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「---お姉ちゃん…痛いよ…」

目の前で小さな少女が苦しそうにこちらを見ているー。


「--ーー美穂(みほ)ー」

必死に、呼びかけるー。


美穂と呼ばれた少女は、苦しそうに血を流しているー。

瓦礫に押しつぶされるような状態でー。


なんとか、助けようと手を伸ばすー。


だが、美穂に”お姉ちゃん”と呼ばれた彼女も、

崩れた建物の下敷きになっていて、

致命傷ではなかったが、自分で身動きが取れない状況だったー。


”早く助けなくちゃ”

そう思ってもー

身体を動かすことが、出来ないー。


美穂が泣きながら助けを求めているのにー

何もすることが出来ないー


「おねえちゃん…」

”妹”の美穂が弱っていくー。


どんどん弱っていくー


泣いていた美穂は、

次第に口数が減っていきー

顔色が悪くなっていきーーー


最後にはーそのまま動かなくなったー


”命あるもの”が、

弱っていきー

死んでいくー。


その様子を、助けることも、目を逸らすことも許されずー

見つめることしかできなかったー。


突然の自然災害はー

無残にも、妹の命を奪ったー。


やがてー

美穂から”お姉ちゃん”と呼ばれた

彼女は、その後少ししてやってきた救助隊に

無事に救出されたー。


だがーー


「-----ふふ、、、ふ、、、ふふふふ…

 美穂… 美穂…

 ふふふ、、、ひ、、ひひひひひひひ

 あははははははっ」


彼女は、泣きながら笑っていたー


まだ幼かった彼女には、

あまりにも過酷すぎる出来事ー


彼女は、その時ー

壊れたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「----!!

 はぁ…はぁ…」

入れ替わり薬で萌美の身体を奪った男子大学生・尚樹は、

萌美の身体で目を覚ましたー


悪夢を見たー。


「--はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」

萌美の荒い息遣いー。


女子の息遣いを聞いて、萌美(尚樹)はドキッとしてしまうー


”そうだー…

 俺、羽村さんと入れ替わって…”


入れ替わってから数日ー。

未だに、寝起きのタイミングでは、頭が混乱するー


当たり前と言えば当たり前だー

大学生になるまで、ずっと”尚樹”として生きて来たのだからー

他人の身体にー

ましてや女性の身体になっている現状に、違和感を感じないはずはないー。


「--今のは…?」

萌美(尚樹)は起き上がって、”狂気”の部屋を見つめながら呟くー。


悪夢を見たー。


拷問機具や、遺体ー

無残に殺された動物が散乱する萌美の部屋で寝ているからー

変な夢を見たのだろうかー。


萌美は、とても優しくて可愛い子だったが、

”恐ろしい裏の顔”があったー。


「-わたし、動物が死んでいくのを見るのが、趣味なの」


尚樹になった萌美が、満面の笑みで言った言葉を思い出すー。

とても、正気とは思えないー。


しかも、身体を入れ替えられてしまったというのに、

萌美はほとんど気にしていない様子だったー。


「はぁ………」

萌美(尚樹)は、鏡で萌美の顔を見つめるー

本当に綺麗だし、見ているだけでドキドキしてしまうー


「これが…俺…」

可愛い声が口から出るー。

それだけで、ドキドキしてしまうー。


だがーー

それ以上に、”萌美の本性”に恐怖を感じていたし、

身体を堪能するどころではなかったー。


いや、それどころか、もう、元に戻りたいー。

萌美は、同じ大学に通う詩織という子を入れ替わる前に殺害していたー

つまり、殺人鬼なのだー。


入れ替わった相手がやばいやつ過ぎたー。

早く、元に戻りたいー。


そんな風に思いながら、着替えて大学に向かうー


着替える最中も”こんな美人なのに、こんな…やばい子なんて…信じられない”

と、思いながら、

今朝見た夢のことを少しだけ考えていたー。


”美穂”とは誰だー?

