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終身刑が確定した凶悪犯・霧島 博己ー。


彼と面会した弁護士の誠也は、その場で

「必ずお前を殺してやるー」と、博己から宣言されてしまうー。


しかし、相手は無期懲役ー。

所詮は、戯言ー。

二度と外に出て来れないであろう霧島博己の言葉など、

誠也は真に受けていなかったし、真剣に考えていなかったー。


だがー、霧島博己はやってきたー。

憑依能力を使い、誠也の周囲の通行人の身体を次々と乗っ取り、

他人の身体で誠也の命を狙ったのだー…


☆前回はこちら★↓

<憑依>無期懲役の凶悪犯①~狙われた弁護士~

「ーーー」 弁護士・藤本 誠也(ふじもと せいや)は、 表情を歪めたー。 ”無期懲役” その刑が確定したにも関わらず、 その男は、余裕の表情で、全く反省の色を見せていないー。 「ーーークククー…テメェも俺のこと見て、優越感に浸ってんだろ?」 無期懲役が確定した男が、アクリル窓越しにそう言い放つー。 「ーーー...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーーー」

疲れ果てた様子で家に向かって歩く誠也ー。


普段、滅多に疲れ果てた様子など見せない誠也が、

明らかに疲れているのには、理由があったー。


”バイクに乗った女子高生”に突然襲われてー

”子連れの母親”に突然首を絞められて、

2度、殺されかけたからだー。


しかも、母親は”記憶がない”の一点張りのようだし、

バイクの女子高生の方に至っては、事故死したために

事情を聴くこともできないー


「いったい、何が起きてるんだー」

誠也は、自分の命を狙うような人間を思い出してみるー。


だがー、仕事柄、自分の命を”もしかしたら”狙ってくるかも

しれない、というレベルの人間はたくさん存在するー


”必ず、殺してやるー”

ふと、無期懲役の凶悪犯・霧島博己の顔が浮かんでくるー。


とは言えー

霧島が外に出て来れるわけはないし、

”一匹狼”的な霧島に、女子高生や子連れの母親まで

動かすほどの影響力はないだろうー。


「ーーだったら、いったいー」


そう呟いたその時だったー

背中に強い衝撃と痛みを感じたー


「ーー!?」

振り返ると、そこには邪悪な笑みを浮かべた

ツインテールのメイドがいたー。


「ーーーな…」

誠也は、自分の背中から血が出ていることに気付くー


メイドが「あはははははははははっ♡」と、

可愛らしい容姿に不釣り合いな笑い声をあげて、

誠也を蹴り飛ばすー。


誠也の上に馬乗りになったメイドは

ニヤニヤしながら、血のついたハサミを誠也に向けたー


「ーー地獄に行ってらっしゃいませーごしゅじんさま♡」

メイドは低い声でそう呟いて、

誠也の首筋にハサミを突き立てようとするー。


「ーーくっ…死ねるかぁ!」

誠也はそう叫ぶと、メイドを足で突き飛ばし、

痛みをこらえながら立ち上がるー。


背中の傷は決して浅くはなさそうだが、

メイドの持っているものはハサミー。

致命的な傷ではなさそうだと判断する誠也ー。


メイドは「殺す…殺す…殺す…殺す」と、呟きながら

誠也に襲い掛かってくるー。


ハサミを交わし、メイドの腕を抑えー

メイドを投げ飛ばすー。


投げ飛ばされて、スカートがめくれても、

全く気にする素振りを見せずに、襲い掛かってくるメイドー


誠也は、必死に抵抗を続けるとー

メイドが息を上げ始めたー。


華奢な少女に見えるー。

そんなに体力があるようには見えないー


先ほどから、髪も、メイド服も振り乱しながら

激しい動きをしている彼女の体力は、

もう限界なのだろうー。


「ーーチッー」

メイドは荒い息をしながら座り込むとー

「ーー”使えない身体だぜ”」と、呟いてからー

突然、「ぁ…」と、呻いてから、その場に崩れ落ちるようにして倒れたー


「ーーお…おい!」

誠也が警戒しながらメイドに近付くー。


しかしー

そのメイドは白目を剥いて、泡のようなものを口から噴き出していたー。


誠也はすぐに救急車を呼ぶー。


メイドに背後からハサミで刺された”自分”の傷もそうだし、

このメイドも放っておくわけにはいかないー


「ーーき…救急車お願いしますー」

電話口の相手にそう伝える誠也の声は、

自分でも驚くほどに動揺していたー。


”自分はいつも冷静で、どんな状況にも適切に対処できる”

