<皮>モルティング~人を着る凶悪犯~⑱”因縁” (Pixiv Fanbox)
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ずっと”復讐”だけを考えて奴を追い続けて来たー。
今でも、毎日のように、夢に見るー
”あの日の悪夢”をー。
どんなに後悔してもー
どんなに願ってもー
もう、玄関の扉を開けた先にー
最愛の娘は、いないー。
由美子と、葵ー。
天才詐欺師・臼井隼人に”皮”にされて
大切な家族は、無残にも殺されたー。
奴だけは、許さないー
どんなことがあろうともー。
彼の生きる源は”復讐”-
ただ、それだけー。
・・・・・・・・・・・・・ 登場人物 長瀬 治夫(ながせ はるお) 若き警察官。”皮”にまつわる事件に巻き込まれていく 松永 亜香里(まつなが あかり) 治夫の彼女。現在同居中。 長瀬 聡美(ながせ さとみ) 治夫の妹。亜香里に激しいライバル心を燃やしている。 目黒 圭吾(めぐろ けいご) 警視正。計算高い性格の持ち主で、出世欲も強い。 矢神 明信 / 堂林 幸成 / 三枝 真綾 / 剛 目黒警視正率いる「モルティング対策班」のメンバー。 黒崎 陣矢(くろさき じんや) 指名手配中の凶悪犯罪者。”モルティング”のひとり。 臼井 隼人/中曽根 佳純/春山 正義 ”人を皮にする凶悪犯”通称・モルティングたち。 泉谷 聖一(いずみや せいいち) 治夫の中学時代の恩師。モルティングたちに”皮にする力”を与えた黒幕。 ・・・・・・・・・・・・・・ ★あらすじ★
人を着る凶悪犯・モルティングの一人である
天才詐欺師・臼井隼人は、若き警察官・長瀬治夫を危険視していたー。
”私なら確実に奴を始末できる”
そう豪語する臼井隼人は、治夫の妹・聡美に目をつけたー。
ちょうど、兄・治夫の家から実家に帰宅最中だった聡美を”皮”にして
乗っ取った臼井隼人は、聡美の姿で
モルティング対策班に動画でメッセージを送りつけたー。
偶然、治夫が不在だった対策班本部では目黒警視正が
”必要な犠牲”として、聡美を見捨てる決断を下すー。
しかし、対策班メンバーの一人であったアウトロー風の刑事・
矢神明信は、その目黒警視正の考えに反対ー、
治夫に連絡を入れた上で、単身、
臼井隼人に乗っ取られた聡美が待つ、第6倉庫”へと向かうのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・
激しい銃声が第6倉庫に響き渡るー
「チィッ…」
ガムを噛みながら、物影に隠れるアウトロー風の刑事・明信ー。
天才詐欺師・臼井隼人に”皮”にされて乗っ取られた聡美が、
倉庫の上部の手すりに手を置いて、笑みを浮かべながら
こちらを見ているー。
臼井隼人と、前から結託している”黒蛇工業”の構成員たちが
明信に迫るー
明信は物影から、銃を放ち、構成員を1名始末すると、
すぐに激しい銃弾の中をかいくぐり、別の柱の陰に隠れたー。
「---くくく…”お兄ちゃん”はどうした?」
聡美が笑いながら言うー。
「---…臼井隼人…」
明信が物影から少しだけ顔を出しながら聡美を睨むー
「ーーどうして君がここに来たのかは、知らないがー
見たまえー」
聡美は可愛らしい声でそう叫ぶと、
両手を広げて、自分の身体を自慢するかのように
ゆっくりと回転してみせたー。
「-”お兄ちゃん思い”の可愛い妹が、
ご覧の通りー
今はその”お兄ちゃん”を殺すために、ここに立っているー」
聡美の表情が、邪悪に歪むー。
「--君の家族もそうだったよな?
