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作品の性質上、地震災害の描写などが存在します。

苦手な方は、ご注意ください!

作中で発生する地震災害、場所、物語は全てフィクションデス!


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「先ほど、公島総理大臣が現地の視察を行いましたー」


ニュースでは

総理大臣・公島が、蒼月市の避難所を訪れている映像が

映し出されているー。


震災から数日が経過ー、

過酷な状況の中でも、避難所の中には、

初日や2日目とは異なり、それなりの秩序のようなものが

作り上げられている場所もあったー。


電気やガス、水道の完全復旧にはまだまだ時間がかかるー。


人は、自由に使えなくなって初めて、

ライフラインのありがたみを知るー。


そして、願わくば、もう二度とこんな目に遭いたくないと、

そう、願うー。


けれど、地球に生きている限り、

地球は人間の都合など考えてはくれないー。


地球からすれば人間は”勝手に住み着いている何か”でしか

ないのだからー…


だからこそ、人は気まぐれな地球と、気まぐれな自然と

上手く共存していく道を模索しなければならない。


今までも、そして、これからも、永遠にー。


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主な登場人物


月森 彩香(つきもり あやか)

高校3年生。修学旅行中に地震に巻き込まれる。俊樹と入れ替わっている。


日向 俊樹(ひゅうが としき) 

彩香を助けた男。彩香と入れ替わっている。とある会社に勤務していた。


的場 聡(まとば さとし) 

高校3年生。彩香の彼氏。不穏な行動を被災地で取り続けている。


木下 響子(きのした きょうこ)

高校3年生。彩香の親友。地震発生後は消息不明。


早乙女 美穂(さおとめ みほ)

高校3年生。大人しいタイプの子。赤岩と入れ替わってしまう。


赤岩 紀夫(あかいわ のりお)

危険な風貌の男。美穂と身体を入れ替えて、その身体を奪ってしまう。


神代主任(かみしろしゅにん)

製薬企業・宮尾製薬の研究主任。入れ替わりの原因の”試薬”の開発者。


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★あらすじ


赤岩に身体を入れ替えられてしまった美穂の兄・秀一が

蒼月市を訪れた。


戸惑いながらも彩香と俊樹は”本当のこと”を言うことはできず、

美穂は無事であるとだけ、秀一に伝える。


そんな中、神代主任が蒼月市にある建設中の現場を視察するという

ニュースが流れるー


まるで”自分を誘うかのような”神代主任の行動に、

彩香(俊樹)は表情を曇らせたー。


彩香を無事に元に戻し、家族の元に返すためー…

俊樹は彩香の身体で、あることを心の中で決意したー。


★前回はこちら↓★

<入れ替わり>崩壊都市⑲~視察~

作品の性質上、地震災害の描写などが存在します。 苦手な方は、ご注意ください! 作中で発生する地震災害、場所、物語は全てフィクションデス! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「ーー我々、宮尾製薬は、被害を受けた全ての皆様が  いち早く元の生活に戻れるよう、全力で支援してまいりますー  それがー  蒼月...

