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誠太郎と涼香の二人は、元に戻る方法が分からないまま

入れ替わった状態での生活を続けていたー。


異性耐性0だった誠太郎も、涼香の懸命な”特訓”によって、

なんとか涼香の身体で生活できるぐらいにはなったー。


後は、元に戻るだけー。

涼香は、親戚のおじさんがやっている病院に

何とか事情を説明し、おじさんに”入れ替わり”の状態を

診察してもらう約束を取り付けたー。


しかし、二人を診察したおじさんから帰って来た言葉は

”無情”な言葉だったー。


★前回はこちら↓★

fanbox post: creator/29593080/post/2459782

・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「--君たちはもうー

 元には、戻れないー」


涼香の親戚である医師の男は、

神妙な表情で、そう告げたー。


「-----え」

涼香(誠太郎)は思わず変な声を出してしまうー。


「---さっき、脳に薄い筋のような影が映っていると

 言ったのは覚えているかな?」

親戚の医師がそう言うと、

誠太郎(涼香)は「はい…」と答えたー。


「--あれは、”他人の意識”が入り込んで来た時に

 脳が拒絶反応を起こしたことによって、出来るものらしいんだー」

親戚の医師はそこまで言うと、

「同様の症例が、海外を中心に、ごく少数だが、確認できた」


パソコンの画面には、難しそうな論文が表示されているー

誠太郎(涼香)や涼香(誠太郎)には、その意味は読み取れないー


「ま、”人と人が入れ替わった”なんて誰も真に受けずー

 結局、どの症例も”頭をぶつけたことによって、そのショックで

 お互いが相手になったと思い込んでいる”ということで

 片づけられているんだがー」


親戚の医師は、二人をまっすぐ見つめたー


「-どうやら、二人は、間違いなく、入れ替わっているみたいだなー…

 思い込みなんかじゃ、決してないー。

 --涼香ちゃんの行動を見てれば、分かるー」


誠太郎になった涼香の”仕草ー”

小さいころよく涼香と遊んでいた親戚のこのおじさんは、

誠太郎の中身が、本当に涼香だと、確信していたー


思い込みなどでは、ないー


「--おじさん…つまりわたしたちはー」

誠太郎(涼香)が言うとー


「-ー気の毒だが、結論を言うと

 ”元に戻す方法は分からない”

 

 入れ替わった原因は、二人がぶつかったことー。

 治療方法は、現時点では”ない”


 人間同士、頭をぶつけても、普通は入れ替わることはないー

 入れ替わる条件は不明ー


 つまりーーー

 ”元に戻れない”ということだー」


その言葉にー

涼香(誠太郎)は青ざめたー


”あの時、大学構内を走っていた僕のせいだー”


そう、思うことしかできなかったー。


誠太郎(涼香)は何度か頷くとー

笑顔を作って、おじさんの方を見たー。


「--わかりました。おじさん、ありがとうございますー」


必死に笑顔を作っていた誠太郎(涼香)-

けれど、その笑顔は、今までに涼香(誠太郎)が見た、

どんな笑顔よりも、悲しそうだったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


病院での診察を終えて、

すぐ近くの高台に移動した二人はー

海を見つめていたー。


夕日に照らされて、オレンジ色に輝く海を見つめながら

誠太郎(涼香)は、悲しそうに微笑んだー。


「--わたしたち、戻れないみたいね…」

いつものような、穏やかな口調ー


顔は夕日の方を見つめていて、よく見えないー。


”大学生まで生きた身体”にもう、戻れないー。


そんな現実、辛くないはずがないー。


涼香(誠太郎)も、夕日の方を見つめながら呟くー。


「---本当に、ごめんなさいー」

とー。


「--僕のせいで…僕のせいで、こんなー」

涼香(誠太郎)が言うと、

誠太郎(涼香)は優しくほほ笑んだー


「--わたしの身体で、そんなに謝らないでー」


”謝ってばかりー”

