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「あっ…♡ う…♡ ふぅ…♡ あっ…♡」


サンタのコスチュームを身に着けた女が、

背の高い青年に何度も何度もキスをされながら、

嬉しそうに顔を赤らめているー。


「ーーほら、もっと激しくキスをするんだー」

青年が笑いながら言うー。


青年の言葉に「はい…♡」と、ゾクゾクしながら返事をした

サンタコスの女は、青年に再び、何度も何度もキスを繰り返すー。


「ーーんっ…♡」と、嬉しそうな声を時折漏らしながらー

舌を絡める女ー。


一見するとー、

クリスマスにイチャイチャしているカップルー…に、

見えなくもないー。


しかしー

青年とサンタコスの女は

”まったくの他人”だったー。


青年は、サンタコスの女のことを知らないしー

サンタコスの女は、青年のことを全く知らないー。


それなのに、女はとても嬉しそうに、キスを繰り返しているー


女のスマホが鳴るー。


”お姉ちゃんー?今、どこにいるのー?

 みんな、待ってるよー?”


妹からの連絡ー。


だが、サンタコスを着た女は、青年とのキスに夢中で気づかないー。


女はー

そうー

青年に”洗脳”されていたー。


青年に対する”好き”の気持ちでいっぱいになるようにー

他のことを、何も考えられないようにー、

とにかく、欲望のままに青年自信を愛するようにー


そうー

洗脳されていたー。


「ーーふぅ」


しばらくすると、散々、サンタコスを着た女とエッチなことを

繰り返した男は、満足したのか、女から離れるー。


「ーーーさて、ちゃんと”掃除”しなくちゃなー」

青年はー”大の掃除好き”だったー。


いやー、何事も掃除をしないと気が済まないし、

家が汚れていると、ソワソワして、苛立ちを隠せないー。


「ーーーーあぅ…♡ もっと…♡ もっと…♡」

サンタコスの女は、髪を乱しながら、はぁはぁと荒い息で

青年に迫るー。


「ーーーふふふ…悪いね。もう時間だー。僕は行かないと」

青年は腕時計を見つめると、優しい笑みを浮かべたー。


「ーーー汚したら、ちゃんと”掃除”しなくちゃね」

青年はそれだけ言うと、サンタコスの女のほうを見つめてー、

そのまま手を、女の頭のあたりにかざしたー。


青年は、強く念じるー


”消去(デリート)”とー。


それと同時に、サンタコスの女はその場に、へなへなと座り込んで、

無表情のまま、まるで赤ん坊のように

意味不明な言葉を呟きだすー。


涎を口から流しながら、ぱくぱくと何かを呟く女を見つめるとー

「君の記憶は、綺麗さっぱり、掃除しておいたよー」

と、青年は笑みを浮かべて、そのままサンタコスの女と

エッチをしていたカラオケボックスの個室の外に出たー。


「ーーー僕のことは、全て忘れろー」

カラオケボックスから出る際に、店員に向かって

そう”洗脳”すると、そのまま青年は店の外に出たー


「ーーふ~~~…」

クリスマスイブー。

青年はクリスマスツリーを見つめながら

「もうすぐ、今年も終わりかー」と呟くー。


そしてー

いつも噛んでいるキシリトールガムを口にすると

それを噛みながら

”大掃除”の季節だー、と、静かに笑みを浮かべるのだったー。



数時間後ー


カラオケルームの個室からなかなか出て来ない女を

見に来た店員は、唖然とするー


サンタコスの女が、へらへらと笑いながらー

その場でお漏らしをしていたからだー


「ーーお客様…?お客様…?」

女性店員が困惑しながら、サンタコスの女に声を掛けるー。


「う~~~…あ~~~っ!」

笑いながら手足をじたばたさせて、

自分がお漏らしをして作った水たまりの上で

仰向けに寝転ぶ女ー。


他の店員も駆け付けて、サンタコスの女から事情を聞こうとするも、

女の返事は、全く要領を得ない状態でー、

やがてー、持っていた学生証から、店長が家族に電話をかけたー。


すぐに、妹を名乗る高校生が駆け付けたもののー

女は、サンタコスを身に着けたまま、へらへらと笑うばかりでー

妹を前にしても、全くまともな反応をすることはなかったー。


「お姉ちゃん…どうしちゃったの…!?ちょっと!?」

気の強そうな妹が、サンタコスの姉に向かって叫ぶー。


だがー

”お姉ちゃん”がまともな答えを返すことはなかったー。


戸惑う妹の側にはー

”響 翔子(ひびき しょうこ)”と書かれた学生証が転がっていたー。


サンタコスを身に着けた姉ー

翔子から、まともな返事が戻ってくることなど、ないー


何故なら彼女はー

”記憶を大掃除”されてしまったのだからー。


今の翔子は、生まれたばかりの赤ん坊と、

全く同じような状態になってしまっていたのだー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーふ~~~…」


