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秋も終わりが近づきー

冬の気配が近づく中ー


高校2年生の宮原 杏花(みやはら きょうか)は、

ため息をつきながら下校していたー。


見た目は可愛く”美人”で、スタイルも良いタイプの子なのだがー

彼女は何事にも”無気力”ー。


勉強もできてー

運動もできてー

何不自由のない生活を送ることができているー。


けれどー

その表情は、どこか冷たくー

心を感じさせないー

まるで”氷の美少女”とも言えるようなー

そんな子だったー。


「ーーーー」

冬の気配が深まる中ー

いつも下校中に通る道で、杏花は立ち止まるー。


「ーーーーーいいな…」

杏花はボソっと呟いたー。


道端の木を見上げながらー。

そう、呟いたのだー


その木にぶら下がっている葉っぱは既に

散り始めていてー

杏花の立っている場所にも、落ち葉が何枚か落ちているー。


「ーーーわたしも、あなたたちみたいに、

 ”散る”ことができたらいいのにー


 わたしなんか、早く消えちゃえばいいのにー」


自虐的に笑いながら、そう呟く杏花はー、

そのまましばらく木のほうを見つめていたー


やがてー

強い北風が吹きー

杏花は長い黒髪を静かに押さえるー


木々にしがみついている葉っぱたちが揺られてー

1枚、また1枚と、地面に落下していくー


杏花は寒そうにしながら、

たった今、落ちたばかりの落ち葉を手にすると

「ーーいいなぁ…」と呟くー。


そして、落ち葉をそのまま地面に再び落とすと、

杏花はため息をついて、一人その場から立ち去って行ったー。


”ーーーいいな…?僕たちがー?”


そんな杏花を見て、そう呟く者がいたー。


”望んで、”この姿”に生まれたわけじゃないー”

”散りたくて、散っているわけじゃないー”

”人間は、そんなに自由で、そんなに恵まれているのにー”


そんな風に、心の中で怒りを覚えていたのはー

たった今、杏花が見つめていた”木”に生えている

葉っぱの1枚だったー。


風に揺られながらー

その葉っぱは、今日も”いつ自分の順番が来るのだろう”と、

寂し気に”いつも見る同じ景色”を見つめたー。


葉っぱにできることは、少ないー


それでもー

それでも、彼は満足していたー


春の訪れと共に生まれてー

自分の”親”でもある”木”とお話をしたりー

仲間の葉っぱたちとお話をしたりー

鳥が遊びに来たりー

虫が遊びに来たりー

時には仲間の葉っぱを虫が食べたりー


春ー

夏ー

秋ー


と、本当に色々なことがあったー。


人間からしてみれば、ちっぽけな時間かもしれないけれどー

それでも、彼にとっては、本当に楽しい時間だったー


けれど、それも、終わりに近づいているー。


もうすぐ、自分たちは”散る”ー

イヤでも、その運命を悟るー


”…僕も、もうすぐかなー”

彼は、そんな風に心の中で呟いたー。


”ーーーーお疲れ様”

親でもある”木”は、寂しそうにそう呟いたー。


人間たちに、この言葉は聞こえないー。

人間には人間の、木々には木々の”世界”があるのだー。


”親”でもある木は、何百年、気の遠くなるような時間ー

”子供”たちでもある葉っぱとの別れを繰り返してきたー。


毎年ー

この季節になると、イヤでも”別れ”の季節がやってくるー。


”僕ーー、まだ、死にたくないよ”

彼は、今日も散っていく仲間たちを見つめながらー

”まだ、この世界にいたいよー”と、心からそう願ったー。



その翌日ー


杏花は、今日もつまらなそうに学校から下校していたー。


そしてー

今日も地面の落ち葉を見つめて、それを拾うー


「本当にうらやましいなぁ…楽になれて…」

杏花はそれだけ呟くと、

「ーわたしも、早くこの世界から消えちゃいたいなぁ」と呟くー


その言葉がー

”彼”には許せなかったー


”僕は、1年も生きることができないのにー

 どうしてそんなこと言うんだ!”


と、彼はいら立っていたー。


彼は、人間を、木にぶら下がりながら、

”上”から見つめているだけで、人間の世界がどんな世界かは

知らないー


けれど、”親”である”木”は言うー。

”人間は、あなたたちよりずっとずっと長生きだ”

とー。


”ずるいー

 ずるいよー”


もうすぐ”散るー”

そんな運命から、逃れたくても逃れることのできない”彼”は、

”死にたい”とさえ、呟いた杏花を見てー、

激しい怒りを覚えたー


”そんなにその身体がいらないならー

 僕が欲しいよ!”