これまでに、何度も誠太郎になった涼香から指摘されてきたことだー。


しかしー


「--ううんー

 これは、謝らないといけないことなんだ」

涼香(誠太郎)が、まっすぐと誠太郎(涼香)の目を見つめるー。


入れ替わった直後のような、異性耐性0の誠太郎の姿にはそこにはなくー、

入れ替わりを通じて成長した誠太郎ー、

いいや、涼香になった誠太郎の姿が、そこにはあったー。


「-僕が、あの時、大学内を走ったりしてさえいなければー

 こんなことにはならなかったんだー。

 だからー

 これだけは、もう一度、しっかりと謝らせてほしいんだー」


涼香(誠太郎)の言葉に、

誠太郎(涼香)は、寂しそうに夕日の方を見つめてからー

「わかった」と、頷くー。


「--僕のせいで、本当にーごめんなさい

 藤崎さんー」


涼香(誠太郎)は、深々と頭を下げたー。


夕日に照らされる中ー

長い髪を揺らしながら、頭を下げる涼香(誠太郎)-


誠太郎(涼香)は、しばらく、そんな

”元・自分”の身体になった誠太郎を見つめていたがー

やがて、少しだけ笑ったー。


「何度何度経験してもー

 ”わたし”に謝られるって変な気分ー。


 大体これじゃ、わたしが謝ってるみたいだしー」


そう呟く誠太郎(涼香)に、

涼香(誠太郎)は「た、、確かに、藤崎さんが僕に謝ってるみたいだよね…」と

言うと、二人は少しだけ緊張がほぐれたかのように微笑んだー。


・・・・・・・・・・・・・・


「--これから、どうするー?」

誠太郎(涼香)が帰り道を歩きながら言うー。


”元に戻る”

そんな手段が失われてしまった今ー、

選択肢は、二つに一つー。


”このまま入れ替わったことを隠しながらお互いとして生きるか”

”周囲に信じてもらえることを祈りながら、打ち明けるか”


だが、現実的に”入れ替わり”を信じてもらうことは、難しいー。

仮に打ち明けてー

誠太郎が、涼香の身体で誠太郎としてー

涼香が、誠太郎の身体で涼香として生きるのは、

なかなか難しくー

家族・友人・その他関係者に大きな負担をかけてしまうー。


入れ替わりを打ち明けなければー

少なくとも”周囲”は、苦しい思いをしなくて済むかもしれないー。

けれど、二人はずっと周囲を騙し続けることになるし、

何より、家族や友達ー

今までの人間関係を失うことにもなるー。

涼香からすれば、誠太郎の身体で涼香の家族に会うのは難しいだろうし、

誠太郎からすれば、涼香の身体で誠太郎の家族に会うのは、難しいー。


「-----」

涼香(誠太郎)が、困惑した様子で立ち尽くしていると、

誠太郎(涼香)は、口を開いたー。


「じゃあさ、わたしたち、付き合っちゃおっか?」

誠太郎(涼香)の言葉に、

涼香(誠太郎)は「え?」と、思わず変な声を出したー


何を言っているのか、全く分からないー。


「--わたしたちが付き合ってれば、お互いの家族にも友達にも

 会えるし、相手の様子を常に近くで見てることも出来るし、

 一番いいと思わない?」


誠太郎(涼香)が、”希望”を見出したかのように言うー。


確かに、二人が付き合ってー

やがて”結婚”までしてしまえばー

身体は違うし、”相手”として、ということにはなるけれどー

お互いの家族に会うことも出来るだろうしー

友人関係も、お互いを通じて、維持することが出来るかもしれないー。


入れ替わった相手の状態も、”近く”で見ることが出来るしー

それでいて、”入れ替わり”を暴露して、

信じてもらえずに、”頭がおかしくなった”と思われるリスクも、

周囲を悲しませるリスクも、ないー。


「---って、、!」

涼香(誠太郎)は、思わず叫んだー


「--僕が藤崎さんと結婚なんて、絶対ないないないない!

 僕は何、おかしなこと妄想してるんだー!」

涼香(誠太郎)が心の中で叫ぶー


いやー

心の中で叫んだつもりが、口に出ていたー


「-結婚…ふふ、それもいいかも」

誠太郎(涼香)に、

涼香(誠太郎)は「あ~~いやいやいやいやいやいや!ないない!