クククー
すばらしい力だろう?」
聡美が、ははははははっ!、と笑うー。
この前ー
治夫の家を訪れた際に、聡美と一度会っている明信はー
聡美の”豹変”に心を痛めるー。
”-あの野郎がここに来たらー
絶対に何もできないまま殺されるー”
明信は、乗っ取られている聡美の姿を物影から見つめながら
そう考えるー
治夫が到着してもー
妹の聡美を撃ったり、攻撃したりすることは、絶対に出来ないー。
明信だって、そうだったー。
皮にされた家族を前に、何もできなかったー。
臼井隼人は、それを理解していてー
治夫を始末するため、治夫の妹・聡美を皮にして、乗っ取ったー。
「--俺が、どうにかしなくちゃな」
物影から飛び出して、黒蛇工業の構成員2名に銃を放つー。
激しい銃声の中、別の遮蔽物の後ろに身を隠した明信は、
2丁持っている銃のうちの一つを、リロードするー。
その間に、もう1丁の銃を手に、威嚇射撃を行いー
黒蛇工業の構成員が近づいてこないようにするー。
「(あいつは、俺が班目を殺したことを覚えているはずだー)」
明信は、リロードしながら、聡美を救う方法を考えるー。
班目 順太郎ー
かつて、治夫が罠にはめられた際に
駆け付けた明信が、モルティングの一人を、
順太郎に着られていた女子高生・由愛ごと射殺しているー。
臼井隼人は、当然そのことを知っているー。
と、なれば、チャンスはあるー。
「---ククククー」
黒蛇工業の構成員と戦っている明信の様子を、倉庫の2階部分から
見つめながら笑みを浮かべる聡美ー。
その横に置かれていた聡美のスマホに着信が入るー
そこにはー
”お兄ちゃん”と表示されているー。
「--お兄ちゃん」
聡美が、邪悪な笑みを浮かべると、
近くに置いてあったイスに、足を組んで座りー
スマホを耳に当てたー。
”聡美!大丈夫か!?聡美!”
電話に出ると、治夫の声が聞こえたー
無表情で冷たい目をした聡美がー
スマホから聞こえてくる兄の声を、淡々と聞いているー
”聡美!!頼む!返事をしてくれ!聡美!”
治夫の声ー。
聡美は、ニヤッと笑うとー
「-お兄ちゃんのせいで、わたし、乗っ取られちゃった」
と、冷たい声で囁いたー
”さ、、聡美…”
絶望の声が聞こえるー。
「--ククク…わたしね、今、拳銃を左手に持ってるの。
ふふ、凄いでしょ?」
”ふざけるな!!貴様!!妹を返せ!”
治夫の怒りの声ー
「--きさまぁ~?妹を貴様って呼ぶの?
ひっどいお兄ちゃん」
聡美は、治夫を揶揄おうとして、そう呟くー
”聡美のふりをするな!今すぐ聡美から、出ていけ!”
「--ククク…
いやだね…
妹を助けたければ、早く第6倉庫に来いー」
聡美の言葉に、治夫は
”今、向かってる!お前を八つ裂きにしてやる!”と叫ぶー。
「ククククククク
お兄ちゃんってば、こっわ~~~い!
