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病んで自ら命を絶とうとした少女・仁美からの

提案で、お互いの身体を入れ替えた40代独身男性の達平。


仁美として天国のような人生を送る中、

仁美の弟・健吾から”ある話”を聞かされる。


その上で、健吾から、”姉さんの身体を大事にしてほしい”と

お願いされた仁美(達平)はそれを承諾ー。

このまま、仁美として生きていくことを改めて決意するのだったー…。


★前回はこちら↓★

<入れ替わり>病み☆闇③~弟の願い~

人生を諦めていた40代独身男性の達平は、 自殺未遂の女子高生・仁美から突然”入れ替わり”を持ちかけられたー。 何か裏があるのでは?と思いつつも実際に入れ替わりを承諾した達平ー。 仁美になった達平は、充実した女子高生ライフを送り、 ついには、メイドカフェでバイトを始めることにー。 しかし、そんな仁美(達平)...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーでも、どうかー

 どうかー、姉さんの身体を、大切にしてあげて下さいー

 犯罪とか…そういう…姉さんの名誉とか、身体を傷つけることだけはー

 やめてあげて下さいー」


入れ替わってから1年ー


あの日ー

弟の健吾に言われた言葉を胸に、今も仁美(達平)は、

”仁美”として女子高生ライフを満喫しているー。


今日は、友達とカラオケにやってきて、

流行りの歌を歌っている最中だったー


「ーー仁美、ホント、声が綺麗でいいよね~!」


「ーー声が綺麗ってなにそれ~」

笑いながら仁美(達平)は歌を歌い終えると、

注文しておいたソフトドリンクを口に運び、

他の友達と身体を密着させながら

「何を歌う~?」と、二人で曲の一覧を見つめているー。


仁美(達平)は、すっかり”別人”のようになっていたー。

1年前に”自殺未遂”を引き起こしー

病んでいた少女とは、もはや完全に別人だー。


明るく、毎日本当に楽しそうにしているー。

とてもおしゃれで、髪の色も明るい色なため、

一見すると、派手な子だと勘違いされてしまいそうだけれどもー、

単に”おしゃれ”が大好きなだけで、学校での授業態度はまじめ、

今年は生徒会にも立候補したほどだったー。


「ーーふぅ~~」

帰宅した仁美(達平)は、一つ、息を吐くと、

スマホで友達とのやり取りを始めるー。


足を開いた状態でベッドに座りー、

まるでおっさんのような姿勢になる仁美(達平)ー


「ーーほんと、俺とは真逆の人生だよなー…」

仁美(達平)は、そう呟くー。


達平には、こんな”青春”なんて全くなかったー。

達平の人生に”青春の1ページ”など存在しなかったー。


1年前の”仁美”の写真と、今の自分の姿を鏡で見つめるー

ボサボサ頭で、生気のない顔つきの仁美ー

明るい色の綺麗な髪で、自信に満ち溢れた仁美ー


「ーー大変身じゃねぇか…ゾクゾクするよなー」

仁美(達平)はそう呟くと「さ~てと」と、笑みを浮かべるー。


1年前から始めたメイドカフェのバイトはまだ続けているー。


当初はー

男を誘惑して色々遊ぼうかと思ったし、

”裏垢女子”的なアカウントを作って、承認欲求を満たそうとしていたし、

将来的に”AV女優になってみるか”なんて考えまであったー。


けれどー

1年前ー、弟の健吾に”姉さんの身体と名誉は大事にしてほしい”と

