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4人の命を奪った凶悪犯・五十嵐栄吾ー。

彼を追い詰めた警察官の謙介は、

ギリギリまで五十嵐を追い詰めながらも、交戦の末に

五十嵐は転落、そのまま消息不明になってしまうー。


それから2か月以上が経過したある日ー、

五十嵐と同じ手口の殺人事件が発生ー

”5人目の被害者”が出てしまったー。


”ビルから転落したはずの五十嵐は、まだ生きているのかー?”


そんな風に思う謙介ー。


だがー、謙介は知らないー。

五十嵐は、謙介の娘の”菜々香”を皮にして潜んでいることをー。


★前回はこちら↓★

<皮>俺はここにいる①~娘~

「うん…うん、あと30分ぐらいで帰るから、うんー。気を付けるねー」 夜道で女子高生が母親との電話を終えると、 スマホを閉じて、歩き出すー。 彼女は、部活で帰りが遅くなり、 心配しているであろう両親に連絡を入れていたのだー。 「ーーー」 可愛らしい髪の長い女子高生ー。 だがーー そんな彼女の前に、不気味な笑み...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーうんーーうん…今日は遅くなるからー うんー大丈夫」

笑顔で母親との電話を終える菜々香ー


可愛らしいスマホを手に、通話を終えると、

「ーーバカな女だー」

と、低い声で母親のことを笑うー。


「ーー自分の娘が、これから人殺しするってのによー」

ペロリと唇を舐めた菜々香は、

黒い手袋をはめて、スカートで見えないように太ももに

巻き付けてある小さなポーチから、スローイングナイフを

取り出すー。


「ーーー崎村刑事ー

 いいや、”お父さん”ー

 まだ俺とのゲームは終わってないんだぜー」

菜々香の声でそう呟くと、

菜々香は、少し先を歩くターゲットに向かって

静かに歩き始めたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


”6”ー


翌朝ー。

謙介は部下の刑事・川上と共に

遺体発見現場へと駆け付けていたー。


「ー2日連続ー」

川上は表情を歪めるー。


「ー”また”五十嵐のやつが動き出したのかー…?」

謙介は困惑の表情でそう呟くー


遺体となっていたのは、

最近は衰退しつつあるものの、未だに広範囲に勢力を持つ

裏社会の組織”銀狼”の構成員の男ー。


”今までと”同じようにスローイングナイフのようなもので

殺害されており、その手の甲に”6”と傷が刻まれているー。


「ーーーですが、五十嵐は崎村さんに追い詰められて

 2か月前に例のビルから転落したはずですー。

 生きているとは思えませんー」

川上刑事の言葉に、謙介は五十嵐とビルの屋上で対峙した

あの日のことを思い出すー。


確かに、五十嵐はあのビルから転落したー。

だが、遺体は見つかっていないー。


「ーーーあるいは、模倣犯かー」

謙介は呟くー。

五十嵐の事件は当然、世間にも伝えられているー。

詳しい詳細までは報道されていないものの、

本気で調べようとしたら”模倣”できるぐらいの情報は

世の中に出回っていることも事実ー。


「ーーー五十嵐本人にせよ、模倣犯にせよ、

 このまま野放しにしておくわけにはいかないー」

謙介がそう口にすると、

川上刑事も頷くー。


”ーーふざけた真似をー…

 俺が必ず捕まえてみせるー”


