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「ーーーーー」

妖艶な雰囲気を持つ美人女性が、夜の街を歩いているー。


まだ若く、20代に見えるものの、

その華々しい格好は、彼女が一般人ではないことを示しているー


キラキラとした服を身に纏いー

高級なアクセサリーを身に着けた女ー


夜の街のセレブー

そんな風にも見える彼女はーー


”犯罪組織・デビルコブラ”のリーダーの妻ー

九条 繭(くじょう まゆ)ー


「ーーーー(ここか)」

繭はそう呟きながら、埠頭で”迎え”の車を待つー。


程なくして、黒いリムジンがやってきたのを確認すると

繭は「遅かったじゃない」と、高飛車な雰囲気で言い放ったー


「ー申し訳ありませんー」

黒服の男が頭を下げると、すぐにもう一人の男が

「さぁ、どうぞ」と繭を車の方に案内したー


大胆に晒された綺麗な生足を動かしながらー

車に乗り込んだ繭は、車の窓から、外を見つめたー


”これが、最後の”風景”になるかもしれないー”


そう、思いながらー


繭はゴクリと唾を飲み込むー

繭が向かう場所は”デビル・コブラ”の本部ー

警察組織ですら手出しすることができない

”暗黒地帯”の最深部に存在する、犯罪組織の中枢ー。


そこに、これから繭は向かうのだー。


とは言えー

繭は、そのデビルコブラのボスの”妻”ー

当然、その場所には行き慣れているはずでー

怯える必要など、”本当なら”まったくないはずだったー


だがー

それでも繭は綺麗な手を握りしめて

その顔には”緊張”の色が浮かび上がっているー


それも、そのはずー

何故なら彼女はーーー

”偽物”だからだー。


潜入捜査官・近藤 正樹(こんどう まさき)ー

今、車に乗り込んでいる犯罪組織の妻・繭は

その正樹が”変身”している”偽物”なのだー


全ては犯罪組織デビル・コブラの全容を明かすためー


正樹は命がけで、

デビルコブラ首領の妻・繭の姿に変身してー

潜入捜査を行っているー


作戦名”メタモル・ミッション”ー

命がけの作戦だー。

失敗は、許されないー。


繭の姿をした正樹は、今一度、運転席と助手席にいる

黒服の男たちに悟られないよう、深くため息をつくと、

窓の外の景色を見つめたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


1週間前ー


警察内部に組織された、

決して表沙汰にはできない特殊対策班”オメガ”ー。


”オメガ”は、世の中にその存在を知られてはいけない事件や

凶悪犯罪組織を”法律を超えた手段”を以って制圧する特殊組織だー。


警察と政府が主導して、組織された特殊チームで、

決して世の中の明るみに出ることはないー。


世の中にはー

決して覗いてはならない”深淵”があるー。

一般市民は知る必要のない”深淵”だー。


だがー

そんな”深淵”を野放しにしていれば、

当然、何も知らずに平和を謳歌している

一般市民たちにも危害が及ぶー。


深淵は深淵のままー

光に晒す必要はないー

深淵が表に出て来ないよう、”蓋”をする役割を担うのが、

この特殊対策班”オメガ”だー。


「ーーー潜入捜査?」

オメガに所属する30代後半の刑事・正樹が

表情を歪めるー。


「ーーあぁ、そうだー」

一見穏やかな雰囲気に見えるものの、

世の中の本質を見抜いているかのような鋭い口調で

返事をする男ー


”オメガ”の班長、我妻(あがつま)はー

モニターに何かを映し出したー


裏社会で暗躍する謎の犯罪組織”デビル・コブラー”


