<皮>モルティング~人を着る凶悪犯~⑲”疑念” (Pixiv Fanbox)
Content
第6倉庫の中に、警察官や救急隊員たちが
駆けつけているー。
ここに駆け付けた警察官と救急隊員たちも、
恐らくは目黒警視正が手配した
”秘密を外に漏らさない”人間たちなのだろうー。
「---お兄ちゃん…本当に、ごめんねー…」
救急車に搬送されようとしている聡美が、治夫の方を見て
悲しそうに呟くー
「いいんだー。俺の方こそ、巻き込んで、ごめんー」
治夫は聡美の手をぎゅっと握ると、救急隊員の方を見て頷きー、
救急隊員は聡美を搬送したー。
臼井隼人に乗っ取られていた際に若干怪我をしているのとー、
”皮”にされていたことによる悪影響が何か出ているかも
しれないという懸念から、聡美は病院に搬送されることになったのだー。
「--ご無事で、何よりですー」
目黒警視正が、姿を現したー。
治夫は、目黒警視正の姿を見て、頭を下げると、
複雑そうな表情を浮かべたー。
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登場人物
長瀬 治夫(ながせ はるお)
若き警察官。”皮”にまつわる事件に巻き込まれていく
松永 亜香里(まつなが あかり)
治夫の彼女。現在同居中。
長瀬 聡美(ながせ さとみ)
治夫の妹。亜香里に激しいライバル心を燃やしている。
目黒 圭吾(めぐろ けいご)
警視正。計算高い性格の持ち主で、出世欲も強い。
矢神 明信 / 堂林 幸成 / 三枝 真綾 / 剛
目黒警視正率いる「モルティング対策班」のメンバー。
黒崎 陣矢(くろさき じんや)
指名手配中の凶悪犯罪者。”モルティング”のひとり。
臼井 隼人/中曽根 佳純/春山 正義
”人を皮にする凶悪犯”通称・モルティングたち。
泉谷 聖一(いずみや せいいち)
治夫の中学時代の恩師。モルティングたちに”皮にする力”を与えた黒幕。
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★あらすじ★
長瀬治夫の妹である聡美を皮にして乗っ取り、
治夫を亡き者にしようとする天才詐欺師・臼井隼人ー。
しかし、そんな臼井隼人の罠を打ち砕いたのはー
モルティング対策班の刑事の一人・矢神明信だったー。
彼は、聡美を救うために、治夫より先に臼井隼人の待ち構える
第6倉庫に乗り込むー
後から駆け付けた治夫の援護もあり、臼井隼人らを撃退ー
治夫と明信は、無事に治夫の妹・聡美を救い出すことに成功したー。
がー
死んだと思っていた臼井隼人の銃弾が、明信を貫くー。
明信は最後の力を振り絞り、臼井隼人を地獄に送ると
「---モルティングだけでなくーー
対策班のやつらにも、気をつけろー」
と、意味深な言葉を残し、息を引き取るのだったー。
☆前回はこちら↓
fanbox post: creator/29593080/post/2475011
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「ーーー妹さんも、ご無事で、何よりでしたー」
目黒警視正は、それだけ言うと、
射殺された臼井隼人の遺体を確認するー。
「-ーそれだけ、ですか?」
治夫は不満そうに言葉を口にするー。
少し離れた場所では、殉職した
アウトロー風の刑事・矢神明信の遺体が運び出されているー。
「--えぇ。他に何か?」
目黒警視正は淡々とした口調で治夫の方を見つめ返したー
「--仲間が、、矢神さんが命を落としたんですよ!
もうちょっと、こう…何か…何かないんですか!?」
治夫が、目黒警視正の方を見ながら
悲しみをぶつけるー。
目黒警視正は「相変わらず、青臭いですねー」と、
失笑すると、治夫の方を見つめながら言ったー。
「--矢神くんの死を悲しんだところで、
何も変わりません。
矢神くんの死を悲しめば、奴らを追い詰められますか?