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


その日の夜ー。


「ーそういえば、最近起きてる事件、怖いよね~…」

菜々香が晩御飯を口にしながら呟くー。


「ーー事件ー?」

帰宅して家族で晩御飯を食べていた謙介が言うと、

「ほら…今朝も死体が見つかったってニュースになってたしー」

と、菜々香が少し気味の悪そうな表情を浮かべながら

謙介のほうを見つめるー。


「ーーあぁ…」

”五十嵐”あるいは、”五十嵐の模倣犯”の事件のことだー

当然、ニュースでも二日連続で遺体が見つかったことで

騒動になっているし、

周辺の小学校は集団登校になっていると聞くー。


事件の捜査内容までは家族には話していないためー

菜々香からその事件の話題が出たのは偶然だろうー、と

謙介は思いながらも、仕事のことを思い出して

少し表情を曇らせるー。


「ーーそんな酷いことする人…許せないよねー」

菜々香が呟くー。


「ーーーあぁー」

謙介はそう言うと、菜々香は少しだけ微笑んだー。


「ーもしかしてーーなんだけど、

 お父さんもその事件のこと、調べてるの?」

菜々香がそう尋ねるー。


だがー謙介は曖昧な返事をしたー。

家族には”捜査情報”は漏らさないようにしているのだー。


「ーーーーーあ、ううん、言えないこともあるよねー。

 大丈夫ー。


 でもーー…

 もし、もしも、お父さんがそんな怖い事件のこと調べてるならー…」


菜々香は不安そうな表情を浮かべてから、

”心底心配している”という様子で父親である謙介の顔を見つめたー。


「ーー…絶対ー…無茶はしないでねー

 お父さんに何かあったら、わたしー…」

菜々香が言うと、謙介は穏やかな表情でほほ笑んだー。


「ーー大丈夫。どんな事件を調べていても、

 俺は絶対、無茶はしないからー。

 琴子や、菜々香を悲しませるわけにはいかないだろ?」

謙介の言葉に、妻の琴子も微笑みながら頷くー。


「ーーうん」

菜々香も満面の笑みを浮かべながら、

嬉しそうな表情をしてみせたー



「ーーーー…なんてーーー」

部屋に戻った菜々香は笑うー。


「ー”わたし”が人殺ししてるって知ったらー…

 どうするぅ…?お父さんー」

菜々香は笑みを浮かべるー。


「ークククー我ながら

 ”お父さんを心配する可愛い娘”の演技、

 完璧だったぜー」


菜々香を”皮”にして乗っ取った五十嵐は

今、この状況を楽しんでいたー。


2か月前ー

五十嵐は謙介に追い詰められて、ビルから転落したー。

五十嵐も、当然死を覚悟したー。


だがー

五十嵐は死ななかったー。

落下地点に木が生い茂っていたことにより、衝撃がわずかにやわらぎー、

重傷を負いはしたものの、死ななかったのだー。


そしてー

いざという時のために近くで待機していた”仲間”が、

すぐに瀕死の五十嵐を回収したー。


あの時ー

五十嵐は右腕を失ったー。

だが、海外から特殊な義手を手配し、

瀕死の重傷だった身体の傷もある程度癒えてー

こうして、五十嵐は返ってきたのだー


ピキッ、と菜々香の顔に亀裂が入るー。

”笑みを浮かべたまま”菜々香がペロリとバナナの皮のように剥けると、

中から五十嵐が姿を現すー。


その顔には、痛々しい傷が、まだ残されている状態だったー。


以前はー

”裏社会の依頼”を受けて、ターゲットの命を奪っていたー。


だがー、今は違うー。

今、五十嵐の心にあるのはー

”自分をこんな目に遭わせた刑事、崎村 謙介への復讐”のみー


「ーー楽しもうぜー崎村刑事ー」

再び菜々香の皮を身に着けると、

笑みを浮かべながら、菜々香は2階にある自分の部屋の窓を開けて、

こっそりと家から抜け出したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー。


「ーーまた…」

謙介が表情を歪めるー。


”7”ー

遺体には、そう刻まれているー。


3日連続ー。


「ーーー……崎村さんー」

部下の川上刑事が険しい表情で近づいてくると、

「遺体の近くに、こんなものがー」

と、メモ用紙のようなものを差し出してきたー。


”俺は、ここにいるー”


そう書かれたメモ用紙ー。


「ーーこの筆跡はー」

表情を歪める謙介ー。


間違いないー

五十嵐 栄吾だー。


謙介は、そう確信したー。

何故だかは分からないが、死んだはずの五十嵐栄吾が

生きていたのだと、そう確信せざるを得なかったー


忘れもしないー

この筆跡は、間違いなく五十嵐栄吾のものなのだー。


「ーーくそっ!」

謙介は思わずそう叫ぶー。


「ーそれにしてもー…」

川上刑事はそう呟くと、

「なんで今回は、この周辺地域だけなんでしょうー?」と、

不安そうに言葉を口にしたー。


以前ー

2か月前に謙介に追い詰められるまでは、五十嵐は

”色々な場所”で事件を起こしていたー

1度目がたまたま、謙介が勤務している警察署の管内の事件だったため

そのまま五十嵐を追っていたものの、

かなり離れた場所で事件が起きることも多かったー


だがー

今回は”この近辺”ばかりー。


「ーー俺への、復讐かー」

謙介は表情を歪めるー。


五十嵐栄吾が生きているのだとすればー

当然、謙介の元に復讐に来るはずー。


「ーーーー」

拳を握りしめる謙介ー。


だが、まさかー

”自分の娘”が、既に乗っ取られていて、

五十嵐栄吾と”同じ家で生活している”などとは

夢にも思わなかったー。


・・・・・・・・・・・・・・・


夕方ー


「あ、お父さんー!」

菜々香が、手を振りながら近づいてくるー。


捜査を終えて、警察署内に戻ろうとしていた謙介が

立ち止まって「菜々香!どうしたんだ?」と、菜々香のほうを見つめるー


菜々香の通う高校からは、この警察署もそう遠くはないもののー

”わざわざ寄る方角”ではないー


「ーあ、うんー友達と買い物してたからー

 その帰り!

