Home Artists Posts Import Register

Content

教会のシスター・カトリーヌは、

誰にでも優しく、慈愛に満ち溢れた、村人たちから慕われる存在だったー。


とある王国の辺境の村に存在するその協会では、

今日のカトリーヌが、色々な人々の悩みを聞き、

そして、慈悲深い言葉を掛け、多くの人々の心を救っていたー


カトリーヌは元々この教会でシスターとして、

教会の主でもあった父親の手伝いをしていたものの、

その父親が、早くに病死してしまったため、

今はカトリーヌがこの教会を実質上、仕切っていたー。


「ーーーーーーー」

そんなカトリーヌの様子を教会裏の草陰から見つめている

謎の影があったー。


”オーク”


この世界には、魔物が徘徊しているー。


”アクア王国”と呼ばれる、現在数百年以上の平和を謳歌しているこの国ではー

大昔には”皇帝”率いる魔物の軍勢と王国の間で大規模な争いがあったー、と

歴史書には残されていて、

現在、この王国には強大な魔物はいないものの、

未だに、下級の魔物は、少し人里離れた場所に行けば

それほど珍しくはない存在だったー。

特に、カトリーヌが暮らしているような辺境の村の周辺では

そういった魔物は、よく見かけることができるー。


そんな魔物の一体…。

オークがシスター・カトリーヌのほうを見つめながら

「ぐふふふふふふ…」と呟いているー。


魔物の中には、人の言葉を理解するものもいてー

特に、オークは人の言葉を理解する個体も、少なからずいたー。


「ーーーーふ~~~」

毎日開いている”カトリーヌの人生相談”を終えると、

カトリーヌは教会の中へと戻っていくー


教会の中で、カトリーヌが、教会内の掃除をしたりしていた

その時だったー


「ーーー!」


「ーーー!」


教会の入口から入ってきたオークと、

カトリーヌの目が合うー。


どう見ても華奢で清楚な感じのカトリーヌは

戦える雰囲気ではないー。


「ーーあ、あなたはー…?」

怯えた様子のカトリーヌを見て、

オークは優越感を感じるー。


基本的に、現在のアクア王国では、人間中心の世界となっており、

オークら魔物は、山奥や荒野、渓谷など、あまり人間が

訪れないような場所での暮らしを余技なくされているー。


「ーーぐふふふふふー」


だからこそー、

このオークにとって”いつも生意気な人間共”が

怯えている姿は、至福の瞬間と言えたー。


「ーー人間の、女ーーー!」

汚らしい笑みを浮かべながら、オークが言葉を口にするー


「ーーあ…あなたは…人間の言葉が分かるのですね…?」

カトリーヌが戸惑いの表情を浮かべるー。


オークのほとんどは、人間の言葉を理解できないが、

稀にこの個体のように、人間の言葉を理解しているオークもいるー。


「ーぐへへへへへ…怯えろー…人間!」

オークはそう言いながら、カトリーヌの方に近付いていくー。


するとー

突然、カトリーヌがポン!と手を叩いて

満面の笑みを浮かべたー


「ーオークさん!ちょうど良いところに来てくれました!」

とー。


「ーーーーへ?」

オークは、カトリーヌの反応に拍子抜けして、

唖然としながらカトリーヌのほうを見ていると、

カトリーヌは、ゆっくりと歩きながらオークのすぐ側まで

やってきて、教会の椅子に座ったー。


「ーーー…お…お…俺が…怖くないのかー?」

カトリーヌの反応に、戸惑いを見せるオーク。


「ーはいー。

 だって、言葉が通じるなら、お互いに言葉を交わすことが

 できますからー」


満面の笑みのカトリーヌ。


”この人間ー…

 俺に襲われないとでも思っているのかー?”