安心してー
お兄ちゃんは、わたしがぶっ殺してあげるからー」
聡美に悪魔のような言葉をつぶやかせると、
聡美を乗っ取っている臼井隼人は、
”精神攻撃”も兼ねて、冷たい声で囁いたー
「お兄ちゃんなんて、大っ嫌いー」
とー。
プッー
スマホの電源を切り、スマホを床に叩きつけると、
それを踏みにじる聡美ー。
「--さて…長瀬治夫が到着する前に、あいつを始末してー
そのあとは、長瀬治夫だー」
聡美はそう呟くと、黒蛇工業の構成員の方を見て、
”行け”と、目で合図をしたー。
銃声が響きわたるー
「--チッ…数が多いー」
明信は表情を歪めるー。
迫りくる黒蛇工業の構成員を、高い身体能力と
隙のない立ち回りで倒していくー。
”モルティング対策班”は、
モルティングに関係する人物の”射殺許可”も特別に出ているー。
目黒警視正によれば”上”から許可は出ているとのことでー
実際に、明信も、これまでに、モルティングを何人か葬っているし、
実際にそれが”表”に出たことはないー
「--警視正は警視正で、何かを隠していてー
うさん臭いんだよなー」
明信は、そう呟いてボサボサの髪を掻きむしると、
迫って来た黒蛇工業の構成員をまた一人、倒したー。
銃をリロードする明信ー。
「---あの子は、2階かー」
乗っ取られた聡美は、倉庫の2階部分にいるー。
明信が”接近”すればー、
聡美を助け出すことが出来るかもしれないー
そしてー
家族を奪った”臼井隼人”に引導を渡すこともー
再び黒蛇工業の構成員が集まって来るー。
周囲を見渡すー
機材などが置かれているこの倉庫ー
1階と2階は吹き抜けになっていて、2階の様子も一部、1階から
見えるが、臼井に乗っ取られた聡美の姿は、見当たらないー。
2階に上るための階段はー
広い倉庫内の西側と東側に存在するー
”ここからなら…あっちの階段の方が近いな”
明信は、倉庫2階部分への西側階段を目指しながら
銃を放ち、銃弾の中をかいくぐるー
「チィッ」
階段に近い遮蔽物に身を隠す明信ー。
明信の肩からは血が流れているー。
「流れ弾に当たったか…」
明信は表情を歪めながらも、倉庫の2階への階段を駆け巡るー。
「--臼井!!!!!」
明信は、姿の見えない臼井隼人に向かって叫ぶー。
”ククク…そんなに私が憎いか?”
聡美の声が、倉庫内に響き渡るー
「--出てこい!臼井!」
黒蛇工業の構成員と銃撃戦を繰り広げながら叫ぶ明信ー。
2階に上がったすぐ先にいた二人を倒すとー
明信は物影に隠れるー。
”しぶといな…だが私を殺そうとする、ということはー
この女も殺すということー
それを忘れるなー”
聡美の声が再び響きわたるー。
明信は、物影に隠れたまま、頭をフル回転させたー。
”あの子を救い出すためにはー”
明信は、これまで”他人を皮にして支配している凶悪犯”を
被害者ごと何人か葬っているー。
治夫がかつて不良に絡まれていたところを助けた女子高生・由愛が
皮にされた時もそうだー。
明信は、着られた由愛ごと、中にいた班目順太郎を葬り去ったー。
”狼狽えるだけ相手の思うつぼー”
”皮にされた人間は、もう助からない”
そう、心を鬼にしてモルティングと戦ってきたからだー。
だがー
今回ばかりは、助けたいと思ったー。
”長瀬治夫に俺のようになってほしくない”という思いー
”治夫の妹・聡美に自分の娘の面影を重ねた”ことー
そしてー
「--臼井隼人…テメェだけは許さねぇ…」
徹底的に臼井隼人をぶちのめして葬り去るためー。
何一つとして、あいつの思い通りには、させないー。
明信は、さらに奥に進むー。
臼井隼人は”計算高い”人間だー
黒崎陣矢のように、己の欲望と快楽のまま動くタイプではないー。
非常に厄介な相手だー
だがー
「--臼井…お前のその計算高さが、墓穴を掘ることになるんだー」
明信は小声で呟くと倉庫内で叫んだー。
「--臼井隼人ー
誰の姿になっていようが、俺には通用しねぇー。
その子ごと、頭に穴を開けてやるから、覚悟しておけー」
とー。
明信は、聡美を救い出すつもりだったー。
もし”長瀬聡美”を乗っ取られたままでは、手出しが出来ないー。
しかしー
臼井隼人は知っているー。
矢神明信は”乗っ取られた人間ごとでも、モルティングを射殺する”
ということをー。
それがーー”仇”となるー。
パァン!パァン!パァン!
