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娘の麻衣を溺愛する父親の省吾。


省吾は、麻衣に彼氏ができたことを知り、

”これまでもそうしてきたように”

娘の姿に「他人に変身する力」を用いて変身、

麻衣の姿で彼氏の俊に接触し、”わざと”俊から嫌われるような行動を

繰り返したー。


全ては、麻衣から彼氏を引きはがすためだー。


そんな最中、不良に絡まれた麻衣の姿をした省吾は、

彼氏の俊を見捨てて逃亡するー。


一方、そんな様子を見ていた麻衣の親友・星来は、

映画館から出て来て、歩いていた”本物の麻衣”に対して、

「彼氏を見捨てて逃げるなんて!」と激怒、

まさか”父親が自分の姿に変身して彼氏を追い払おうとしている”

などと夢にも思わない本物の麻衣は、星来に事情を問いただすのだった…。


☆前回はこちら↓☆

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・・・・・・・・・・・・・・・・・


「--俊くん、大変なのよ!!

 一人で逃げて、よくそんな顔してられるね!?!?」


親友の星来が叫ぶー。


「え?ちょっと待って…何言ってるの?」

本物の麻衣は、状況が飲み込めずに、困惑するー。


「-急に映画館から俊くんを外に連れ出して、

 ラブホが何だの言いだして…

 絡まれたら、俊くんを置き去りにして逃げるなんて…」

星来が信じられない、という様子で言うー。


だが、星来が見ていたのは、

麻衣の父親が変身した麻衣ー、つまり”偽物だー。


本物の麻衣からすれば、

今、星来が口にした言葉なんて、全く記憶にないー。


「---…あ、、、あの、星来、落ち着いてー…

 全く話についていけないんだけど…!」

麻衣が言うと、

「-あ~!そうやってとぼけるんだ!?」と、

星来が呆れ顔で言うー。


「-そんなんじゃ、男子に嫌われて当然でしょ!

 だから、仲良くなった男子がみんな

 遠ざかっていくんだと思うよ!」

怒りっぽい口調で続ける星来ー。


「--ちょ!ちょっと!何のこと!?

 ちゃんと説明してよ!」

”理不尽に親友から怒られた”麻衣は、

少し腹を立てて、そう言い返したー。


星来は呆れた様子で今までの出来事を簡単に話したー。


映画館でいきなり麻衣が

「映画を見るのはやめよう」と言い出して俊を連れ出したことー


俊に高圧的な態度を繰り返していたことー


星来は、距離があったため上手く聞き取れなかったものの、

ラブホがどうこう、麻衣が言ってたことー


それが原因で不良に絡まれて、俊を見捨てて

麻衣が一人で逃げ出したことー


そして今、何食わぬ顔で、麻衣が普通にこの場所を

歩いていたことー


星来は説明し終えると、

「自分が一番よくわかってるでしょ」と、言い放つー。


「--…う、、う~ん…全然分からないー…

 わたし、俊に映画館で置き去りにされて

 さっきまで一人で映画見てたんだけど…」

と、麻衣は困り果てた様子で呟くー。


「--はぁ?そんな嘘ー」

星来が声を荒げると、麻衣は「ホントだってば!」と、

映画館から出る直前に、おみやげでキーホルダーを買ったことを

思い出して、そのレシートを見せたー。


「---え…」

星来は唖然とするー。

レシートの時間は、確かに、さっき俊と麻衣が一緒にいた時間帯ー。


「---…わたし…ホントにずっと映画館にいたんだよ!

 映画が始まる前に、トイレに行ったんだけど、

 トイレから出てきたら、俊、急に消えちゃうし…」


麻衣の困り果てた表情を見て、

星来は「ご、、ごめん…」と、麻衣に謝るー。

麻衣は「いいけど…」と、困り果てながら言うと、

星来も麻衣も、ほぼ同時に、同じ言葉を口にしたー


「--じゃあ、俊と一緒にいた麻衣は誰ー?」

「--星来が見たわたしに似てる人は、誰ー?」


とー。


麻衣と星来が顔を見合わせるー。


星来は”そういえば、俊くんと映画館から出て行った麻衣はー…

トイレじゃない方向から出てきてたー”と、頭の中で考えるー


「--俊は今、どこにいるの?」

麻衣がハッとした様子で叫ぶー。


星来の話通りなら、俊は不良に絡まれたままだー。


「--あ、、えっと、案内する!ついてきて!」

そう言うと、星来は慌てた様子で走り出したー。

麻衣も慌てて星来についていくー。


「ところで星来、なんでわたしと俊の行動、

 全部知ってるのー?」

麻衣が純粋な疑問を口にするー


「えっ!」

ギクッとしながら、星来は「そ、それはー…」と呟くー。


親友の麻衣の”初めての彼氏”との”初めてのデート”が

心配で、探偵ごっこの如く、尾行していたなんて言えないー。


「---そうなんだ…ありがと!」

麻衣が笑うー


「え!?今、わたし、考えてたことが口に出てた!?」

星来が言うと、

麻衣は「うんー。」と苦笑いしたー。


2人は、そんな話をしながらー

俊が不良に絡まれている現場を目指すー


・・・・・・・・・・・・・・・


「----…」

娘・麻衣に変身した父親の省吾は

麻衣の姿のまま、不良に絡まれた現場から

離れた場所までやってくると、

ため息をついたー。


”これで、麻衣によりつく野獣は排除したー”

