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「ーー敵の奇襲だ!」

男が叫ぶー。


「ーーー!」

仲間の言葉に、宿の外を見つめると、

”魔物の軍勢”がそこには迫りつつあったー。


とある世界ー。

この世界では”魔物”に世界の半分ほどを占領され、

人間たちは、辺境の地へと追いやられていたー。


魔物たちは、それだけでは満足することなく、

”人間の住処”を完全に支配しようと、

少しずつ、けれども確実に侵略の魔の手を伸ばしつつあったー。


だがー、人間たちも黙ってそのまま

魔物たちに支配される存在ではなかったー。


各地で、魔物たちと戦いを続ける勇敢な者たちがー

魔物たちの侵略を跳ね除け、なんとか、

人間は、”自分たちの在り処”を守っていたのだったー。


そしてー

そんな勇敢な人間たちの中でも、特に目立つ活躍をしていたのがー

勇者の血を引く青年・ランヴァルドだー。


ランヴァルドは、小さな辺境の村の出身だが、

果敢にも魔物に立ち向かい、魔物の侵略を防ぐどころかー

魔物たちの王・魔帝ガロスの待つ魔物の本拠地に

次第に進行しつつあったー。


「ーー罠だったかー」

そんな、ランヴァルドが宿屋から外を見つめながら言うー。


ランヴァルドは、村にいた頃から、自信家で、

どんな時でも、冷静な性格の持ち主ー。


だからこそー

ここまでやってくることができたのかもしれないー。


「ーーどうするの?」

ランヴァルドの隣にいたエミリアが言うー。


エミリアは、冒険の途中で立ち寄った街で出会った

町娘で、年齢はランヴァルドと同じぐらいだろうかー。


いつも、どこか寂し気な表情を浮かべている彼女はー、

両親を魔物に奪われた過去を持ちー、

魔物と戦うランヴァルドが街を訪れた際に、

「わたしも…いっしょに戦わせてくださいー…」と、

頼み込んだー


それからは、共に戦ってきた間柄だー。


彼女は、光の魔法を使う一族の末裔で、

錫杖から光の魔法を放ち、魔物たちと必死に渡り合っているー。


「どうするってー?なんとかするしかねぇだろ?」

斧を持った自信満々そうな表情を浮かべる男・エディ。


「ーしかし…まんまとはめられましたねー

 最初からここは、魔物の村だった…ということでしょうからー」

本を持ったインテリ系の魔法使い・セシリオが呟くー。


「ーーーへっ…全員アタシが蹴散らしてやるよ!」

くノ一のような恰好をしたマーヤがそう言うと、

ランヴァルドは「油断するなよ」と呟いてー

宿から飛び出したー。


ランヴァルド一行は、昨日ー

魔物の支配下にあるこの地域で”人が住む村”を発見しー

そこで、祝福を受けたー。


ランヴァルドたちは、警戒しながらも、

”魔物の支配領”に入ってから一度も休んでいなかったことやー、

魔物の気配を感じなかったことから、

この村で一晩を過ごしたー。


だが、それは罠だったー。


魔物の一人”魔将軍ファントム”による罠ー。

村人たちは全員、ファントムが作り出した”幻影”で、

最初からこの村に住人など、存在していなかったのだー


”具現化して、触れることもできる幻影”

それを、生み出すことのできる魔将軍ファントムの罠に、

まんまとはまり、

ランヴァルド一行は今、包囲されていたのだー。


「ーーーーーーはっ!」

ランヴァルドは、華麗な剣さばきで、魔物たちを

次々と撃破していくー


その表情には、まるで動揺も見られないー。


「ーーーおらおらぁ!この程度か!」

斧を振るうエディが、魔物たちの大群を蹴散らすー。


「ーーーわたしだって…戦えます!」

風で髪を揺らしながら、光の魔法を放ち、魔物を駆逐するエミリアー


「ーーアタシの動きーアンタたちに見えるのかいー?」

くノ一風のマーヤが、素早い動きで魔物を駆逐するー


「ーーーはぁっ!」

本を手に、呪文を唱えると、魔物を切り裂く風の魔法を発動するセシリオー。


5人は、下級の魔物などでは、太刀打ちできないほどのー

実力者だったー。


「ーーーー」

魔将軍ファントムが、村の入口からランヴァルドたちを見つめていたー。


「ーーーファントム!」

それに気づいたランヴァルドが剣をファントムの方に向けるー


「ー俺たちを罠にはめたつもりだったようだがー

 残念だったなー!

