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第6倉庫の中に、警察官や救急隊員たちが

駆けつけているー。


ここに駆け付けた警察官と救急隊員たちも、

恐らくは目黒警視正が手配した

”秘密を外に漏らさない”人間たちなのだろうー。


「---お兄ちゃん…本当に、ごめんねー…」

救急車に搬送されようとしている聡美が、治夫の方を見て

悲しそうに呟くー


「いいんだー。俺の方こそ、巻き込んで、ごめんー」

治夫は聡美の手をぎゅっと握ると、救急隊員の方を見て頷きー、

救急隊員は聡美を搬送したー。


臼井隼人に乗っ取られていた際に若干怪我をしているのとー、

”皮”にされていたことによる悪影響が何か出ているかも

しれないという懸念から、聡美は病院に搬送されることになったのだー。


「--ご無事で、何よりですー」

目黒警視正が、姿を現したー。


治夫は、目黒警視正の姿を見て、頭を下げると、

複雑そうな表情を浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・


登場人物


長瀬 治夫(ながせ はるお)

若き警察官。”皮”にまつわる事件に巻き込まれていく


松永 亜香里(まつなが あかり)

治夫の彼女。現在同居中。


長瀬 聡美(ながせ さとみ)

治夫の妹。亜香里に激しいライバル心を燃やしている。


目黒 圭吾(めぐろ けいご)

警視正。計算高い性格の持ち主で、出世欲も強い。


矢神 明信 / 堂林 幸成 / 三枝 真綾 / 剛

目黒警視正率いる「モルティング対策班」のメンバー。


黒崎 陣矢(くろさき じんや)

指名手配中の凶悪犯罪者。”モルティング”のひとり。


臼井 隼人/中曽根 佳純/春山 正義

”人を皮にする凶悪犯”通称・モルティングたち。


泉谷 聖一(いずみや せいいち)

治夫の中学時代の恩師。モルティングたちに”皮にする力”を与えた黒幕。


・・・・・・・・・・・・・・


★あらすじ★


長瀬治夫の妹である聡美を皮にして乗っ取り、

治夫を亡き者にしようとする天才詐欺師・臼井隼人ー。


しかし、そんな臼井隼人の罠を打ち砕いたのはー

モルティング対策班の刑事の一人・矢神明信だったー。

彼は、聡美を救うために、治夫より先に臼井隼人の待ち構える

第6倉庫に乗り込むー


後から駆け付けた治夫の援護もあり、臼井隼人らを撃退ー

治夫と明信は、無事に治夫の妹・聡美を救い出すことに成功したー。


がー

死んだと思っていた臼井隼人の銃弾が、明信を貫くー。

明信は最後の力を振り絞り、臼井隼人を地獄に送ると


「---モルティングだけでなくーー

 対策班のやつらにも、気をつけろー」


と、意味深な言葉を残し、息を引き取るのだったー。


☆前回はこちら↓

fanbox post: creator/29593080/post/2475011

・・・・・・・・・・・・・・


「ーーー妹さんも、ご無事で、何よりでしたー」

目黒警視正は、それだけ言うと、

射殺された臼井隼人の遺体を確認するー。


「-ーそれだけ、ですか?」

治夫は不満そうに言葉を口にするー。


少し離れた場所では、殉職した

アウトロー風の刑事・矢神明信の遺体が運び出されているー。


「--えぇ。他に何か?」

目黒警視正は淡々とした口調で治夫の方を見つめ返したー


「--仲間が、、矢神さんが命を落としたんですよ!

 もうちょっと、こう…何か…何かないんですか!?」

治夫が、目黒警視正の方を見ながら

悲しみをぶつけるー。


目黒警視正は「相変わらず、青臭いですねー」と、

失笑すると、治夫の方を見つめながら言ったー。


「--矢神くんの死を悲しんだところで、

 何も変わりません。

 矢神くんの死を悲しめば、奴らを追い詰められますか?