とー。


それはーーー


神様のイタズラだったのだろうかー。


それとも

葉っぱである”彼”の願いが届いたのだろうかー


それともーー

”消えたい”という杏花の想いが届いたのだろうかー


次の日の朝ー


杏花は、目を覚ましたらーーー

いつも下校の際に通る道を、上から見下ろしていたー


”え……?”

杏花は、唖然とするー。


”え……???な、なにこれ…?どういうこと?”

普段はクールで、感情の薄い杏花もー

流石に”意味不明”な状況に驚くー。


状況を理解することができずー

身体を動かそうとしてみる杏花ー。

しかし、身体は思うように動かないー


”わたし…木に宙づりにされているの?”

そんな風に思いながら、

杏花は自分の状況を頭の中で必死に整理してみるー。


昨日は”普通に寝た”はずだー。

いつも通り、特にやりたいこともなくー

特に楽しいこともなくー

”何も思い描くことのできない将来”のために勉強をしてー

スマホを適当にいじってー

適当に動画を見てー

そして、寝たー


いつも通りの1日であり、

そこには”何の新鮮味”も存在していなかったー。


ただ、起きてー

ただ、寝たー。

それだけー。


将来の夢なんてものも、杏花にはないー


だってー

わたしはーー


身体を動かすことが全くできないー


それどころかー

風が吹いてきて、杏花は

”今までに感じたことのない衝撃”を感じたー


まるで、身体ごと、遠くに吹き飛ばされそうなほどの

強風ー。


いいやー

実際には、そう表現するほどの風ではないー

少なくとも、人間にとってはー


”ど…どういうこと…?”


杏花は、”これ…夢かな?”と、思い始めるー。

昨日、普通にベッドに寝たのに、いきなり通学路の木に

宙づりにされているなんてありえないー


”どんな状況よ”

と、自分の中でツッコミを入れるー


しかも、いつも杏花が下校するために通っている道には、

さっきから、人通りがあるものの、

誰も”杏花を見て騒ぐような人間”はいないー。


下には、杏花の見知った姿もあるー

クラスメイトや同級生の姿だー。


群れるのもあまり好きではない杏花は、

学校でも、ほどほどに他の生徒と距離を保っているー


…とは言え、何でもできる”優等生”であるために

いじめられたりはしていないし、無視されたりもしておらず、

むしろ、頼りにされているタイプだー。


そんな杏花が、木に吊るされていればー

絶対に誰かしら”反応”するはずなのだー


”人が木に吊るされている”なんて、普通の状況ではないのだからー。


”ふぅ…変な夢”

杏花はそんな風に思いながら、やがて、何かをする気力もなくし、

ため息をついたー。

夢ならどうせ、時間がくれば目覚めるのだし、

何なら今すぐにだって起きようと思えば起きれるかもしれないー


夢の中で”これは夢ね”と自覚できるようなことは

それほどないが、時々あるしー

杏花は、”せっかくだし、しばらくのんびりしてよっと”と、呟いたー


どうせ、目が覚めても、そこまでやることなんてないんだからー


しかしー


”え…!?!?!?!?”

杏花は、驚くー。


通学路をー

”杏花”自身も通ったからだー。


”ーーーー!!!!!”


しかも、杏花は、ツインテールにしていてー、

いつもストレートの長い黒髪の杏花とは、

だいぶイメージが違うー。


”ーーってーー、夢ならわたしが下を歩いててもおかしくないか”

杏花は、再び冷静さを取り戻すー。


”でもなんで、わたしツインテールになんかしてんの?

 わたしってそんな願望が実は心の中にー?”


いやいやないないー


そんな風に思っているとー

下を歩く杏花が立ち止まってー

”こちら”を見上げたー。


「ーーー夢が叶って、嬉しいかいー?」

下を歩いていた杏花が、こちらを見てそう呟いたー


”え…?”