 ここが、お前の墓場だ!」


冷静ながら熱さも持ち合わせるランヴァルドが

笑みを浮かべながらファントムに向かってそう叫ぶー。


他の4人も、周囲の魔物たちのほとんどを駆逐して、

ランヴァルドの近くに駆け寄るー


「ーー勇者の末裔かー」

魔将軍ファントムは渋い声でそう呟くとー


「ーーここが我の墓場となー?笑止ー」

と、不気味な笑みを浮かべたー。


「ーーー!」

ランヴァルドが周囲を見渡すー。


村の周囲の崖から、大量の”上級兵”が姿を現したー


魔物の中でも”エリート”と呼ばれる

重装備の骸骨騎士たちだー。


「ーーー貴様らが倒したのは、”前菜”ー

 メインディッシュは、我が精鋭部隊が努めようー」


ファントムがそう言うと同時に、

骸骨騎士たちが一斉に、ランヴァルドたちの方に向かってくるー


「来るぞ!」

叫ぶランヴァルドー。


圧倒的実力を持つランヴァルドたちー。

しかし、ファントム率いる骸骨騎士たちの力は強大でー、

数体程度であればともかく、この数を相手にするのは、無理があったー。


次第に追い詰められていくランヴァルドたちー。


ランヴァルドは、少し離れた場所からこちらを見ている

魔将軍ファントムのほうを見つめるー。


「ーーー”くそっ、やつをここで打ち取りたかったがー”」


ランヴァルドは”無理”だと冷静に判断したー。

そして叫ぶー。


「みんな!あっち側の森を抜けたところに川がある!そこに飛び込むんだ!」


ランヴァルドは”もし”この村で襲撃された場合の”逃げ道”も

昨日のうちに確認しておいたのだー。

この先にある川は流れは速いが、死ぬほどではないー…


そして、その強い流れは魔物たちの追撃を阻むであろうー、と、

ランヴァルドはそう思っていたー。


「おう!」

斧を持ったエディがすぐに反応して、他の三人も続くー。


「ーーほぅ…森の中に紛れて、反撃の隙を伺うつもりかー?」

魔将軍ファントムはそう呟きながら、骸骨騎士たちに追撃を命じるー。


ランヴァルドたちは、森を抜けてー

川の前までたどり着くー。


川に飛び込むには、多少の高さの崖から飛び降りなくてはいけないー。


だがー

生き延びるためには、これしかないー。


その時だったー


「ーーそう簡単に、逃げられると思うたかー?」

魔将軍ファントムが、姿を現しー

周囲に”怨念の壁”が展開されるー。


魔将軍ファントムの技の一つで、

逃亡しようとする相手を確実に仕留めるための技だー。


「ーーくそっ!」

エディが叫ぶー。


しかしー


直後、激しい光が森に降り注ぎー、

怨念の壁が打ち消されるー。


「ーーーエミリア!」

ランヴァルドが叫ぶと、エミリアは「先に行って!」と叫び返すー。


「ーわたしの光の力なら、怨念の壁を消せるー

 だから、みんな、先にー!」

エミリアの言葉に、ランヴァルドは少しためらうー。


しかし、そんなランヴァルドの反応をすぐに察して、

「みんなが飛び込んだら、わたしもすぐ飛び込むから!」

と、ランヴァルドに向かって叫ぶー。


ランヴァルドは”冷静に状況を判断”して、頷いたー。


ここで”エミリアを置いていけるか”などとやっていたらー

”全員死ぬ”のだー。


ランヴァルドが飛び込むと、エディは「死ぬんじゃねぇぞ!」と

エミリアに叫ぶー


「ー分かってます!」

ランヴァルド以外には敬語で喋るエミリアがそう言うと、

エディは頷いて、そのまま川に飛び込むー


「やれやれー…」

セシリオは少しイヤそうだったが、

「死んではこれで、終わりですからねー」と、嫌々呟きー、

そのまま川に飛び込むー。


「ーーーアンター…ランヴァルドを一人にしちゃ、ダメだからね」

くノ一のマーヤが言うと、「ー分かってますー」と、エミリアが言うー。


マーヤは頷き、そのまま川に飛び込むー。