闇商品の流通から、裏社会で暗躍する人材の斡旋、

時にはデビルコブラ自身が、人の命を奪うような行為までー

数々の悪事・不正に手を染めている組織。

しかしながら、その全貌は謎に包まれている巨大組織だー。


デビル・コブラには”一般構成員”と”幹部”がおり、

主に”幹部”が、それぞれの前線拠点で一般構成員を率いて、

悪事を行っているー。


しかしながら”幹部”でさえ、リーダーの顔や所在地は

知らされておらず、万が一、幹部が追い詰められた場合は、

冷徹にもその幹部を”始末”し、外部に徹底的に情報が漏れないよう

”遮断”しているー


幹部ですら、都合が悪くなるとあっさりと切り捨てるー。

デビル・コブラのそんな組織の方針を”オメガ”は”脱皮”と呼び、

手を焼いていたー。


”オメガ”は全力を挙げて、このデビル・コブラの壊滅を

目指していたものの、

デビル・コブラの本部は、

とある繁華街の犯罪組織の根城となっている危険地帯

通称”暗黒地帯”の最深部に存在しており、

精鋭ぞろいの”オメガ”であっても安易に手出しすることはできなかったー


そのため、デビル・コブラの首領の正体はおろかー

デビル・コブラという組織の全貌すらつかめずにいたー。


我妻班長がモニターに映し出したのは、

そんな、デビルコブラ首領の妻・九条 繭の姿だったー。


九条 繭は、繁華街でお店を経営しており、

そのお店に度々顔を出しているー。


しかし、繭自体は違法行為を犯していないことやー、

繭を逮捕すれば、犯罪組織”デビルコブラ”が、どのような

動きに出るか、想像もつかず、非常に危険性が高いために、

対策班”オメガ”も手出しできずにいたー。


”妻”が逮捕されたとしればー

デビルコブラは、街一つを消し去るかもしれないー


それほどまでに、デビルコブラは危険な存在だったのだー。


だがー


「ーー次の木曜日ー

 九条繭が、店を出たタイミングで、九条繭を確保するー」


我妻班長はそう呟いたー


「ーーえ」

正樹が唖然とするー。


「ーーそれは、どういうことですか?」

他の捜査員も声を上げるー。


九条 繭を確保する=デビルコブラに全面戦争を挑むー

ということだー。

全貌が不明なデビルコブラを刺激すれば、

デビルコブラはどのような行動に出るか分からないー


だからこそ、今まで、九条繭がデビルコブラ首領の妻だと

分かっていながらー

泳がせていたのだー。


我妻班長は言うー


本物の九条繭を確保ー

その場で”偽物”の九条繭と入れ替えてー

”偽物”の九条繭が、デビルコブラの本拠地に潜り込みー

その情報を調査、デビルコブラ首領の正体も突き止め、

デビルコブラを壊滅させるー、

とー。


「ーー九条繭を偽物と入れ替えるー…?

 いったい、どうやってそんなー?