 矢神くんの死を悲しめば、矢神くんが生き返りますか?」


”人間の感情”をまるで感じさせない目黒警視正の言葉に、

治夫は「それは分かってます!でも…」と、不満そうに呟くー。


「ーーー……警視正、こんなこと、、こんなこと

 いつまで続くんですか!」


治夫はたまらず叫ぶー。

黒崎陣矢との遭遇から始まりー

どんどん犠牲者が増えているー


交番の先輩だった塚田総司に、宮辺奈々子ー、

女子高生の片桐由愛ー、

それに、対策班の矢神明信までー。


どんどん、人が、死んでいくー。


「--”モルティング”の親玉を潰すまでー、です」

目黒警視正は、治夫の方を見て答えたー。


「--治夫くんー

 終わらせたいのならーー

 私に”黒幕”の正体を話すことですー


 で、なければ

 ”モルティング”はいくらでも補充されるー」


天才詐欺師・臼井隼人の遺体を見つめながら

目黒警視正は呟くー


黒幕・泉谷聖一がいる限りー

臼井が死んでも、泉谷はまた、別の人物に

”人を皮にする力”を提供するー。


それの、繰り返しー。


「---」

だが、治夫は答えなかったー


黒幕が、治夫の中学時代の恩師・泉谷聖一だったからー、ではないー


もちろん、それも”0”ではないが、

治夫は目黒警視正に強い不信感を抱いていたー。


泉谷の言った言葉が本当かどうかは分からないー。


だが、警察庁長官・西園寺を中心として、

警察は”不都合な事実”を闇に葬っているー。


人を皮にする力を作り出したのは警察でありー

”剛”なる人物を使い、警察に不都合な人物を葬りー

”警察内の闇”の中心的存在である警察庁長官・西園寺 零の手先として、

目黒警視正は動いているのだというー


それらの言葉が、治夫に不信感を与えていたー。

もちろん、恩師・泉谷の言葉がすべて真実ではない可能性もあるー。


だがー

実際に目黒警視正の元で働いている治夫は確信していたー


”目黒警視正は何かを隠している”

とー。


「-ーあなたは、全てを隠蔽しようとしているー。

 違いますか?」

治夫が言うと、

目黒警視正は「私の使命は、秩序を守ることです」と、

笑顔を浮かべたー。


「----」

治夫が表情を歪めるー。


「--治夫くん、それはー」

目黒警視正が話を逸らし、治夫が持っていた注射器を指さすー。


「--あ、これは…臼井隼人から回収したものです」

治夫が持っていたのは”皮にされた人間を元に戻す注射器”と

”人を皮にする注射器”だったー。


これまで、何人かモルティングを葬って来た対策班だったがー

”皮”に関係する注射器を直接回収できたのは、初めてだったー。


「-これで、黒崎に皮にされていた子を助け出せます」

治夫が言うー。


ここに来る前に、治夫や、好青年風の堂林幸成と共に、

黒崎陣矢に皮にされていた女子大生・鈴の皮を回収しているー。


散々、黒崎に悪用された鈴の身体はボロボロだったが、

それでも、まだ生きてはいるー。


現在、モルティング対策班本部の医務室で保管されている

鈴の皮にこの注射器を打てば、鈴を助け出すことが出来るはずだー。


「ーー…」

治夫は第6倉庫の中を見つめるー。

臼井と結託していた黒蛇工業の構成員たちの遺体が運び出されー

まだ生きているものは逮捕・連行されていくー。


「--ー目黒警視正…

 俺はこの注射器を本部に持ち帰って、彼女を助けますー」

治夫がそう言うと、

目黒警視正は「分かりました」と、頷くー。


そして、

「-ここが片付いたら私も本部に戻りますー。

 その2本の注射器をどうするかは、その時話しましょうー。」

と、付け加えたー。


治夫は、回収した2本の注射器を手に、倉庫の外に出ると、

すぐに、彼女の亜香里に連絡を入れたー。


”治夫!?大丈夫なの!?”

心配そうに叫ぶ亜香里ー。


「--あぁ。大丈夫。

 聡美も大丈夫だったから、心配しないでー。


 …心配かけて、ごめんな」


治夫はそれだけ言うと、

亜香里は嬉しそうに”二人が無事で本当によかった…”と

安堵のため息をついたー。


「---帰ったら、詳しく話すよ。それじゃ」

治夫は、亜香里にそう言うと、そのまま対策本部へと向かったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


