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「だ、大丈夫かー?」

男子高校生の宏樹(ひろき)が、幼馴染の彼女のほうを見て

そう呟くー


だが、彼女は口を半開きにしたまま、

真っすぐと虚空を見つめているー。


起き上がってはいるものの、床に膝をついたまま、

呼吸や瞬きなど、最低限必要なこと以外、一切微動だにしないー。


「ーーお、、お~い!麻梨(まり)…麻梨ってば!」

宏樹がいくら呼びかけても、麻梨は反応しないー


「くそっ…い、今の”光”はいったい何なんだー?」

困惑の表情を浮かべる宏樹ー。


麻梨はちゃんと呼吸をしているし、瞬きもしているー。

意識が飛んでいるー

訳ではないように見えるー。


「ーーちょ…ま、、麻梨…!麻梨…!」

宏樹は何度も何度も麻梨の名前を呼ぶー。


しかしー

それでも麻梨は、何も反応を見せなかったー。


「ーーーーー」

宏樹は、困惑したような表情を浮かべたもののー

ニヤリと笑みを浮かべたー


「ーどうせ”いつもの”やつだろー?

 そう簡単に引っかかってたまるか」

ニヤニヤと笑う宏樹ー。


麻梨はーー

よく、宏樹に対して

”ドッキリ”を仕掛けてくるのだー。


普段は明るく、優しく、真面目な性格なのにー

幼馴染の宏樹に対しては、未だにドッキリを仕掛けてくるー。


小さいころからそうだったー。

互いの両親が用事で外出した際に、二人で宏樹の家の方で

留守番した際にも、麻梨は突然姿を消して、

宏樹は、”麻梨ちゃんがいなくなっちゃった!”と、一人泣きそうに

なりながら家中を探し回ったことがあるー。


実際には、麻梨は宏樹を驚かせようと隠れていて、

宏樹が慌てるのを見て、クスクスと笑っていて、

最後には涙ぐんでいた宏樹の前に、突然「ばぁ~!!」と、姿を

現して、笑っていたー


その際に「おばけ~~~!」と、悲鳴を上げながら

あまりの驚きにお漏らししてしまった宏樹ー。

今でも、あの時のことは”黒歴史”として、お互いにネタにしているー。


麻梨は、”宏樹がお漏らししたときの話”としてー

宏樹は、”麻梨のやつ、酷いんだよー”と、いつもネタにしてー

高校生になった今でも、互いにネタにしていたー。


小さいころは、そんなイタズラっ子だった麻梨も、

中学、高校と、どんどん真面目で”優しい少女”に変わっていったもののー、

今でも、なぜか宏樹に対してだけは

”イタズラ好きのちょっと悪い女の子”のままだったー。


「ーーへへへ 騙されてたまるか」

散々、麻梨に今までドッキリと仕掛けられてきた宏樹は、

”今日こそ引っかからないぞ”と、瞬きと呼吸以外の反応をほとんど見せない

麻梨の目の前でーー


突然、”変顔”をし始めたー


「ーふへへへへへへ!いつまで笑うのを我慢できるかなぁ~」

宏樹がそう言いながら、恐ろしい変顔を繰り返すー。


しかしー

麻梨は微動だにしないー。


「ーーーくっ、やるなー…さすがは俺の認めたライバルー」

意味不明なことを呟きながら宏樹は

「じゃあー」と、麻梨を突然くすぐり始めるー。


小さいころから、よくふざけあっていたからかー

こういうことは、日常茶飯事レベルで、

年頃の男女になった今でも、二人きりになると

子供のようなことをすることも多いー。


けれどー

くすぐっても、麻梨は笑うこともせずー

瞬きと呼吸をするだけだったー。


「ーーー…ーーー」

流石に心配になってきてしまった宏樹は、

表情を歪めながら、

「ーーま、、麻梨…そ、そんなに俺を驚かせようとしてるならー」

と、麻梨の胸のあたりに手を近づけながらー


「触っちゃうぞ~?」と、呟くー


別に宏樹は特別、エッチな男子ではなかったものの、

麻梨にはよくおふざけでそういうことを言うー。

反対に麻梨も、おふざけをしてくるので、お互い様だー。


だがー

それでも、麻梨は無反応ー


「ーーま、、麻梨ー…くそっ! こうなったらー!」

宏樹は、顔を真っ赤にしながら麻梨の胸に手を触れたー。


それでもーー

麻梨は全く無反応ー


「ーーお、おいーー麻梨ーーー」

流石に不安でいっぱいになった宏樹は、

困り果てた顔で麻梨のほうを見てそう呟いたー


”ーーー宏樹ー”


「ーーー!?」

麻梨の声が聞こえたー。


「ーーーあ?」

驚いて振り返るとーー

そこにはーー

”モアイ”がいたー。


「ーーー!?!?!?!?!?」

混乱する宏樹ー


半月ほど前に、叔父さんがお土産で買ってきてくれた

モアイの置物ー

そこから、麻梨の声がしたのだー


「ーーえ…??え…?どういうことー?」

宏樹が困惑しながら言うと、

モアイの置物からー


”わたし…モアイになっちゃったの…!”