そしてーーー

四人が無事に川に飛び込んだのを確認すると、

エミリアは、光の魔法を、魔将軍ファントムらの方に向かって

最大出力で放つー。


4人が飛び込むまでの間に使っていた”光の雨”は

かなりの集中力を要するため、エミリアが移動中は使えないー。


だからー

別の技で魔物たちを攻撃してー

自分も川に飛び込もうとしたー


しかしー


「ーーーー!」

崖側に、魔将軍ファントムが”ワープ”するかのように出現し、

行く手を阻むー。


「ーー逃げられると思うたか?

 光の末裔よー」


ファントムの言葉に、エミリアは至近距離で光の魔法を放とうとするー。


しかしー

魔将軍ファントムのほうがー

反応が早かったー。


エミリアの攻撃を回避し、

ファントムから放たれた闇の瘴気に、エミリアは

吹き飛ばされてしまうー


「ーーう…」

エミリアは倒れながら、ファントムを見上げるー。


「ーーーーーその目ー…思い出したぞー」

魔将軍ファントムは、そう呟くー


「ーーー…!!」

エミリアが表情を歪めるー。


「ーーあの時のー小娘かー」


魔将軍ファントムこそー

エミリアの両親の命を奪った張本人ー


魔将軍ファントムはそのことを思い出すと、

少しだけ笑みを浮かべたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


川の激しい流れに流されてー

近くの森のような場所に流れ着いたランヴァルドたちー。


「ーみんな、大丈夫かー?」

ランヴァルドがすぐに確認するー。


エディ、セシリオ、マーヤがそれぞれ返事をするー


「よかったー」

ランヴァルドの言葉に、エディは「でもよ…!」と、

一人崖の上に残ったエミリアのことを心配するー。


「ー大丈夫だよ」

ランヴァルドはそう呟くー。


「ーーーだ、大丈夫ってー」

エディが食い下がると、

ランヴァルドは、冷静に、笑顔で言い放つー。


”消息不明のキャラって大抵生きてるから大丈夫”

とー。


「ーな、なんだよそれー」

エディが呟くー。


ランヴァルドは、読書家でもあったー。

この世界でも”物語”はたくさんあるー。

小さいころから、数々の物語を読んできたランヴァルドは

確信していたー。


”消息不明のキャラは大抵生きている”

とー。


つまりー

エミリアも無事のはずだー、とー。


「ーエミリアは俺たちを逃がしてくれたんだー。

 ここで俺たちが膝を折ってどうするー?


 そしたら俺たちは一生、エミリアとは会えないー。


 もし、エミリアはきっと今も戦ってるー。


 だからー

 俺たちが膝を折るわけにはいかないー」


ランヴァルドはそう言うと、少しだけ笑みを浮かべてからー


「ーなんて…物語の主人公っぽいことを言ってみたけどー…」

と、少しだけ呟くと、

「ーーいえ、あなたの言う通りです」

と、セシリオは、本を持ちながら呟くー。


「ーここで我々が立ち止まっては、エミリアさんを救うことは

 できませんー」


「ーーそうね。アタシたちが、エミリアを助けなくちゃ」

くノ一のマーヤがそう言うと、

エディも少しだけ考えてから「そうだな…俺たちが頑張らないとな」と

頷いたー。


ランヴァルドはそんな仲間たちの様子を見てから

笑顔で頷くと、現状を分析するー


「ー森の中は、魔物が身を隠すのにうってつけだー。

 奇襲に気をつけながら先に進もうー。


 やつらもそう簡単には追ってこれないとは思うけど、

 ずっとここにとどまっているわけにもいかないからなー」


そう言いながら率先して前を進むランヴァルドー


「ーーーーー」

村の悪友でもあるエディは、ランヴァルドが

”勇者の末裔”であることを気負っていることを知っているー


”消息不明のキャラは大抵生きている”

