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2か月ほど前にビルから転落して、命を落としたと思われていた

凶悪犯・五十嵐栄吾が再び動き始めたー。


犠牲者に数字を刻む五十嵐の犯行に翻弄される謙介ー。


しかし、そんな中、謙介は”9人目の犠牲者”の遺体発見現場付近で、

昨日”女の声が聞こえた”という証言を入手するー


”女ー”

謙介は、やはり五十嵐栄吾は既に死んでいて、

”模倣犯による仕業”だと、考え始めるー。


だがー謙介は知らないー。

五十嵐栄吾は、すぐ近くにいるー。

謙介自身の娘ー…菜々香の中にー。


☆前回はこちら★↓

<皮>俺はここにいる③~犯罪に手を染める娘~

2か月前ー ビルから転落した犯人・五十嵐は生きていたー。 まるでゲーム感覚で人の命を奪い、遺体に”何人目の犠牲者か”を刻む 狂気の男ー。 彼は、自分を追い詰めた刑事・謙介に復讐するべく、 謙介の娘である菜々香を皮にして、乗っ取ってしまうー。 菜々香となった五十嵐は、菜々香の身体で殺人を続行ー。 5、6,7...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーーー俺はここにいるぞーーー」

黒い手袋をはめた女が、血のついたナイフをペロリと舐めるー。


サングラスをかけて、ラバースーツ姿で夜の街を歩く女はー

謙介の娘・菜々香ー。


菜々香はついさっき”10人目”の命を奪ったー。


いや、この”身体”の手で殺したのは”6人目”かー。


「ーーー」

菜々香は、サングラス越しに監視カメラの位置を確認するとー

”わざと”、さりげなくそのカメラに映ったー


菜々香は笑みを浮かべるー。


「ーまさか俺の”模倣犯”が、自分の娘だなんて、

 夢にも思ってないだろー?


 俺はさー…

 早く、”お父さん”に気付いてほしいんだよー…」


ゾクゾクしながら菜々香は呟くー。


菜々香本人が、こんなことで興奮するはずはないのだがー、

今の菜々香は五十嵐に着られて、完全に支配されているー。


”警察官の娘の手を血で汚しているー”

そう考えただけで、たまらなく興奮するー。


サングラスの下の瞳に狂気を浮かべながら、

「早く…”わたしの殺人”に気付かないとー

 わたしの手、血まみれになっちゃうよー?

 ふっ…ふふふふふふふふ♡」

と、嬉しそうに呟いた菜々香は、黒い手袋をはめた手で

サングラスをいじりながら、そのまま夜の闇へと消えたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


「模倣犯らしき女が、カメラに映ってました!」


”10”と刻まれた遺体が発見された現場に駆け付けた謙介ー。

そこで、近くのお店の前に設置されていた監視カメラに

”五十嵐栄吾の模倣犯と思われる女”が映っていたのだというー。


謙介は当初、”2か月前にビルから転落した五十嵐栄吾が生きていて”

