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兄・忠雄は、急に自分に対して優しくなった妹の明菜に

強い違和感を感じていたー。


学校の親友に叱られたからー、と明菜は説明していたものの、

明菜の親友である詩織に、偶然大学からの帰り道で鉢合わせした忠雄は

詩織との会話で、妹・明奈の説明は嘘であることを知るー。


明菜は”闇の代行人”と呼ばれる謎の人物に”皮”にされて支配されているー。

だが、忠雄はまだその真実にたどり着くことが出来ていないー。


この事態の先に、待ち受ける運命は…?


★前回はこちら↓★

<皮>お兄ちゃんおかえりなさい②~違和感~

妹の明菜に徹底的に嫌われていた 男子大学生の忠雄ー。 ほとんど口を利いてもらうことすらできない日々が 長い間続いていたものの、ある日妹の明菜は突然豹変ー。 昔のように忠雄のことを”お兄ちゃん”と呼び、 慕うようになるー 急な妹の変化に違和感を感じながらも 兄・忠雄はその変化を喜ぶもー…? ★前回はこちら↓★ ・...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーー明奈さー、変なこと聞いていいか?」

忠雄が、帰宅していつものように冷蔵庫から取り出した

ジュースを嬉しそうに飲む明菜を見て、声をかけるー。


「ーーん~?なぁに~?」

明菜は微笑みながら忠雄のほうを振り向くー。


「ーこの前、偶然大学帰りに明菜の友達のー、

 ほら、詩織ちゃんに会ったんだけどさー…」


「ーうんうん」


そこまで言っても、明菜は表情一つ変えることなく、

忠雄の話を聞いているー。


詩織は言ったー。


「ーわたし…明菜ちゃんに何も 

 説教なんてしてないですけどー…」


ーとー。


だが、急に忠雄に対して優しくなった明菜は言ったー。


「ーー詩織に怒られて、わたし、気づいたのー

 お兄ちゃんに申し訳ないことしちゃったなーって」


二人の話は、矛盾しているー。

どっちかが、嘘をついているかー

あるいは勘違いしていることになるー。


忠雄は、そう思いながら

「詩織ちゃん、明菜に何も説教してないってー」

と、少し困惑した様子で呟くー。


「ーーーー」

瞬きを何度か繰り返す明菜ー


「あ、いや、別にいいんだけど!いいんだけどさ!

 2年もあんな状態だったから、

 急にどうしたんだろう?って俺の気持ちも、

 わ、分かってくれるよなー?」


不安そうに呟く忠雄ー


またーーーー

”何かのきっかけ”で、この前までのような明菜に

戻ってしまうのではないかー


”あんた、キモすぎー”

そんな、冷たい言葉を口にする明菜に戻ってしまうのではないかー。


そんな、不安が常に頭の中をよぎっていたー。


昔はとても仲良しだったのにー。

気付いたら、妹に嫌悪されていたー。


そしてー。

急に元通りになったー。


だから、またー

”急に”ああなってしまうのではないかー。

そんな”恐怖”が忠雄の中から抜けなくなってしまっていたー。


もちろん、忠雄は明菜本人に起きていることを知らないし、

”明奈が皮にされて”闇の代行人”に乗っ取られているー”などとまでは

思っていないー。


何となく違和感を感じるのとー

”また元に戻ってしまうのではないかという不安”

その二つの理由からー、明菜の最近の”豹変”を心配していたー。


「ーーーそうだね。うんー。分かるよー」

明菜はそんな忠雄の不安を理解し、頷いてくれたー。


「ーでも、大丈夫!お兄ちゃんにあんなひどいこと、

 もう言ったりしないから!

 約束!」


約束の印に手を差し出す明菜ー。

少し恥ずかしそうにそれに応える忠雄ー。


「ーあ、そうそうー

 詩織ちゃんはね~、多分お兄ちゃんに感謝されて

 恥ずかしくてわたしに説教なんてしてない~!って

 言ったんだと思うよ?


 ああ見えて、詩織ちゃんはツンデレだからね!」


明菜の言葉に、忠雄は「あ~…まぁ、そういう雰囲気はあるかもな」と、

言いながら、その言葉に納得してしまうー。


「ーーーー」

微笑みながら、明菜は忠雄のほうを見つめるー


”まぁ、別に俺の目的はー、お前の妹に成りすまして

 お前たちに危害を加えることじゃないー。

 単純に”お兄ちゃんや父親を毛嫌いする前の妹”を

 演じるだけだー。安心しなー”


明菜を支配している”闇の代行人”は心の中でそう思ったー


彼は、依頼を受けて”人を皮にする力”で、その本人になりすますー。

もちろん、人を支配して暗殺などに手を染めたりすることもあるが、

今回受けている依頼は”高校卒業まで、この家で昔のように暮らしてほしい”

という依頼だー。


故にー

明菜を支配したこの男が、兄の忠雄や、両親に危害を加えるつもりは

全くないー。


”依頼”されれば”殺る”ー。

だが、されなければ、”何もしないー”


闇の代行人は、そういう男だー。


「ーーーーほんとに!悪だくみとか何もないから、心配しないで!

