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「ーーーほ~ら、真鈴の欲しがってた

 くまさんのぬいぐるみだぞ~!」


藤本家ー

今日は娘・真鈴(まりん)の誕生日で、

家の中はお祝いムードに染まっていたー。


父親の義和(よしかず)は、

真鈴が欲しがっていた”くまのぬいぐるみ”を、

誕生日プレゼントとして、真鈴に用意していたー。


「わ~!真鈴、パパからのプレゼント~!

 よかったね~!」

母親の三美子(みみこ)が、そう言いながら真鈴のほうを見ると

真鈴は嬉しそうに「わぁ~…!パパありがとう!」と

嬉しそうに微笑んだー。


娘・真鈴の嬉しそうな様子に

父親の義和も、母親の三美子も、満足そうに微笑むー。


ケーキに蝋燭を立てて、

ハッピーバースデーの歌を歌いながら、

娘の真鈴が蝋燭の炎を消すー。


父・義和と母・三美子が盛大な拍手を送ると、

真鈴は、心から嬉しそうに微笑んだー。


ごく普通の幸せな三人家族ー。

この幸せは、これからも続いていくはずだったー。

これからも、ずっとー…


けれどー。


両親はまだ知らなかったー

この日を境に、この幸せは失われていくことをー


いやー

両親だけではない、真鈴も知らなかったー。

自分の身に、起きることをーー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「わぁ~!かわいいくまさんー!」

家族で買い物に行った帰り道ー

偶然通りがかった近所のおもちゃ屋さんの前で

娘の真鈴は店先に並べられていたくまのぬいぐるみを見て

目を輝かせたー。


ぬいぐるみの値段は、それほど高いものではないー

その場で買ってあげてもよかったのだが、

義和と三美子は”もうすぐ真鈴の誕生日”ということもあり、

この”くまさん”を誕生日プレゼントにしてあげようー、と

そう考えたー。


「ーーーははは、今度買ってあげるからな~!」

父・義和がそう言いながら、真鈴の頭を優しく撫でるー。


その日のうちに、義和はおもちゃ屋に電話をかけて、

くまのぬいぐるみを娘の誕生日プレゼントとして

購入したいということ、そして、

誕生日プレゼント用にラッピングできないかどうかを問い合わせたー


「真鈴、喜んでくれるかしら?」

母親の三美子が優しく微笑むー。


「ーーあぁー喜んでくれるさ」

リビングの方で遊ぶ真鈴の姿を見ながら父・義和は笑うー。


誕生日プレゼントを用意した半月前ー。

父と母の”選択”は決して間違ってなどいなかったー。

決してー


だってー

ぬいぐるみに”悪霊”が潜んでいるなんて、誰にも

想像できないのだからー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


そして、現在ー。


”真鈴ちゃんー…起きて 真鈴ちゃんー”


夜ー

”一人で寝れるもん!”と、最近、子供部屋で一人で

寝始めた真鈴は、深夜に”真鈴を呼ぶ声”に起こされたー


「え…?だぁれ…?」

真鈴が目をこすりながら言うとー

目の前に、誕生日プレゼントとしてもらった

”くまさんのぬいぐるみ”が空中に浮かんでいたのだー。


「ーーわ…!?」

驚く真鈴ー

けれど、まだ無邪気な年齢だからだろうかー。

悲鳴をあげたりすることなく、

むしろ”くまさん”が動いたことに

喜んでいるような表情さえ浮かべていたー。


”真鈴ちゃん!真鈴ちゃん!

 僕と友達になってクレル?”


くまのぬいぐるみが不気味な声で呟くー


「ーーうん…!わたしとくまさんは今日からお友達だよ!」

真鈴が嬉しそうに言うとー

くまのぬいぐるみは”真鈴ちゃんとお友達!やった!やった!”と

嬉しそうに呟くー


妙にハイテンションで奇妙な声を発する

くまのぬいぐるみー


”じゃあー

 今日から真鈴ちゃんと僕は”友達”だよー”