と、麻梨の声が聞こえたー


「ーーーーーーーーーは?」

宏樹は、口をぽかんと開けたまま、

横に膝をついたまま固まっている麻梨と同じように、

微動だにすることもできなかったー



意味が分からないー

どうして、こうなったー????


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


数日前ー


栗本 宏樹(くりもと ひろき)は、

自分の部屋で、机の上に置いた”モアイの置物”を

見つめていたー。


旅行好きの叔父・源太郎(げんたろう)が、

イースター島に旅行に行ったとかで、買ってきてくれた

モアイの置物だー。


叔父の源太郎曰はく、”帰り道で光ったんだよ”なんて

言っていたが、叔父はよく適当なことを言うー。

そのことを知っている宏樹は、話半分程度にしか

その時の話を聞いていなかったー。


”生涯独身 生涯現役”

そう語る叔父は、海外旅行が大好きで、

地球上のあらゆる場所を死ぬまでに制覇する、と意気込んでいるー。

そして、少し前に有給をまとめて取って

その叔父が旅をしてきたのが

”モアイ”で知られるイースター島だったのだー。


叔父・源太郎は”人生、とても楽しそう”にしていて、

そういった面は、宏樹としても尊敬しているし、

叔父から聞く海外の話は、非常にスケールが大きく、

いつも驚かされているー。


そんな叔父からのお土産ー、ということもあり、

特にモアイに興味はなかったが、宏樹はこうして、

モアイの置物を自分の机の上に飾っていたー。


「おはよ~!」

学校に向かう最中、背後から声を掛けられた宏樹は

「あ、おはーー」と、振り返るー。


するとー

宏樹が振り返る顔の動きを計算していた麻梨が、

指を突き出していて、振り返った瞬間に

宏樹の顔に麻梨の指が食い込んだー


「あははっ!引っかかった~!」

麻梨が嬉しそうに笑うー。


「ー小学生か!」

宏樹は思わずそう叫ぶとー

「宏樹にだけは、ついー」と、麻梨は苦笑いしたー。



杉浦 麻梨(すぎうら まり)ー

彼女とは、近所に住む家同士だったこともあり、

小さいころからよく一緒に遊ぶ間柄だったー。


小学校でも、中学校でも仲良しで、

”男女”というよりかは、純粋に”友達”ー

いや、家族ー、そんな感じの間柄だったー


中学時代、他の女子と話すことをなんとなく

恥ずかしがっているような時期もあった宏樹だったが、

それでも、麻梨とだけは自然と話せるぐらい、

麻梨は、宏樹にとって身近な存在だったー。


まさか、高校に入って、彼氏と彼女の関係になるなんてー

夢にも思わなかったけれどー…


「ーーこんなんで、生徒会副会長とか、笑わせてくれるぜ~!」

宏樹が笑いながら言うと、麻梨は「ふふん」と、得意げに微笑むー。


「ーーまぁ…みんなの前では麻梨、いい子にしてるもんな~」

宏樹が言うと、麻梨は「宏樹の前でもいい子にしてるけど?」と笑うー。


「ーそうかなぁー」

苦笑いする宏樹ー


思えば、彼氏と彼女の関係になったのも、去年のクリスマスの

”ドッキリ”がきっかけだったー。


麻梨が突然、「ねぇ…宏樹ー、私が付き合いたいって言ったらどうするー?」と、

恥ずかしそうに聞いてきたのがきっかけだったー


「は、はぁ!?」と、宏樹は顔を真っ赤にしながら叫ぶー。

友達数名と、簡単なクリスマスパーティをしていた最中の出来事ー。


二人になったタイミングで、麻梨が突然、そんなことを言いだしたのだー。


寝耳に水ー

と、例えるのは少し違うかもしれないが、

とにかく”想定外”の言葉だったー。

宏樹からすれば、麻梨は”幼馴染”であり、”幼馴染”以外に

考えられないほど、固い絆で結ばれていたのだー。


寝耳に水どころか、寝耳にコーラをぶち込まれた感じさえしたー。


「ーーーふふふ な~んちゃって!」

麻梨が笑うー。


「ーなんだよぉ!またいつものかよ!本気にしちゃったじゃないかよ!」

宏樹は顔を真っ赤にしながらそう叫ぶー。


そのまま、友達がトイレから戻ってきて、

友達の家でのクリスマスパーティは続きー

やがて、十分に楽しんだ宏樹たちは、

友達の家を後にしたー。


「ーーーー」

クリスマスの夜の街を歩く二人ー


「ーーさっきの話ー

 俺、考えたんだけどさー…

 麻梨とならー……そういうのも、いいのかなって」

宏樹が言うと、麻梨が「え」と、顔を赤くしながら、

