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”娘の様子がおかしいー”


そう気づいたのは、誕生日の翌日だったー。


それまでは、平和な日常を謳歌していた藤本家ー。

しかし、娘の真鈴の誕生日に、父親である義和が

プレゼントした”くまのぬいぐるみ”には、

悪霊が潜んでいたー。


悪霊に支配されー豹変していく娘。


平和だった藤本家の状況は、たった数日で一変してしまったー


★前回はこちら↓★

<憑依>娘の様子がおかしいんだ①~異変~

「ーーーほ~ら、真鈴の欲しがってた  くまさんのぬいぐるみだぞ~!」 藤本家ー 今日は娘・真鈴(まりん)の誕生日で、 家の中はお祝いムードに染まっていたー。 父親の義和(よしかず)は、 真鈴が欲しがっていた”くまのぬいぐるみ”を、 誕生日プレゼントとして、真鈴に用意していたー。 「わ~!真鈴、パパからのプ...

・・・・・・・・・・・・・・・・・


”パパ ママ ありがとう”


以前、真鈴が幼稚園時代に書いた絵が、

切り刻まれて、子供部屋に無残な姿を晒しているー


くまのぬいぐるみを持ったまま、真鈴は静かに微笑むー。


「ーーパパ…わたし、ずるい子なんだってー

 この子が、そう言ってるのー

 うふふー♡」


とー。


「ーーま、、真鈴…どういうことなんだ?」

父の義和は動揺しているのを悟られないように、

真鈴のほうをまっすぐと見つめるー。


真鈴は笑みを浮かべながら、

「ーーわたし、ずるい子なのー!

 だからわたし、この子のお手伝いをしなくちゃー」

と、くまのぬいぐるみを見せるー。


「ーーーーーー」

義和は、真鈴が何を言っているのかー

”何がしたい”のかも理解できずに、

只々困惑したー。


「ーと、とにかく、こんなに部屋を散らかしちゃだめだぞ、真鈴ー」

義和はそう言いながら部屋のモノを片付けようとするー。


だがー

次の瞬間、散らかっていた玩具や小道具が宙を舞いー

義和を襲い始めたー


「ーーな、、なんだこれは!?」

玩具が勝手に動くー

そんな光景を目の当たりにして、義和は叫ぶー。


「ーー邪魔しちゃだめ…!

 この子の邪魔をしちゃーーだめ…!」


真鈴がそう呟くとー

次の瞬間ー

真鈴の目と、くまのぬいぐるみの目が、一瞬、赤く光ったー


「ーーま…まり…ん?」


気のせいー?

いや、そんなはずはないー

確かに今、真鈴の目が光ったー。

くまのぬいぐるみと共にー。


父・義和はすぐにハッとしたー。


真鈴の様子がおかしくなったのはー

あの”くまのぬいぐるみ”のせいではないかー

と、そう思ったのだー。


ちょうど、真鈴の様子がおかしくなったタイミングとも一致するしー、

ずっと、真鈴はくまのぬいぐるみを持ったままだー。


「真鈴!そのぬいぐるみを離すんだ!」

義和はそう叫んだー。


しかしー真鈴は首を縦には振らないー


「ーーパパは敵よ…!パパは敵…パパは敵…!」

目を何度か赤く光らせながら、不気味にそう呟く真鈴ー。


普通ではないー

明らかに異様な状態だー


「ーー真鈴!」

義和は、くまのぬいぐるみを無理やり取り上げようとしたー。


しかしー


「ーーひどいなぁ…パパは…」


ーー!?


義和は、驚くー。


”ひどいなぁ、パパはー”

そう言ったのはー

真鈴ではないー


だが、この部屋には、真鈴しかいないー。

では、いったい誰がー?


「ーーひどいなぁ…パパはー」

真鈴が下を向いて、ガクンとうなだれるー。

たったまま、下を向いている真鈴ー。


「ーーま、、真鈴…どうしたんだ!?」

義和がそう叫ぶと、

真鈴は、くまのぬいぐるみを父・義和に見えるように持ち上げてー

下を向いたまま笑みを浮かべたー。


「ーーパパ 自分の娘が大切にしてる”ぬいぐるみ”を

 取り上げようとするんだぁ~?ひどいなぁ~」


ふざけた感じの口調ー

喋っているのはーー

”くまのぬいぐるみ”だったー


「ーーお、、お、、、お前はなんだ!?なんなんだ!?」

義和は臆せずに叫ぶー。


いや、この異様な状況を前に、恐怖を感じない人間なんて、いないー。


義和は必死に自分の中の恐怖と戦いながらー、

娘を支配している”何か”と対峙していたー。


「ーー真鈴に何をした!」

大声で叫ぶー。


「ーー怖いなぁ…」

くまのぬいぐるみの目が光るー。


するとー

くまのぬいぐるみの、甲高い不気味な声とー

真鈴の声が一緒になって、喋り始めたー。


「ーー僕はただ、真鈴ちゃんと”友達”になっただけだよー」

真鈴が顔を上げるー。

真鈴が、くまのぬいぐるみと同じセリフを、

その口から発するー


「ーーーふ、、ふざけるな!なんなんだお前は!」

義和はなおも叫ぶー。


真鈴とくまのぬいぐるみが同時に「クックックックッー」と

不気味な笑い声をあげるー。


真鈴はそんな笑い方をしないー。

真鈴が”くまのぬいぐるみ”に何かをされているのは、

明白だったー。


「ーー僕はさー…”家族”っていうのが、大っ嫌いなんだー。

 