言われてー…

仁美(達平)の考えは変わったー


”仁美として、ちゃんと生きていこう”と、そう思ったのだー


そのおかげで、今の自分がいるー。


「ーー俺はーーもしかすると、女に生まれてくるべきだったのかもなー」

仁美(達平)は鏡を見つめながらそう呟くー。


悲惨な人生を送ってきた達平ー。

キモイ、キモイ、キモイ言われ続けて来て、

人格も歪んでしまった達平ー。

自分のような”身体”に生まれれば、誰だって性格が歪むー。


そんな風にさえ思ったー


「ーーーまぁ…俺はー

 いいえ、わたしはもう、仁美だからー」


1年も経つとー

”自分が仁美”であることが”普通のこと”になってくるー。


最初のように、胸を揉むだけでドキドキしたりすることも

流石に少なくなってきたー。


けれどー

おしゃれをするのは、今でも大好きだー。

ゾクゾクするし

”かわいい自分”を見つけると、本当にうれしくなるー。


両親も、”女の子は可愛くいてほしい”という考えの持ち主でー

今の仁美(達平)には最高の両親と言えたー


「ーーーでもーー…それが、この子にとっては

 ”苦痛”だったんだろうなー」

仁美(達平)は、そう呟くと、「あ、そうだ!」と、

隣の部屋にいる弟の健吾に声を掛けたー


「健吾~!この前貸した本返して~!」

そう言いながら健吾の部屋に入っていくと、

弟の健吾は「あ、姉さん、待ってて!」と苦笑いしながら

借りた本を探すのだったー。


弟の健吾はー

”姉さんが入れ替わってしまった”ことを知りつつも、

それが姉さんの幸せのためだ、と、

今では”新しいお姉ちゃん”として、仁美(達平)のことを

受け入れてくれていたー。


”中身”のことは全く聞こうともしないー。

それは、健吾なりの配慮であると、仁美(達平)も考えて、

その配慮をありがたく思いつつ、

自分も”新しいお姉ちゃん”として、健吾のことをたっぷりと可愛がったー


どうして、こんなに健吾のことを可愛く思えるのだろうー?

そんな風に不思議に思うこともあったけれどー

きっと、”身体”に少し自分も影響されているのかもしれないー。


中身は変わっても、身体の”血の繋がり”は、

消すことのできないものなのだからー。


・・・・・・・・・・・・・・


入れ替わってから、4年が経過したー。


仁美(達平)は、高校を卒業しー、

大学に通い始めていたー。


大学でも友達は多くー、

充実した日々を送ることができているー。


「ーーうん!また明日~!」

”おしゃれ”な仁美(達平)は大学でも人気で、

男女問わず、友達も多かったー


「ーわたしって、やっぱ性格悪かったわけじゃないんだねー」

仁美(達平)は自虐的に微笑むー。


どんな美人でも、性格に難があればー、

流石に嫌われるー。

だが、仁美になった達平は、嫌われるどころか、むしろ、好かれているー。


人には、色々なパターンがあるー。


けれど、達平の場合は明らかに

”容姿”で損をしていてー、

どうすることもできない人生だったのだー。


「ー見た目で、人生ってこんなに変わるんだなー」

そんなことを思いながら、家に帰ると、

パソコンを起動するー。


仁美(達平)は、大学入学を機に、一人暮らしを始めた。

仁美の家族は、達平にとって、本当に家族ではないがー、

それでも、今でもその関係は良好だー。


”ひとみさん、週末はよろしくお願いします!”