青年が、アパートに帰宅するー。

そこにはー

”彼女”と思われる人物と楽しそうに、写っている写真が

飾られていたー


これは、”戒め”ー

愚かだった、己への、戒めー。


彼ー

安藤 修治(あんどう しゅうじ)は、

写真を見つめながら思うー。


「ーーー由奈(ゆな)ー

 君のおかげだよー。

 今の僕がいるのはー」


修治は、そう呟くと、

由奈の写真を見つめながら、静かにベッドの方に歩いていき、

ベッドに横たわったー。


”飽きたおもちゃは、捨てるでしょー?”


由奈の言葉を思い出すー。


「ーあぁ、そうだなー

 君の言う通りだよー」


修治は、静かにそう微笑んでー


”おやすみ”

と、静かに目を閉じたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーどうして…どうしてなんだー!?」


1年前ー

大学生だった修治は、”裏切り”に遭ったー。


信じていた”女性(ヒト)”からの裏切りー。


江崎 由奈(えざき ゆな)ー

修治にとって、幼馴染でもありー

彼女でもあった人物ー


由奈は小さいころから、何でもできてー

気配りもできる、とても優しい子だったー。


由奈と修治の家は近所だったこともありー

小さいころから家族ぐるみの付き合いー。

当然、由奈と修治もお互いに仲良しだったー。


そんな二人も、中学を卒業すると同時に、

それぞれ別々の進路に進みー

由奈の家が、父親の仕事の都合で引っ越したこともあって、

二人の関係は”自然消滅”したかに思われたー


だがー

大学に入学した修治を待っていたのは”奇跡”ー


高校を卒業して、再びこちらにやってきていた由奈と、

偶然”同じ大学”に入り、大学で由奈と再会したのだー。


中学の頃と同じー

優しく、気配りのできる由奈ー。

修治は、由奈と”小さいころと同じように”仲良くなってー

やがてー、男女としての付き合いを始めたー。


幼馴染とこんな風に再会して、

彼氏・彼女の関係になったー。

修治は、由奈との再会に運命を感じていたし、

大学を卒業したら、本気で結婚することも考えていたー


けれどー

それは”幻想”だったー。


由奈はー

変わってしまっていたー。

高校生活で何があったのかは、分からないー。


だが、いつの前にか、男癖が悪くー

人を騙す”悪女”に変わってしまっていたのだー。


修治と付き合いながら、由奈は”本命の彼氏”が別にいたー。

しかも、その彼氏は”ワル”で、由奈は彼氏と組んで、

中年のおじさんをターゲットに金を巻き上げていたのだー。


そのことを問い詰めた修治ー。


「ーー僕…僕は、君のことをー!」

修治が涙ながらに叫ぶとー

由奈は言ったのだー


”飽きたおもちゃは、捨てるでしょー?”


とー。


修治は、”小さいころに一緒に遊んだ”玩具”でしかないと、

由奈は言い放ったー。


そしてー

由奈はバカにした様子で、修治のほうを見つめたー


「いつまでもさ…わたしに”昔のわたし”を押し付けるの、

 やめてくれるー?」


由奈の言葉に、修治は、反論することもできなかったー。


修治の記憶の中では”由奈”の存在は

中学生の時のまま止まっているー


人は、久しぶりに再会したときー、

”最後に会ったときのまま”のイメージを抱いてしまうー。


けれどー

人は、お互いに会っていなくても、それぞれの刻を刻んでいるー。


”空白の高校時代”

その間に、由奈に何があったのかー、

あるいは何もなかったのかは分からないー


けれどー

由奈はもう、修治の記憶の中の由奈とは、別人なのだー。


「ーーゴミは、ゴミ箱に捨てなくちゃー

 ちゃんと、”お掃除”しておかなくちゃー ね?」

由奈はそれだけ言うと、修治に向かって

優しい笑みを浮かべながら呟いたー


「ーーあんたは、わたしにとって壊れたおもちゃー。

 つまり、ゴミー。

 わかった?」


由奈との絆はー

その日を持って”切れた”


いやー

元から、絆なんて、存在しなかったのかもしれないー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーーーはぁ」