 他人の空似程度じゃ、すぐに気づかれますよ」


正樹が言うと、

我妻班長は首を振ったー


「ーー”そのもの”だったらー?」

とー。


「ーーはい?」

正樹は思わず、変な声を出してしまったー


「それは、どういうー?」

”ハニートラップの魔女”の異名を持つ女性捜査官・南 那奈(みなみ なな)も

困惑した様子で呟くー。


「ーーー顔から、身体ー

 声までー

 あらゆる場所が100% 九条繭である”偽物”を送り込むことができればー

 相手も、気づくことは不可能だー」


その言葉に、正樹は「そんな人間がいるんですか?」と、戸惑うー。


犯罪組織のボスの妻である繭に”双子”でもいるのだろうかー。


だがー

そんな風に思っていると、我妻班長が

「上層部が”切り札”の使用許可を出したー」と呟くー。


「ー切り札?」

正樹が言うと、我妻班長は頷くー。


捜査員全員の顔を見てから、我妻班長は「近藤ー」と

正樹の名前を呼ぶと、正樹に別室に来るように指示するー。


そしてー

そこで告げられたのがー


”メタモル・ミッション”だったのだー。


潜入捜査のエキスパートが集まる秘密対策班”オメガ”は、

密かにある”装置”の開発を進めていたー


それが”他人に変身する装置”だー。

その再現度は「100%」で、相手の姿形はもちろん、

声から血液型まで、完全に”相手そのもの”に変身することができる、

というものだったー。

記憶までは流石にコピーすることはできないが、

完璧に相手の姿に変身できる、というのは

潜入捜査を行う際には、大きな武器となるー


「ーーつまり、これを使って、俺が九条繭に変身して、

 デビルコブラの本拠地に潜り込め、と、そういうことですか?」

正樹が言うと、我妻班長は「そういうことだ」と頷いたー


犯罪組織デビル・コブラー。

もしも”偽物”であると気づかれたら確実に命はないー

そしてー、ボスの妻である繭が利用されたと気づけば

デビルコブラは全力で警察に対する報復を始めるだろうー。

そうなれば、多くの犠牲者が出るー


正樹自身の命を懸けたミッションであると同時にー

警察、そしてこの街の命運をかけたミッションでもあるのだー。


「ーーーお前にしか、頼めないー」

我妻班長は頭を深々と下げるー


正樹は”オメガ”の中でもエース的存在で、

潜入捜査を行う際に、相手の情報などを可能な限り調べつくし、

”完璧”に振る舞いー

これまでにも数多くのミッションを成功させてきた経歴の持ち主だー。


他にも優秀な捜査官はいるがー

それでも、デビルコブラという危険な組織に潜入するー…という

過酷なミッションをこなすことができるのは、

この正樹しかいないー、

我妻班長は、そう思っていたー。


「ーーーーー」

正樹は少しだけ戸惑ったー


しかしー

「わかりましたーやりましょう」と、我妻班長の方を

真っすぐ見つめながら呟いたー。


そしてーー

先ほどー


「ーーちょっと!何をするの!?」

デビルコブラのボスの妻・九条繭が、店から出てきた直後ー

秘密捜査チーム・オメガの面々は、数秒で九条繭を確保ー

そのまま、変身装置を積み込んだ車に移動したー


「ーー…こ、こんなことして…!夫が黙ってると思ってるの!?」

繭が叫ぶー


「ーー残念だが、お前たちは、壊滅するー」

我妻班長はそう言い放つと、横にいた正樹に合図するー。


繭を拘束した椅子と、もう一つの椅子ー。

もう一つの椅子に正樹が座りー

喚く繭と、正樹にヘルメットのようなものを取り付けるとー

我妻班長は、正樹のほうを見て頷いてからー

そのスイッチを入れたー


正樹の姿がー

隣にいる九条繭と全く同じ姿になるー


「な…なによこれ…!」

戸惑う繭ー。


繭の姿になった正樹は、そのまま立ち上がると

班長のほうを見て

「ーー必ずー…ミッションを成功させますー」と、

繭の声で呟いたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


そんなことを思いだしながら

繭の姿をした正樹が、窓の外を見つめているとー

犯罪組織の根城となっている”暗黒地帯”へと車が入ったー。


そしてー

その最深部に車が向かいー、

地下のような場所を通るとー

ようやく、”犯罪組織デビルコブラ”の本拠地へと車が到着したー


コツ…と、

ヒールの音を立てながら車を降りる繭の姿をした正樹ー


綺麗な生足を目にしても、繭の姿をしている正樹は

まったく同様する様子も、ドキッとする様子も見せなかったー


彼は、正真正銘のプロなのだー。


「ーーー奥様…お帰りなさいませ」

”執事”のような姿をした男が、静かに頭を下げるー


「ーご苦労様」

繭のフリをしながらそう呟くと、正樹は歩き出すー。


初めて見る

”デビルコブラの本拠地”は、

想像していたよりも巨大でー

厳重な警備・セキュリティが施されていたー。


「ーー(これは想像以上に厄介な組織だな)」

繭の姿をした正樹はそう思いながら、地下駐車場のような場所から

デビルコブラ本拠地の建物内に入ろうとしたー


しかしー

執事が「お待ちください」と、突然呟くー


「ーーー」

一瞬内心ではわずかにドキッとした正樹だったがー

表にそんな様子は一切見せずに立ち止まるー。


「ーーー」

執事が何やら、端末のようなものを手に、

それを繭の姿をした正樹に当てるー


「ーー警察をはじめ、色々な組織が我々を敵視

 してますからなー

 奥様と言えど、”確認”は必要なのです」


執事の男が言うー。


血液型や、体内情報をスキャンする特殊な装置で

繭が偽物でないか”確認”しているようだったー。


指紋認証と網膜認証を行い、ようやく施設の中に入る

繭の姿をした正樹ー


「ーーーふぅ」

わずかにため息をつくー


ボスの妻が帰ってくるだけで、ここまで行う犯罪組織ー

やはり、一筋縄ではいかないー。


そう思いながらも、”女”としての歩き方を意識しながらー

繭の姿をした正樹は、奥へと向かうー。


そしてーーーー


爬虫類のように鋭い目つきをした、縦縞模様のスーツを着た男が、

待ち構えている部屋にたどり着いたー。


「ーーー繭」

男が立ちあがるー


圧倒的な強者オーラを放っているその男こそー

犯罪組織デビル・コブラのボスであることはすぐに分かったー


「ーーー」

近付いてきた男は、

繭に熱いキスをするとー

繭の姿をした正樹は、気持ちよさそうな”演技”をしたー。


「ーーー今夜はお楽しみだー」

繭の夫ー

デビルコブラのボスはそう呟くと、静かに

ワイングラスにワインを入れ始めたー。


犯罪組織デビルコブラのボスー

九条 王牙(くじょう おうが)を前にー

”命がけの過酷な潜入捜査”を行っている正樹はー

改めて覚悟と決意を決めるのだったー


②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


久しぶり(?)の他者変身モノは、

”超”危険な犯罪組織のボスの妻に変身して

潜入捜査を行うお話デス~!


次回からは潜入捜査本番ですネ!


お読みくださりありがとうございました~!

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