夢なのに、頭に焼き付くように残っているー


「-ーーー」

大学に到着すると、尚樹(萌美)が笑みを浮かべながら、

何かをしていたー


「---……羽村さん」

萌美(尚樹)が声を掛けると、

尚樹(萌美)は振り返って、クスっと笑うー。


そしてー

「ーー”羽村さん おはよう”」と、

笑みを浮かべながら言ったー


あくまでも尚樹になりきるつもりのようだー。


萌美(尚樹)のことを、あえて”羽村さん”と呼び、

挑発的に笑っているー


「---!」


尚樹(萌美)の足元には、苦しんでいるナメクジの姿があったー。


そして、尚樹(萌美)の手には”塩”が握られているー。


その塩をナメクジに向かって振る尚樹(萌美)-


「知ってる?

 ナメクジって塩をかけるとね、死んじゃうんだよ」

尚樹(萌美)が嬉しそうに笑うー


塩をかけながら、ナメクジに顔を近づけて

「しーね! しーね! しーね!」と

満面の笑みで呟く尚樹(萌美)-


「おい!やめろってば」

萌美(尚樹)が、たまらず止めに入るー。


「--ーーふ~~」

尚樹(萌美)は立ち上がると、

萌美(尚樹)の方を見つめたー。


「---で?何か用?」

尚樹(萌美)の言葉に、

萌美(尚樹)は「頼むから、身体を返してくれ」と

嘆願するー。


「ーーーえ~?だって、藤堂くん、

 わたしの身体が欲しかったから、身体を入れ替えたんでしょ?


 藤堂くんの好きなように、わたしの身体をカスタマイズして

 楽しめばいいじゃん。


 ほら、髪型変えたり、メイク変えたりー

 服もおしゃれも、藤堂くん色の萌美にしちゃっていいんだよ?」


クスッと笑う尚樹(萌美)-

よく見ると、尚樹になった萌美は、服装や髪型を少し変えていたー


「-わたしも、わたし色の藤堂くんに変えちゃうから♡」

尚樹(萌美)の言葉に、

「-ーーは、、羽村さんが、殺人してるなんて、知らなかったんだ!」

と、小声で叫ぶー。


尚樹(萌美)は立ち止まるー。


「--だって、つい殺しちゃったんだもん」

全く悪びれる様子なく言う尚樹(萌美)-。


「--頼む…頼むよ…!どうしても、、どうしても…!

 ぜ、、絶対言わないから…!

 謝るから、、俺の身体を、返してくれ!」

萌美(尚樹)の言葉に、尚樹(萌美)は

「わたしの身体で必死になってる藤堂くんみると

 ゾクゾクしちゃうなぁ…」

と、言いながら、舌で唇をペロリと舐めたー


ゾクッ…


萌美(尚樹)は底知れない恐怖を感じたー

今の尚樹(萌美)の目は、確実に殺人鬼の目だったー


「あ、そういえば昨日ね、金魚を買って、家で

 水から出して弱っていくの見てたんだけど、

 めっちゃくちゃ興奮したの!


 男の人ってすごいんだね!

 金魚見てたら、ここ、すっごく大きくなっちゃって!

 勃起って言うのかな?」


尚樹(萌美)が笑うー。


”早くこのサイコパス女から身体を取り戻さないと”

