は妙に他所他所しいし、

火災現場を見に行ったり、おかしな行動をしているー。


それなのにー

彩香を助けたい気持ちはちゃんとあるのか、

今も一生懸命、この危機を突破しようとしてくれているー。


「ーーー聡…大丈夫?」

俊樹(彩香)が心配そうに呟くー


「何が?」

少しうんざりした様子で振り返る聡ー。


”聡の顔色が、とても悪いー”


俊樹(彩香)はそんな指摘をするー。


「ーー顔色?あぁ、こんな極限状態じゃ、

 緊張するに決まってんだろー。

 まるで映画みたいなことさせられてるんだしー」


聡はそれだけ言うと、

俊樹(彩香)のほうを見て笑うー。


「ーとにかく、何とかここを突破するぞー!」


蒼月市沿岸部の、宮尾製薬の新しい工場の建設現場ー。

広大なその敷地内を、何とか移動して、

彩香(俊樹)のいる方に向かい、合流するー


”彩香と早乙女さんの身体を元にさえ戻せばー”

聡はそんなことを思いながら、

少しだけ笑みを浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「お前と、もう一度話せて本当によかったー」


神代主任(宮尾会長)は、そう呟くー。


「ーーー会長?…」

彩香(俊樹)が少しだけ表情を歪めるー。


「ーー…まさか、会長ー…

 自分も死ぬ、とか言い出すんじゃないでしょうねー…?」

彩香(俊樹)が言うと、

神代主任(宮尾会長)は、

彩香(俊樹)の方に近付いてきたー。


「ーーいいやー」

神代主任(宮尾会長)は微笑むー。


「ーー会長…?」

彩香(俊樹)が不安そうに言うと、

「ーーーー私は、お前を本当の息子のように愛していたー。

 今までありがとうー。」


そう、穏やかな口調で付け加えたー。


「ーーー……私を盾にしろ」


「ーーえ?」


意味不明な神代主任(宮尾会長)の言葉に、

表情を歪めると同時にー

銃声のような音が響いたー。


「ーーー!?!?!?!?!?」

彩香(俊樹)が驚くー。


そしてー


「ーーどうなってやがるんだァ…?」

と、いう可愛らしくも凶暴な声が聞こえたー。


よろめいた神代主任(宮尾会長)の身体を支える

彩香(俊樹)ー


「ーー俊樹!聞け!」

神代主任(宮尾会長)が叫ぶー。


「隠れる場所のないここじゃー

 お前も撃たれるー

 私を盾にしてー…… ーー

 あいつから、銃を…取り上げろー」


神代主任(宮尾会長)が美穂(赤岩)のほうを指差すー


赤岩が隠し持っていた銃を、美穂の身体で赤岩が使っているのだー。


「ーー神代主任ーーー

 そいつを庇うとは、どういうつもりで?」

美穂(赤岩)がニヤニヤしながら言うー。


穏やかな顔つきに、可愛らしいツインテールー

しかし、中身は真逆のどす黒い存在ー。


入れ替わった人間が三人ー。


彩香(俊樹)は、撃たれた神代主任(宮尾会長)を支えながら

美穂(赤岩)のほうを見つめるー。


「ーー兄貴ィ!お前をぶっ殺せば、

 ”入れ替わった状態”でもう片方が死んでも大丈夫なのかどうか

 分かるからなー。


 そしたら、俺の身体になったこの女をぶち殺して

 俺はこの身体を頂きだ!」


美穂(赤岩)が叫ぶー。


既にー

”宮尾会長になった神代主任”を殺しているためー、

”赤岩の知りたいこと”の答えは出ているー。


しかし、宮尾会長と神代主任の入れ替わりを知らない美穂(赤岩)は

まだ、その答えにたどり着けていなかったー


「ーー未来が…見えたー」

神代主任(宮尾会長)が、苦しそうに呟くー。


神代主任と入れ替わって、彩香(俊樹)と話していた最中に

神代主任(宮尾会長)には”未来”が見えたー


ツインテールの女子高生が銃を持ってやって来て、

彩香(俊樹)を撃つ光景がー。


それを変えるために、神代主任(宮尾会長)は、

彩香(俊樹)を庇ったー。


隠れる場所がないこの場所で、

遠くから狙われる彩香(俊樹)を守るにはー

自分が盾になるしかない、

そう、判断してー


「ーー未来がー?」

彩香(俊樹)が険しい表情を浮かべるー。


「ーーーーーーあぁ… とにかくー」

神代主任(宮尾会長)は苦しそうに彩香(俊樹)を見つめるとー

「ーー私を…盾に…あいつから、銃を奪えー…

 その子の身体を……絶対にちゃんと返してやれー…いいなー?」

と、呟いたー。


彩香(俊樹)は「でも、会長を盾にするなんてー」と、

戸惑いながら言うー


それでも、神代主任(宮尾会長)は「やるんだー」と

親が子を諭すように、力強く言い放ったー


「ーーーへへへへ…兄貴…

 神代主任と一緒に地獄に行きな!」


美穂(赤岩)がその手で銃を放つー。


彩香(俊樹)は、悔しそうな表情を浮かべながら

「ーーー俺を拾ってくれたこと、本当に感謝してますー」

と、小声で神代主任(宮尾会長)に伝えてからー


その身体を盾に、美穂(赤岩)の方めがけて走り出したー。


㉔へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


もうすぐ最終回を迎える崩壊都市…!

どのような結末を迎えるのか、

見届けてみて下さいネ~!


今日もありがとうございました~!☆!

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