電車内ー。

治夫が対策班に加わってから、最初に射殺された

モルティングの一人・班目順太郎の”穴埋め”として

補充したモルティング・春山正義は

乗っ取ったOLの身体で、痴漢行為を繰り返していたー


「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…♡」

目の前にいる女子大生のスカートの中に手を入れて

歪んだ笑みを浮かべるOL-


春山正義は、痴漢やストーカーを繰り返していた危険人物ー。

死んだ臼井隼人がその性質に目をつけて、仲間に引き入れたー。


「---(女の子同士だと、抵抗どころか、相手が

 戸惑ってしまうのが…うへへへへ…最高だなぁ)」


ペロリと女子大生を舐めるOL-。


やがてー

欲望に満ちた電車の旅を終えると、

正義に乗っ取られたOLは、電車から降りてスマホを確認したー


モルティングたちの黒幕・泉谷からの連絡ー


そこにはー

”計画”を次のステージへと進める、という泉谷からの

メッセージが表示されていたー


「えへー」

OLはペロリと唇を舐めると、無気味な笑みを浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


対策本部に戻って来た治夫を見て、

好青年風の堂林幸成と、ギャル風の三枝真綾が、

状況を確認してくるー。


治夫は、矢神明信の死を、二人に伝えたー


「--矢神さんが…」

残念そうに首を振る幸成ー。


「-やがみんが…マジありえないんだけど…」

ギャル風の真綾も、残念そうに呟くー。


「---…」

治夫も、二人の方を見つめながら、悲しそうな表情を浮かべたー


「---モルティングだけでなくーー

 対策班のやつらにも、気をつけろー」


矢神明信が最後に残した言葉が、どうしても気になってしまうー。


だがー

幸成は、以前一緒に行動したこともあるし、

黒崎陣矢にそそのかされた不良に囲まれた際には

命懸けで助けてくれたこともあるー。


真綾も、落ち込む治夫を叱咤激励し、

立ち直らせてくれたこともあるー。


この二人にも、気をつけろとは、どういうことなのかー


”矢神さんは、俺に何を伝えようとしたんだ…”

治夫はそう思いながらも、

”人を皮にする注射器”と”皮にされた人を元に戻す注射器”を回収したことを

2人に伝えたー。


「-そうか。じゃあ、これで回収した女子大生は

 元に戻せるってことだな」

幸成が安堵の笑みを浮かべるー。


黒崎陣矢に皮にされたままの女子大生・鈴。

陣矢が、別の女子大生に”乗り換え”したことにより、

脱ぎ捨てられたままの鈴を、人間に戻すことが出来るー。


「--さっすがハルくん!!」

真綾も、治夫の方を見つめながらニコニコと笑うー。


治夫は、対策班の地下にある医務室に向かうため、

鍵を手にすると、そのまま鈴の皮が置かれている医務室の方に向かったー。


カードキーで地下への扉を開ける治夫ー。


地下に向かう通路を歩きながらー

治夫は思うー。


”堂林幸成”

”三枝真綾”

あの二人が、何か悪さをしているとは、思えないー。


矢神明信が最後に言い残した”対策班のやつらにも気をつけろ”

という言葉の意味は、何なのだろうかー。


怪しいとすれば

”目黒警視正”

そして、未だに誰の前にも姿を現していない”剛”-


「----」

医務室が見えてきて、治夫はカードキーを再び手にするー。


モルティングの”臼井隼人”が死亡した今ー

残るは治夫の因縁の相手である凶悪犯”黒崎陣矢”と、

先日、新たに加わったストーカー犯”春山正義”

未だに姿を見せていない女狐のような目つきの女”中曽根 佳純”