矢神くんの死を悲しめば、矢神くんが生き返りますか?」
”人間の感情”をまるで感じさせない目黒警視正の言葉に、
治夫は「それは分かってます!でも…」と、不満そうに呟くー。
「ーーー……警視正、こんなこと、、こんなこと
いつまで続くんですか!」
治夫はたまらず叫ぶー。
黒崎陣矢との遭遇から始まりー
どんどん犠牲者が増えているー
交番の先輩だった塚田総司に、宮辺奈々子ー、
女子高生の片桐由愛ー、
それに、対策班の矢神明信までー。
どんどん、人が、死んでいくー。
「--”モルティング”の親玉を潰すまでー、です」
目黒警視正は、治夫の方を見て答えたー。
「--治夫くんー
終わらせたいのならーー
私に”黒幕”の正体を話すことですー
で、なければ
”モルティング”はいくらでも補充されるー」
天才詐欺師・臼井隼人の遺体を見つめながら
目黒警視正は呟くー
黒幕・泉谷聖一がいる限りー
臼井が死んでも、泉谷はまた、別の人物に
”人を皮にする力”を提供するー。
それの、繰り返しー。
「---」
だが、治夫は答えなかったー
黒幕が、治夫の中学時代の恩師・泉谷聖一だったからー、ではないー
もちろん、それも”0”ではないが、
治夫は目黒警視正に強い不信感を抱いていたー。
泉谷の言った言葉が本当かどうかは分からないー。
だが、警察庁長官・西園寺を中心として、
警察は”不都合な事実”を闇に葬っているー。
人を皮にする力を作り出したのは警察でありー
”剛”なる人物を使い、警察に不都合な人物を葬りー
”警察内の闇”の中心的存在である警察庁長官・西園寺 零の手先として、
目黒警視正は動いているのだというー
それらの言葉が、治夫に不信感を与えていたー。
もちろん、恩師・泉谷の言葉がすべて真実ではない可能性もあるー。
だがー
実際に目黒警視正の元で働いている治夫は確信していたー
”目黒警視正は何かを隠している”
とー。
「-ーあなたは、全てを隠蔽しようとしているー。
違いますか?」
治夫が言うと、
目黒警視正は「私の使命は、秩序を守ることです」と、
笑顔を浮かべたー。
「----」
治夫が表情を歪めるー。
「--治夫くん、それはー」
目黒警視正が話を逸らし、治夫が持っていた注射器を指さすー。
「--あ、これは…臼井隼人から回収したものです」
治夫が持っていたのは”皮にされた人間を元に戻す注射器”と
”人を皮にする注射器”だったー。
これまで、何人かモルティングを葬って来た対策班だったがー
”皮”に関係する注射器を直接回収できたのは、初めてだったー。
「-これで、黒崎に皮にされていた子を助け出せます」
治夫が言うー。
ここに来る前に、治夫や、好青年風の堂林幸成と共に、
黒崎陣矢に皮にされていた女子大生・鈴の皮を回収しているー。
散々、黒崎に悪用された鈴の身体はボロボロだったが、
それでも、まだ生きてはいるー。
現在、モルティング対策班本部の医務室で保管されている
鈴の皮にこの注射器を打てば、鈴を助け出すことが出来るはずだー。
「ーー…」
治夫は第6倉庫の中を見つめるー。
臼井と結託していた黒蛇工業の構成員たちの遺体が運び出されー
まだ生きているものは逮捕・連行されていくー。
「--ー目黒警視正…
俺はこの注射器を本部に持ち帰って、彼女を助けますー」
治夫がそう言うと、
目黒警視正は「分かりました」と、頷くー。
そして、
「-ここが片付いたら私も本部に戻りますー。
その2本の注射器をどうするかは、その時話しましょうー。」
と、付け加えたー。
治夫は、回収した2本の注射器を手に、倉庫の外に出ると、
すぐに、彼女の亜香里に連絡を入れたー。
”治夫!?大丈夫なの!?”