激しい銃撃ー
明信は慌てて物影に隠れるー。
「--刑事さんー
これ以上調子に乗られちゃ、困りますねぇ」
黒蛇工業の会長が、構成員たちと共に姿を現すー。
大人数ー。
「--チッ」
明信は深呼吸をするー。
黒蛇工業の会長とも、明信は因縁があるー。
かつて、家族を奪われる前に、明信は黒蛇工業を追っていたからだー。
その際に、何度も顔を合わせた相手だー。
「---へへへへ 刑事さんー
チェックメイトってやつだなぁ」
黒蛇工業会長が不気味な笑みを浮かべながら
構成員たちと共に、明信が隠れている場所に向かって、
ゆっくりと歩き出したー。
「--------」
倉庫2階中央部分に存在する小部屋で、明信の言葉を聞いていた聡美は
舌打ちをしたー
聡美は椅子に座り、倉庫内に声を放送するための
マイクの電源を切るー。
聡美を乗っ取っている臼井隼人は、いつも通り、
冷静に、頭脳をフル回転させたー。
臼井隼人が他人を”皮”にするのは、
己が”武器”とするためー。
黒崎陣矢のように”欲望”や”快楽”のためではないー。
利用価値があれば皮を着るー
利用価値がなければ脱ぐー
それだけだー。
聡美は険しい表情を浮かべるー。
”班目順太郎”も、明信に皮ごと射殺されたー。
”恐らく、矢神明信は、この女ごと、容赦なく私を殺すだろうー”
聡美は、先ほど治夫と電話で通話した際の、
治夫の位置情報を確認したー。
”ここに到達するまで、早く見積もっても、あと10分ー”
聡美は、笑みを浮かべたー
「-正直、この身体は運動能力が私の身体より低いし、
動きにくいからなー」
聡美の後頭部がぱっくりと割れたー。
笑みを浮かべたまま、真っ二つになった聡美の中から
聡美を脱いだ臼井隼人が姿を現すー
「--長瀬治夫が到着する前に、矢神明信を始末しー
長瀬治夫は”妹”の皮を着て、始末するとしようー」
聡美の皮を、小部屋のイスに置いてー
臼井隼人は持っていた銃の弾を確認すると、笑みを浮かべるー。
”誰の皮を着ていようが動じない”やつを相手にする場合はー
動き慣れている自分の身体のほうが、遥かにやりやすいー。
そして、治夫の到着まで計算すると、早く見積もっても、
あと10分はかかるー。
矢神明信が聡美の皮を着ていても動じないのであれば、
皮を脱いで、戦った方が確実ー。
臼井隼人の、いつも通りな、合理的な判断だったー。
小部屋から出て、明信がいる西側の方に歩みを進めようとする
臼井隼人ー。
その時だったー
「--臼井隼人!」
背後から声がしたー。
「--!!」
臼井は、すぐに振り返って銃を放ったー
だがーー
銃は外れーー
「---貴様…長瀬治夫…!」
臼井は、そう叫んだー
倉庫東側の階段からー
治夫が姿を現したのだー
”さっきの電話で通話したときの位置情報からー
この場所まで到着するのは、まだ不可能なはずーー”
臼井隼人は、そう心の中で叫ぶー。
「---聡美はどこだ!」
治夫が叫ぶー。
臼井隼人が返事をせずに、再び銃を撃とうとするー
しかしー
パァン!!