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5日目 10:00ー


俊樹(彩香)は、臨時で一時避難所として解放されていた

オフィスビル1階の手伝いをしながら、

彩香(俊樹)が、今朝から真剣な表情で考え込んでいることを

気にしていたー。


「ーーー…大丈夫?」

俊樹(彩香)が駆け寄っていくと、彩香(俊樹)は

「ん?あぁ、大丈夫」と、頷くー。


「何を考えていたの?」

俊樹(彩香)が言うと、彩香(俊樹)は

「いや…君を無事に送り返すための方法を色々とさー」

と、答えるー。


「ーー…つい数日前まで、見ず知らずの関係だったのにー」

俊樹(彩香)が、少しだけ笑いながら、そう言うと、

彩香(俊樹)は「俺のせいで、入れ替わっちゃってっていうのは

もちろんあるけどー」と、言葉を口にして、

ビルの外の光景を見つめるー。


「やっぱり、10年以上経過してもー

 あの時、妹を守れなかった後悔が、

 俺の中で消えないんだろうなー」

と、彩香(俊樹)は、妹のことを思い出しながら

言葉を口にするー。


瓦礫の下敷きになって、

どうすることもできなくてー

助けてあげることもできなくてー

只々、妹が目の前で冷たくなっていく

あの時間は、今でも忘れないー。


全ての光景が鮮明に蘇ってくるー


もう、二度とあんなことは繰り返さないー


彩香を無事に送り返すためには、

少なくとも

”俊樹と彩香の入れ替わっている状態を元に戻すこと”が、

大前提だー。


それを達成することができなければ、

俊樹の身体になってしまっている彩香を、

元通りの生活に戻してあげることはできないー。


仮に被災地となっている蒼月市を出たとしても、

俊樹の身体では、家族の元にも帰れないだろうし、

家族に信じてもらうことが出来ても、

この先の高校生活を今まで通り普通に送ることは

絶対にできなくなってしまうー。


そしてー

神代主任らに狙われ続けることにもなってしまうー。


彩香(俊樹)は思うー。


彩香を無事に元の生活に戻すためにはー


”神代主任と直接会い、話をつけた上で

 試薬を手に入れて、元に戻るしかない”


それしかないー、と。


だが、神代主任が、彩香の解放に同意するかもわからないー

神代主任は恐らく海外の裏社会組織に売却しようとしていた

この”試薬”の秘密が漏れることを何よりも嫌っているはずだー。


だからこそ、彩香と俊樹のことを、赤岩も使って狙っていたー。


その赤岩が、欲望に目がくらみ、神代主任を裏切り、

奪った試薬で、美穂と身体を入れ替えたとは言え、

神代主任は神代主任で、俊樹と彩香の抹殺を諦めないはずだー。


このままでは

神代主任にも、美穂になった赤岩にも、

彩香と俊樹は命を狙われ続けることになってしまうー。


神代主任は”試薬”の口封じのためー、

美穂になった赤岩は”入れ替わった元自分の身体が死んでも大丈夫かどうかを

確かめるため”


目的は違えど、二人は彩香と俊樹を狙い続けるだろうー。


「ーーーーー」

彩香(俊樹)は深呼吸したー。


もう、小難しく考えるのはやめようー。

この絶望からー

彩香を救い出して、元の生活に戻してあげるためにはー


”神代主任”と”美穂になった赤岩”を、倒しー、

神代主任の試薬を取り上げるー、しかないー。


二人との戦いを、避けて通ることはできないのだー。


”くそっー…”

