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「わたしの姿で1日過ごしてみないー?」


「ーーえ…?」

男子大学生の田山 颯太(たやま そうた)は、

表情を歪めたー。


相手は”綺麗なお姉さん”という感じの女子大生ー。

突然のそんな言葉に、颯太は戸惑っていたのだー


二人は、知り合いではないー。


彼女ー、根室 友麻(ねむろ ゆま)とは、

ついさっき”初めて会ったばかり”ー


颯太は絵を描くのが大好きで、

自分で描いた絵をよくSNS上に投稿していたー。

そんな颯太の投稿を見て、仲良くなった相手の一人が、

友麻だったのだー。


リアルでは、女子が苦手で大学生になった今も

彼女がいたことは一度もなく、

幼馴染や、異性の友達もいないー

そんな状況だったのが、SNSのおかげでこうして、

友麻と出会うことができたー。


友麻も絵が描くのが好きで、

SNS上で意気投合ー、

この半年間、日常的にSNS上で会話することが多かったー


そして、先日ー

友麻から誘われて今日、こうして初めて友麻と実際にあったのだったー。


だがー

颯太はものすごく緊張した様子で、

友麻を直視することもできないような状態だったー。


何故ならー。

友麻はネット上では「ゆうま」と名乗っていて、

颯太は”ゆうまは男”だと勝手に思い込んでいたのだー。


絵の写真や、手元の写真、風景の写真などは

ツイッター上に公開されていたものの、

確かに、今考えて見れば”ゆうま”本人の姿を一度も

見たことはなかったー


まさかー

相手が女子だったなんてー


颯太は”来るんじゃなかったー…”と思いながら

ずっと戸惑いっぱなしだったー。


「ーーそ、そんなに緊張しないでよー…

 いつもみたいに普通に話してくれていいからー」

友麻が戸惑いながら呟くー


”友麻”という本名から名付けたアカウント名が「ゆうま」

別に男のフリをしていたわけではないけれどー

颯太が勝手に男だと思い込んでしまいー、

友麻も特に聞かれなかったため、このような勘違いが

生まれてしまっていたー。


「ーーう、うんーそ、それは分かってるんだけどー…

 僕さー…その……男の友達しか、いたことないんだよね…」

颯太が言うと、友麻は「そっか~」と、呟くー。


優しそうな雰囲気の女子大生だが、

女子自体に耐性がまるでない颯太にとっては、

今の時間は、ある意味で拷問のような時間とも言えたー。


「ーーでも、せっかくこうして出会えたんだしー…」

友麻はそう呟くと、「あ!そうだー」と、鞄を

確認しながら、颯太のほうを見て笑みを浮かべたー


その後に言い放ったのがー


「わたしの姿で1日過ごしてみないー?」

と、言う言葉だったー


「ーーえ…?」

颯太は耳を疑ったー。


「え…それってどういう意味ー?」

とー。


「ーあ、ううんー。その、変な意味じゃなくてー」

友麻はそう言うと、少し小声で説明を始めるー。


聞けば、友麻の祖父は研究者で

”色々な面白い研究”をしている人物なのだと言うー。

そんな祖父が残したのが”他人に1日だけ変身することができる薬”


