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「ーーここが…」

治夫は、廃墟の病院にたどり着くー。

数年前に経営破綻して、そのまま打ち捨てられている地域の病院だー。


不気味な気配が漂っていて、

明らかに”現在は利用されていない”という状況で

あることを示していたー。


生い茂る草をかき分けてー

病院の入口にたどり着く治夫ー。


それほど大きな病院ではないー。


「ーここに、三枝さんがー」

対策班の仲間・堂林幸成からの連絡で、

モルティングたちに囚われた三枝真綾は、

この場所に囚われていることが判明しているー。


「ーーー」

治夫は、無線機で目黒警視正にも連絡を入れるー。


”三枝真綾は、西園寺警察庁長官が送り込んだ

 潜入捜査官ですー。

 助ける必要は、ありません”


淡々と答える目黒警視正ー。

だが、そのすぐあとに、少しだけ声のトーンを緩めて続けるー。


”ですがー

 あなたのことです。

 私が何を言っても行くのでしょう?”


その言葉に、治夫は迷わず「はい」と答えるー。


己の信じた道を進むー。

恩師・泉谷からの言葉を胸に、

今、治夫は、恩師・泉谷が率いる、モルティングたちと戦っているー。


”…いいでしょう。

 ですが、無茶だけはなさらないようにー”


目黒警視正の言葉に、治夫は「わかりました」とだけ、返事をするー。


通信を終えて、病院の入口を見つめる治夫ー。


”ーーー”

治夫との連絡を終えた目黒警視正は、静かに笑みを浮かべたー。


「ーー私も、あなたも、目的は同じー

 ”モルティングの殲滅”

 そしてー”警察内部の闇を晴らすことー」


目黒警視正は、現在のアジトでモニターを見つめながら

不気味な笑みを浮かべたまま、囁いたー。


「ーーですがー

 あなたと私では決定的に違うところがあるー。

 

 それはー

 ”闇”を”闇”に葬り去るかー

 

 それともー

 ”闇”を”光”に晒して浄化するかー」


目黒警視正は、モルティングとの争いを利用し、

西園寺警察庁長官らをこの世から排除ー、

”警察内部の闇”も、闇に葬り去ろうとしているー。


一方の治夫は、モルティングの犯行を止めー、

”警察内部の闇”を世間の明るみに出した上で、

世間からの批判も受け止めた上で、

警察組織は変わっていくべきだと考えているー。


「ーー治夫くんー

 あなたは”青臭い正義感”に動かされているー。


 ”秩序”を守るためー

 闇は、蓋をしたまま、”深淵”へと葬るべきなのですー」


モニターで治夫の現在地を確認しながら

目黒警視正は、目を閉じたー


「ーー秩序を守るためー

 ”今は”あなたの好きに、させてあげましょうー」


・・・・・・・・・・・・・


登場人物


長瀬 治夫(ながせ はるお)

若き警察官。”皮”にまつわる事件に巻き込まれていく


松永 亜香里(まつなが あかり)

治夫の彼女。現在同居中。


目黒 圭吾(めぐろ けいご)

警視正。計算高い性格の持ち主で、出世欲も強い。


堂林 幸成 / 三枝 真綾

目黒警視正率いる「モルティング対策班」のメンバー。


黒崎 陣矢(くろさき じんや)

指名手配中の凶悪犯罪者。”モルティング”のひとり。


中曽根 佳純/春山 正義/ジェームズ・結城

”人を皮にする凶悪犯”通称・モルティングたち。


泉谷 聖一(いずみや せいいち)

治夫の中学時代の恩師。モルティングたちに”皮にする力”を与えた黒幕。


西園寺 零(さいおんじ れい)

警察庁長官。警察の”暗部”を司る人物。


・・・・・・・・・・・・・・


★あらすじ★


モルティングたちが、潜伏している西園寺警察庁長官の

居場所を聞き出すため、

西園寺が送り込んだ潜入捜査官でもある、モルティング対策班

メンバーの一人・三枝真綾を拉致したー。


真綾を拉致した中曽根佳純と春山正義は、尋問を続けるー。


そんな中、堂林幸成が、真綾が捕まっている場所を突き止めたー。


その場所は”物騒な病院”

そこにたどり着いた治夫は、一人、病院の中へと足を踏み入れていく…。


★前回はこちら↓★

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廃墟の病院の一室では、

囚われた三枝真綾が、

モルティングの一人・春山正義から尋問を受けていたー。


「ー西園寺警察庁長官はどこに隠れてるんだぁ~?」

正義は、先ほどまで着ていたOLの皮を脱ぎ捨てて、

真綾のスカートの中に手を突っ込みながら笑っているー。


「ー上のお口で答えられないなら、

 下のお口から聞いてもいいんだぜぇ~?