再び殺人を犯し始めたのだと、そう考えていたー。

もちろん、当初から”模倣犯”の可能性も想定していたが、

”やり方”があまりにも五十嵐に酷似していたからだー。


しかしー

”9人目”の犠牲者が生まれた際に

”女の争う声”が聞こえたという証言があったことから

”模倣犯による犯行”の可能性の方が高いと判断し、捜査を続けていたー。


そして、今日ー

10人目の犠牲者の遺体が発見された現場付近の監視カメラに

”怪しい女”が映っていたのだー。


「この女ですー」

部下の刑事が、映像を指さすー。


「ーーーーー」

謙介は、その女を見つめるー

サングラスに黒い手袋、全身黒のラバースーツ…。


「ーーーーーーどう見ても、五十嵐栄吾ではないなー」

謙介がそう呟くー。


五十嵐栄吾は男だー

仮に女装しても、こんな見た目にはならないだろうー。


「ーーーやっぱり、模倣犯ということでしょうかー」

部下の刑事が言うと、

「ーあぁ…だが、模倣ー…というより、五十嵐の関係者かもしれない」

と、謙介は言うー。


五十嵐栄吾に、姉か妹ー、あるいは妻、彼女ー…

そういった女性がいれば、五十嵐を追い詰めた末に、

結果的にビルから転落させた警察を憎み、

”五十嵐栄吾の犯行”を継続しても、おかしくはないー。


「ーーー五十嵐栄吾の人間関係をもう一度調べ尽くすんだー」

謙介の言葉に、部下の刑事は「はい!」と、すぐにその調査へと向かうー


謙介は、今一度昨夜の監視カメラの映像に目を向けるー。


そこにはー

サングラスにラバースーツの女が映っているー。


明らかに、不審な動きをしているー。

遺体の状況からも、事件に関与している可能性は高いー。


「ーーーー」

謙介は、ふと”どこかで見たことがあるような気がするー”と、

その監視カメラの映像を凝視するー。


だがー当然、娘の菜々香が”殺人”を犯しているとは

夢にも思っていない謙介は、

監視カメラの映像の女が、自分の娘ー、という考えは

全く浮かんでこなかったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーねぇ」


謙介が帰宅すると、

妻の琴子が心配そうに声を掛けてきたー。


「ーーーどうした?」

謙介が応じると、琴子が

「ーー最近、菜々香が夜に出かけることが多くてー」

と、不安そうに呟くー。


”五十嵐の模倣犯”による殺人事件が連続しているのは

隣町だー。

隣町では、学校の休校や、市民に対する不要不急の外出を

控えるように呼びかけが行われているものの、

この街では、警戒が呼びかけられるだけにとどまっているー。


とは言え、いつ、五十嵐栄吾の模倣犯がこの街に

やってくるかもわからないー


「ーーバイトが忙しいみたいだからなー」

謙介が少し笑いながら言うー。


先日も、謙介が帰宅したあとに出かけようとしていた

菜々香と鉢合わせして、菜々香が”バイト”だと言っていたー。


「ーーーうんー」

だが、琴子は不安そうだったー。


「ーーそれがー…昨日は、夜に部屋から抜け出していたみたいでー」

その言葉に、謙介は「どういうことだー?」と首をかしげるー。


琴子が言うには、夜にこっそり部屋から抜け出して

菜々香が外出していたのだと言うー。


「ーーーーーー…わかったー

 聞いてみるよー」


謙介はそう言うと、菜々香の部屋に向かい、

部屋をノックしたー


「いいよ~」

菜々香の声がして、謙介が中に入ると、

菜々香は「どうしたの~?」と笑みを浮かべるー。


「ーー菜々香、最近夜に出歩いているみたいだけどー…

 母さん、心配してるみたいだからさー」


謙介がそう言うと、菜々香は「あ、うんー」と、笑みを浮かべながら

「バイト先で人が一人急にやめちゃってー…それで、夜のシフトに

 入ってるんだけどー」と、すぐに答えたー。


「ーお母さんにも、バイトって言ってるけどー…?」

菜々香がそう言いながら首をかしげるー。


「ーーあぁ…いやー…

 それはそうなんだけどなー。

 昨日ー…部屋からこっそり抜け出してたって母さんがー」


謙介が言うー。


菜々香が少し驚いたような様子を浮かべながら、

すぐに笑みを浮かべたー。


「ーーーバイト」

とー。


「ーーどうして、2階の部屋からこっそり抜け出したりしたんだー?」

謙介は、少しだけ疑いの目を菜々香に向けるー。


だが、この”疑いの目”は、

菜々香が”殺人事件に関与している”と思っている疑いの目ではないー。


”娘が何か夜に悪い男と付き合ってるんじゃないか”とか、

そういう”疑いの目”であって、

謙介はまだ、菜々香が五十嵐栄吾に乗っ取られていて、殺人を犯しているー

などとは、夢にも思っていないー。


「ーだってー…

 最近、隣の町で事件起きてて、物騒だし、お母さんも心配してるでしょー?

 だから…あんまり心配かけたくないなぁってー」


菜々香の言葉に、謙介は少しだけ笑うとー

「ー菜々香は優しいからなー。」と呟いてから、

「でも、急に部屋を抜け出して出かけたりしたら、

 母さん、逆に菜々香のこと心配しちゃうからー」と、優しく菜々香に伝えるー


「ーーそっかー。そうだねー。うんー。わかった」

菜々香はそれだけ言うと、「ー今度から気を付けるね」と

素直に謙介の話を受け止めたー。


「ーーはは…分かってくれればいいんだー。

 別に菜々香を責めてるわけじゃないー」


謙介がそう言いながら、何気なく、開いたままのポーチの方に

視線を送るとー


そこにー

”サングラス”が入っているのが見えたー。


「ーーーーー!」

謙介が表情を一瞬曇らせるー


”防犯カメラに映っていたサングラスの女ー”


「ーーー…」

だがー

すぐに、何事もなかったかのように、謙介は

「あまり、無理するなよ」と、微笑みかけると、

そのまま部屋の外に出たー


「ーーーー」

菜々香がニヤリと笑みを浮かべるー


「ーーほらほら…娘が怪しくなってきたぞぉ…」

菜々香はペロリと唇を舐めるとー

後頭部のあたりを触りながら、

”菜々香”をひと思いに、真っ二つにして、

”菜々香を脱いだ”


中から出てきた五十嵐が笑みを浮かべながらー

「ーお・れ・は・こ・こ・に・い・る・ぞ」

と、馬鹿にするかのように、静かに呟いたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーそうですかーーわかりましたー」

謙介は、表情を曇らせていたー。


菜々香の部屋にサングラスー…

それを見るまで、全く菜々香のことを疑いもしていなかったが、

菜々香の部屋にサングラスがあったのが見えたことで、

”恐ろしい推理”が頭の中に浮かんでしまったー。


そんなはずはないー

絶対にないー


何度も、そう思いながらもー


””菜々香が事件に関係しているのではないかー”と思い始めたのだー。


琴子に確認すると、

”不明”の日も何日かあったが、

ここ最近ー

五十嵐の模倣犯による事件が発生し始めた日から

連日、菜々香は夜に外出しているー。


そしてー

今ー

菜々香のバイト先に連絡したところー

菜々香は”先週からバイトに来ていない”というのだー。


「ーーーーー…」

謙介は頭を抱えるー。


いやー

そんなはずはー


そう思いながらも、

謙介は、菜々香に気付かれないように、

菜々香が外出しないかどうか、気を配っているとー


「ーーーーー!!」

部屋のカーテンの隙間からー

菜々香が2階から飛び降りて、鋭い目つきで周囲を見渡しながら

夜の闇に姿を消していく姿が見えたー


「ーーーー…」

謙介は”そんなこと…あるわけがないー”と、思いながらも、

「ーーちょっと出かけてくるー」と、妻の琴子に告げて

そのまま菜々香の後を追ったー


「ーーー」

菜々香が途中の道で、サングラスをかけるー。


「ーーー…」

謙介の不安はさらに膨れ上がっていくー。


そしてー

菜々香は、今は使われていない廃工場に勝手に入っていくとー

服装を着替えて、その中から出てきたー。


ラバースーツに黒い手袋ー

そして、サングラスー


「ーーーー!!!!」

今朝見た”防犯カメラの女”とうり二つの姿ー。


”菜々香と同じぐらいの年頃”だと、思ったことを思い出すー


”まさか、菜々香がー”


そんなこと、あるはずがー

と、何度も何度も自分の中で叫びながら、

そのまま菜々香の後を追うー。


しかしー

その嫌な予感はー

次第に”現実のもの”となっていくー。


夜の河川敷で、菜々香は、一人のホームレスを見つけるとー

笑みを浮かべてからー

”スローイングナイフ”を手にしたのだー


ペロリと唇を舐めてから、

それをホームレスめがけて投げつけようとするー。


「ーーやめろ!!!!!!!!!!」

謙介は思わず叫んだー


菜々香とホームレスが振り返るー。


「ーーーー…ーーーあれ」

菜々香は笑みを浮かべるー


「ーーーな…な…菜々香…なのかー?」


謙介は祈ったー。

”今、目の前にいる女”が、

娘の菜々香ではないことをー。


菜々香を尾行していたつもりだったが、

途中で菜々香を見失って、

今、尾行していたのは、菜々香に似ているサングラスをかけた別の女で

あってほしいー、

とー。


だがーーー…

サングラスを外した女の顔はー

紛れもなく、娘の菜々香の顔だったー


「ーー……何を…しているんだー」

謙介が、戸惑いを隠せない、という様子で、

やっとの思いで声を振り絞ると、菜々香はクスクスと笑ってから答えたー。


「ーーー何してると思うー?お父さんー」

菜々香の声は、いつもより、興奮している様子だったー


「ーーー…答えるんだー…菜々香ー」

冷静を何とか装いながら、そう言い放つ謙介ー。


するとー

菜々香は笑みを浮かべてからー

突然、スローイングナイフをホームレスめがけて投げつけたー


「ぐぁ…!」

うめき声を上げてその場に倒れるホームレスー


油断していたー

菜々香がいきなりそんなことするとは思わなかったー。


謙介は「菜々香!!!!」と、大声で叫ぶとー

菜々香は「殺人してるの♡」と、笑いながら答えたー。


「ーこのおっさんは11人目の獲物ー

 あ、ううんー最初の4人は”五十嵐さん”がやったやつだからー、

 わたしは”7人目”だねー」


菜々香が面白そうに笑うー。

あえて、菜々香を乗っ取っている自分自身を”五十嵐さん”と呼びながらー


「ーーーな…な…何をしてるか、わかってるのか!菜々香!」

謙介は激しく動揺しながら叫ぶー


自分の娘が、”五十嵐栄吾の模倣犯”だったなんてー

信じられない、と思いながらー


「わたしね、五十嵐栄吾って人のやってたことを真似して

 人殺ししてるのー


 どう、すごいでしょー?」


菜々香の中にいる五十嵐はそう言いながら、

笑みを浮かべたー。


”正体は明かさないー

 あえて、”崎村 菜々香”として振る舞い続けるー”


菜々香はペロリと唇を舐めるー。


”娘が凶悪犯に乗っ取られている”


”娘が自らの意思で殺人に手を染めているー”


どっちがーー

刑事・崎村 謙介にダメージを与えられるかー


”娘が乗っ取られている”と知れば

謙介は激しい怒りを燃やして俺を憎み、それを糧に

戦うだろうー


だがー


”娘が殺人犯だった”と思い込ませればー

やつに残るのは、”絶望”のみー


五十嵐栄吾にはー

”お前の娘を、俺が乗っ取ってるんだ”と、

明かすつもりは、一切なかったー


”お前の娘は、殺人犯だー”

そんな、絶望を謙介に叩きつけるためー。


「ーーわたしが、五十嵐栄吾の模倣犯だよ♡ ふふっ」

菜々香は、呆然とする謙介に対して、嬉しそうにそう言い放ったー。



⑤へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


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次回が最終回デス!

皮にされて乗っ取られた娘との対面…!


ぜひ結末を見届けて下さいネ~!

今日もありがとうございました~!

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