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高校生の野坂 朋美(のさか ともみ)は

2か月ほど前から実家を離れて、兄・仁志(ひとし)の家に

やってきていたー。


仁志は、大学を卒業した昨年、実家を出て

少し離れた場所で一人暮らしをしていて、

その家に、朋美は2か月ほど前からやってきて、

兄と二人で一緒に暮らしているー。


ちょうど、高校に通うには実家よりも、兄の家から行った方が

時間が半分ぐらいで済むことも理由の一つだったものの、

何よりも、朋美は兄の仁志のことが大好きで、

とにかく一緒に居たい、というのが、”本当の理由”だったー。


両親は”仁志と一緒なら安心”と快くそれを許可してくれて、

兄の仁志も、最初は「えぇっ!?」と驚いていたものの、

最終的に妹の朋美が自分の家に来ることを承諾してくれたー。


兄と妹の同居が始まってからおよそ2か月ー。

二人は、何だかんだで楽しくやっていたー。


「ーーー朋美~!明日は俺、残業で遅いから

 先に寝ていていいからな~」


兄・仁志が言うと、妹の朋美は

「え~!?お兄ちゃんが帰ってくるまで待ってるもん~」と、笑うー


「はははー もう高校生だろ~?一人で寝れない!なんて

 歳じゃないだろうにー」

仁志が苦笑いしながら言うと、朋美は

「寝れるけど、妹としてお兄ちゃんの癒しになりたいの!」と笑うー


「ーーーまったくー」

仁志はそんな風に言いながらも、どことなく嬉しそうにも見えたー。

”マスコットキャラみたいな可愛さ”

仁志は妹の朋美のことを、そんな風に思っているー。


「ーまぁでも、次の日も学校だろ?

 あんま無理するなよなー」

仁志の言葉に、朋美は「ーーうん…無理する…」と、小声で呟くー。


「ははー 分かってくれればいいんだー」

そう言いながら、自分が寝ているスペースの方に向かおうとして

仁志は立ち止まるー


「ーって、分かってねーじゃん!」

仁志の言葉に、朋美は「ーーお兄ちゃんが帰ってくるの、待ってるもんねー!」

と言いながら、自分が寝ている部屋の方に向かっていったー。


「ったく、本当に、世話のかかる妹だなー」

そう呟いて優しく微笑むと、仁志は「おやすみ」と小声で呟いて、

寝る準備を始めるのだったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー

仁志は残業に入る前に、晩御飯を買いに行こうと

コンビニで軽く食事を買おうと、会社から出るー。


入社2年目ー

当然、色々な苦労はあるー。


けれど、それなりに上手く会社にも馴染めていて、

少しずつとは言え、精神的に余裕も出始めてきていたー。


「ーーーあ、野坂さん!」

可愛らしい女性が駆け寄ってくるー。

朋美より少し年上な雰囲気のリボンを身に着けた女性ー。

黄色いリボンとポニーテールが良く似合っているー。


「ーー!」

仁志が彼女のほうを見ると同時に、

その女性は「はい!お弁当!」と、笑みを浮かべたー。


「ーーーー」

 仁志は、少し驚いた様子でその女性のほうを見るとー


言葉を口にしたー。


「ーーーーあのー」

仁志は少しだけうんざりした様子で言うー。


「ーー藤村さん、でしたよね?

 そういうの、もうやめてもらえませんかー?」


”まるで彼女のように”近付いてきたこの女性は、

仁志の彼女ではないー

女友達でもないー。


彼女は、ひと月ほど前から、仁志に付き纏っている女ー…

つまり、ストーカーだったー。


近くの大学に通う女子大生・藤村 杏梨(ふじむら あんり)が

笑みを浮かべるー。


「も~…そんなこと言わないでよ~!せっかくお弁当、

 作ってきたんだし」

杏梨が笑いながら弁当を差し出すー。


「ーー申し訳ありませんけど、いくらそういうことされても、

 受け取ることはできませんし、これ以上付き纏わないでくださいー。」


仁志はそう言うと、立ち去ろうとするー。


”こうなった”きっかけは単純なことだったー。


1か月前ー、

街で貧血を起こしていた杏梨を、仁志が助けたー。

それだけのことだー。


当時、杏梨は大学のサークル活動で、夜遅い日が続き、

寝不足になっていて、街で貧血を起こしたー。

そんな杏梨を見て、お互いに面識はなかったものの、仁志が

「大丈夫ですか?」と声を掛けて、救急車も手配ー、

救急車が到着するまで、親切に接してくれたー。


仁志からすれば”ただの人助け”であり、

相手が女子大生であろうと、男子大学生であろうと、

おじいさんおばあさんであろうと、同じことをしただろうー。


だがー

杏梨は、その出来事をきっかけにー

仁志の前に度々姿を現すようになったー。


最初は、仁志も”あぁ、この前のー…。大丈夫でしたか?”などと

丁寧に接していたものの、

次第に”度を越した杏梨の行動”に、

さらにエスカレートすることを危惧し始めていたー


「ーー妹さんーーー」

立ち去ろうとした仁志に声を掛ける杏梨ー。


「ーとっても可愛いよねー」

杏梨の言葉に、仁志は思わず足を止めるー。


「ーー朋美ちゃん、だったっけー?