心配そうに叫ぶ亜香里ー。
「--あぁ。大丈夫。
聡美も大丈夫だったから、心配しないでー。
…心配かけて、ごめんな」
治夫はそれだけ言うと、
亜香里は嬉しそうに”二人が無事で本当によかった…”と
安堵のため息をついたー。
「---帰ったら、詳しく話すよ。それじゃ」
治夫は、亜香里にそう言うと、そのまま対策本部へと向かったー。
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電車内ー。
治夫が対策班に加わってから、最初に射殺された
モルティングの一人・班目順太郎の”穴埋め”として
補充したモルティング・春山正義は
乗っ取ったOLの身体で、痴漢行為を繰り返していたー
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…♡」
目の前にいる女子大生のスカートの中に手を入れて
歪んだ笑みを浮かべるOL-
春山正義は、痴漢やストーカーを繰り返していた危険人物ー。
死んだ臼井隼人がその性質に目をつけて、仲間に引き入れたー。
「---(女の子同士だと、抵抗どころか、相手が
戸惑ってしまうのが…うへへへへ…最高だなぁ)」
ペロリと女子大生を舐めるOL-。
やがてー
欲望に満ちた電車の旅を終えると、
正義に乗っ取られたOLは、電車から降りてスマホを確認したー
モルティングたちの黒幕・泉谷からの連絡ー
そこにはー
”計画”を次のステージへと進める、という泉谷からの
メッセージが表示されていたー
「えへー」
OLはペロリと唇を舐めると、無気味な笑みを浮かべたー。
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対策本部に戻って来た治夫を見て、
好青年風の堂林幸成と、ギャル風の三枝真綾が、
状況を確認してくるー。
治夫は、矢神明信の死を、二人に伝えたー
「--矢神さんが…」
残念そうに首を振る幸成ー。
「-やがみんが…マジありえないんだけど…」
ギャル風の真綾も、残念そうに呟くー。
「---…」
治夫も、二人の方を見つめながら、悲しそうな表情を浮かべたー
「---モルティングだけでなくーー
対策班のやつらにも、気をつけろー」
矢神明信が最後に残した言葉が、どうしても気になってしまうー。
だがー
幸成は、以前一緒に行動したこともあるし、
黒崎陣矢にそそのかされた不良に囲まれた際には
命懸けで助けてくれたこともあるー。
真綾も、落ち込む治夫を叱咤激励し、
立ち直らせてくれたこともあるー。
この二人にも、気をつけろとは、どういうことなのかー
”矢神さんは、俺に何を伝えようとしたんだ…”
治夫はそう思いながらも、
”人を皮にする注射器”と”皮にされた人を元に戻す注射器”を回収したことを
2人に伝えたー。
「-そうか。じゃあ、これで回収した女子大生は
元に戻せるってことだな」
幸成が安堵の笑みを浮かべるー。
黒崎陣矢に皮にされたままの女子大生・鈴。
陣矢が、別の女子大生に”乗り換え”したことにより、
脱ぎ捨てられたままの鈴を、人間に戻すことが出来るー。
「--さっすがハルくん!!」
真綾も、治夫の方を見つめながらニコニコと笑うー。
治夫は、対策班の地下にある医務室に向かうため、
鍵を手にすると、そのまま鈴の皮が置かれている医務室の方に向かったー。
カードキーで地下への扉を開ける治夫ー。
地下に向かう通路を歩きながらー
治夫は思うー。
”堂林幸成”
”三枝真綾”
あの二人が、何か悪さをしているとは、思えないー。
矢神明信が最後に言い残した”対策班のやつらにも気をつけろ”
という言葉の意味は、何なのだろうかー。
怪しいとすれば
”目黒警視正”
そして、未だに誰の前にも姿を現していない”剛”-
「----」
医務室が見えてきて、治夫はカードキーを再び手にするー。
モルティングの”臼井隼人”が死亡した今ー
残るは治夫の因縁の相手である凶悪犯”黒崎陣矢”と、
先日、新たに加わったストーカー犯”春山正義”
未だに姿を見せていない女狐のような目つきの女”中曽根 佳純”
の三人ー
「-早く泉谷先生を止めないとー」
治夫は、そう呟くー。
恩師・泉谷聖一を止めない限り、
モルティングはいくらでも、補充されるー。
「---」
医務室への扉を開けるために、
カードキーを使おうとしたその時だったー。