目を覚ました修治は、手を動かしながら呟くー


「ーまた、”あの時”の夢を見ちゃったかー」


修治はそう呟きながら身体を起こすー。


信頼していた大好きな幼馴染の由奈に裏切られたときの

ことは、今でもこうして夢に見るー。


あの日以来ー

修治は極度の人間不信に陥り、やがて、大学もやめてー、

廃人のような生活を数か月間送ったー。


毎日毎日、由奈に裏切られたときのことを思い出してはー

苦しみ、悲痛な叫びをあげていたー。


”記憶なんていらない”

”思い出なんて、いらないー”

そんな風に、思い続けたー。


だが、そんなある日ー

修治は”出会った”のだー。


”この力”とー。


修治の腕が静かに光るー


”人を洗脳する力”


修治は、大学を辞めて、廃人のような生活を送った末に、

自殺未遂を起こしてしまったー


しかしー

その際に、修治はこの力に目覚めたのだー


何が原因だったのかは、分からないー。

”死の直前”を経験したことで、超人的な力に目覚めたのだろうかー。


それ以来ー

修治は、この力を使って、欲望の日々を送っているー。



「ーーーー今日は、君だー」

修治は、コンビニの前で友達と話していた女子高生二人組のうちの

一人に手を向けるとー

その少女は、ビクンと震えて、「あ…」と呟くー


「ーーえ…恵美(えみ)?ちょっと、あんた何をー!」

恵美と呼ばれた女子高生と話していたもう一人の女子がそう叫ぶー。


「ーーー君に恵美という友達はいない。いいね?」

修治は、その女子高生にも手をかざすと、その子は「はいーー…」と

呟いて、一人、コンビニの店内へと戻っていくー。


修治は、洗脳した恵美の手を掴み、

「君はこれから僕のためだけにご奉仕するんだ」と呟くと、

恵美は「はい…♡」と嬉しそうに呟くー。


恵美と一緒にカラオケボックスへと向かう修治ー。


修治はーー

”女”ばかりにこの力を使っていたー


今まで”男”にこの力を使ったのは1回だけー。


理由は、いくつかあるー。

元々、修治は、エッチなことにそれほど興味がない人間だったー。

いや、今もそうかもしれないー。


だがー

それでも”女”ばかりを狙うのにはー

理由があったー。


由奈に裏切られた怒りや憎しみを、彼はー

無関係の人々に、無意識のうちに向けていたのだー


「ーー由奈は…修治様のものですぅ…」

カラオケの個室で、恵美に”由奈”を名乗らせてー

修治は、恵美を自分の前に膝をつかせたー。


「ーーーくくく…由奈…情けない姿だな?

 僕の前に、そんな姿を晒してー」


バニーガール姿の恵美に向かってそう叫ぶ修治ー


「ーーーえへへへ…由奈は、修治様のために

 どんな恥ずかしい格好でもしちゃうんですぅ…」

恵美は、嬉しそうにそう呟くー。


「ククク…無様だな!由奈!」

修治は嬉しそうにそう叫んだー。


修治はー

洗脳した女に”由奈”を名乗らせて、

自分に従わせているー。


洗脳の力を手に入れた今もー

修治は、幼馴染でもあり、彼女でもあった”由奈”に

囚われ続けていたー。


恵麻に、由奈を名乗らせて、散々欲望の時間を過ごした修治はー

最後にー「汚したら、ちゃんと”掃除”しないとねー」と、微笑みー

恵麻に手をかざしたー


「ーー”全部”忘れろ」

そう呟くと、修治は、赤ん坊のような笑みを浮かべる彼女を

個室に放置して、そのまま外へと出たー


大掃除の季節ー。

まだ片づけられていない駅前のクリスマスツリーを見つめながら、

修治は思うー


”僕が、一番消したい記憶はーーー”


修治は、由奈のことを思い出すー。


「ーーー大掃除の季節だなー」


修治は、ずっと逃げていたー

”由奈”からー。


けれどー

そろそろ”大掃除”するべき時が来たのかもしれないー


大掃除は面倒臭いー

なかなか、重い腰が上がらないー


けどー


「ーーー…由奈ー」

修治は”由奈と会う”ことを決意して、

静かにそう呟くのだったー。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


大掃除の季節なので、

”掃除”を絡めた洗脳モノを用意してみました~!


続きはまた次回デス~!


明日は「今日からお前はホームレス③」

明後日は「憑依されすぎお嬢様(憑依/新規連載)」を

それぞれ執筆予定デス~!


お読みくださりありがとうございました!☆

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