ごめんなさい!ごめんなさい!」と叫ぶー。


異性耐性0だった涼香(誠太郎)が、今では嘘のように、

誠太郎になった涼香には話が出来ているー。


勿論、まだ、大学で他の女子と接するときは

とてもぎこちないけれどー

それは、これから”特訓”していけばいいー


「--いや?」

誠太郎(涼香)が、少し寂しそうに言うと、

涼香(誠太郎)は「え、、あ、いやとかじゃなくて、、その、

僕なんかでー…!」と、慌てふためいた様子で言うー。


「--ーうん。入れ替わってから一緒に過ごしてー…

 安藤くんのこと、色々知ることが出来たしー、

 一緒にいると、なんだか安心するー


 まぁ…”わたしの身体”が近くにある安心感かもしれないけど、

 でも、わたしは、安藤くんさえ良ければー」


誠太郎(涼香)がそこまで言うと、

涼香(誠太郎)が、顔をトマトのように赤くしているのを見て、

誠太郎(涼香)まで恥ずかしくなって、


「わたしの身体で真っ赤にならないで!」

と、叫んだー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


その後ー

2人は”付き合い”を始めたー


大学の仲間たちは、突然のカップル成立に驚いた様子だったけれどー

これで”二人が一緒にいる”という状態を自然にすることが出来たしー

何より、二人とも、一緒にいると、安心できたー。


やがてー


「--わたしが、わたしにプロポーズするなんて、

 夢にも思わなかったー」


大学卒業間近ー

誠太郎(涼香)は、婚約指輪を手に、涼香(誠太郎)に

プロポーズをしたー


誠太郎(涼香)の容姿は、おしゃれな感じになっていてー、

”この身体でずっと生きていくー”と決めた

涼香が、誠太郎の身体を自分流にアレンジしていたー。

髪型も、派手すぎないおしゃれな感じになっているー。


「---わたしと、いえ、僕と結婚してくださいー」

誠太郎(涼香)がプロポーズを演出して”僕”と言葉を口にするー。


「--ーー」

涼香(誠太郎)が微笑むー。


ボーイッシュで大人しい感じになっているーー

と、思いきや、

とてもおしゃれな女性に、涼香は変貌していたー。


涼香が、涼香であったころよりもおしゃれー。

涼香の身体でずっと生きていくと決断して以降ー、

誠太郎になった涼香から色々教わるうちに、

おしゃれが楽しくなってしまったのだったー。


「----…喜んで」

涼香(誠太郎)が、ほほ笑むと、

誠太郎(涼香)も嬉しそうに微笑んだー。



結婚式ー


「僕が、ウェディングドレスを着るとか…

 なんだか、すごい人生だなぁ…」


涼香(誠太郎)が、笑いながら言うと、

誠太郎(涼香)は「わたしも、わたしと結婚することになるなんて、

思わなかったー」と、呟くー。


「--でも、今、わたしは幸せだよー。

 誠太郎は?」

誠太郎(涼香)が言うと、

涼香(誠太郎)は「もちろん。僕も幸せだよ」と、

優しく笑みを浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・


激しい痛みに耐えながら、彼は思うー。


(まさかーーー

 僕がーーー)


異性に対する耐性も全くなくー

そもそも自分は生涯独身で、生涯彼女なしだと、ずっとそう思っていたー


(はははは

 なんだか、凄い人生だなー)


激痛に耐えながら、涼香(誠太郎)は、心の中で笑うー。


異性耐性0の自分がー

まさか、女になって、結婚してー


しかも今ー

”出産”を迎えているなんてー。


(あり得ない人生すぎでしょ…僕ー

 

 でもーーーー)


出産を終えて、初めて我が子と対面しー

駆け付けた誠太郎(涼香)の顔を見た

涼香(誠太郎)はー


”僕は今、とっても幸せだー”


と、嬉しそうに微笑んだー



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


ハッピーエンドな入れ替わりモノでした~!

入れ替わりの相手次第では、異性への苦手意識も解決できる…かも!?笑


お読み下さりありがとうございました~!


次はズブズブの入れ替わりモノも書きたいですネ~☆笑

(Fanbox)


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