 恨んで恨んで恨んで恨んで恨んで恨んで恨んで恨んで

 恨んで恨んで恨んで恨んで恨んで恨んで恨んで恨んで

 恨んで恨んでー」


真鈴とくまのぬいぐるみが呟くー

だんだんと声は大きくなりー

怒鳴り声をあげるように「恨んでー」と叫び始める二人ー


真鈴の喉が傷んでしまいそうなぐらいにー

真鈴は大声で叫ぶー


「ーーま、、真鈴…!し、、しっかりしろ!」

そう叫ぶ義和ー。


しかしー

真鈴は不気味な笑みを浮かべるとー


「ーー僕はね、”怨念の塊”なんだー。

 い~っぱい、いっぱい、この世に恨みを抱いて死んだ

 怨念だー。」


と、”くまのぬいぐるみ”の言葉を喋らされるー。


「ーーど、どういう意味だ!」

義和が叫ぶとー


「僕は死んだー。

 でもーー

 僕の強い恨みが、きっと、僕をこの世に留まらせたー」


真鈴とくまのぬいぐるみが同時に呟くー


「ー僕の怨念が、このぬいぐるみを宿主にして、

 この世で生きいるんだよォ!

 あは、あはははははははっ!」


狂気を感じさせる、”ふざけた”口調ー。


「ーーー真鈴ちゃんには

 僕の友達になってもらったー」


真鈴とくまのぬいぐるみがそう呟くー。


「ーーーと、、友達…?」

義和の言葉に、真鈴は不気味な笑みを浮かべるー。


「ー僕の怨念の半分を、真鈴ちゃんに流し込んだー…

 つまり、僕の半分を真鈴ちゃんに憑依させたんだよ!


 そしたら真鈴ちゃんー

 僕の恨みに支配されて、パパとママを憎む悪い子に

 なっちゃったんだよ!