とー。


「--これは、全部麻衣のためなんだー」


全てはー

大事な大事な娘に

変な男が寄り付かないようにするためー。


「----」

麻衣の姿に変身して

”わざと嫌われる”ような行動をしー、

そして、麻衣から男を遠ざけるー。


父・省吾は今までにも、何度も何度もそうしてきたー。


だがー


「--------」


「--彼女を見捨てることなんてできないー。

 彼女を守るのは、彼氏の役目だー」


不良に絡まれた麻衣の姿をした俊のことを思い出すー。


麻衣の姿で、嫌われるような言動を繰り返した省吾ー

俊も、当然イヤな気持ちをしただろうー。


だがー

それでも、俊は、”彼女である麻衣”を助けるためー

不良たちから麻衣を庇ったのだー。


「あいつ、今頃、不良にボコボコにされてんのかな?」

麻衣の姿をした省吾は呟くー。


「--ま、知ったこっちゃねぇか。

 これで、麻衣からあの彼氏も離れるだろー」


そう呟いて、変身を解除しようとする麻衣の姿をした省吾ー。


しかしー


「--------」

髪をぐしゃぐしゃとかきむしると、

「-でも、あいつ、いい奴だったな」と、呟くー。


認めたくはないがー

正直、娘の麻衣に出来た”初めての彼氏”である俊は

とても良い男だったー。

麻衣のことが好きだというのが伝わって来たし、

麻衣のフリをして、どんなに失礼な行動を繰り返しても、

俊は、麻衣を助けようとしたー。


「--くそっ!」

そわそわした様子で呟くと、麻衣の姿をした省吾は、

さっきまでいた場所に向かって走り出したー


”女子高生”として振舞う気もなくー、

猛ダッシュで街を駆け巡るー。

周囲が驚くのもお構いなしー。


そしてー


「--もうやめろ!!!!」

麻衣の姿のまま、省吾は、そう叫んだー


三人組の不良が、驚いて、麻衣の姿をした省吾の方を見つめるー。


不良たちに殴られた彼氏の俊も驚いているー


「なんだぁ?さっきのラブホに行きたがってた女じゃねぇか!」

不良の一人が笑うー。


「やっぱ俺たちと行く気になったのか?」

ニヤニヤする不良ー。


”彼女のため”にボロボロになった俊の方を見つめる麻衣の姿をした

省吾ー。


「-----」

俊のことを見つめると

”君はそこまで娘のことを想っているんだな”と、心の中で呟くー。


そして、不良たちの方をキッと、見つめたー


さっきは、身体の変化に驚いてしまったー。

今までにも麻衣の姿に変身して、男を追い払ったことは何度もあったが

不良に絡まれるのは初めてで、

身体自体の力や体力の違いに、驚いてしまったがー、

”それが分かっている”今は、話は別だー。


”麻衣の姿でも、こいつらを追い払うことぐらいはできるー”


麻衣の姿をした省吾が、不良たちと戦いを繰り広げ始めるー。


麻衣の姿をした省吾が、髪を振り乱しながらー

俊敏な動きで、不良たちの攻撃をかわすー。


”娘の姿で、相手に暴力を振るうのはまずいからなー”


そう思いながら、相手の攻撃をかわしたりー

相手の攻撃をうまく避けて、同士打ちさせたりー、

”自滅”を狙っていく麻衣の姿をした省吾ー。


”す、、すげぇ…”

俊は唖然としながら、麻衣の姿をした省吾の方を見つめるー。


可愛らしい容姿の麻衣が、

まるで、ヒーローのように戦っているー


そんな姿に、俊は、感動のような感情を覚えたー。


「---!」

麻衣の姿をした省吾が、不良たちの攻撃を喰らいながらも、

なんとか、不良たちを追い込んでいくー。


そこにーー

本物の麻衣と、親友の星来が駆けつけたー


「俊!」

本物の麻衣が叫ぶと、俊は「え…?麻衣…?」と

混乱した様子で、

本物の麻衣と、不良と戦っている”偽物”の方を見比べたー


本物の麻衣と共に駆け付けた星来も唖然としているー


「え…麻衣が二人…?

 何これ…?