 もちろん、お兄ちゃんがわたしの急な変化にびっくりする気持ちは

 分かるけど、ホントに大丈夫だから!


 ほら、今のわたしは無害無害!」


両手をぱたぱたと振りながら笑う明菜ー。


そんな仕草に”久しぶりに明菜の”仕草”を可愛いと思ったー”

などと、忠雄は思っていると、

「不安なことあったら、何でも聞いていいからね!お兄ちゃん!」と、

笑いながら明菜は言い放ったー。


「ーーはは…わかった。本当にありがとな、明菜ー

 今もキモイって思ってるかもしれないけどー」


忠雄がそんな風に言うと、

明菜はぺしっ!と忠雄を叩いたー


「いたっ!」

忠雄が思わず声を上げると、

明菜は「あれ、本心じゃなくて ホラ、八つ当たりみたいなものだし!

そんな自虐的にならないで~!」と、

明るい笑顔で忠雄に言い放ったー。


”幸せだー”


”昔のような明菜が戻ってきたー”


”本当にー

 とっても、幸せだー”


忠雄は、この日を境にー

明菜の”豹変”に対する不安を払拭しー、

”また仲良くできるー”と、

心からそれを喜んだのだったー。



「ーーーーー」

部屋に戻った明菜は、「ふ~~~」と、

ため息をついて、足を組むー。


部屋の中では”男”の、自由時間だー。


「ーーしかし…”公園事件”もそうだがー

 ホントに、この女は、昔はお兄ちゃんと仲良かったのになー」


明菜の身体のまま、そう呟く男ー


「ー年頃の娘ってのは、よくわかんねぇなー」


男は、”支配した身体”の記憶を読み取ることができるー。


だからー

明菜のフリをすることができるし、

明菜と忠雄ぐらいしか知らない”公園事件”のことも、

忠雄に聞かれた際に簡単に答えることができたー。


そしてー

忠雄が”まるで昔の明菜をなぞっているかのよう”と

感じたことがあるのも、

その通りでー、明菜を支配した闇の代行人が

”明奈の記憶をなぞって、明菜のフリをしている”のだから、

忠雄のその感じ方は、正しかったと言えるー。


「ーーーは~~~~~~…喉が渇くんだよなー」

冷蔵庫から持ってきたペットボトルのお茶を口に運ぶ明菜ー


”人を皮にして着ている状態”は、

どういうわけか、とても喉が渇くー。

自分の本体が、内側にいるから、”余計に喉が渇く”のだろうかー。


そのため、明菜は学校から帰宅すると

いつも真っ先に冷蔵庫の飲み物を飲んでいるー


これはー”元々の明菜”がしていなかった行動だが、

それでも、そんなことで気づかれることはないだろうー。


”気づかれるとしたら、熱のほうかー”

明菜は自分の額を触るー。


”皮にされた人間”は、

通常よりも体温が下がるー。

彼自身、その理由は正確には把握していないが、

”恐らくは皮にされたことで、休眠状態になっている”と、

彼は考えていたー。


”大体34度ぐらいしかなくなるからなー”

明菜はそんな風に思いながらも、

「ーまぁ…卒業まで妹をしっかり演じさせてもらうぜー

 女子高生ライフも、これはこれで楽しいしな」と、

静かに囁いたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


やがてー

”両親と兄・妹の幸せな時間”は

過ぎ去っていきー、

明菜は無事に高校を卒業したー。


明菜は大学生になったら一人暮らしをする、と

親に宣言していて、いよいよ明日、明菜は出発の日を迎える

予定になっているー。


「ーーー」

そんな日の夜だったー。


夜中に忠雄がトイレのために1階に下りてくると、

台所の方から、ヒソヒソ話す声が聞こえて来たー。


「ーーー本当に、ありがとうー。感謝するー」

その声は、父・宗次郎の声だったー。


「ーー父さん…?」

そう思いながら、忍び足でもっとハッキリと声が聞こえる方に

近付いていくと、

どうやら父親の宗次郎と、妹の明菜が話をしている様子だったー。


「ーーー…まさか年単位で依頼を受けるとは思わなかったよ」

明菜は聞いたことのないような口調でそう答えるとー、

「ー”家族を嫌いになる前の娘として生活してほしいー”