「---!」
臼井隼人は表情を歪めたー
自分のスーツにぽっかりと穴が開きー
そこから血が噴き出すー
普段銃を撃つ機会などない治夫自身も驚きながらー
臼井隼人に反撃される前に、
もう一度引き金を引いたー
臼井隼人の胸のあたりに銃弾が直撃し、
臼井隼人は後ろに吹き飛ばされて、そのまま動かなくなったー。
治夫はー
ここまで、サイレンを鳴らして”爆走”してきたのだー
妹の聡美を助けるため、
スピード違反も無視して、命懸けで爆走してきたのだー。
それ故にー
臼井隼人の想定よりも、遥かに早くー
ここにたどり着いたー。
「---!」
治夫は、臼井のいた小部屋に入るー
そこには、聡美の皮と
2本の注射器が置かれていたー
「これはーー…」
治夫は、それに見覚えがあったー。
”人を皮にする注射器”と、
”皮にした人間を元に戻す注射器”だー。
すぐにそれを聡美の皮に打ち込むとー
聡美は、人間の姿に戻ったー
「---……う…」
聡美が目を覚ますー。
「----おにいちゃん…」
聡美が弱弱しく呟くー。
治夫は「もう大丈夫だからなー聡美ー」と、
優しく聡美を抱きしめると、銃声が、倉庫の西側の方から
聞こえたことに気づき、
「ここで待ってて。すぐ戻るから」と、
聡美に向かって言い放ったー。
不安そうに頷く聡美ー。
走る治夫ーーー
「くくくくくーー
あの世でゆっくり眠りなー」
黒蛇工業の会長らが、明信の隠れている場所に
一斉射撃を加えようとしている光景が、目に入るー。
反対側からやってきた治夫は、
黒蛇工業の構成員らに向かって発砲したー。
数名が倒れるー
「--!」
黒蛇工業の会長と構成員らが戸惑うー。
その隙を、明信は見逃さなかったー
「うおおおおおおおおおおおおおお!!」
遮蔽物から飛び出すと、明信は、
黒蛇工業会長の頭を撃ち抜きー
驚く構成員たちを治夫と共に、
一掃したーーー
「--はぁ…はぁ…」
治夫は震えていたー。
銃をこんなに撃ったのはーー
人生で初めてだったー。
「--おせぇよー
大事なものは絶対に守れって言ったろうがー」
肩から少し血を流しながら明信が言うと、
治夫は「すみませんー」と頭を下げるー。
「ーーお兄ちゃん!」
治夫の背後から、聡美も後を追ってやってくるー。
明信はその姿を見て、ホッとした様子で微笑んだー
「--よかった。無事だったみたいだな」
とー。
「-ーーお兄ちゃん…わたし…怖かったー…」
聡美が、泣きながら治夫に抱き着くとー
治夫は「もう大丈夫ー。大丈夫だよー」と、
優しく聡美の頭を撫でたー。
しばらくして聡美が泣き止むと、
明信が治夫の方に近づくー
治夫が、臼井隼人を射殺したことを告げるー
家族の仇をこの手で葬れなかったことに、
明信は少しだけ複雑そうな表情を浮かべたー。
聡美が「-矢神さん、やっぱり本当に刑事さんだったんですねー」と、
明信を見てほほ笑むー。
明信は「おい!俺は偽物だと思われてたのか!?」と、
聡美に向かってツッコミを入れると「--本物の刑事だよ」と、
苦笑いしながら聡美に言い放ったー
「--……本当に、ありがとうございますー」
聡美が深々と頭を下げるー
明信は「いいんだよ」と、少し照れ臭そうに笑ったー
「--矢神さんー
俺からもーーありがとうございましたー」
治夫が頭を下げると、
明信は「-俺じゃなきゃ、あの子を救えなかったからなー」と、
少し離れた場所にいる聡美を指さしたー。
「--え」
治夫の言葉に、明信は
「-俺が来たから、臼井隼人はあの子を”脱いだ”-
たぶんやつは、俺があの子ごとでも、撃ってくると思ったんだろー」
と、呟いたー
確かに、聡美は”着られて”いたー。
治夫がもし、ここに先に来ていたらー
”何もできずに”殺されていただろうー。
「---矢神さん…
本当に、何とお礼を言っていいかー」
治夫がそう呟くと、
明信は「いいんだよ礼なんかー。俺は、妻と娘を奪った臼井を
葬りたかっただけだしよ!」と、照れくささを隠すかのように
言い放ったー
「--ははは…でも、ありがとうございますー」
治夫の言葉に、
明信は治夫の方を見てー
ほほ笑みーーー
「-----あぶねぇ!!!」
明信が、急に大声を出したー
治夫の背後にー
死んだはずの臼井隼人が姿を現していたーー
銃を、治夫の背中に向けてーーー
パァン!!!