 双子ー…?」


”本物”と”偽物”がいるー

それは、さっきの、本物の麻衣との会話で理解していたがー

いざ、こうして、”同じ場所に二人揃っている”状況を目にすると

非常に不思議な感覚だったー


偽物の麻衣に、攻撃を避けられて、

不良の一人のパンチが、別の不良に命中するー。


不良たちは、既にボロボロだったー。

麻衣の姿をした省吾は、一度も攻撃していないのだがー

攻撃を避けられた際に、仲間に攻撃があたったり、

躓いたりしているうちに、ダメージが蓄積されていたのだー


「くそっ!なんなんだこの女ー」

「--もういい、帰るぞ!」

”遊び半分”のつもりで絡んだやつらに、こんなに痛い目に

遭わされるとはー。


”わりに合わない”

そう思った不良たちは、逃げるようにして

退散していったー。


「---ど、どういうこと…なんだ?」

俊が戸惑いながら言うと、

麻衣は「わたしも、よく分からないんだけど…」と、苦笑いしながら

俊の身体を心配するー。


俊が「大丈夫」と、安心した様子で言うと、

麻衣も安心した様子で立ち上がってー

”偽物の麻衣”の方に向かって歩き出したー。


麻衣の親友・星来も、”偽物の麻衣”の方を見つめているー。


「--あなたは、いったいー」

本物の麻衣が言うと、

振り返った偽物の麻衣は、表情を曇らせたー


「-----麻衣のこと…大切にするあまりー

 守ってやらないと…って思ってー

 今までもこうして、麻衣から、男を遠ざけて来たー」


偽物の麻衣が言うと、

本物の麻衣は、悲しそうな表情を浮かべるー


本物の麻衣と偽物の麻衣、二人が向き合っていると

本当に”双子”のように見えるー


「男は野獣だから、お前に近づけちゃいけないーーって」

偽物の言葉に、本物の麻衣は、「もしかして、お父さんー…?」と、

驚いた様子で呟いたー。


「---ーーー」

無言でうなずく偽物の麻衣ー。


「-でも、ちがったー」

偽物の麻衣が、変身を解除して、自分の姿ー

麻衣の父親である省吾の姿に戻るー。


「--!?」

「---!!」

彼氏の俊も、親友の星来も驚くー


「--野獣は俺だったー。

 お前を守ろうとするあまり、

 俺は、俺自身がお前を傷つけていることに気づけなかったー


 本当に、すまなかったー」


省吾が、麻衣の方を見つめながら頭をさげたー


「---お父さん……」

麻衣は、それだけ呟くと、

省吾の方を見て叫んだー


「--じゃあ、わたしの姿になって、今までも

 同じようなことしてたってこと!?


 それと、わたしの姿で変なこともしてたってこと!?」


その言葉に、省吾はー


「へ、変なことはしてない!絶対に!」と、

慌てて叫ぶと

他のことはすべて認めたー。


誠吾は「もう二度としない」と、変身するための薬も力も

捨てることを約束したー。


麻衣は、呆れた様子で頷くとー

「-お父さんのバカっ!」と、省吾の頬を思いっきりビンタしたー。


そして、ビンタしたあとにー


「--でも、そんなに心配してくれてー

 そこは、ありがとうー」


と、少しだけ照れ臭そうに呟いたー。


「--でも、もう、こんなこと絶対にしないでねー。

 みんなにも、色々迷惑かけちゃってるしー」


麻衣の言葉に、省吾は「そうだな…」と、申し訳なさそうに言うと、

麻衣は、父の省吾の手を引き、

唖然としている星来と俊に対して、

「お父さんが迷惑かけて…わたしからも、ごめんなさいー」

と、本当に申し訳なさそうに謝罪したー。


省吾も謝罪の言葉を述べるー


そして、俊の方を見てー

「本当に申し訳なかったー

 どうか、娘のこと、よろしくお願いしますー」と、

深々と頭をさげたー。


父・省吾は、娘の彼氏のことを、認めたのだったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


その日以降ー

父・省吾は娘に変身することはしなくなったー


親友の星来の誤解も解け、

星来との関係も、相変わらず良好ー。

彼氏の俊とも良好な日々が続いていたー


しかし、ある日ー


「--ごめん。やっぱり、自分の気持ちに嘘をついたまま

 付き合い続けることは、麻衣にも失礼だと思うからー」


昼休みに俊に呼び出された麻衣は、

俊に振られてしまったー


”他に好きな人が出来た”

とー。


麻衣はショックを受けながらも、それを承諾したー。


俊はー

どうしてもー

どうしても、自分の気持ちが抑えられなくなってしまったー


このまま”あの人”のことを思い浮かべながら

自分の気持ちを騙して、麻衣と付き合い続けることはできないー。


俊は、その日の放課後ー

”意中の人”を呼び出したー。


「----俺ーーーー

 あなたのことが忘れられないんですー!

 あの日、俺のために戻ってきて

 不良と戦うあなたは、かっこよかったー!


 どうかー

 どうかー

 俺と、、俺と付き合ってください!」


その言葉にー

俊を”新たな意中の相手”

麻衣の父親・省吾は、思わず間抜けな声で「は?」と呟いたー。


”麻衣に変身した省吾”が

不良を撃退するために戦っている姿を見た俊はー

惚れてしまったのだー


”かっこいい麻衣”にー。


「----は???え????? ん?????」


まさかそんなことになるとは思っていなかった

麻衣の父・省吾は、状況を飲み込むのに、

この後、何分も時間を要するのだったー。



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


ハッピーエンドかと思いきや、

お父さんの返答次第では、あまり良くない方向に

進みそうな感じもしますネ~笑


お読み下さりありがとうございました!!

(Fanbox)


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