くまのぬいぐるみの言葉に、

真鈴は嬉しそうに「うん!」とほほ笑んだー。


くまのぬいぐるみを抱きかかえて、もう一度

ベッドに横になり、

穏やかな寝息を立て始めるのだったー


だがー

くまのぬいぐるみは、真鈴のほうを見つめて

不気味な笑い声をあげるのだったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


真鈴が学校へと向かっていくー。

だが、心なしか、真鈴がいつもより元気がなかった気がするー。


「ーー真鈴、今日、なんか元気なかった気がするんだけどー」

母・三美子が真鈴の異変に気付き、心配そうに呟くー。


「ーーん?昨日、誕生日ではしゃぎすぎたんだろ… 

 俺もよく小さいころは、はしゃぎすぎて翌日疲れてたし」

父の義和は笑いながらそう言うと、

「ふふ、あなたは今でもはしゃいでるでしょ」と

母・三美子は義和にツッコミを入れたー。


「ーーさ、俺もそろそろ出勤しないとな」

そう言いながら立ち上がる義和ー。


義和はそのままいつものように会社へと向かったー。


現在は週に何度かのパートをしている母・三美子は、

今日はお休みということもあり、家の中で洗濯物を干したり、

部屋の掃除をしたりしながら午前中のひと時を過ごすー。


「ーーーあれ…?」

だがー

三美子は”とある違和感”を覚えたー。


娘・真鈴の部屋を掃除するため、

真鈴の部屋の中に入った三美子ー。


部屋の中に、”昨日プレゼントしたはずのくまのぬいぐるみ”が

いないのだー


「ーーえ…まさか、真鈴、学校に持ってっちゃったのかしら…!?」

そう呟く三美子ー


ランドセルにでも、くまのぬいぐるみを入れていったのだろうかー。


「学校にぬいぐるみなんて持っていったらー

 先生に怒られちゃうかも…

 帰ってきたらちゃんと真鈴に

 ”学校には持っていっちゃだめ!”って言っておかないとー」


そんな風に思いながらも、

それ以上、深くは考えずに、三美子は真鈴の部屋に

掃除機をかけるのだったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーあ、真鈴!おかえりなさい!」


午後ー

真鈴が帰宅すると、真鈴が手に”くまのぬいぐるみ”を

持っているのに気づいて、母・三美子は

苦笑いしながら、

「真鈴、やっぱり、くまさんと一緒に学校に行ったのね」と呟くー。


「ー先生に何か注意されなかった?

 くまさんはね~、学校には一緒にいけないの」


三美子がそう言うと、真鈴は「え~~~~?」と

頬を膨らませるー。


「ーーくまさんと遊ぶのは、学校が終わってから!

 ね? いい?」


三美子が言い聞かせるようにして言うとー


「ーーーやだ」

と、真鈴は母親の言葉を”拒否”したー


真鈴は、親に注意されると素直に言うことを聞く

”いい子”だったー。

だからー

こんな風に否定されるのは珍しいことだったー。


少し驚きながらも、三美子は優しくー

”学校にくまさんのぬいぐるみを持って行ってはいけない理由”を、

真鈴に伝えるー。


いつもの真鈴であればー

それで納得してくれるはずだったー。


だがーーー


「ーーーうるさい」

真鈴はボソッとそう呟いたー。


「ーーー!?」

驚く三美子ー


今、”うるさい”と言わなかっただろうかー?