そんな冗談を交えながらも、本当はランヴァルドが一番不安を

感じていることをー、エディは知っているー。


どんな時でも冷静に、時に冗談を交えながら、

魔物と戦うランヴァルドー。

しかし、彼とて、まだ自分と同じ”青年”でしかないのだー


「ーーー」

エディは、そんなランヴァルドを心配しながら、

仲間たちと共に、ランヴァルドの後に続いたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーう…」


エミリアは、魔物たちの本拠地に連れ込まれて、

拘束されていたー。


「ーーへへへへへへへ…いい女じゃねぇかー

 儚げな雰囲気もまた、芸術的だー」


ニヤニヤしながら、画家のような雰囲気を持つ

魔物が笑うー。


魔将軍”アルテイスト”の言葉に、

魔将軍ファントムは「ーその女は”光の一族の末裔”だー。」

と、呟くと、アルテイストは笑みを浮かべたー。


「ーつまり、その力を、俺たちのものにしたいってー

 そういうことだなー?」


アルテイストの言葉に、ファントムは「左様ー」と、呟くー。


「ーー我らが手ごまとすることができればー

 あの者の”心”を攻めることもできるであろうなー」

魔将軍ファントムはランヴァルドを思い浮かべながら言うー


”あの者の一番厄介なところは冷静な判断力ー

 それを奪うためにはーー…”


ファントムは、エミリアのほうを見つめるー。


「ーー…わ、、わたしがあなたたちの言うことを聞くとでもー?」

エミリアが怯えながらも叫ぶー


「ーわたしは、死んでもあなたたちの言うことなんか、聞きませんー!」

エミリアが叫ぶー。


「ーーへへへ、だってよ?魔将軍サマ」

魔将軍アルテイストが揶揄うようにして言うと、

「ー貴様も魔将軍であろう?」と、魔将軍ファントムが返すー。


魔帝ガロス直属の”三人の魔将軍”


実戦を得意とするは、魔将軍ファントムー。

そして、この魔将軍アルテイストは、”芸術呪術家”を名乗る後方支援担当ー。


「ーーーへへへ…お前は今に、俺たちの言いなりになるんだー

 俺の”新たな芸術品”としてなー」


その言葉に、エミリアは表情を歪めるー。


「ーーーへへへへへー

 お前の記憶が見えるー」


アルテイストはそう呟くと、

エミリアの頭の方に筆を向けて、

その筆から、不気味な波動を放ち始めたー


「ーランヴァルド~、

 ランヴァルド~~~

 ランヴァルドぉ~~~~

 

 へ~~ぇ、あの男ばっかり頭の中にあるのかぁ~


 なんか、うぜぇなこいつの顔~」


アルテイストはニヤニヤしながら、

エミリアの記憶を覗いているようだー。


そしてー


「ーこの顔、見飽きたぜー

 塗りつぶすかー」


そう、呟くと、エミリアの頭の方に向けた筆を

不気味に動かし始めたー


”エミリアの中のランヴァルド”を塗りつぶしていくー


「あ…ぁ…ぁ」

ビクビクと震えるエミリアー


「ランヴァルドーーーー」

目から涙をこぼしながらエミリアの目の輝きが失われていくー。


「ーーククククー

 ”脳”の中は俺のキャンバスだー。

 俺の思うように、脳の中の風景を書き換え、そして、支配するー」


魔将軍アルテイストは、筆を持って、エミリアの前で舞うように

踊りながら、エミリアを意のままに操れるように”洗脳”していくー


「ーーそういや、お前ー…

 この女の村、滅ぼしたんだったよなー?」


アルテイストの言葉に、魔将軍ファントムは頷くー。


「ーーー親の仇に、忠誠を尽くす闇に堕ちた女ー…

 クククー 最高の作品が仕上がりそうだぜー」


目から涙をこぼすエミリアを見つめながら

魔将軍アルテイストはニヤニヤと笑みを浮かべたー。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


ファンタジー世界が舞台の洗脳モノデス~!


今日は洗脳される部分までで終わってしまいましたネ~!

次回、どのような”作品”にエミリアが仕上がるのか、

楽しみにしていてください~(笑)☆

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