の三人ー


「-早く泉谷先生を止めないとー」

治夫は、そう呟くー。


恩師・泉谷聖一を止めない限り、

モルティングはいくらでも、補充されるー。


「---」

医務室への扉を開けるために、

カードキーを使おうとしたその時だったー。


「-----!!!」

治夫は人の気配を感じて振り返るー。


「!!!!!!!!!!!!」

治夫は目を見開いたー


背後に立っていたのはー

黒い喪服を着た女ーーー

その独特な”細い目つきの女”はー

治夫が初めて会う相手だったがー

見覚えがあったー


「--お前…!中曽根佳純!」

治夫が叫ぶー。


”モルティング”の一人として、

当初から名前が挙がっていた

”中曽根佳純”が、治夫の背後に立っていたのだー


治夫が銃を構えようとすると、

中曽根佳純は、治夫の銃を蹴りで吹き飛ばしたー。


治夫と佳純が、体術での戦いを繰り広げるー。


「なぜ、ここにー!?」

治夫が表情を歪めるー


ここは、モルティング対策班本部ー

なぜ、ここに中曽根佳純がいるのだー?とー

治夫は疑問を抱かずにはいられないー。


治夫が壁に叩きつけられるー。


「--”死”は、いつ訪れるか分からないー」

中曽根佳純が、初めて肉声を発したー。


美しくー

けれども、残酷な、声ー。

スタイルの良い美人だが、

”女狐”と呼べるような細い目つきにー

冷徹な表情が、狂気を感じさせるー。


「--だから、わたしは喪服を着ているのー。

 いつ、誰が、どこで死んでもー

 その場で喪に服せるようにー」

佳純がニヤァ、と笑ったー


治夫が、佳純の足を引っかけて、佳純を倒すー。

だが、すぐに佳純は起き上がり、反撃してくるー。


激しい攻防が、地下通路で繰り広げられるー。


治夫は、銃を拾うと、威嚇のために、

中曽根佳純の手を銃撃したー。


だがーー


「--!?」

治夫は驚くー


手を撃たれたのにも関わらず、中曽根佳純は

全く無反応だったのだー。


「--ねぇ、聞かせてー

 あなたの”死”への価値観をー」

耳元で囁く中曽根佳純ー。


「--ふ、ふざけるな!」

治夫が反撃しようとするも、佳純がスタンガンを手にして

治夫にそれを押し付けるー


激しい電流が流れて、悲鳴を上げる治夫ー。


治夫が、臼井隼人から回収した2本の注射器を床に落としてしまうー。


佳純はクスッと笑いながらそれを拾うと

「泉谷さんは、あなたにまだ生きていてほしいみたいだからー」と、

呟きながら、再び治夫に近づいてくるー。


「くそっ…!!」

治夫が必死に銃に手を伸ばそうとするー。


しかしー

銃に手が届く前に、中曽根佳純が、治夫の手を踏みつけて

笑みを浮かべたー。


喪服に身を包んだ中曽根佳純は、静かに囁くー。


「--”生きる”と”死ぬ”は、紙一重ー。

 あなたも、わたしも、明日も生きているかもしれないし、

 明日には死んでいるかもしれないー。


 でもね、人間死んだら

 生まれる前に戻るだけー。


 だから、何も怖がることなんてないのー。

 毎日がー死と隣合わせー。」


死生観を呟く佳純の方を睨んで、治夫は苦しみながら呟くー


「--この…イカレ女が!」 

とー。


その言葉と同時に、スタンガンが治夫に再び当てられてー

治夫の意識は飛んだーーー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「---ハルくん~~!ハルくん~~~!」