「-----!!!」
治夫は人の気配を感じて振り返るー。
「!!!!!!!!!!!!」
治夫は目を見開いたー
背後に立っていたのはー
黒い喪服を着た女ーーー
その独特な”細い目つきの女”はー
治夫が初めて会う相手だったがー
見覚えがあったー
「--お前…!中曽根佳純!」
治夫が叫ぶー。
”モルティング”の一人として、
当初から名前が挙がっていた
”中曽根佳純”が、治夫の背後に立っていたのだー
治夫が銃を構えようとすると、
中曽根佳純は、治夫の銃を蹴りで吹き飛ばしたー。
治夫と佳純が、体術での戦いを繰り広げるー。
「なぜ、ここにー!?」
治夫が表情を歪めるー
ここは、モルティング対策班本部ー
なぜ、ここに中曽根佳純がいるのだー?とー
治夫は疑問を抱かずにはいられないー。
治夫が壁に叩きつけられるー。
「--”死”は、いつ訪れるか分からないー」
中曽根佳純が、初めて肉声を発したー。
美しくー
けれども、残酷な、声ー。
スタイルの良い美人だが、
”女狐”と呼べるような細い目つきにー
冷徹な表情が、狂気を感じさせるー。
「--だから、わたしは喪服を着ているのー。
いつ、誰が、どこで死んでもー
その場で喪に服せるようにー」
佳純がニヤァ、と笑ったー
治夫が、佳純の足を引っかけて、佳純を倒すー。
だが、すぐに佳純は起き上がり、反撃してくるー。
激しい攻防が、地下通路で繰り広げられるー。
治夫は、銃を拾うと、威嚇のために、
中曽根佳純の手を銃撃したー。
だがーー
「--!?」
治夫は驚くー
手を撃たれたのにも関わらず、中曽根佳純は
全く無反応だったのだー。
「--ねぇ、聞かせてー
あなたの”死”への価値観をー」
耳元で囁く中曽根佳純ー。
「--ふ、ふざけるな!」
治夫が反撃しようとするも、佳純がスタンガンを手にして
治夫にそれを押し付けるー
激しい電流が流れて、悲鳴を上げる治夫ー。
治夫が、臼井隼人から回収した2本の注射器を床に落としてしまうー。
佳純はクスッと笑いながらそれを拾うと
「泉谷さんは、あなたにまだ生きていてほしいみたいだからー」と、
呟きながら、再び治夫に近づいてくるー。
「くそっ…!!」
治夫が必死に銃に手を伸ばそうとするー。
しかしー
銃に手が届く前に、中曽根佳純が、治夫の手を踏みつけて
笑みを浮かべたー。
喪服に身を包んだ中曽根佳純は、静かに囁くー。
「--”生きる”と”死ぬ”は、紙一重ー。
あなたも、わたしも、明日も生きているかもしれないし、
明日には死んでいるかもしれないー。
でもね、人間死んだら
生まれる前に戻るだけー。
だから、何も怖がることなんてないのー。
毎日がー死と隣合わせー。」
死生観を呟く佳純の方を睨んで、治夫は苦しみながら呟くー
「--この…イカレ女が!」
とー。
その言葉と同時に、スタンガンが治夫に再び当てられてー
治夫の意識は飛んだーーー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---ハルくん~~!ハルくん~~~!」
「--!?!?!?」
気を失っていた治夫は、真綾の呼ぶ声で目を覚ましたー
「-ー三枝さん…」
治夫は慌てて周囲を見渡すー。
だがー
中曽根佳純の姿は既になくー、
臼井隼人から回収した注射器も、無くなっていたー。
「--何があったの?」
真綾の言葉に、治夫はため息をつきながら、
真綾に起きたことを伝えたー。
痛む身体に鞭を入れながら、
真綾と共に、地下から出て、普段いる部屋に向かうと、
既に目黒警視正も戻ってきていたー。
治夫は、目黒警視正らにも事情を説明すると
「ーーまだ中曽根佳純が近くにいるかもしれません」と、
すぐに対策本部の外へと飛び出したー。
中曽根佳純が対策本部の中にいたーー
と、いうことはー
対策本部内に”内通者”がいる可能性が、非常に高いー。
そうでなければ、対策本部内にやすやすと入れるはずがないし、
何より、臼井隼人から”皮”関係の注射器を手に入れたタイミングで
襲撃されたのは、タイミングが良すぎるー。
治夫は、そんな不安を抱えながら
まだ対策本部の周辺にいるかもしれない
中曽根佳純を探して、対策本部の外へと飛び出したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
夜ーーー
喪服を着た女が、怪しげな施設へと足を踏み入れるー。