 うひゃひゃひゃひゃ!」


正義は、それだけ言うと、再び真綾にキスをして、

ペロペロと真綾の頬を舐めるー。


それでも、真綾は西園寺警察庁長官の居場所を答えずー

春山正義を睨みつけたー


「ーーーーー…」

同じ部屋の少し離れた場所から、二人の様子を見つめている

黒い喪服の女、中曽根佳純は、目を細めたー。


春山正義が、三枝真綾から、西園寺警察庁長官の居場所を

吐かせることができれば、それでよしー。


できなければー

中曽根佳純は既に”プランB”を用意してあるー。

三枝真綾から、西園寺警察庁長官の居場所を聞き出すことは

”絶対に”できると確信していたー。


正義が、真綾の両胸を乱暴に揉みながら

「おら!!!居場所を吐けよ!それとも、あんあん喘ぐかぁ!?」と、

大声で叫んでいるー。


「ーーー野蛮ね」

中曽根佳純は、見下すような目つきで、仲間の春山正義を見つめるー。


己の欲望に忠実なタイプー。


その点では、同じくモルティングの一人である

黒崎陣矢と似通ったタイプではあるー。

だが、黒崎陣矢は、欲望に忠実ながら”計算”して動いていて、

欲望に身を任せながらも、欲望に飲み込まれてはいないー。

彼は、”独自の芸術性”で動いているー


一方の春山正義は違うー。

欲望に身を任せるだけではなく、欲望に飲み込まれているー。


黒崎陣矢には遠く及ばない”小物”ー


そんな風に考えながら、佳純が、

真綾を尋問する正義を見つめていると

正義は、さっきまで着ていたOLの皮をつかんだー。


「ーーへへへへ…」

突然、”皮にした人間を元に戻す注射器”をOLに注射する正義ー


OLの身体が皮から人間に戻り、うめき声をあげるー。


「ーーー…ぅ…あ、、あれ…わ、、わたし…」

OLが”寝起き”のような顔で周囲を見渡すー。


「へっへっへ」

正義は下品な笑みを浮かべながら、そのOLの髪を乱暴に

引っ張ると、再びOLの首筋に、今度は”人を皮にする注射器”を打ち込んだー。


「ーな、、何をしてるの…!?」

囚われの真綾が、ギャルのような風貌とは不釣り合いな口調で言い放つー。


真綾の”ギャルな仕草と風貌”は、潜入捜査の一環で、

本来は冷静な女性だー。


「ーー何って? お前がさぁ、なかなか西園寺警察庁長官の場所を

 吐かねぇから、この”お洋服”で遊んでるのさ」


正義はそう言うと、悲鳴を上げながら皮になったOLに再び

”元に戻す注射器”を打ち込むー。


「ーーなぁなぁ、どうよ?”皮”になったり、人間になったり、

 繰り返す気分はー?」


正義は、状況をまったく理解できていないOLの髪を引っ張りながら笑うー


「ーーな、、な、、なんのこと…ですか…?

 ここは…どこ…?」

泣きながら正義の方を見つめるOLー。


「ーーか~~わ~~いいなぁ~~~~~

 ”皮”~~いぃぃぃ~~~~」

狂ったように笑いながら正義が再びOLに”皮にする注射器”を打ち込むー


これでは、まるで”拷問”だー


「やめなさい!」

真綾が怒りの口調で叫ぶー。


「ーーその人は、関係ないはずよ!」

真綾の言葉に、正義は笑うー


「ーそうだなぁ、関係ないなぁ~~

 でもさぁ~~~~~」

正義が、再びOLに”元に戻す”注射を打ち込み、

悲鳴を上げるOLに向かって言い放つー


「さっきまで俺にいいように着られて

 悪女になってた女がー

 そんなか弱そうな顔しちゃって…

 ゾクゾクするなぁぁぁ…」


唇をペロリと舐める正義ー


OLは、泣きながら

「た、、助けてください…!助けて…!」と悲鳴を上げているー


彼女は帰宅中に皮にされて以降の記憶がないー。

混乱するのは当然だー。


「ーーやめなさい!!!!!」

真綾が大声で叫ぶー。


「ーーうるせぇなぁ…

 だったら、西園寺長官の場所、、言えよ!」

正義が大声で叫びながら、OLを再び皮にして、

今度はそのOLを着こむー


OLの姿で、正義は何度も何度も真綾を殴りつけるー。


それでもー

真綾は口を割らないー。


「くそっ…!このギャル女ー」

OLの顔を鬼のように歪ませてから、再びOLを脱ぎ捨てた正義は、

真綾のスカートの中に再び手を突っ込んで、

「早く喋れよ…!ほら!」と、不気味な笑みを浮かべたー。


ピピッー


正義の尋問を冷ややかな目で見ていた中曽根佳純の隣にあった

端末が反応を示すー。


「ーーあら、お客さんねー」

佳純は不気味な笑みを浮かべると、

近くにあったマイクに手を触れて、静かに語り始めたー


・・・・・・・・・・・・・・・・


治夫は、廃墟の病院内部に突入していたー


警戒しながら、奥へと進んでいくー


”堂林さんが合流する予定になっているけど…

 それまで待っていたら、三枝さんの身が危ないー”


