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「ーーーや…やめて…来ないで!」

とある高校の校舎ー


美術部の副部長を務める祐子(ゆうこ)が

悲鳴を上げながら、美術室の角に追い詰められているー。


他の部員たちは既に帰宅し、

祐子が美術室の戸締りをしていた際に”それ”は現れたのだー。


まるでー

”幽霊”のような恰好をした女がー。


髪を伸ばしー

顔は隠れているー。


明らかにヤバい感じの女に迫られている祐子は、

恐怖に身体を震わせることしかできなかったー。


幽霊のような女が近づいてくるー。


そしてー

その女は、口元を不気味に歪めるとー

静かに囁いたー。


「ーーーお前の、綺麗な、髪が欲しいー」

とー。


「ーーひっ…!」

謎の幽霊のような女に追い詰められている女子生徒・祐子は

長い綺麗な黒髪が特徴的な女子生徒だったー。


その”髪”を見つめながら不気味に笑う幽霊のような恰好をした女ー。


「ーーた…たすけて…!」

逃げ出そうとした祐子ー


しかしー

美術室内に赤い光が差し込みー

逃げようとしていた祐子が、途端に無表情になって

その場に立ち尽くすー。


その目は、うつろだー。


「ーーーさぁ…髪をよこせ」

幽霊風の女がそう呟くとー


「はい……」

と、祐子は、まるで操り人形かのように、ふらふらと歩きだしー、

幽霊のような恰好をした女から、ハサミを受け取るとー

無表情のまま、自分の髪を切り始めたー。


美術室の中にー

ハサミの音だけが響き渡るー


やがてー

無残に髪の毛を失った祐子が、ハサミをその場に落とし、

「髪を…ぜんぶ…切りました…」と、

うつろな目のまま呟いたー。


「ーーーふふふふふ…ご苦労様」

幽霊のような恰好をした女は、そう呟くと、

不気味な笑みを浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーー祐子、どうしちゃったんだろう…?

 先週からずっと休んでるし…」


女子高生の花村 麻央(はなむら まお)が、心配そうに呟くと、

「ーー知らないの?」と、麻央と一緒に昼食を食べていた

別の女子生徒・香原 純玲(こうはら すみれ)が、弁当を

食べる手を止めて、麻央の方を見つめたー。


「なんかね…祐子、”髪の毛”を奪われたって話だよ?」

純玲が言うと、麻央が「え!?何それ…?どういうこと?」と、

”意味が分からない”と言いたげな表情で純玲を見つめたー。


純玲は「放課後に”髪の長い女子”を狙って、”出る”んだってー」と、

少しニヤニヤしながら言うー。


「で、、出るって…?」

麻央が聞き返すと、純玲は

「”幽霊”」と、呟いたー。


「ーゴクリー」

麻央の表情に緊張が走るー。


「ーーー何十年か前にね、髪のことでいじめを受けた

 女子生徒が、この学校の屋上から飛び降りて、自殺してるらしいのー。

 ”リサ”って子らしいけどー…

 その子の亡霊が、髪のきれいな女の子が、夜になるまで

 学校に残っていると、”髪”を奪いに来るんだってー」


純玲の言葉に、麻央は少し青ざめた様子だー。


「ー祐子も、その幽霊に髪の毛を取られちゃったって噂よ。


 別のクラスの祐子と仲良しの子が、祐子の家に一昨日、

 行ったらしいんだけどー

 ”祐子は、帽子をかぶった状態で、何かにおびえるようにしてた”

 らしくてー…」


純玲がそこまで言うと、

青ざめている麻央の近くに、男子生徒がやってきたー


「おいおい~!純玲ちゃん!