 たまたまお父さんの姿が見えたからー」

と、笑う菜々香ー



「はは、そっかー。

 俺は今日ちょっと遅くなるからー」


謙介がそう言うと、隣にいた部下の川上も、

「菜々香ちゃん久しぶり!覚えてる?」と、笑うー。


川上刑事は何度か謙介の家を訪れたこともあるー。

菜々香は「あ、はいー」と返事をしながらー

「ーーお父さんと”いっしょに”事件の調査してるんですか?」と

笑いながら尋ねるー。


「ーーーはは、そうそうー

 いつもお父さんには本当にお世話になっててー」

川上刑事の言葉に、少し照れくさそうに「よせよー」と

謙介が言うと、謙介は時計を見て「あ、そろそろ行かないと」と

菜々香のほうを見つめるー。


「ーーうん!お父さん、頑張って!

 あ、あと川上さんも!」


菜々香の言葉に、川上刑事は笑いながら頷くと、

そのまま謙介と一緒に、警察署内へと戻って行ったー


菜々香はにっこりと微笑みながらー

”8”と、静かに呟いたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


夜ー


「少し遅くなっちゃったなー」

川上刑事がそう言いながら夜道を歩いていると、

背後で突然気配がしたー。


そしてー

「ーー!?」

川上刑事が振り返ると同時に、川上刑事は口を塞がれて、

そのまま眠らされてしまったー


・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーーー!…」

川上刑事が目を覚ますと、

川上刑事は、椅子に拘束された状態だったー


「ーーっ…な、、なんだこれは!?」

川上刑事が叫ぶー。


「ーーようこそー」

背後から、声がするー


その声は、女の声だったー。


”どこかで聞いたことがある気がする”

そんな風に思いながらも

川上刑事は「誰だ!?」と叫ぶー。


「連続殺人犯ー」

女は、そう答えたー。


「5、6、7ー」

その言葉に、

川上刑事はゾッとするー。


数字が意味する言葉が、

彼にはすぐに分かったからだー。


5人目の犠牲者ー

6人目の犠牲者ー

7人目の犠牲者ー。

ここ三日間、連続で発見された遺体ー。


”自分が殺した相手”に数字を刻む五十嵐栄吾による殺人ーー


だがー

「ーーー模倣犯かー」

川上刑事は呟いたー。


五十嵐栄吾は男ー。

今、背後からしているのは女の声ー。


と、いうことはここ3日間起きている事件は

”五十嵐の模倣犯である”と川上刑事はすぐに判断したのだー。


「ーー模倣犯ー?」

クスッと笑う女ー


「さぁ、どうだろうねぇー」

川上刑事の背後で喋っていた女が、目の前に姿を現したー


「ーーーーー!?!?!?!?!?!?!?」

その女の姿を見て、川上刑事は思わず表情を歪めたー。


背後で喋っていた女はー

共に事件の調査をしている上司であり、先輩刑事であるー

崎村刑事ー…

崎村健介の娘の菜々香だったからだー。


つい数時間前に、父に会いに来た菜々香と、川上刑事も

言葉を交わしているー。


「ーーふふふ どう驚いたー?

 警察官の娘が、殺人鬼ー」

菜々香は目を見開きながら、笑みを浮かべるー。


「ーーえ……ど…どういうー?」

理解が追い付かないー

川上刑事も、それなりに色々な現場を見て来たし

”この人が犯人なのか?”という現場にも、これまで

何度も遭遇してきたー


しかし、こんなー


「ーーこういうことだよ!」

菜々香は叫ぶと同時にスローイングナイフを川上刑事の

足に投げつけてきたー


「ぐあああああっ!」

悲鳴を上げる川上刑事ー


「ーーようこそー”8人目の犠牲者”さんー」

菜々香が川上刑事の肩を叩きながら顔を近づけるー。


「ーーき、、君は、いったいー」

川上刑事が菜々香を見返すー


菜々香の目は狂気に支配されていてー

女子高生とは思えないぐらい、冷徹な目つきだったー。


「ーーお父さんと一緒に事件を調べてるんでしょー?

 だから、死んでもらおうと思ってー」

菜々香は笑うー


川上刑事は目を震わせながら、そんな菜々香を見つめるー


”菜々香が、五十嵐栄吾に皮にされて乗っ取られている”

などとは、夢にも思わずにー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーあれ?菜々香はー?」

帰宅していた父・謙介が妻の琴子に尋ねると、

”あ、今日は友達の家に寄ってから帰ってくるんだって”と

琴子が微笑んだー。


「そっかー」

謙介は、何も疑問を感じなかったー


今ー、この瞬間、

娘が人殺しに手を染めていることも、知らずにー。



③へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


事態はどんどん悪い方向に…!

気付くのが遅くなればなるほど、大変なことになりそうですネ~!


続きはまた次回デス~!

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