 あは、あはは、あははははははっ!」


真鈴とくまのぬいぐるみの笑い声が部屋に響き渡るー


「ーこうして僕が、真鈴ちゃんを直接乗っ取ることもできるしー

 僕の怨念に染まった真鈴ちゃんを好きに行動させることもできるしー

 うふふ、便利な”ラジコン”だなぁ!」


「ークソ野郎!!!!!!!」

義和は、怒りを爆発させたー。


無理やり真鈴からくまのぬいぐるみを引きはがそうとする義和ー。


「ーーうるさいおっさんだなぁ…」

真鈴とくまのぬいぐるみが同時に呟くー。


「せっかく僕は楽しんでるのにー

 幸せな家族の幸せを”壊す”ことをー

 こ~んなに楽しんでるのに」


まるで、男の子が”無邪気に遊んでいる”かのような口調で

そう呟いたくまのぬいぐるみと真鈴ー。


真鈴からくまのぬいぐるみを取り上げてー

くまのぬいぐるみを処分すれば、

なんとか真鈴を助けることができるかもしれないー


そう思いながら必死に真鈴からくまのぬいぐるみを

ひき剥がそうとする父・義和ー。


だがー

真鈴の長い髪が逆立ち初めて、目が赤く光り始めるー


「あはっ!あはははははははっ!あははははははぁ♡」

真鈴が髪を逆立てさせながら笑うー。


「ー僕のラジコン、壊そうとしちゃだめじゃないかぁ~」

真鈴とくまのぬいぐるみが笑うー


真鈴が目を赤く光らせてー

髪を逆立てさせながらー

やがて、身体を宙に浮かせるー。


「ーパパには、お仕置きが必要だね」

くまのぬいぐるみを手にしたままの真鈴はそう呟いて、

邪悪な笑みを浮かべたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーーーーーーー!!!!」

父・義和が目を覚ますと、

そこは自分の部屋のベッドの上だったー。


表情を歪める義和ー。

慌てて起き上がると、既に外は明るくなっていたー


「ーー真鈴ーーー!!!」

義和は、昨夜の出来事を思い出して、

慌てて部屋から飛び出そうとするー。


だがー

自分の部屋の出口に

”お前たちの幸せを、滅茶苦茶にしてやる”と、

真鈴の筆跡で書かれている張り紙が

貼られていたー。


それを見て、怒りの形相で紙を破り捨てる義和ー


「ーー真鈴をー娘を、お前の好きにさせてたまるか!」


部屋から飛び出した義和は、慌てて真鈴の部屋に駆け込むー。


部屋は相変わらず散らかったままー

だが、そこに真鈴の姿はなかったー。


慌てて1階に駆け下りる義和ー。


そこには、泣きじゃくっている妻の三美子の姿があったー。


顔には痣ができているー。

今朝も、真鈴に暴力を振るわれて、真鈴は

くまのぬいぐるみを持ったまま、そのまま学校に

行ってしまったのだと言うー。


「ーーくそっ!」

義和は、妻・三美子の怪我を確認して、

三美子をひとまず安心させるとー

玄関から外に飛び出したー


行先はーー

”学校”ではないー。


”おもちゃ屋”だー


真鈴への誕生日プレゼントとして

くまのぬいぐるみを購入したおもちゃ屋に、

義和は乗り込んでいくと

「あのぬいぐるみはなんだ!?」と怒りの形相で叫んだー。


しかしー

店主の老人は驚いた様子で、義和のほうを見てー

「お、お待ちください!どうされたのですか!?」と叫んだー。


その様子を見てー

おもちゃ屋の店主は娘・真鈴の件とは無関係だと悟る義和ー。


このおもちゃ屋は、おもちゃの買い取りもやっていて、

くまのぬいぐるみは、買取したモノの一つなのだと言うー。

このおもちゃ屋が、中古品も販売しているのは知っていたし、

真鈴にプレゼントしたくまのぬいぐるみもリサイクル品で

あることは理解した上で購入していたー。


買取ルートを確認する義和ー。


”誰が売ったか”

それを話すことは、相手が警察でもない限り、

絶対に話すことはできないー。


だが、義和が必死に現状を説明するとー

店主は”遠回し”にではあるが、ヒントをくれたー。


そしてーー


義和は事実を知ったー


”くまのぬいぐるみ”の元々の持ち主はー

とあるお金持ちの家庭に生まれた男の子でー


”既に”

その子は、この世に存在しないことをー


その子の父親は”女の子が欲しい”と願っていて、

それが叶わなかったことで、

実の息子に虐待を繰り返し、

ついには母親までその息子に虐待するようになったー。


くまのぬいぐるみは、使用人であった人間が、

男の子を可哀そうに思い、渡したものー。


しかしー

それからしばらくして、激しい虐待の末に、

その男の子は”この世への恨み”を呟きながら

死んでいったーー


その”事実”を義和は知ったー


義和は真鈴が帰宅するのを、真鈴の部屋で待ったー

学校で何か問題を起こしていないことを祈りつつ、

真鈴を待ったー。


そしてー

真鈴が帰宅したー


くまのぬいぐるみを手にした真鈴が

ランドセルを乱暴に放り投げるー


「ーーパパ」

恨むような目ー

いつも笑顔がまぶしかった真鈴が、

まるで別人のようだー


”ヤツ”が言うには、真鈴には、

くまのぬいぐるみに憑依して怨霊の”半分”が憑依していて、

真鈴は憎しみに支配されているのだと言うー。

しかも、くまのぬいぐるみ自体も、真鈴をいつでも

直接乗っ取ることができる状態ー


「ーーーー高坂 陽斗(こうさか はると)くんー」

義和はそう呟くー


くまのぬいぐるみを持った真鈴が表情を歪めるー。


「ーーなに言ってるの?」

真鈴が舌打ちしながら義和のほうを見るー。


「ーー高坂 陽斗くんなんだろ?」

義和が言うー。


くまのぬいぐるみの元の持ち主で、

強い恨みを抱きながら死亡した少年ー


「ーーー…勝手にわたしの部屋に入るな!出てけ!」

教科書を投げつけてくる真鈴ー


だがー

その直後ー

真鈴が「ぅ」と、呟くと、その場にうなだれて、

不気味な笑い声をあげ始めたー。


「ーーあ~~~~~~……ふふふふふふふ」

真鈴が顔を上げるー

くまのぬいぐるみと同時に喋り始める真鈴ー


「ーーー高坂…陽斗ーー。」

義和が呟くー


再び、くまのぬいぐるみに宿る怨霊が

真鈴を完全に乗っ取ったことを悟りー

緊張のまなざしで真鈴を見つめるー


「ーーピンポーン!

 そうだよ!僕はー

 僕は、高坂陽斗だよ!


 おじさん、すごいなぁ!」


真鈴は、ニヤニヤしながら、くまのぬいぐるみを手にしたまま

ふざけた調子でそう、言い放ったー


そんな真鈴に、怒りの形相で近寄った義和はーー


真鈴をーー

静かに抱きしめたー


「ーー!?」

表情を歪める真鈴ー


「ーー辛かったな」

義和は”高坂 陽斗”に対して、そう語り掛けたー


優しくー

愛情をもってー。


③へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


次回が最終回デス~!

果たして、真鈴ちゃんを助けることはできるのでしょうか~?


今日もお読みくださりありがとうございました~!

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