そんな風に思っていた誠也ー。

だがー

そうではなかった、と、嫌でも思い知らされることに

なってしまったー。


手が震えているー。

周囲で少し物音がするだけでドキッとしてしまうー。


当たり前だ。

わずかな時間で女子高生・子連れの母親・メイドの3人に

命を狙われたのだー。

”4人目”が来ないとも限らないー。


だが、それは杞憂だったのか、

誰にも襲われるようなことはなく、

救急車は数分で到着したー。


病院に運び込まれた誠也は、手当を受けるー。


「ーー傷はそれほど深くないと、先生も言ってましたよー。

 明日の朝には、退院できますからー、

 今晩は、安静にしていてくださいねー」


若い女性看護師が、微笑みながらそう呟くー。

ちょっと、ギャルっぽい風貌な気がするが、

話し方はとても、穏やかな感じで、悪い印象はしなかったー。


”ちょっとトラブルがあって、病院に運ばれたからー”

そう、妻にメッセージを送るー。

妻はとても心配していたが、誠也は”大丈夫だから”と、

妻をとにかく安心させようと、メッセージを送ったー。


妻の一美(かずみ)は、元々、誠也の弁護士事務所で働いていた

女性のスタッフで、ちょうど10歳ほど、年齢が離れているー。


誠也は既に30代半ばだが、

一美はまだ20代半ばー。

あまり、心配をかけすぎるわけにはいかないー。


「ーーさて…とー」

誠也は、ようやく自分の気持ちが落ち着いてきたことを感じ、

急激に睡魔に襲われて、そのまま眠りについたー。


バイクの女子高生に襲われてから、ずっと

”ギリギリの緊張感”の中、行動していたー。

そのため、誠也は自分の想像以上に、疲れていたのだー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーー殺す!テメェは絶対殺すー!

 クククー

 覚悟しておけ…!

 絶対にー…

 テメェを血祭りにあげてやる!」


暗闇の中ー

無期懲役になったはずの凶悪犯、霧島博己が狂気的な

笑みを浮かべながら近づいてくるー。


「ーーお前に、俺は殺せないー」

誠也は、そう叫ぶー。

面会室で会った時と同じようにー。


「ーーーお前は二度と”この壁”を超えることはできないー」

二人の立っている位置には、二人を隔てる

”透明な壁”が存在しているー。


それを示す誠也ー。


だがー

博己は笑ったー


「ー本当にそうかなー?

 必ず、その涼しい顔を血で濡らしてやるからー…

 覚悟しておけーーー…」


その言葉に、誠也はゾクッと、悪寒を感じるー。


”恐怖ー…俺が?”

誠也がそんな風に思っていると、

コツ、コツ、コツ…と、不気味な足音のような音が

聞こえてきたー。


「ーーなんだ、この音はー?」

誠也が、凶悪犯・博己との間を隔てる壁を見つめながら

周囲をキョロキョロと見回すー。


「コツ、コツ、コツ、コツー」

博己が笑うー。


「ーーー…くそっ!何なんだ…!何なんだ!」

誠也が動揺した様子で叫ぶー


その、次の瞬間ーーー!


誠也は、目を開いたー


”夢”を見ていたー。


いやー、

”途中からは”現実の音も聞こえていたー


夢の中に響いていた”コツ コツ”と、いう音はー

誠也が寝ている病室に迫るー

女性看護師の足音だったのだー


「ーーー!何をする!」

咄嗟に飛び起きた誠也が、女性看護師の腕を掴むー。


さっきの、ギャル風の女性看護師だー。

その看護師が、さっきとはまるで違う鬼のような形相で

誠也を睨むー。


「ーお注射の…時間ですよぉぉぉぉぉぉぉ」

目を見開いて、誠也に謎の注射器を打ち込もうとする女性看護師ー


誠也は「くそっ!」と、必死にその手を抑えながら、

病室のコールボタンを押すー。


「ーーーーー死が、迎えに来たぞぉぉぉぉぉ」

女性看護師の顔と声ー

だがー

一瞬そこに、凶悪犯の霧島博己の顔と声が、ダブったー…

そんな、気がしたー。


「ーーー何をしている!」

すぐに警備員が駆け付け、ギャル風の女性看護師が取り押さえられるー


「はははははははっ…!

 逃げられると思うなよー…!