杏花が首をー

いや、首をかしげることもできず”自分”を見つめるー。


「ーー僕は”君の願い”を叶えてあげたんだー


 君はー

 「ーーーわたしも、あなたたちみたいに、

  ”散る”ことができたらいいのにー

  わたしなんか、早く消えちゃえばいいのにー」

 って言ったー。


 ”僕”は、もっともっとこの世界にいたかったー


 だから、もっと生きたい僕が「君」になって、

 早く消えたい君が「僕」になったんだー」


杏花が笑みを浮かべながら、

木のほうを指差したー


”え…どういうことー?”


木に宙づりにされている杏花が困惑しているとー


下にいる杏花は、カバンから、少し大きな鏡を取り出してー

こちらに向けたー


「ーーーー!!」

木にはー

誰もいないー

宙づりにされているはずの杏花の姿はないしー

何も、異常はないー


今にも落ちそうな”葉っぱ”の数々だけが

ゆらゆらと、風に揺られているー


下に立っている杏花は、

自慢気な笑みを浮かべるとー

木々の方を指さして、呟いたー


「僕は女の子ー、君は葉っぱー」

とー。


”な、、何をいってるのー?”


「これが、僕と君が望んだことー」

下に立っている杏花は笑みを浮かべたー。


「ー僕と、君は、入れ替わったんだー」


杏花の声ー

なのに、”僕”と言っているせいか、

アニメに出ていそうな美少年キャラみたいな雰囲気すら

感じるような声になっているー。


いや、そんなことは今はどうでもいいー


”う、、嘘…?こ、、これ…夢だよね…?”

葉っぱになってしまった杏花が言うー。


だがー

さっきから、言葉を発することができないことに

今になって気づくー


「ーー君はもうすぐその木から離れてー

 落ち葉となって、地面に落ちるー。

 僕たち葉っぱは、そうして、死んでいくんだー」


杏花になった葉っぱは、それだけ呟くとー

杏花の身体の髪や手ー、そして足を触ったー


イヤらしい感じー

と、いうよりも、葉っぱが、人間の身体を手にしてー


そうー

”欲しかったものを手に入れて、

 それを嬉しそうに触っている”

そんなー子供のような無邪気な雰囲気を感じさせる触り方でー

身体中を触ったー


「ーー好きに歩けてー

 ーー好きに喋れてー

 ーー好きに食べれてー

 ーーとっても長い時間生きていられるー

 君は、この身体がいらないみたいだから、僕が貰うことにしたんだよ」


杏花(葉っぱ)はそう言うと、

不敵な笑みを浮かべたー


”そ、、そんな…!ちょっと!ふざけないで!”

葉っぱ(杏花)は叫ぶー


声にはならないー。

だが、杏花の中身は葉っぱだからだろうかー。

杏花になった葉っぱにはその言葉が

通じているようだったー


「ーー見てごらん。この髪…似合うだろう?」

ツインテールにした髪を触りながら、自慢げに見せつけてくる

杏花(葉っぱ)ー


”そ、そんな髪型勝手にしないで!”

葉っぱ(杏花)は叫ぶー


「ーどうしてそんなに怒るんだい?

 君は僕たちのことをうらやましいと言ったー

 僕は君がうらやましかったー

 だから、こうしたんだー。


 僕は…僕の身体は、持ってあと3、4日ぐらいだと思うからー

 そうすれば、君はこの世界から消えることができるー」


杏花(葉っぱ)は得意げにそう説明したー


”…っっ!”

葉っぱ(杏花)は言い返せずに、言葉を閉ざすー。


「ーーーー」

杏花(葉っぱ)は冷たい目で、風でなびくツインテールの髪を

少し触りながら、笑みを浮かべたー


「今日からー…

 僕が宮原 杏花だー」


そう言い放つと、杏花(葉っぱ)は、

「ーーばいばい」と、静かに微笑みー

そのまま立ち去って行ったー


”…え…ちょっと!待って…!待ちなさいよ!”

叫ぶ葉っぱ(杏花)ー


その瞬間、強風が吹き荒れてー

葉っぱ(杏花)は落ちないように必死に耐えるー


”自分は、落ち葉になって、死ぬー”


そう考えたとたんー

恐怖心が一気に噴き出してきたー


②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


異色の「人間」と「葉っぱ」の入れ替わりデス~!


小さいころに読んだ有名な葉っぱの絵本のことを

少し前に、急に思い出したので、

人間と葉っぱの入れ替わりがあってもいいかな~?と思い、

書いてみました!


続きはまた次回のお楽しみデス~!

今日もありがとうございました~!

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