「ーーえ…真鈴、今、なんて…?」

三美子が確認のために聞き返そうとすると、

真鈴はそのまま自分の部屋の方に向かっていこうとするー


「ちょ、ちょっと真鈴!?」

三美子は真鈴の反抗的な態度に驚きー

真鈴の腕を”待って”という意味で優しく掴んだー


「ーーうるせぇんだよ!」

真鈴が突然、大声で怒鳴り声をあげて叫ぶー。


普段の真鈴からは”ありえない反応”に、

母・三美子は、思わずビクッとしてしまうー


「ーーえ…?ま、、真鈴…?」

震えながらそう呟く三美子ー


「ーーその汚い手を放せー」

真鈴が言うー。


真鈴の姿ー

真鈴の口調ー


しかしー

今の真鈴の振る舞いはー

明らかに

”いつもの真鈴”の振る舞いではないー。


「ーーま…まりん…?」

恐怖すら感じながら、三美子が今一度その名前を呼ぶとー

真鈴の目が、赤く光ったー


「ーーどけよクソババア!」

真鈴が叫んだー


いつも明るく無邪気で、優しい真鈴がーー

”どけよクソババア!”と叫んだー


三美子がショックを受けているとー

衝撃波のようなものが、真鈴の身体から放たれてー

三美子はキッチンに叩きつけられたー。


「ーーま、、まり…」

驚きのあまり、震えて声も出なくなってしまう三美子ー


真鈴はそのまま不機嫌そうに

自分の部屋の方に向かっていくー。


三美子は、あまりの出来事に愕然として、そのまま

身動きが取れなくなってしまうー。


真鈴の目が赤く光ったそのときー

真鈴の持つ”くまのぬいぐるみ”の目も、一緒に赤く光っていることにー

母・三美子は気づくことができていなかったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ただいま」

帰宅した父・義和は、リビングの机で、

震えている妻の姿を見て、驚くー。


「み、三美子ー…どうしたんだ?」

義和がすぐに三美子に駆け寄ると、

三美子は泣きながら

「ま…真鈴が…」と、呟くー


「ーま、真鈴がどうかしたのか?」

いつもならちょうどー

この場所で、三美子と真鈴が談笑しているような時間ー。


義和の帰りが早ければ、

家族で食卓を囲む時間だし、

義和の帰りが遅かった場合は、

真鈴と三美子の晩御飯が終わり、

ひと段落ついている時間帯ー


だがー

今日は、そのどちらでもなかったー。


残業で特別時間が遅くなったわけでもないー


この”異様な現状”に、義和はただ事じゃないとすぐに理解し

「お、、おい…!真鈴はどうしたんだ!?」と

慌てた様子で叫んだー


真鈴の姿がないー。

一瞬、義和は”最悪の事態”を想像してしまうー。


娘の真鈴の身に、何かあったのではないかー、という

そういう想像だー。


幸い、その想像は外れていたー

がー、

それとは別の”恐ろしい出来事”を、義和は

聞かされるー。


「ーー真鈴が、そんなことを…?」

義和が言うと、三美子は泣きながらうなずいたー。


真鈴が不機嫌そうな態度を示しー

突然豹変して”クソババア”と言いながら、三美子を

突き飛ばしたというのだー。


それ以降、真鈴は自分の部屋に籠ったきりで、

いつもの”ごはんの時間”になっても部屋から

出てくる気配もないし、

時々暴れるような物音もするのだというー。


「ーーーー…わ、わかったー。まずは落ち着くんだ」

義和が、三美子にそう言うと、

三美子は頷くー。


”ガシャン!”

2階から音が響き渡るー。


2階にある真鈴の部屋のほうからだー。


「ーー俺が真鈴と話をしてくるー。

 大丈夫ー。大丈夫だから落ち着くんだー」


義和はそう言いながらも、自分自身も不安を感じていたー


今までー

”順調”にここまでやってきた仲良し家族ー


いつかはー

娘の思春期とか、そういう時期もやってくるだろうとは

思っていたけれどー

こんなに、急にー?


昨日、くまのぬいぐるみをプレゼントしたときは、

あんなに嬉しそうにー

いつものような振る舞いを見せていたのにー…


そんな風に思いながら、義和は階段を登るー。


空気が重苦しいー。

これは、気のせいだろうかー

それともー


真鈴の部屋をノックするー


だがー

返事はないー。


「ーーーーー」

義和は、意を決して、真鈴の部屋の扉を開いたー


すると、真鈴はくまのぬいぐるみを大事そうに

抱きかかえながら、滅茶苦茶になった部屋の真ん中で

ニヤニヤと笑っていたー。


「ーーしあわせ…ゆるせないー」

真鈴が静かにそう呟くー


「ーーま…真鈴…?」

部屋のあまりの惨状に、義和は思わず身を震わせるー。


そしてー

真鈴が以前描いた”パパ ママ ありがとう”という

絵が、ハサミでバラバラに切り刻まれているのが

目について、義和は、さらに緊張感を高めたー


「ま…真鈴ーーー?」

義和の不安そうな言葉に、真鈴は答えたー


「ーーパパ…わたし、ずるい子なんだってー

 この子が、そう言ってるのー


 うふふー♡」


とー。


②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


ぬいぐるみを通じて、

その中に宿る悪霊に娘が憑依されてしまうお話デス~!


この家族の運命は…?

ぜひ続きもお楽しみくださいネ~!


今日もありがとうございました~!


お話とは別に

「FANBOX作品の今後連載開始予定の新作紹介」を本日、作りました~!


今後連載開始予定の作品の

イメージ画像(いつもお話の最初につけている画像デス)を

いつでも見れるようにしてあります!

この1個前の記事にあるので、ぜひチェックしてみて下さいネ~!

(私のFANBOXのトップページのところにもリンクをつけたので、

 そこから気軽にご覧ください~!)


近いうちに「むみょトーク」でもご紹介するかもしれませんが、

まずは簡単にお知らせでした~!

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