まるで無警戒なカトリーヌのほうを見ながら

オークは考えるー。


言葉を理解できるオークでも、基本的に

オークは、難しいことを考えるのが苦手な個体が多かったー。


「ーーー俺はーーー人間と言葉を交わす気などー」

オークがそう言いかけるとー

カトリーヌは「ひとつ、お願いがあるのですー」と、

イスから立ち上がって、目を輝かせながら

両手でお願いポーズを作っているー。


「ーーーお…お…お願いー…俺にー?」

オークは思わず戸惑ってしまうー。


「ーーはいー。

 実は、わたしー

 明日、ここから少し離れたレイン村に、

 王宮騎士団長様の一人がいらっしゃるそうなのですけどー…

 どうしても、その方にお会いしたくてー…

 ここを留守にしたいんですー」


カトリーヌの言葉に、

オークは「王宮騎士団長ー…?そんな人間に、何故会いたいのだ?」と、

唖然とした表情を浮かべながら言うー。


すると、カトリーヌは顔を赤らめながらもじもじとしてー

「ーーわたし、その…ローゼン様のファンで…」と、

恥ずかしそうに呟いたー


「ーーーーー」

オークは、ぽかんと口を開きながら、カトリーヌのほうを見つめるー。


「でも、この教会にはー

 日頃の悩みを抱えた皆様が、明日もきっといらっしゃいますー。」


カトリーヌはそれだけ言うと、

「ですのでー…あなたに”留守番”をお願いできればー…と、

 そう思ったのですー」と、切なそうな表情を浮かべながら言い放ったー


「ーーる…る…る…留守番?」

オークは、自分を指さしながら、目をぱちぱちさせるー。


本当は、人間の女を襲って、己の欲望をたっぷりと

満たそうと考えていたオークだったが、

すっかりそんな気分ではなくなってしまい、

完全にカトリーヌのペースに飲み込まれていたー。


天然なのかー

それとも、計算されているのかー


「ーーはい。留守番ですー。

 わたしの代わりに、どうか、2日間だけ、シスターをやっていただけませんか?

 明日出発して、2泊してその次の朝には帰ってきますのでー」


カトリーヌの言葉に、オークは

「い…いや、いやいやいやいやいやいや 俺には…無理だ!」と、

声を振り絞るー。


「ー俺がシスターなんて…人間が、認めるはずがないー」

オークが自分を指さしながら、そう言い放つと、

カトリーヌはにっこりとほほ笑んで「そうですね」と、即答するー。


あっさりと”シスターとは認められない”と、言われてしまった

オークは、少ししょんぼりしていると、

カトリーヌが「でも、大丈夫ですー」と、言うと

「わたしと同じ格好をすれば、いいのですからー」と

微笑みながら言い放つー


「ーーーあ?」

ますます意味が分からないー。

シスターの衣装を着た女装オークが教会にいたら、

それこそ、教会にやってきた人間たちにボコボコにされるのは

目に見えているし、

最悪の場合”カトリーヌはどこだ!?お前が食ったのか!?”

みたいな展開になって殺される可能性があるー。


「ーー俺…女装の趣味…ない!」

オークはそう言い放つー。


カトリーヌは「ーふふふっ」と笑うー。


「ーオークさんってば、まさかその姿のまま

 シスターの格好をしようと思ってたんですかー?」


笑いながら教会の奥のスペースに向かうカトリーヌの

背中に向かって

「じゃあ…どうするのだ!?」と、問いかけるオーク。


奥の部屋から何かを持ってきたカトリーヌ。


カトリーヌの手には十字架のようなものが

握られているー。


一瞬、オークは”退魔の力”でも使うのかと思い、

身構えたがー、

そうではなかったー


突然、光が放たれて、

「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」と、声をあげたオークは、

やがてーー

自分が、目の前にいるカトリーヌの姿になっていることに

気付くー


「あ…あ…あ…あれ…?俺ー?」

声もカトリーヌと同じ声になっているー。


戸惑いながら、自分の手を見つめていると、

やがて、本物のカトリーヌが近づいてきてー

突然、カトリーヌになったオークの胸を触ってきたー


「ーーふぁっ!?」

カトリーヌになったオークが、変な声を出すと、

「ーー完璧にわたしになってますねー!」と、

カトリーヌは嬉しそうに手をポンと叩いたー。


「今、使ったのは

 代々伝わる”変身の力”が込められた聖なる十字架ですー」


カトリーヌが言うと、オークは「へ…へ…変身の力ー?」と

カトリーヌの姿のまま呟くー。


”なるほどー…

 俺が…人間の姿に…この女の姿になったのは、その力によるものかー”