 今度、ご挨拶しちゃおっかなぁ~」

微笑みながら言う杏梨に対して、仁志は

カッとなって声を荒げたー。


「ーーこれ以上付き纏ったらただじゃおかないぞ!」

仁志の言葉に、杏梨の表情から笑顔が消えるー。


「ー妹に少しでも何かしてみろ?

 絶対許さないからな!」


仁志はそれだけ言うと、深く深呼吸してから、

ようやく我を取り戻すー。


妹の存在も、家の場所も、杏梨には教えていないー。

なのに、何故、それを知っているー?


そしてー

今の杏梨の言葉は”妹に危害を加える”と脅しているようにも消こえたー。


だからこそ、仁志は怒りを露わにしたのだー。


「ーーーとにかく、これ以上ー

 これ以上、付き纏うようでしたら、警察に相談しますからー。」

仁志がそう言い放つと、杏梨は表情を歪めたー。


「警察ー…?」


「ーーーええ。大学生なら、自分がしてることが

 どういうことか、分かりますよねー?

 これで、失礼します。」


仁志はそう言うと、そのまま足早に杏梨の前から立ち去って行ったー。


杏梨は一人、その場に立ち尽くすと、

しばらくしてから、少しだけ笑みを浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーー」

昨日、言った通り、夜遅くまで残業だった仁志は、

もう寝ているであろう朋美を起こさないように

静かに家に帰宅するー。


しかしー


「ーーお兄ちゃん!お帰り!」

朋美が満面の笑みで姿を現したー


「ーお、おい~、まだ起きてたのかよ」

仁志があきれ笑いを浮かべると、

少ししてから、「でも、ありがとなー」と優しく

朋美の頭を撫でてから、そのまま仕事の後片付けを始めるー。


「ーねぇねぇお兄ちゃん!わたしたちって、

 なんだか夫婦みたいじゃない?」


朋美のそんな言葉にー、


「それは、ない!」

仁志は即答で、それを否定したー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


今日は残業もなく定時で仕事が終わった仁志は、

そのまま家に帰宅しようと、いつものように道を歩くー。


「ーー」

仁志はいつも、帰宅の最中に

木々が生い茂っている場所を通るー。


夜は暗いし、坂道になっていて転落の危険性もある場所だがー、

ここを通った方がかなり近道になることー、

そして、仁志のような男性であれば、不審者にもターゲットに

されにくいだろう、と、仁志自身考えていることから、

いつもこの道を通っていたー。


しかしー


「ーーーー!!!」

仁志は、前からやってくる人影に思わず足を止めたー。


懐中電灯を手に、

黄色いリボンとポニーテールを揺らしながら近づいてくるその女性はーー


「ーーーいい加減しつこいぞ!」

仁志は思わず叫んだー。


「どうして、わたしの愛を受け止めてくれないのー?」

杏梨が表情を歪めるー。


「ーー誰も頼んじゃいないー…

 それに、何度も何度も、藤村さんの気持ちには答えることは

 できないと伝えているはずー!」


仁志が言うと、杏梨は少しだけ笑みを浮かべながら

何度か頷いたー。


口にはしなかったが、仁志の妹・朋美に強い敵意を

抱きながらー。


「ーーーー警察に相談させてもらいます」

仁志はそう言うと、スマホを手にしたー


「ーちょ、ちょっと!」

杏梨が叫ぶー。


「ーわたし、野坂さんが好きなだけなの!

 何にも迷惑かけてないし、

 野坂さんが、わたしの想いに応えてくれないのが悪いんでしょ!?