治夫は、人の気配のない病院を、奥に、奥にと進みー

一部屋ずつ、警戒しながら調べていくー


その時だったー


”♪~~~~”

病院の院内放送の始まりを知らせる音が、廃墟の病院の中に

響き渡ったー。


誰もいない病院に響き渡る、不気味な音ー。


”ようこそー

 長瀬治夫ー”


女の声ー。


治夫はすぐに、それが”中曽根佳純”の声であると気づくー。


「ーー中曽根佳純!」

治夫が叫ぶと、

”ふふふ…一人で来るなんて、若さゆえの暴走かしら?”

と、中曽根佳純は見下すようにして笑ったー。


中曽根佳純の声が響き渡る中ー

治夫は、廃墟の病院を探索していくー。


佳純は、自らの過去を語るー。

少し前に、三枝真綾に語った内容と同じだー


自分は元々医師であったことー

海外の貧しい子供たちを現地に赴き、救っていたことー

そこで、地獄を見たことー

医師をやめた後は、死を望む人々に、特殊な薬剤で安楽死させていたことー


それらを語るー。


治夫は、そんな中曽根佳純の声を院内放送で

2階へと駆け上がるー。


”ーこの病院は、わたしがまだ、”生きること”に

 希望を抱いていたときに勤務していた病院ー

 もう、閉鎖されてしまったけれどー

 わたしの原点ともいえる場所ねー”


中曽根佳純の言葉に惑わされず、

治夫は奥へと進んでいくー。


「ーー俺は必ず三枝さんを助け出す!

 今、お前のいる部屋にいるから待ってろ!」

治夫は怒りの形相で叫ぶー。


”モルティング”たちのせいで、多くの人々が犠牲になったー。

これ以上ー

これ以上、絶対に犠牲は増やさせないー。


「ーーーー…」


”三枝さん!今、行きますから!”

治夫の叫び声が、佳純たちのいる部屋にも響き渡るー


「ーーーどうして…?」

ギャル風の真綾も、治夫の声を聞いていたー


”わたしの正体に、彼ももう気づいたはずー。

 なのになんでー?

 あなたの命を奪おうとしたわたしを、なぜ、助けにー?”


戸惑う真綾ー。

自分は西園寺長官の指示通り、治夫に”剛”を差し向けて

命さえも狙ったー


それなのに、治夫は今、真綾を助けようとしているー


「ーーへへへへへ」

不気味に笑う正義ー。

正義は再び、真綾の方を見て、真綾にキスをすると、

「なぁ?早く西園寺とかいうやつの場所を言って、楽になろうぜ?」と

笑みを浮かべるー。


「ーーー」

中曽根佳純は、さらに院内放送を使って、治夫に語り掛けるー。



治夫は、病院の3階にたどり着いていたー。

中曽根佳純たちは、このフロアにいるー。

治夫はそのことを知らなかったが、一部屋一部屋、慎重に調べていくー。


”ーーねぇ、何故、あなたの恩師でもある泉谷さんが、

 わたしを仲間に引き入れたか、知ってるー?”


中曽根佳純が、院内放送で引き続き語り掛けてくるー


「ーーー」

治夫は答えないー。


”あなたの先生はーーー

 警察組織の闇に”天誅”を与えたらー

 死ぬつもりなのよ”


中曽根佳純が笑うー。


「ーーなんだって?」

病院の通路で立ち止まる治夫ー


”あなたの先生は、すべてが終わったら、

 死ぬつもりなのー。

 だから、わたしを仲間に引き入れたー。


 わたしはね、泉谷さんから言われてるのー。

 ”すべてが終わったら、その薬で俺を楽にしてほしい”

 って…ね”


中曽根佳純の言葉に、治夫は動揺を覚えたー。


恩師でもあり、モルティングの黒幕でもある泉谷は、

西園寺警察庁長官ら、”警察組織の闇”に”天誅”を与えたらー

自らも死ぬつもりなのだー。


「ーー……ふざけるな…!

 俺がその前に、先生を捕まえる…!