 あんまり麻央にそういう話するなよ~!」


やってきた男子生徒は、麻央の幼馴染の田口 大介(たぐち だいすけ)ー。


彼氏彼女の関係ではないが、

幼馴染同士ということもあり、それなりに仲良しだー。


「ーー麻央、オカルトとか、心霊現象とか、苦手なんだから」

大介が言うと、麻央は「ーーそ、そ、そんなことないよ!」と、

顔を赤らめながら言い放つー。


純玲は「ごめんごめん!」と、悪戯っぽく笑いながらー

「でも、そういう噂があるのは本当なんだけどね!」と、つけ加えたー。


ここ半月でー

祐子を含め、3名の女子生徒が”謎の欠席”状態にあるー。


そして、その3人は、髪がなくなっていて、

何かにひどく怯えた状態だというのだー。


「ーおいおい~、そんな話、あるわけないだろ?」

大介が言うと、純玲は

「まぁ、わたしもそう思うんだけど…

 でも、そういう話が好きなわたしとしては、

 ちょっと興味が湧いてきちゃう!」と、笑ったー。


「ーーだ、大丈夫ー?」

楽しそうに話をしていた純玲は、

青ざめた様子の麻央を見て、さすがに心配になったのか、

心配そうにそう呟いたー。


「だー…大丈夫…」

麻央が深呼吸しながら言うと、

幼馴染の大介は「今日の夢は、髪の毛を奪う幽霊の夢で決まりだな~!」と

麻央に対して冗談を口にしたー。


純玲は、そんな幼馴染同士の二人のやり取りを

微笑ましく見つめながらー

”祐子”の机の方を見つめたー


”髪の毛を奪う幽霊”

そんなものがいるなんて、当然、純玲も本気でそう思っているわけではないー。


だが、ここ最近”謎の欠席者”が数名とは言え、出ているのは

事実でありー、

そういう”噂”があるのも事実だったー。


「ーーーーー…」

純玲は、あることを思いついて、二人にばれないように

静かに微笑んだー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーへへへへへへ」

職員室ー


周囲にバレないように、ニヤニヤしながら

男性教師の名坂が、何かを見つめているー。


学校行事の写真だー。

一見すると、生徒たちの写真を見て、

微笑ましそうにしているー

そんな感じにも見えるー


だがー

実際はー


”彼”の目は、写真の女子生徒たちに注がれていたー。


彼がー

名坂先生が、教師になった理由は、

教師としてあるまじき理由ー。

世間に知れ渡ったら確実に叩かれる理由だー


それはー

”合法的に女子高生の近くにいることができる”

という理由ー


「ーー名坂先生」

真面目そうな眼鏡の若い女性教師が、

そんな名坂先生に声を掛けるー。


「ーー市川(いちかわ)先生。どうかしましたか?」

名坂先生がすっとぼけた様子で呟くとー

「ー先生、また生徒をいやらしい目で見ていませんでしたか?」と、

あきれた様子で、市川先生と呼ばれた女性教師が呟くー。


市川先生はとてもまじめで、融通が利かないタイプー。

それ故か、名坂先生のイヤらしい雰囲気を察して

たびたび苦言を呈していたー。


「ーーははは、そんなことしませんよ。

 生徒たちの成長を喜んでいただけです」

名坂先生が芝居がかった様子で言うと、

市川先生は「ーあなたみたいな人が先生だなんて…信じられない」と

不満そうな様子で、そう言葉を口にしたー。


「ーーははははは~!相変わらず手厳しいですねぇ

 市川先生はー」


それだけ言うと、立ち去っていく市川先生のおしりのあたりを

見つめながら、少ししてから視線をずらすと、

再び”目の保養”にもなる、教え子たちを見つめたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「純玲~!一緒に帰ろ~!」


放課後ー。


すっかり元通りの元気を取り戻した麻央が、

純玲の方に近づいてくるー。

さっき、”髪の毛を奪う亡霊”の話を聞いた直後には

青ざめていたのが嘘のようだー。


「あ、ごめん!麻央!」

そんな麻央に声を掛けられた純玲が笑うー。


「ーわたし、今日ちょっと図書室で調べ事しようと思っててー」

申し訳なさそうに言う純玲に対して、

麻央は「そっか。うん、わかった!じゃあまた明日ね~!」と

笑いながら手を振って、そのまま立ち去っていくー。


純玲は麻央の後ろ姿を見ながら微笑むと

そのまま図書室に向かったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


特に調べ事はなかったもののー

暗くなるまで図書室で本を読んだりー、

のんびりしていた純玲ー。


最後に戸締りをして、鍵を返しさえすれば、

こうして放課後、最終下校時間までは

図書室を利用することが、この学校では認められている。


純玲が、周囲が暗くなるまで、学校に残っていたのには

とある理由があったー。


それはー

”髪を奪う亡霊”の噂を自分自身の目で確かめるためー。


オカルト好きな純玲は、元々その噂にも興味を持っていたが、

さっき昼休みに麻央を揶揄うつもりで

そのことを話した際に、

自分自身でも、さらに強く、そのことに対して

興味を持ってしまったー。


”麻央に、幽霊なんていなかったよ~!っていう

 おみやげ話もできるし!”