ツイッターにそんなメッセージが届いているのを確認した

仁美(達平)は、笑みを浮かべるー。


仁美(達平)は、あれからメイドカフェのバイトをやめて、

今は趣味でアニメキャラのコスプレをしたり、

同人誌を売るイベントに参加したりして、欲望を楽しみつつ、

仲間と共に作品を楽しんでいるー。


自分が達平であったときとは、異なる楽しみ方ー

けれど、元々達平もアニメや漫画が好きだったこともありー、

今では”アニメ好きの女子大生”として、プライベートでも

仲間が充実しているー。


”まさか、自分がコスプレをして、周囲と共にこんな風に楽しむ日”が

来るなんて夢にも思わなかった仁美(達平)は

公私共に、本当に充実した日々を送っていたー。


弟の健吾に”大切にしてほしい”と言われたこともー、

影響しているのだろうー

健吾がいなければ、今頃は、性欲に狂う女になっていたかもしれないー。


そんな、ある日ー


「ーーあ」

「ーーーあ!」


同人誌のイベントに参加した帰りー、

仁美(達平)が街を歩いていると、

本当に偶然ー…

達平(仁美)と、鉢合わせしたのだー。


しかも、達平(仁美)は、30代ぐらいの女性と一緒に

街を歩いていたー。


「ーちょっと、待ってて」

相変わらず”容姿”は、お世辞にも良いとは言えないー。


だが、清潔感は増しただろうかー。

一緒にいた女性にそう言うと、

達平(仁美)が近づいてきたー


「ーーひ、久しぶりー…」

仁美(達平)が言うと、達平(仁美)は「お久しぶりです」と、微笑むー。


「ーーー…わたし…すごい綺麗ですね…ー別人みたい」

達平(仁美)がそう言うと、

「ーー俺も…なんだか、凄いイキイキしてるー」

と、仁美(達平)は言い返したー


そして、お互いにー

「ーー俺っていうのー」

「わたしっていうのー」


「違和感しかないよー」

「なんかもう、違和感ありますねー」


と、言って笑ったー


達平(仁美)は、達平の身体になってから

今までのことを簡単に話してくれたー。


なんと、達平(仁美)は一緒に歩いていた女性と結婚しー

今ではコンビニのオーナーになっているのだと言うー。


「ーーお、、お、、俺の身体で、そんなー?」

仁美(達平)はそう言うと、

達平(仁美)は「それは、お互い様ですよー」と、微笑むー。


仁美からすれば、”わたしの身体でそんな楽しそうにー”

達平からすれば、”俺の身体で結婚ー”?


そんな感じだったー


「ーー…はは…どうやら俺と君は、

 生まれてくる身体を間違えてたのかもな」

仁美(達平)がそう言うと、

達平(仁美)は「そうかもしれませんねー」と、微笑んだー。


達平は”性格”は消して悪くはなかったー。

仁美になったあと、嫌われることなく、寧ろ人気者になっているぐらいだし、

明るくて優しくて楽しい、などと、周囲の友人に聞いても

良い評判しか聞かないー。

達平自身、元々そういう性格だったが”容姿"に恵まれず

容姿だけで遠ざけられ、性格も中年になってからは歪んでしまったー。

達平が、達平として幸せな人生を送ることは、ほぼ”不可能”だったと言えるー。


仁美もそうー

仁美は、容姿に恵まれていたー

けれど、仁美はそれが苦痛だったー。

恵まれた容姿を持っていても、そのこと自体が仁美を苦しめ、

周囲から色々なことを言われたり、

両親から”可愛く”あることを望まれたりー

その結果、ついには精神的に病んでしまい、不登校になり、

自殺未遂まで引き起こしてしまったー。

他人からすれば理解できないかもしれないー

けれど”可愛い”と呼ばれる自分の身体そのものが、仁美にとっては

苦痛でしかなかったー。

仁美が、仁美として幸せな人生を送ることも、また、不可能だったー。


けれどー

入れ替わった二人は、違ったー

達平は、性格の良さを生かせる仁美の身体を手に入れてー


仁美は、自分が苦痛に思わない身体を手に入れてー

また、自由も手に入れたー


二人はー

元々の身体と”中身”の相性が決定的に合っていなかったのかもしれないー。


「ーーーわたしーー 

 あの人との子供ができたんですー」

少し離れた場所で待つ妻のほうを見ながら

達平(仁美)が笑うー。


「ーー…俺が結婚なんて、ホント信じられないよー」

仁美(達平)が言うと、

達平(仁美)も「わたしがそんなイキイキと笑ってるなんて、

わたしも信じられません」と、微笑むー。


「あ、そうそうー

 この前のコスプレー、実はちょっとネットで見ましたよ」

と笑うー。


同人系の活動をしている仁美(達平)ー

それを知り、達平(仁美)も、たまに”元自分”の現状を

確認しているのだというー


「はは…人の身体なのに、あんなことしてー…その、なんていうかー」

仁美(達平)の言葉に、達平(仁美)は首を横に振るー


「ーいいんですー。

 それに、もう、その身体は、あなたの身体ですー。

 そして、この身体はわたしの身体ー。

 もう、他人のものじゃありませんー」

達平(仁美)はそこまで言うと、弟や両親の現状を聞いてきたー


「みんな元気だよ」

仁美(達平)が言うー。


そして、「そろそろ奥さん待たせすぎじゃないか?」と言いながら

「ほら、俺ー…可愛いし…浮気と思われるかも?」と冗談を

口にするー


「あ、そうでしたー」

達平(仁美)は笑うと、

「じゃあまた…お元気でー…」と、頭を下げて立ち去っていくー


二人ともー

”入れ替わったあの時”とは、印象が変わったー


身体が変わったから…だけではない。

中身も、お互いに明るくなった気がするー。


病んでいた少女とー

闇に囚われていた独身男性の姿はもうないー。


今、そこにあるのは、

入れ替わったことで

”希望”を手にした女子大生と、

光に満ち溢れた中年男性の姿だったー。



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


病み☆闇の最終回でした~!

平和なエンドのお話ですネ~!


入れ替わったことによって、お互いも、周囲も

幸せになるなら、いいことですネ~★


お読みくださりありがとうございました~!

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