 そして、お前もー!」


治夫はそう叫ぶと、すぐ近くの扉を開いて、銃を構えたー。


扉を開いた先にはー

黒い喪服の女ー、中曽根佳純と、

治夫は初めて対峙する連続痴漢・ストーカー犯の春山正義ー

そして、囚われている三枝真綾の姿があったー。


「ーー動くな!」

治夫が叫ぶと、中曽根佳純はクスッと笑いながら両手をあげたー。


「ーー…あなた…どうしてここに…」

真綾は戸惑った様子で言うー。


「ーーもう”ハルくん”とは呼んでくれないんですねー」

治夫が少しだけ寂しそうにそう言葉を口にすると、

鋭い目つきで中曽根佳純の方を見つめーーー


表情を歪めたー。


春山正義の姿がーー

消えているー


「ーー!」

治夫がハッとしたその時だったー。


正義が横から、治夫にナイフで襲い掛かってくるー。


「ーーへへへへへへっ…!お前が黒崎の言ってた、

 若造かぁ…!確かに面倒臭そうなやつだぜ!」

正義はそう言いながら、治夫にナイフを向けるー。


それほど広くない部屋ー。

ナイフを振り回されると、非常に危険だー。


治夫はなんとか、正義のナイフを持つ手を押さえると、

正義を蹴り飛ばすー。


吹き飛ばされる正義ー。


できればー

モルティングたちも全員逮捕したいー


だがー

それができる相手ではないことも、治夫にはよくわかっているー。


中曽根佳純もー

春山正義もー

”生身”の状態ー


誰かを着ている状態ではないー。

今が、チャンスー。


目黒警視正の手回しにより、モルティングたちに対する

射殺の許可は下りているー。

どういう仕組みかは知らないが、とにかく、上が許可しているとのことでー

実際に、班目順太郎や、臼井隼人を、治夫たち対策班は

射殺しているー。


「ーーこのイカレ女!」

治夫は、中曽根佳純の方に向かって銃を放ったー。


だがー


「ーーがっ…!」

治夫の銃弾は、春山正義の胸のあたりを貫いたー。


「ーー!」

治夫が表情を歪めるー。


中曽根佳純が、横に立っていた春山正義を”盾”にしたのだー


「なっ…!」

治夫が驚いていると、

血を流す春山正義を盾にしたままー

中曽根佳純は、部屋のもう一つの出口の方に後ずさっていくー。


「ーーーーーー」

そしてー

中曽根佳純は、まだ死んでいない春山正義に対して”黙祷”を捧げるー。

自分で盾にしておきながら、黙祷を捧げるその姿は”異様”だったー。


春山正義が苦しそうにうめき声をあげるー。


”ーー春山の尋問は、ダメね…

 これ以上、続けさせても、成果が出ないー

 こいつは処分してー

 わたしの”プランB”で西園寺長官の場所を聞き出せば

 良いだけのことー”


中曽根佳純はそう考えると、少しだけ

クスッと笑いー、春山正義の首筋に

”安楽死”の薬剤を注射して、そのまま治夫の方に突き飛ばすー。


向かってくる春山正義に対して、

治夫が銃を放つと同時に、佳純は、部屋の出口から外へと飛び出したー。


春山正義が、銃弾が命中すると同時にその場に倒れ込むー。


「ーー」

治夫はすぐに正義の状況を確認したが、

既に死亡していたー。


「ーー三枝さん…」

治夫は、激しく手を震わせながら、真綾の拘束を解いたー。


真綾は、戸惑った表情をしながら、

治夫の方を見つめて、少しだけ微笑むと、呟いたー。


「ーー銃の使い方も慣れていないような、

 若い警察官がー

 無理をしちゃだめでしょ」


とー。


未だに手を震わせていた治夫を見て、そう言い放った真綾は、

「でも…ありがとう」と、

申し訳なさそうにお礼の言葉を述べたー。


「ーー三枝さんの正体が何であろうとー

 同じ対策班の仲間ですから…」

治夫がそう言うと、直後ー

部屋の扉が開いたー。


「ーー!!」

治夫が振り返って銃を向けるとー

そこには、対策班の仲間で、後から駆け付けることになっていた

好青年風の堂林幸成の姿があったー。


「堂林さん…!」

治夫が言うと、幸成は「長瀬…それに三枝さん…無事でよかったー」と、

安堵の表情を浮かべたー。



少し間を置いてからー

治夫は真綾の方を見つめて、真剣な表情で質問したー


「ーー西園寺警察庁長官は、今、どこにいるんですか?

 教えてくださいー」


とー。


治夫は、”警察組織の闇”の中心人物でもある

西園寺 零 警察庁長官と、直接”話”をする決意をしていたー


㉕へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


物語は終盤に向かっています~★!

どんな風に決着がつくのか、

登場人物たちがどのような結末を迎えるのか、

ぜひ見届けてくださいネ~!


今日もお読みくださり、ありがとうございました~!

(Fanbox)


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