「厳密に言うと、寝ると元に戻るんだけどー…」

友麻はそう付け加えると、

「せっかく、颯太さん、こんなに素敵な絵を描くんだし、

 女の人のことが苦手なの、勿体ないなぁ~って」

と、呟くー。


「ーで、、でも、僕、仮にゆうまさんー…

 え~っと、友麻さんの姿になったとしても

 何もできないと思うんだけどー…」

颯太が恥ずかしそうにそう言うと、

「1日わたしの姿でいれば、少しは慣れることができるかもしれないし…!」

と、友麻が、少しだけ微笑みながら言うー。


ドキドキが止まらない颯太ー。

こんな綺麗なお姉さん風の姿に自分がなったらー

ドキドキしっぱなしだろうー。


だがー、自分でも”ここまで異性が苦手”なのは

まずいとも思っているー。

これから社会人になるにあたって、

どうしても接点が出てくる可能性もあるし、

そうなったときにこのままでは、

あまり良くないのではないかー、と、

そんな心配もあるー。


友麻は”おじいちゃんの研究は安全だから大丈夫”だとか、

”もしきつくなったら、寝れば大丈夫だから!”だとか、

色々颯太を安心させる説明をしてくれたー。


友麻は、この半年間、ネットでもとても良くしてくれたしー

”いい人”だったー。

実際に今日、会ってみて女性だったのは驚きだったが、

いい雰囲気の人に変わりはないー。


「ーーじ、じゃあー…」

颯太が言うと、「これ飲んで1時間ぐらいで効果が出るから、

姿が変わる時間帯は、誰にも見られないようにしてねー」

と、友麻が説明するー。


颯太は「1時間あれば家に到着できるからー」と、呟くー。


「ーーでもーー」

颯太は、不安そうに「僕が変なことするとか、心配しないのー?」と、

友麻のほうを見ながら呟くー


友麻は微笑むー。


「ー颯太さんが、そんなことしそうなら、わたし、

 ”わたしになってみない?”なんて言わないからー」

と、優しく、穏やかな笑みを浮かべたー。


颯太はドキッとしながら、納得して「変身するための薬」を

受け取ると、友麻は「今日は楽しかったー」と、時計を見ながら

嬉しそうに微笑むー。


「ーわたしの姿になって過ごしてみた感想、今度教えてねー!」

笑う友麻ー


「ーーう、うんー」

とても恥ずかしそうに頷く颯太ー。


変身薬を飲むと、友麻は「あ、その容器は再利用するねー!」と、

容器を受け取って微笑むー。


「~~~~…」

顔を赤くしながら緊張気味の颯太に対して、

友麻は”一度、女子も経験したら絵を描くときも新しいアイデアが

浮かんじゃったりして!”と、優しく颯太の方に向かって

笑顔を向けたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


帰宅した颯太ー。


颯太は現在、一人暮らしをしており、

家で、友麻の姿に変身しても、誰かに見られてしまう、だとか

そういった心配はなかったー。


「ーーーほ、ホントにゆうまさんー

 いや、友麻さんになってるー」


姿見ー…

などというものは颯太の家には当然ないので、

洗面台の鏡でその姿を見つめるー。


「うっ…だ、、だめだー」

友麻の姿になった颯太は

鏡を見つめるや否や、すぐにそう叫んだー。


自分の口から、”綺麗なお姉さん”的な声が出るー。

それだけで、ゾクゾクドキドキしてしまうー。


鏡で友麻の顔を直視することもできずー、

恥ずかしくなって顔を真っ赤にしてしまうー。


別に”友麻本人”に見つめられているわけでもなくー

友麻の身体を乗っ取っているわけでもなくー

あくまでも”友麻の姿”に変身しているだけなのにー。


それでも、ドキドキが止まらないー。


「ーーだ、、だめだ…」

友麻の姿になった颯太は、恥ずかしそうに洗面台の前から

立ち去り、部屋の奥まで駆け込んでいくー。


部屋に戻ってからも、ずっとソワソワし続ける友麻ー。

”服も含めて変身するから”と説明されていた通り、

友麻の姿になった颯太は今、スカートに黒タイツ姿だー。

「あぁぁぁ…落ち着かないー」

ドキドキが最高潮に達して、思わず目を閉じそうになるも、

「でもーー」と、勇気を出して目を開くー。


長い髪ー

胸の膨らみー

自分とは違う、華奢な感じの綺麗な手ー。

全てが新鮮で、全てが颯太をドキドキさせたー。


「ダメだ…やっぱり、僕には無理だー」

颯太は友麻の姿でそう呟きながら、

心臓をバクバクさせて、そのまま時間だけが過ぎていくー。


”お風呂なんか、入れないなー”

颯太はそう思いながら、なんとか晩御飯だけを済ませるー


”変身”

しているだけだからー…

だろうか。

味覚に大きな変化は見られないー。


友麻からは”外で変なことだけはしないでね”と、

言われているー。

逆に言えば、家の中では何をしてもいい、と

そういうことになるー。


「どうして、僕なんかのためにこんなー」

颯太は、戸惑いながらそう呟き、

いつものように、ツイッターで友麻=”ゆうま”にメッセージを

送ってみるー。


するとー

”女の人、苦手だったみたいだし、

 それに、色々な経験をすれば、颯太さんの芸術性がさらに

 広まったりしないかな!ってー”

と、返事が返ってきたー。


友麻は元々、颯太がツイッターに載せていた”絵”に

反応してくれたことで知り合った間柄だ。

自分の姿を貸すほどまでに、颯太の芸術的な面を

応援してくれているー…のかもしれないー。


だがー

結局颯太は、友麻の姿で何かをすることもできないまま、

最後までドキドキして、”もう、いいかー”と、

そのままベッドに横たわったー。


「ーーー寝るときまでドキドキするよー」

可愛い声が出てしまうー。

ウトウトしたときに「う…」と声が出て

その甘い声にもドキドキしてしまうー。


しかし、颯太はようやく眠りにつくことができたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


「あ、あれ…?」

颯太は戸惑うー


「厳密に言うと、寝ると元に戻るんだけどー…」


友麻はそう言っていたー。

なのに、どうしてー?