「--!?!?!?」

気を失っていた治夫は、真綾の呼ぶ声で目を覚ましたー


「-ー三枝さん…」

治夫は慌てて周囲を見渡すー。


だがー

中曽根佳純の姿は既になくー、

臼井隼人から回収した注射器も、無くなっていたー。


「--何があったの?」

真綾の言葉に、治夫はため息をつきながら、

真綾に起きたことを伝えたー。


痛む身体に鞭を入れながら、

真綾と共に、地下から出て、普段いる部屋に向かうと、

既に目黒警視正も戻ってきていたー。


治夫は、目黒警視正らにも事情を説明すると

「ーーまだ中曽根佳純が近くにいるかもしれません」と、

すぐに対策本部の外へと飛び出したー。


中曽根佳純が対策本部の中にいたーー

と、いうことはー

対策本部内に”内通者”がいる可能性が、非常に高いー。


そうでなければ、対策本部内にやすやすと入れるはずがないし、

何より、臼井隼人から”皮”関係の注射器を手に入れたタイミングで

襲撃されたのは、タイミングが良すぎるー。


治夫は、そんな不安を抱えながら

まだ対策本部の周辺にいるかもしれない

中曽根佳純を探して、対策本部の外へと飛び出したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


夜ーーー


喪服を着た女が、怪しげな施設へと足を踏み入れるー。


「----くくく 喪服女狐ー。久しぶりだな」

黒崎陣矢に乗っ取られた女子大生・萌恵が姿を現すー。


黒崎の趣味なのか、萌恵は、

黒いミニスカートに、網タイツ、肩を露出させた衣装を身に着けていたー。


「---あら、変態さんー。こんばんは」

中曽根佳純が、黒崎陣矢に乗っ取られている萌恵の方を見て笑うー。


「--泉谷さんなら、奥にいるぜ」

萌恵がそう言うと、佳純は萌恵に顔を近づけて、小さく囁くー


「--そんな可愛い顔されちゃうとー

 キスしたくなっちゃうじゃないー」

佳純の言葉に、萌恵はドキッとするー。


佳純はからかうようにして笑うと、

黒崎陣矢に乗っ取られている萌恵の唇を指でなぞりー

そのまま萌恵から離れるー。


「-その姿で、そんな言葉遣いは似合わないわよ」と、

佳純は言い放ってから、そのまま奥の部屋へと向かうー。


「---へへへ 相変わらず気色悪い女でゾクゾクするぜー」

萌恵は、佳純の後ろ姿を見つめながら、気色の悪い笑みを浮かべたー。


奥の部屋に入る佳純ー。


そこには、モルティングたちの黒幕・泉谷がいたー。


「--臼井が死んだわー。

 対策班の連中が話していたから、間違いないわね」

佳純はそう言うと、”でもー”と、

治夫から回収した注射器2本を、泉谷の方に差し出したー。


「--ちゃんと、あなたの大事な教え子の長瀬治夫くんはー

 生かしておいたわよ」

佳純の言葉に、泉谷は頷いたー。


「長瀬を生かしておけばー

 ”綻び”が広がるかもしれないからなー」


泉谷は言うー。

目黒警視正に疑問を抱いた治夫が、”モルティング対策班”内部にー

いや、警察の闇に、風穴を開けてくれるかもしれないー、と。


報告を終えると、中曽根佳純は、泉谷に背を向けて

「-わたしは引き続き、対策班で情報収集を続けるわ」

とだけ呟いて、その場から立ち去ろうとするー


「---まさか奴らも、すぐ側にお前がいるとは思うまいー」

泉谷の言葉に、クスッと笑う佳純ー。


黒い喪服をふわりと揺らしながら立ち去っていく佳純の姿を

見つめながら、泉谷は少しだけ笑みを浮かべるー。


「-ーこの1年、警察のやつらが作った”皮”の力を使って

 数々の事件を起こしてきたー。


 だが、奴らはすべて”隠蔽”したー。

 俺の教え子を殺したときのようにー。」


人を皮にする力を使い、本格的に動き出してから”1年”


この1年は、奴らが”贖罪”の道を選ぶ最後の猶予として与えた時間ー。


だがー。

西園寺警察庁長官をはじめー、

警察の闇を司る人物たちは”皮にする力”のことも、何もかも隠蔽したー。

それどころかー

目黒警視正や剛を使い、世間に明るみに出さないまま、

モルティングを一掃しようとしているー。


”闇は、晴らさねばならないー”


「--できれば、この道は選びたくなかったがー」

泉谷は、そう呟くと立ち上がったー。


警察が”人を皮にする力”の存在を認め、

自らの闇を明るみにし、謝罪するのであれば

泉谷は、そこで計画を止めるつもりだったー。


だがー、やはり、奴らは都合の悪いことはすべて、隠蔽するー。


「----黒崎」

泉谷は部屋の外にいた黒崎陣矢ー

現在は女子大生の萌恵を”着ている”黒崎を呼び出すと、

静かに告げたー


「----”天誅”を始めるぞー」


泉谷の言葉に、

萌恵はこれから始まることを理解しー、

凶悪な笑みを浮かべたー


・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


空港にサングラスをかけた男がやって来るー


その反対側からやってきたのは、

女子大生の萌恵ー。

人目につかないようにするためか、

萌恵もサングラスをかけているー。


そしてー

萌恵が、”人を皮にする注射器”を、

サングラスをかけた男に手渡すと、

「---確かに」と、静かにその男は呟いたー。


萌恵の前から立ち去っていくその男はー

死んだ臼井隼人の”後任”として

泉谷が海外から呼び寄せた人物ー。


裏社会で名を馳せる凄腕のヒットマン、

”ジェームズ・結城”は、表情一つ変えることなく、

空港の外に向かって歩き出したー。


⑳へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


気付けば次回で第20話ですネ…!


最後まで気を抜かずに、

無事に描き切れるようにこれからも頑張ります~!


今日もありがとうございました!

(Fanbox)


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