純玲はそんな風に思いながら、図書室の壁にぶら下げられている

小さな鏡で自分の髪を見つめるー。


「ーーわたしの髪で、幽霊さんが出てくるかは分からないけど!」

そんな風に呟きながら、純玲は、すっかり暗くなった外を見つめて、

図書室で心霊現象の本を読みながらー

”幽霊”が出てくるのを待ったー


出てきたら出てきたで、”お話”するつもりだったし、

出て来なければ出て来なかったで、

”やっぱりこういう噂は、噂でしかないんだね!”ということが分かるー。


「ーーーーーーーー」

ため息をついて、時計を見つめる純玲ー。


もうすぐ最終下校時間だー。

これ以上、特別な理由なく学校に居座ることはできないー。


”結局ー何も出て来なかったね”

少し残念そうにしながら、読んでいた本をしまい、

図書室から外に出ようとする純玲ー


「ーーわたしの髪が魅力的じゃないってことかな…?」

クスッと笑いながら、純玲は

”やっぱ幽霊なんていないよね~”と、

オカルト好きとして残念にも思いながら、

図書室の扉を開けたー。


その時だったー


「ーーーーー!!!」

図書室の先の廊下にーー

白い服装のーー

顔を隠した”幽霊”のような女がいたー


「ーー!!!ゆ、、幽霊…?」

純玲が少し驚いた様子で呟くと、

幽霊風の女は、ゆっくり、ゆっくりと純玲の方に近づいてきたー


「お前の、綺麗な髪がー欲しいー」

女が呟くー。


「ーーー……あ、、あ、、あなたが噂の”幽霊”さん?」

オカルト好きの純玲も、さすがに、実際の”幽霊”を見たのは初めてで、

思わず戸惑ってしまうー。


それでもー

好奇心が勝り、”女幽霊”に話しかけるー


しかしー


「ーー髪が、欲しいー」

幽霊のような恰好をした女は、繰り返しそう呟くだけだったー


「ーーえ~っと、じゃあ、ちょっと、中で話しましょ?」

純玲は、一度出た図書室の方に戻ると、図書室の中で

幽霊の格好をした女と話をしようとするー。


正直、身体は少し震えていてー

恐怖も感じていたものの、それでも、純玲の好奇心は消えなかったー。


「ーーあなたが最近、女子から”髪の毛を奪っている”って幽霊さん?」

純玲が言うと、図書室に入ってきた幽霊の格好をした女はー

純玲の方に向かって、ゆっくりと歩いてくるー。


「ーーー…う~ん…こ、言葉は通じるよね?

 わたし、あなたとお話がしたんだけど!」

純玲が言うー。

だが、幽霊の格好をした女は答えないー。


「ーーーー…ーーー」

純玲は戸惑いながらも、

「あなた、昔自殺したって言われている、リサさんー?」

”噂”を口にしたー。


だがー

”リサ”という単語にも反応を示さず、

ゆっくりと純玲の方に向かってくるー


「ーちょ、ちょっと!話!話しようよ!」

純玲は、焦った様子でそう呟いたー。


けれどー

それでも、幽霊女は反応しないー


「ーーーー!」

純玲は”話が通じない!”と判断して、途端に怯えた様子で、

図書室の机を回り込んで、幽霊女を避け、そのまま外に出ようとしたー。


しかしー


その直後ー

図書室の外から赤い光のようなものが差し込みー

その光を見た純玲はーー

逃げるのをやめて、その場に操り人形のように立ち尽くしたー。


「ーーさぁ、髪をよこせ」

幽霊女はそう言いながら、ハサミを純玲に手渡すー


「ーーーはい…わたしの髪をすべて差し上げますー」

うつろな目になった純玲は、そのまま自分の髪をはさみで

切り始めるー。


しばらくしてー

ハゲのような状態になってしまった純玲は、

うつろな目のままー


「わたしの髪です…どうぞ…」

と、呟いたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「あれ?今日、純玲ちゃん休み?」

幼馴染・大介の言葉に、麻央は

「なんか、昨日から連絡しても返事も帰ってこないんだよね…」

と、答えるー。


「まさか、純玲ちゃんも”髪”を奪われたんじゃー?」

笑いながら揶揄う大介ー。

まさか、”本当”にそんなことがあるとは夢にも思わずにー


「ーーまさか!やめてよそういうの~!」

オカルト話が苦手な麻央は、そう言いながら、

大介の肩を叩くのだったー。


②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


夏はホラー…!ということで(?)

夏ももうすぐ終わってしまいますが、少しホラーっぽいものを

用意してみました~!


でも、別に怖い話じゃないので、

苦手な人も安心して読んでくださいネ~!

(①の内容で、怖くて震えちゃう!という人は、

 ダメかもですケド…汗

 あ、でも、①より怖くなったりはしません!大丈夫デス…!)


今日もお読みくださりありがとうございました!!

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