彩香(俊樹)は舌打ちするー。


自分の身体だったらー

どんなに楽だっただろうかー。

命がけでも、神代主任が今夜、視察に訪れるという

蒼月市内の建設中の工場に向かい、

神代主任に立ち向かうことができるー。


でも、今は彩香の身体ー。

俊樹が命を掛ければ、彩香の身体も

同時に掛けることになってしまうー。


「ーーー君にお願いがあるー」

彩香(俊樹)は、険しい表情で、

俊樹(彩香)のほうを見つめたー。


以前、彩香と俊樹が整理した目的は4つー。


彩香と俊樹の入れ替わった状態を元に戻すことー

彩香のクラスメイトたちの無事を確認することー

赤岩に身体を奪われてしまった美穂を元に戻すことー。

そして、彩香を無事に送り届けることー。


このうちの”2つ”ー

彩香(俊樹)は、そう考えるー


”残り2つ”は、俺がいなくてもー…

とー。


俊樹は、彩香と入れ替わってから

何度か”妙にリアルな夢”のような光景を見たー


最初に見たのは”再び蒼月市を大きな地震が襲う”光景ー。

これは実際に、光景を見たあとに起きたー


そして、二つ目に見たのは

”彩香の同級生と戦う光景”ー

これは、赤岩と入れ替わった美穂のことを示していた光景で、

これも実際に起きたー


だがー

まだ”最後に見た3つ目の光景”が、

実際に起きていないー。


彩香(俊樹)は、その後継のことを思い浮かべながら、

拳を握りしめるー。


「ーーーーーーーーー」

そして、目を見開いた彩香(俊樹)は、

俊樹(彩香)に向かって言葉を続けたー。


「ーー今夜、神代主任が蒼月市内で建設中の工場の視察に訪れるー

 俺は、そこで神代主任と話をつけたいー。」


彩香(俊樹)は、少しだけ身体を震わせながら言ったー。


さっきやっていたニュースによれば、

今夜そこに、神代主任と、俊樹にとって育ての親的存在でもある

宮尾会長が訪れるー。


そこに行きー、神代主任と話をつけるー。


「ーーー俺と君の身体を元に戻して、

 君を無事に親の元に送り届けるためにー」


彩香(俊樹)は、そこまで言うと

申し訳なさそうに言葉を続けようとしたー。


だがー

それを見越していたのか、

俊樹(彩香)は、彩香(俊樹)がその先を言う前に

言葉を続けたー


「ー君の身体を危険に晒すことになるー」

俊樹(彩香)がそう言うと、

彩香(俊樹)は、目をぱちぱちとさせながら

少し驚いた様子で、俊樹(彩香)を見つめるー


「ーーでしょ?

 あなたの言い出すこと、なんとなくわかるようになってきちゃった」

俊樹(彩香)は、そこまで言うと、

彩香(俊樹)が少しだけ苦笑いしながら

「ーー妹にも昔、言われたよ。

 ”お兄ちゃんの考えてること、わかりやすい”ってさー」

と、答えるー


”俺はこの子に妹のことを重ねているのかもしれないなー”