カトリーヌは、それ以上詳しい説明をしてくれなかったが、

「ーこれで、わたしの代わりに留守番できますね!」と、

嬉しそうに微笑んでいたー。


カトリーヌになったオークは

”って…この女…なんで俺の胸、触ったんだー?”と、首を傾げながらー

本物のカトリーヌのほうを見つめていると

「ーでは!早速!明日からわたしのフリをする練習を

 していきますよ~!」と、オークが留守番することは

もはや決定事項になっているかのように、言い放ったー。


”俺…やるとは一言も言ってないー”

そうは思ったものの、もう、やることになっている感じだったため、

オークは諦めて、カトリーヌの姿で留守番することを決意したー。


カトリーヌから、教会の作法や、

村人たちの紹介ー、相談の受け方など、色々なことを聞かされるー


「ーお…お前ー…俺が、お前の姿で変なことする可能性とか、

 考えないのかー?」

カトリーヌの姿でオークが言うと、

カトリーヌは「はい!少なくとも人間を襲ったりはしないと思いますし」と

にっこりと微笑むー。


確かに、自分で言うのもなのだが、真面目な性格ではあるー。

しかし、このオークは

カトリーヌを襲おうと、元々この教会に入ってきたのであるー。


「ーー夜にー、一人で…この身体で…ぐふふー」

カトリーヌの姿で、ニヤリと笑みを浮かべるオーク。


「別にそれは構いませんよー。

 夜になったら、教会には誰も来ませんし、ご自由にー」

カトリーヌがあっさりと”カトリーヌの姿で好き放題していい”と、

認めるような発言を口にするー。


「ーーお…??????俺が、やろうとしてること、分かってるのかー?」

思わず聞いてしまうカトリーヌに変身したオーク。


カトリーヌは「はいー」と、答えると

「だって、”わたしの姿”してるだけで、わたしの身体じゃありませんからー

 わたしは何も減りませんしー」と、微笑みながら答えたー。


「ーーーーー…!」

オークは、なんとなく”天然すぎるような感じ”で怖いー、と

カトリーヌのことを思いながらも、

その日は、カトリーヌからの”レッスン”を夜遅くまで

受けることになってしまったー。


・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


「ーーおはよう…ございますぅ」

カトリーヌが、眠そうな目で起きてくるー


昨日は、深夜遅くまで、オークに”カトリーヌとして振る舞えるように”

本物のカトリーヌがレッスンしてくれていたため、

睡眠時間は2時間ちょっとしか確保できなかったー


それで、眠そうなのだー


「ーーじゃあわたし、早速レイン村に向かいますのでー

 今日から2日間ー

 よろしくお願いしますー。

 明後日の朝には戻りますのでー」


カトリーヌはそう言うと、私服に着替えて

そのまま出かけて行こうとするー。


「ま、待ってくれー!お、俺、人の相談なんてー」

”自信がない”

そう言おうとしたカトリーヌの姿をしたオーク。


けれどー

カトリーヌはにっこりと笑って微笑んだー


「ー大丈夫ですー。わたしもいつも、案外適当ですからー」


「ー適当なのかよ!」


オークはカトリーヌの姿でそう叫ぶと、

本物のカトリーヌは「頑張ってくださいね~!」と言いながら

そのまま出かけてしまったー。


「マジかーーー」

一人残されてしまった、どこからどう見ても、

シスター・カトリーヌの姿にしか見えないオークは、

”カトリーヌとして2日間留守番する”ことに

なってしまったのだったー


②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


ファンタジー世界が舞台の変身モノデス~!

この系統のお話ではいつも、女王とか騎士が絡むことが

私の作品では多いですが、

今回は辺境の村の一般(?)シスターと、オークの物語ですネ~!


続きはまた次回を楽しみにしていてください~!


今日もお読み下さりありがとうございました~!

Files

Comments

無名

コメントありがとうございます~! それはまだ秘密デス~笑