戸惑いながら、ツイッターで再び”ゆうま”に連絡を入れようとするー。


すると、”ゆうま”のアカウントが削除されていたー。


「え…どうしてー!?」

友麻の姿のまま颯太は叫ぶー。


そしてー

”見知らぬアカウント”から連絡が入っていたー


初期アイコンのままで、名前は”Y”

作られたのも最近のようで、ツイート数は「0」


そんなアカウントからのメッセージ


”昨日の場所で”


と、いうものを見て、これは”友麻”であることを確信するー。


颯太は”え!?どういうこと!?”と返事をしながらも、

それ以上は返事がなく、颯太は「まさか…女の人の身体で外に

出ることになるなんてー」と、思いながら

家から飛び出すー。


近所の人に見られないようにー

そう思いながら街を足早に歩いているとー


「ーーー根室 友麻さんですね?」

背後から声がしたー。


「ーーーえ…」

友麻の姿をした颯太は”どうしようー?僕…友麻さんだと思われてるー”

と、思いながら振り返るとー

そこに立っていたのは、三人の警察官だったー。


「ーーー殺人容疑で、逮捕するー」

警察官の言葉に、友麻の姿をした颯太は「えっ!?!?えっ!?」と、

戸惑いの声を上げながらー

その場で手錠を掛けられて、有無を言わさず、確保されたー。


「ーな、何のことですかー!?ぼ、僕ー!?」

必死に叫ぶ友麻の姿をした颯太ー。


だが、警察官たちは”言い逃れなんてできるわけないだろ!”と

荒い口調で友麻の姿をした颯太を取り押さえたー。


そしてー

連行された友麻の姿をした颯太はー

昨日の深夜、友麻が”元交際相手”と”浮気相手”を殺害したー、ということを

警察官から告げられたー。


”僕は、僕は、根室友麻じゃないんです!”と、何度も主張したもののー

信じてもらうことはできずー、

DNAや血液型も完全に友麻本人のものと一致、

そのまま殺人犯として逮捕されてしまったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


”根室 友麻容疑者は、

 2年前まで交際していた被害者の男性と、同居していた女性をー”


ニュースを見つめる”本物”の友麻ー


髪型も、メイクも、髪の色も、服装も、何もかも変えた友麻は

クスッと笑うー。


友麻は、2年前彼氏にひどい仕打ちを受けた末に、裏切られたー。

その時、友麻は”壊れた”ー

必ず復讐してやるから…!と、強い憎しみを抱いたー。


そして、見つけたのが変身薬ー。


”誰かに身代わりになってもらう”

そう思いついた友麻は、ネットで”騙せそうな相手”を探したー


自分で変身薬を使っても”元に戻れない”ため、

その姿で指名手配されてしまい、結局自分が捕まってしまうー。


だからー”身代わり”を探した。

そして、その過程で、何人かの候補を見つけたー。

その一人が、颯太ー。


最終的に颯太が一番「騙しやすそう」だったため、

颯太に変身薬を渡したー。

本当は祖父が作ったものなどではないし、

一度変身すれば永遠に元に戻ることはできないー。


颯太が変身したのを確認した友麻はー、

自分を裏切った相手をその日の夜のうちに”始末”したー。

”自分から、彼を奪った浮気相手の女”もろともー。


その様子を、友麻は笑いながらネット上にアップしてー

友麻はすぐに殺人犯として手配されたー。


その後、友麻はあらかじめ用意していた小道具で

すぐに姿をガラリと変えて、逃亡ー。


もちろん、そんなことをしても普通は時間の問題で捕まるー。


だがー。

”友麻の姿になった颯太”が、いればーー


”容疑者はすぐに逮捕”され、

それ以上、捜査が行われることはないー。


友麻の姿になった颯太が、どんなに必死に叫ぼうとー、

今の颯太は、生物学所、根本友麻でしかないのだからー。


「ーーありがとう颯太さんー」

友麻は静かに笑みを浮かべるー。


そして、彼女はそのまま夜の闇の中へと姿を消したー



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


1話完結の他者変身モノでした~!☆

安易に、変な話に飛びついちゃダメですネ~笑


お読みくださりありがとうございました~!

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