宏樹のほうを見つめるー。


「ーーだ、だからその…!つ、、付き合うってやつー!」

宏樹も恥ずかしそうに言うと、

麻梨は「ーえ、、ほ、ホントにー?」と、困惑しながらも

少しだけ嬉しそうにしているー


「ーほ、ホントだよ!俺は麻梨みたくドッキリなんてしないから!」

宏樹は恥ずかしそうにそう叫ぶー


それが、二人が”幼馴染”から”恋人同士”になった瞬間だったー


そんな時のことを思い出しながら歩いていると

「あ、そうだ、今度の土曜日、久しぶりに宏樹の家に行ってもいい?」

と、麻梨が聞いてきたー


「ーーえ?あ、あぁ、いいよー」

宏樹がそう言うと、麻梨は「久しぶりに宏樹のお母さんにも

挨拶しておきたいし!」と、微笑むー。


宏樹と麻梨の家は、家族ぐるみで親しく、

宏樹の両親は、麻梨のこともとても可愛がっていたー。


”麻梨が宏樹の家に来るー”

”宏樹が麻梨の家に行くー”

これは、珍しいことではないー。


恋人同士になる前から、日常茶飯事だー。


そしてー

土曜日の今日、

麻梨はいつものように、宏樹の家に来て、

宏樹と楽しそうに雑談したり、

宏樹の母親とも、まるで娘と母親のように、

楽しそうに話をしていたー。


それからー…

宏樹の部屋で、今度のテストの話題を話したり、

小さいころによく遊んでいたゲームで久しぶりに対戦したりー

色々なことをしてーー


「ーーあれ?そういえば何これー?

 こんなのあったっけ?」


麻梨が、宏樹の机の上に置かれていた、手のひらサイズのモアイの

置物の存在に気付いたー。


「ーあぁ、それは叔父さんが、イースター島でー」

宏樹がそう言いかけたその時ーー


突然、”モアイの置物”から光が放たれたのだー


「ーきゃっ!?」


「ーーえっ!?」

宏樹と麻梨が驚くー。


それと同時に、部屋は真っ白な光に包まれてしまったー


そしてー

気付いたときにはー

麻梨が、膝をついて、虚空を見つめていてー…


と、いう状況だったのだー。


「ーーー…ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれー」


こうなるまでの出来事を頭の中で瞬時に振り返った

宏樹は困惑しながら、麻梨の声を発した”モアイの置物”のほうを見つめるー。


「モ、モ、モ、モアイになったってー?」

宏樹はそう呟きながら、モアイの置物のほうを見るー


”き、気づいたらわたし…こうなっててー”

モアイの置物から響き渡る麻梨の声ー


宏樹は麻梨のほうを見つめるー

麻梨は相変わらず、呼吸と瞬きぐらいしかしていないー。


”きっと、わたしとモアイの身体が入れ替わっちゃってー”

モアイの置物から響く声に、

「い、い、入れ替わりぃ…?」と、宏樹は叫ぶー。


確かにー

麻梨の意識がモアイの置物に飛んだなら、

麻梨の身体は抜け殻になって、意識を失う気がするー。


しかしー

たまに瞳が動いている気がするし、

瞬きもしているー。

意識はありそうな感じの動きだー。


「ーい、いやいやいやあり得ないー。

 入れ替わりだけでもあり得ないのに、

 モアイと入れ替わるとか、さらにありえないー」


宏樹がそう言いながら、

モアイの置物になった麻梨のほうを見つめながら

「こ、今度はいったいどういうドッキリー?」と、困惑しながら呟くー。


”ド、ドッキリじゃなくてー…本当にー”

モアイの置物になった麻梨がそう叫ぶと同時にー、

宏樹は、「え…?」と呟きながら麻梨の身体のほうを

再び振り返ったー


麻梨の身体から、液体が流れ始めたのだー


「ーーーふぇ?」

唖然とする宏樹ー

麻梨のスカートあたりから、液体が垂れ流れているー


それでも麻梨は無表情のままー


「ーちょ!?!?えっ!?」

麻梨の身体になったモアイは、全く感情を変えることのないままー

平然とお漏らしをしているー


「ーーは!?!?!?え!?!?!?え!?!?!?!」

宏樹は、もはやどうしていいのか分からず、あたふたすることしか

できなかったー


②へ続くー


・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


まさかの彼女とモアイの入れ替わり…!

恐ろしいことになりそうですネ~!


今日もお読みくださりありがとうございました~!

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