「----くくく 喪服女狐ー。久しぶりだな」
黒崎陣矢に乗っ取られた女子大生・萌恵が姿を現すー。
黒崎の趣味なのか、萌恵は、
黒いミニスカートに、網タイツ、肩を露出させた衣装を身に着けていたー。
「---あら、変態さんー。こんばんは」
中曽根佳純が、黒崎陣矢に乗っ取られている萌恵の方を見て笑うー。
「--泉谷さんなら、奥にいるぜ」
萌恵がそう言うと、佳純は萌恵に顔を近づけて、小さく囁くー
「--そんな可愛い顔されちゃうとー
キスしたくなっちゃうじゃないー」
佳純の言葉に、萌恵はドキッとするー。
佳純はからかうようにして笑うと、
黒崎陣矢に乗っ取られている萌恵の唇を指でなぞりー
そのまま萌恵から離れるー。
「-その姿で、そんな言葉遣いは似合わないわよ」と、
佳純は言い放ってから、そのまま奥の部屋へと向かうー。
「---へへへ 相変わらず気色悪い女でゾクゾクするぜー」
萌恵は、佳純の後ろ姿を見つめながら、気色の悪い笑みを浮かべたー。
奥の部屋に入る佳純ー。
そこには、モルティングたちの黒幕・泉谷がいたー。
「--臼井が死んだわー。
対策班の連中が話していたから、間違いないわね」
佳純はそう言うと、”でもー”と、
治夫から回収した注射器2本を、泉谷の方に差し出したー。
「--ちゃんと、あなたの大事な教え子の長瀬治夫くんはー
生かしておいたわよ」
佳純の言葉に、泉谷は頷いたー。
「長瀬を生かしておけばー
”綻び”が広がるかもしれないからなー」
泉谷は言うー。
目黒警視正に疑問を抱いた治夫が、”モルティング対策班”内部にー
いや、警察の闇に、風穴を開けてくれるかもしれないー、と。
報告を終えると、中曽根佳純は、泉谷に背を向けて
「-わたしは引き続き、対策班で情報収集を続けるわ」
とだけ呟いて、その場から立ち去ろうとするー
「---まさか奴らも、すぐ側にお前がいるとは思うまいー」
泉谷の言葉に、クスッと笑う佳純ー。
黒い喪服をふわりと揺らしながら立ち去っていく佳純の姿を
見つめながら、泉谷は少しだけ笑みを浮かべるー。
「-ーこの1年、警察のやつらが作った”皮”の力を使って
数々の事件を起こしてきたー。
だが、奴らはすべて”隠蔽”したー。
俺の教え子を殺したときのようにー。」
人を皮にする力を使い、本格的に動き出してから”1年”
この1年は、奴らが”贖罪”の道を選ぶ最後の猶予として与えた時間ー。
だがー。
西園寺警察庁長官をはじめー、
警察の闇を司る人物たちは”皮にする力”のことも、何もかも隠蔽したー。
それどころかー
目黒警視正や剛を使い、世間に明るみに出さないまま、
モルティングを一掃しようとしているー。
”闇は、晴らさねばならないー”
「--できれば、この道は選びたくなかったがー」
泉谷は、そう呟くと立ち上がったー。
警察が”人を皮にする力”の存在を認め、
自らの闇を明るみにし、謝罪するのであれば
泉谷は、そこで計画を止めるつもりだったー。
だがー、やはり、奴らは都合の悪いことはすべて、隠蔽するー。
「----黒崎」
泉谷は部屋の外にいた黒崎陣矢ー
現在は女子大生の萌恵を”着ている”黒崎を呼び出すと、
静かに告げたー
「----”天誅”を始めるぞー」
泉谷の言葉に、
萌恵はこれから始まることを理解しー、
凶悪な笑みを浮かべたー
・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
空港にサングラスをかけた男がやって来るー
その反対側からやってきたのは、
女子大生の萌恵ー。
人目につかないようにするためか、
萌恵もサングラスをかけているー。
そしてー
萌恵が、”人を皮にする注射器”を、
サングラスをかけた男に手渡すと、
「---確かに」と、静かにその男は呟いたー。
萌恵の前から立ち去っていくその男はー
死んだ臼井隼人の”後任”として
泉谷が海外から呼び寄せた人物ー。
裏社会で名を馳せる凄腕のヒットマン、
”ジェームズ・結城”は、表情一つ変えることなく、
空港の外に向かって歩き出したー。
⑳へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
気付けば次回で第20話ですネ…!
最後まで気を抜かずに、
無事に描き切れるようにこれからも頑張ります~!
今日もありがとうございました!