 こんな依頼を受けたのは初めてだったー。

 大体、悪さとか、そういうことに絡む依頼ばかりだからな」

と、言葉を付け加えたー。


「ーー依頼…?」

首を傾げる忠雄ー。


「ー耐えられなかったんだー。

 娘に毎日のように、汚物を見るような目で見られるのがー…

 でも、あなたのおかげで、楽しい日々を過ごすことができたー

 本当に、娘と一緒に過ごしているかのようだったー」


父・宗次郎がそう言って頭を下げると、

明菜は「ーーーまぁ…俺も新鮮で楽しかったよ」とだけ

呟いて立ち上がるー。


「ー明奈は、どうなるんだ?」

父・宗次郎の言葉に、

「ー別に。普通に大学生として一人暮らしを始めるだけさ」

と、明菜は答えるー。


「ー処分したりはしない。”普通に”解放するだけだー。

 依頼を受けていないことは、俺はしないー。

 俺が明菜になっていた間の”記憶”は、多少調整して

 ちゃんとこの子に返しておくからー

 普通に大学生として過ごすー。それだけだ」


明菜はそれだけ言うと、

少しだけ笑ってから振り返ったー。


「ーー俺は生まれてからずっと、闇の世界で生きて来たからなー…

 依頼とは言え、ここの”家族”として過ごすことができてー

 ちょっと、楽しかったー。」


明菜はそれだけ言うと、

「ー…感謝するー」と、頭を下げてから

「ー”仕事”だからなー。最後まで正体は見せないし、名前も名乗らない」と

だけ、呟いて

「明日の朝には出発するー。今後はたぶん、またアンタや、

 この女の兄貴に”敵意”を向け始めるかもしれないがー

 あとは上手くやってくれー」

と、付け加えて、そのまま自分の部屋の方に戻っていくー。


「ーーーーーー」

明菜は物陰に隠れて、話を聞いていた兄・忠雄に気付くー。


「ーーーーーーーーー……」

少し立ち止まった明菜ー。


”年頃の子からすればウザい兄貴なのかもしれないけどー

 俺からすればーいいやつだったと思うぜ”


そう小声で呟くとー


”ーーもう少し、自身を持てよー

 いつかきっと、本当の明菜にも伝わるからよ”


さらにそう呟きー

明菜は忠雄の姿を確認することなく、

そのまま自分の部屋へと戻って行ったー


「ーーー明奈…」

忠雄はそう呟くと、父・宗次郎には姿を見せずー

明菜の部屋の前にこっそりと行きー

部屋をノックすると

「ありがとう」と、だけ伝えたー。


妹の明菜が”急に豹変”したあの時からー

明菜は父・宗次郎の依頼を受けて

何者かに乗っ取られていたのだろうー。


それに対し、色々思うところはあるー。


けれどー

解放された明菜は、さっきの話からすれば

普通に生活できる様子だったし、

今、この場で”よくも妹を!”なんてやっても、

得るものは、何もないー。


父さんには、父さんの考えがあったのだろうし、

明菜の態度に父さんも苦しんだのだろうー。


もちろん、自分自身もー。


忠雄はそう考えて、明菜に感謝の気持ちだけ伝えると、

返事を待つことなく、そのまま自分の部屋へと戻って行ったー。


そして翌朝ー

明菜は旅立ったー。

大学生になるのをきっかけに、”一人暮らし”を始める明菜ー


新居に到着した明奈は「じゃあなー」と、

鏡を見つめながら呟くと、そのまま”闇の代行人”は

明菜の”皮”を脱ぎー、

皮になった明菜に手をかざしてー

明菜を人間の姿に戻すと、

そのまま明菜が目覚めるのを待つことなく、立ち去って行ったー


「ーーーー…う…」

しばらくして目を覚ます明菜ー


「あれ……わたしー……

 あ…そっかー…

 一人暮らし始めたんだったー…」


”記憶”を上手く調整された明菜はそう呟くと、

少しだけ寂しそうな表情を浮かべて

「ー部屋の片づけとか、しなくちゃー」と、

静かに立ち上がったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


”元の明菜ー”に、戻ってしまったー。


兄・忠雄には連絡も来ないし、

多分、嫌われているー。


けどー。


忠雄は勇気を出して、明菜に連絡を入れてみたー。


”なによ?”

明菜の不機嫌そうな声ー。


「ーい…いや、一人暮らしは、順調かなって、

 心配でー」


忠雄は、自分がスマホを持つ手が震えているのに気づくー


また、電話を切られるだろうかー

それとも、罵倒されるのだろうかー。


”ーー心配しすぎ”

明菜のうんざりした声ー


”ーーーでもまぁ……その…ありがとう”

明菜はそれだけ言うと、

”あんたもー…そのうち、遊びに来ていいからー”

と、言葉を続けたー


「ーーえ…?ほ、ホントにー?」

忠雄が戸惑いながらそう返事をすると、

明菜は”ウザいことしたら、追い出すけど”と、

少しだけ笑いながら答えたー


忠雄は嬉しそうに会話を終えるー。


今度こそー

”本当の妹”と、昔のように仲直りできるだろうかー。


いやー

そう簡単ではないかもしれないー


でも、今度こそー。


忠雄はそう願いながら、

自分の部屋に飾っている

家族写真を見つめたー



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


ダークな要素は控えめの皮モノでした~!☆

”闇の代行人”は、明菜を元に戻した際に、

明菜の兄に対する感情の部分は、いじってはいませんが、

大学生になったことや、一人暮らしを始めたことで、

少しずつ、明菜自身の心境にも変化が生じている…感じですネ~!☆


いつかまた、普通に話せるぐらいに仲直りできる時も

来るかもしれません~☆


お読み下さりありがとうございました~!

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