銃声が響いたー
「---!」
聡美が驚くーー
「---!!!」
治夫が驚くー
「-----っっ…」
治夫を庇うようにして、撃たれた明信はー
自分の胸のあたりから、血が流れているのを確認したー
臼井隼人は、血を流しながらニヤリと笑みを浮かべるー。
治夫に撃たれた臼井だったがー
完全には、死んでいなかったのだー
「---うああああああああああああああああああああ!」
明信が、鬼のような形相で、臼井隼人の方に向かって行くー
「矢神さん!」
治夫が叫ぶー
激しい銃声が何発も響き渡りー
やがて、臼井隼人が血を吐いて、その場に座り込んだー
「--はぁ…はぁ…はぁ…」
明信も、何発か撃たれて、ふらふらになって
座り込んだ臼井隼人に近づくーー
臼井隼人は、明信の方を見上げるー。
「--く、、、くくく…矢神明信ー
君が来るのを……先に地獄で待ってるよー」
臼井隼人の言葉に、
明信は、銃を向けたー。
「ーーーあぁ、待ってろー。
地獄でも、お前を見つけ出して、殺してやるー」
明信はそれだけ言うと、臼井隼人の頭を撃ち抜いたー。
臼井隼人が動かなくなるのを確認すると、
明信もその場に崩れ落ちるようにして倒れるー。
「--矢神さん!」
治夫が叫ぶー
「え…え…し、、しっかりしてください!」
聡美が泣きながら駆け寄るー。
「---…はぁ………
これで俺もようやく、妻と娘のところにーーー」
明信はそう呟くとー
治夫と聡美の方を見てー
「--兄妹ー
仲良くしろよー」
と、弱弱しく呟いたー。
「--聡美!救急車を!」
治夫がスマホを聡美に渡すと、聡美は泣きながら頷いて、
少し離れた場所で救急車を呼び始めるー
「---長瀬ー」
明信は、苦しそうに息をしながら呟いたー。
「--はい」
治夫が涙ぐみながら明信を見つめるー。
「---モルティングだけでなくーー
対策班のやつらにも、気をつけろー」
明信の言葉に、治夫は
「目黒警視正のことですか?」と、聞き返すー
明信は、苦しそうに咳き込んでからー
「ーーーいやーーー”全員”だーーー」と、告げるー。
「--全員!?」
治夫は、対策本部の
目黒警視正ー
好青年風の堂林幸成ー
ギャル風の三枝真綾ー
目黒警視正としか会わない”剛”のことを浮かべるー。
「ど、どういう意味ですか!」
治夫が叫ぶと、明信は少しだけ微笑んだー
「--守れよー
大切な人をー」
明信は、その言葉を最後に、動かなくなったー。
「----矢神さんー」
治夫は、悔しそうに動かなくなった矢神明信の亡骸に
言葉をかけたー
⑲へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
長編第18話でした~!
乗っ取られた大切な人と直接対決してほしかった!
という人もいるかもですが、
それは”今後”に期待していてくださいネ~笑
(今回、それをやっちゃうと、主人公が殺されちゃうので、
最初からこうなる予定でした~☆)
まだまだ気を抜けない展開が続きます!
次回もぜひ楽しんでくださいネ~!