 お前は、どこにいてもー…

 どんな状況でもー

 命を、狙われるんだぁ…!」

唾を大量に飛ばしながら、大声で叫ぶ女性看護師ー


女性看護師は、そのまま引きずるようにして

警備員たちに連れ出されて、誠也は、深くため息をついたー。


「ーーーどうなってる…?」

誠也は、冷静にそう考えてから、立ち上がったー。


傷は、そんなに深くないと言っていたー。

病院で治療も受けて、ひとまずはもう大丈夫だー。


立ち上がった誠也は、早朝5時という時間を確認してから、

そのまま病院の外に向かうー。


受付の人に「少し早いですが、急用ができましてー」と、

無理を言って退院の手続きを済ませると、

そのまま病院側のタクシーを拾って、事務所に向かおうとしたー。


”確認したいことがあるー”


誠也は、一昨日の”チンピラ”から始まり、

”女子高生”、”子連れの母親”、”メイド”、

そしてついに、”女性看護師”にまで命を狙われたー。


チンピラはともかく、残りの4人は

誠也とは全く関係なさそうに見えるし、

”そういうことをするタイプの人間”にも思えないー。


まるでー

”何かに乗り移られているかのようにー”

豹変して誠也を襲うー。


タクシーから景色を見つめながら、

誠也は”ある可能性”を考えるー


無期懲役となった霧島博己の関与ー

いや、そんなはずはないー。

そう、思いつつもー


”お客さんー”


考え事に集中していると、ふとタクシーの運転手の声がしたー。


よくいる感じの気のいいおじさんだー。


「ーーー…あ、はいー」

誠也は、考え事に没頭するあまり、運転手の言葉を

無視してしまったか…?と、思いつつ、返事をすると、

運転手が呟いたー


「ーお客さんー

 すみませんが、さっき仰ってた事務所には

 ちょっといけないんですよー」


運転手の言葉に、誠也は「え?」と首をかしげるー


タクシーの運転手が、突然にやりと笑みを浮かべたのに気付くー


「ーーー!!」


「このタクシーの行先は、地獄ですー」

運転手は、満面の笑みで、そう呟いたー


それと同時に、タクシーは突然ハンドルを切って、脇道のガードレールを

突き破りーそのまま、走っていた道路の横にあった川めがけて

転落したー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーーーククククククーー」


”霧島博己”は、笑みを浮かべたー。

自分の身体は”昏睡状態”に陥っているが、

そんなことは関係ないー。


「ーー憑依薬の力ー

 これさえあれば、終身刑だろうと、何だろうと怖くねぇー


 この世界に存在する”全ての身体”を

 いつでも自由に、俺のものにできるー」


笑みを浮かべる霧島博己は、

眼前に広がる、川に転落したタクシーを見つめるー。


「ーーな、なにこれー…?」

近所の住人たちが、早朝に起きた事故に驚きの表情を浮かべるー。


「ーーーさて…とー」

OLに憑依した博己は、事故現場を見つめるー。


だがー


「ーーーー!」

誠也は、運転手が邪悪な笑みを浮かべたのを見て、

咄嗟にタクシーの外に飛び出したためー

無事だったー


ボロボロの誠也が、川辺でよろよろと立ち上がり、

歩き出すー。


舌打ちするOLー


「ーー無駄だー…

 お前は、どこに行こうがー

 この”俺”に、命を狙われるー」


OLは舌をペロリと舐めると

「ー殺してやるー」と、

誠也の後をつけるようにして歩き始めるー。


「ーーーくそっ…」

それに気づかないまま、誠也はなんとか事務所に到着すると、

事務所で”あること”を確認したー


”霧島博己”に異変はないかどうかー。


事務所から、刑務所の関係者に確認を取るとー

誠也は表情を歪めたー


”霧島博己は数日前から意識不明の状態ですー

 原因は不明ですが、まるで急に”魂”が抜けたかのように

 意識を失いましてー”


その言葉に、誠也は冷や汗をかくー。


そんなこと、あるはずがないー

だがー

誠也の命を”全く関係なさそうな人間”が、次々と狙ってくるー


これはーーー


「ーー霧島博己がーー

 人々に…取り憑いているー…?」


そんなこと、あるはずがないー

そう、思いながらもー

誠也は、そんな現実離れしたことを考えざるを得ないほどに

追い詰められていたー


「ーーーーーーー!!!!」

誠也は表情を歪めるー


火災報知機の音がするー。

事務所のスタッフが「火事です!」と叫ぶー


「ーーーーくそっ!」

誠也は慌てて、仕事上、重要な書類をかき集めると、

他のスタッフにも避難を促して、慌てて外へと駆け出したー



「くくく…テメェは絶対に殺すー」

火が出始めた事務所を見つめながら、邪悪な笑みを浮かべたOLは、

「うっ…」と呟いて、その場に倒れ込むー。


OLから抜け出した霧島博己はー

弁護士事務所から飛び出してきた誠也を見つめながら

”そろそろ本気で仕留めるかー”と、笑みを浮かべたー。


③へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


次回が最終回デス~!

執拗な憑依で命を狙ってくる無期懲役の犯罪者…

反撃することはできるのでしょうか~?


今日もお読みくださりありがとうございました!

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