 なんで、わたしが警察に通報されないといけないの!?」

杏梨はそう叫びながら、仁志の腕を掴んできたー。


「ーーおい!いい加減にしろ!」

仁志が再び声を荒げたその時だったー。


杏梨が仁志のスマホをはたきー、スマホが仁志の手から

零れ落ちて、坂道の方に飛んでしまうー。


「ーーあっ!」

仁志は反射的にそれを掴もうとして、身を乗り出しー


「ーーー!?!?!?!?!?」

仁志の腕を掴んでいた杏梨もろともー、

斜面になっている道を転がり落ちてしまったーーー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ガチャー


玄関の扉が開くー。


「あ、お兄ちゃんお帰り~!」

妹の朋美がいつものように嬉しそうに

兄の仁志を出迎えるー。


「ーーーただいま」

仁志は妹の朋美を見つめると、

少しだけ沈黙してからそう呟いたー。


「ーあ、そうそうお兄ちゃん、今日、わたし、

 新作の料理作ったから、食べてみて~!」

妹の朋美は、正直、料理は上手ではないー。

時々、”料理という名前の何か”が出てくることも多いが、

それでも仁志はいつも、”朋美の作ってくれたものだから”と、

どんなに恐ろしい味でも、朋美の料理を完食しているー。


朋美が一生懸命になっているのはよく分かっているし、

ほんの少しずつとは言え、味も上達しているのが

兄の仁志にも、ちゃんと伝わっているからだー。


だがー


「ーいらない」

仁志は愛想なくそう呟いたー


「ーーーえ…」

朋美は、”初めて”兄の仁志に”いらない”と言われて

少しだけ動揺したー。


「ーーーあ、、ごはんは食べてきたのかな~

 それなら、冷蔵庫に入れておくからー」


「ーーいらない」


仁志は今一度そう呟いたー


「ーーーえ……え~っと…」

朋美は困ったような笑みを浮かべながら呟くー。


「ーーお前の料理なんかより、彼女の料理の方が100倍美味しいから」

仁志がそう言い放つと、

朋美の表情から笑顔が消えたー


「ーー…え…お、お兄ちゃん…彼女、いるんだっけー?」

とー。


「ーーいるに決まってんだろ。

 お前のゲロみたいな料理なんかいらねぇから、捨てとけよ」


朋美は、知らないー

少し前に、帰宅中の仁志とストーカーの杏梨が、転落して

”入れ替わってしまった”という事実をー


朋美は目に涙を浮かべながら

「ごめん……もう作らないー」と、そのまま自分の作った料理を

泣きながら片付け始めるー。


「ーーふふふふ…」

仁志になった杏梨は、自分の手を見つめながら

静かに笑みを浮かべたー。


”まさか、野坂さんの身体にわたしがなっちゃうなんてー”


坂道で転落したあとー

目を覚ましたら、杏梨は仁志になっていたー。

”大好きな仁志”になったことで、杏梨は

さきほどからずっとドキドキゾクゾクしていたー。


「ーー野坂さんはわたしのものー

 まずは邪魔なあんたを、引き離してやるー」


仁志(杏梨)は、邪魔な妹の”朋美”を、

兄である仁志から引き離そうと、画策していたー


・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーー大丈夫ですか?」


木々の生い茂る道の、坂の下で倒れていた

杏梨(仁志)に声を掛ける男ー


「ーーーえ…」

杏梨(仁志)は、ようやく意識を取り戻して目を開くー。


杏梨と一緒に転落して、入れ替わってしまったその場所でー


「ーーん…あ、、、はい…」

杏梨(仁志)はそう言いながら、

髪のあたりに何かついている気がして、手で何度も何度も

それを取ろうとするー。


落ち葉が髪についているー

そう思ったのだー。


だが、それが取れる気配はないー


「怪我は、ないかい?」

通行人の男の言葉に、杏梨(仁志)は「あ、はいー。大丈夫です」と

言うと、声に違和感を感じて

何度も何度も咳をして、喉の調節をしたー


しかしー


「あれ…なんか…声が…変だなー」

”高い声が出ているー”

意識がまだ朦朧としていたからか、そう思いながら

”髪”と”声”を気にする杏梨(仁志)ー


通行人は戸惑った様子で

「ーお嬢さんー…救急車、呼ぶー?」

と、呟くー。


「ーーーえ」

杏梨(仁志)はその言葉に、自分の身体を見つめるー。


そこにはー

白いスカートとブーツ姿の下半身ー


「ーーー!?!?」

そして、膨らんだ胸が見えたー。


「ーーーえ…」

”髪に違和感”があったのは、髪が自分よりも長いからー

落ち葉がついていたわけではないー。


声に違和感があったのはー

”女の声”が出ていたからー


「ーーお、、俺…!?えっ…」

杏梨(仁志)は、自分がストーカー女の身体になっていることに

驚き、そしてすぐに妹の朋美のことが頭をよぎったー。


②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


ストーカー女と入れ替わってしまうお話デス~!


男になった側が悪事を働こうとしているパターンは

あんまり普段書いていない気がするので、

書いている私も新鮮な気持ちデス~!☆


続きはまた次回をお楽しみに~★!

今日もありがとうございました~!

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Comments

飛龍

これは続きが気になります~! 大ピンチな妹ちゃんの運命やいかに……

無名

コメントありがとうございます~!☆ 大変なことになっちゃいそうですネ~! 次回も頑張ります~☆!!