そんな風に思いながら彩香(俊樹)は、

「ーーどんなことがあっても、君のことも、君の身体も守るー

 絶対にー」

と、力強く、俊樹(彩香)を見つめながら頷いたー。


もう、2度と大切なものを失わないようにー。


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5日目 13:00ー


蒼月第3小学校の避難所に避難していた

彩香の同級生の一人、ギャルの理絵が、

迎えに来た親と対面を果たしているー


いつもな気丈な理絵が泣きじゃくっているのを見つめながら

生徒会長の晴美たちは、晴れやかな表情を浮かべていたー。


学校の方針で、親や親族が迎えに来られる生徒に関しては、

同伴の元、蒼月市から先に外に出すことに決まっていたー


修学旅行中だった彩香たち3年生が、全員、蒼月市から無事に出るのには

相応の時間がかかることが予想されたものの

”修学旅行中の被災”という異例の事態に、

地元に残されている修学旅行には同伴していない先生たちも

現地の先生たちも、戸惑っている様子だったー。


「ーーー俺もお先にー」

体格だけは大きい割に、気弱な”ビッグマウス守”も、

父親が迎えに来たことで、帰路につき始めるー。


なんとか、高速道路の1か所が通行可能になったことで、

電車の駅や空港ー、公共交通機関はまだ麻痺していたものの、

親がこうして迎えに来ることができれば、帰ることが

可能になり始めていたー。


「ーーー…それにしても、まだ無事かどうかわからない子も

 いるし、不安だねー」

初日からずっとこの場所に留まっている女子生徒・裕梨が言うと、

彩香の言葉で立ち直った生徒会長の晴美が「そうね…」と、呟くー。


「ーーーわたしと同じグループだった

 木下さんもまだ見つかってないしー」

晴美は不安そうにその名を口にするー。


彩香の親友・木下響子は、この場にも姿を現しておらず、

晴美の知る範囲内では”情報がない”状態だったー


「ー月森さんと、早乙女さんは、今どこにいるかは分からないけど、

 ひとまず無事は確認できてるからー」

彩香と、ツインテールの大人しい女子生徒・美穂の言葉を口にするー。


「ーー月森さんと、早乙女さんも、ずっとここにいた方が

 良かったんじゃないかなー」

裕梨がそう呟くと、

晴美は「でもまぁ…月森さんには、日向さんがついてるからー」と、

俊樹のことを思い出しながら呟くー。


晴美が立ち直れたのは、

俊樹のおかげー。


その中身が”まさか同級生の彩香”だとは夢にも思わず、

晴美は俊樹のことを、恩人のように思って感謝していたー。


「ーーー!」

裕梨が体育館の入口の方に目を向けると、

そこには、ツインテールの美穂が姿を現していたー


「ーあ!早乙女さん!無事でよかったー」

晴美が美穂に近付いていくー


だがー

見た目は華奢なツインテールの女子高生でもー

今の美穂の中にはー

スキンヘッドにサングラスの凶悪な男・赤岩がいるー。


「ーーー……彩香と、兄貴ー…いや、男女の二人組ー

 ここに来なかった?」

美穂(赤岩)がいつもより低い声でそう言うと、

晴美は少し違和感を感じながら

「ー月森さんなら、今、どこにいるかは分からないけどー」

と、返事をするー。


「ーーーっ」

美穂(赤岩)は表情を歪めるー。


図書館で、彩香と俊樹を逃がしてから、二人の足取りを追ったが、

美穂(赤岩)は、なかなか二人を見つけることが出来ず、

美穂のスマホの充電も切れてしまったために、彩香(俊樹)らに

連絡して、呼び寄せることもできず、

この蒼月第3小学校の避難所にやってきていたー。


”早く俺の元々の身体を処分してぇところだが、

 元・自分が死んだらどうなるか、分かんねぇからなー”


美穂(赤岩)は、そのために”俊樹”か”彩香”を殺してー

”もう片方”がどうなるのか、確認したかったー。


せっかく美穂の身体を手に入れたのに、

赤岩になった美穂ー…

つまり、”元・自分の身体”を殺した瞬間にー

「はい、元々の身体が死んだ自分も死にました」なんて

ことになってしまったら笑えないし、取り返しがつかない。


完全にゲームオーバーだー。


「ーーーそっちは?彩香たちの居場所、心当たりない?」

裕梨に対しても、不機嫌そうに言い放つ美穂(赤岩)ー


「ーーー…な、ないけどー…早乙女さん、大丈夫?」

裕梨が不安そうに言うー。


生徒会長の晴美も、不安そうに美穂(赤岩)のほうを見つめるー。


早乙女 美穂は、

普段から大人しい性格の子で、

こんなトゲトゲしい雰囲気の子ではないー。


地震という過酷な状況下で、イライラしているのかもしれないが、

初日や2日目に、この避難所で生活していた美穂の様子も、

そんな感じではなかったー


「ーー大丈夫って?見りゃ分かんだろ」

美穂(赤岩)は乱暴そうにそう言うと、

「ーー早乙女さん…?」と、晴美はさらに不安そうな表情を

浮かべたー。


「ーそうだ スマホ持ってる?」

美穂(赤岩)が言うー。


「ーーーも、持ってるけどー…電池ももうほとんどなくてー」

晴美が戸惑いながら言うと、美穂(赤岩)は「ー貸して」と、

晴美に言い放つー


あまりに強引で、攻撃的な雰囲気に

晴美と裕梨が顔を合わせてから、晴美は

「ねぇ…?なんか変だよ…?どうしたのー?」と、呟くー


「ーーーーー…」

晴美の背後でその様子を見守る裕梨はー

ふと、あることを思い出すー


”ーーーそういえば、月森さんもーー

 あの男の人と一緒にいるときー変な感じだったようなー”


裕梨は、初日に入れ替わった彩香と俊樹に

少し”違和感”を抱いていたことを自分で思い出すー。


まるで、彩香が男のような振る舞いをしているのも見たー


それが、”何を意味しているのか”までは、裕梨には

理解できていなかったが、今、目の前にいる美穂にも

同じ違和感を感じたー


「ーーは・や・く、しろよ!!!出せよ!」

美穂(赤岩)が急に怒鳴り声を出しー、

避難所の一部の人間も驚いて振り返るー


「ーー…さ、早乙女さん?」

裕梨も晴美も大人しい”美穂”のおかしな言動に不安を覚えるー


その時だったー


「美穂!」


背後から男の声がしたー


「ーーーーあ?」

睨むようにして晴美たちを見つめていた美穂(赤岩)が

背後を振り返ると、

そこには、美穂が”お兄”と呼んで懐いている

大好きなお兄ちゃん・秀一の姿があったー


「美穂ー、無事でよかったー」

笑顔を浮かべる秀一。


だが、美穂(赤岩)はそんな兄を見て、

面倒臭そうに舌打ちをするのだったー。



㉑へ続く


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コメント


無事に生還するために転換点となる”5日目”

最後にどのような結末が待ち構えているのか、

ぜひ見届けて下さいネ~!


今日もお読み下さり、ありがとうございました!

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