萌美(尚樹)は強い危機感を覚えたー。


「-ー蝶の蛹を開けちゃうのとかも、滅茶苦茶興奮しちゃう!」

尚樹(萌美)の狂気は止まらないー


「---美穂」

萌美(尚樹)は思わず、”夢”のことを口にしたー。


瓦礫の下敷きになっていた”美穂”という子が

弱って、死んでいく夢ー


「--美穂って知ってるか?」

なんとなくだったー。

夢のことが気になって、

その言葉を口にした萌美(尚樹)-


尚樹(萌美)は、その名前を聞いた瞬間、

表情を悪魔のように歪めたー。


「---……とにかく、邪魔するなら、あんたのこと、通報するからー。

 自分で入れ替えたんだから、責任持ちなさい」

尚樹(萌美)は強い口調でそう呟くと、そのまま立ち去って行ったー。


「--------」

萌美(尚樹)は、立ち去っていく尚樹(萌美)の

後ろ姿を見つめながらー

”いったい、あの夢は…?”と、首を傾げたー


・・・・・・・・・・・・・・・・


帰宅後ー


萌美(尚樹)は、気になってあることを調べ始めたー


”羽村 美穂”とスマホで検索してみるー。


”美穂”の名前を出した時、尚樹(萌美)の反応が

明らかにおかしかったー

あの反応は、萌美が”美穂”という子を知っていることを意味するー。


そしてー

今朝見た、夢の中で美穂という子は、”お姉ちゃん”と、

尚樹のことを呼んでいたー

瓦礫のようなものに押しつぶされた状態で、

美穂という子は徐々に弱っていき、死んだー

夢とは言え、あまりにもショッキングで、残酷だったー。


スマホで、羽村 美穂という名前を検索して、

徹底的に情報を調べているとー

だいぶ前のニュースの記事が、そこに表示されたー


地震が発生しー

姉妹が瓦礫の下敷きになったニュース。


瓦礫の下から救助された姉妹のうちー

姉は助かり、妹は死んだ、というニュース-


救助された方の名前は、存命だからか、

そのニュースには書かれていなかったがー

助からなかった”妹”の名前は、そこに記されていたー


”羽村 美穂”とー。


「-----」

萌美(尚樹)は、萌美の身体が悲鳴を上げているような気がして

スマホから目を逸らしたー。


「---あの夢…」

萌美(尚樹)は思うー。


あの夢は、萌美が過去に体験した過酷なトラウマー

それが、尚樹が萌美の身体になったことで、その夢を見たのかもしれないー


夢の中で、妹・美穂は死んだー

徐々に弱っていきー死んだー

そして、夢の中で”お姉ちゃん”は救助された時、狂ったように笑っていたー


地震で妹を失ったー

しかも、身動きが取れず、目の前で弱っていく妹を、

目を逸らすこともできず、見せつけられたー


羽村 萌美が、サイコパスになってしまったのはー

過酷な、トラウマからー?


そう思いながら萌美(尚樹)は、部屋の中を調べ始めるー。

”元に戻るための、説得材料があるかもしれない”

と、思いながらー。


”断食”

そう書かれたハムスターにエサをあげる萌美(尚樹)-


♪~~~


インターホンが鳴るー。

玄関から顔を出すとー

警官が2人いたー。


「----!!!!」

萌美(尚樹)は青ざめるー。


萌美は入れ替わる前に、

同級生の詩織を殺しているー。

逮捕されるのは、時間の問題かもしれないー


”早く、元に戻らないとー”


幸いー

警官は、世間では”行方不明”の詩織を

探すため、同級生に話を聞いて回っているだけだったがー

そう長くはもたない気がするー。


「---…」

萌美(尚樹)は、困惑しながら、尚樹(萌美)に連絡を入れようとしたー。


・・・・・・・・・・・・・・


「-ーーー」

買ってきた大きな魚を入れた水槽に、

金魚を入れて笑みを浮かべる尚樹(萌美)-


「--ふふふふふふ♡」

おしゃれをした尚樹(萌美)が嬉しそうに笑うー


水槽に入れられた金魚は、

大きな魚を見て、あわてて逃げようとするー。


しかしー

逃げられるはずもなくー


「--がんばれ!がんばれ!がんばれ!」

ゾクゾクしながら尚樹(萌美)が言うー。


言葉とは裏腹に、全く金魚を助ける様子も見せない尚樹(萌美)-


やがて、金魚は、大きな肉食魚に食べられてもがきだすー


頭の部分だけ、飛び出していて、

パクパクと口を動かして助けを求める金魚。


「---あぁぁぁぁ~~がんばれ!がんばれ!がんばれ!」

尚樹(萌美)はそう呟いたあとにー

最後に「ばいばい♡」と、丸飲みされる直前の金魚に手を振ったー


♪~~~


「---」

電話が鳴り、スマホを手にする尚樹(萌美)-


萌美(尚樹)からの電話だー。


萌美(尚樹)は、萌美の妹・美穂の夢を見たことを告げたー。

そして、その上で、過去の地震での悲劇を知ったことも告げるー。

萌美は小さいころは別の地方にいたため、尚樹自身は、

その地震を経験していなかったー。


全て理解したことを告げた上で、

”妹さんも喜ばない”と、必死の説得を続ける萌美(尚樹)-


するとー。


「---…わかったわよ」と、

尚樹(萌美)は、尚樹の声でそう呟いたー。


「--わかった…身体、返すからー。」

尚樹(萌美)がそう言うと、

萌美(尚樹)は

”ほんとか!?よかった”と安心した様子で呟いたー


”俺も一緒に、サポートするから…

 まず、罪を償ってー…

 妹…美穂ちゃんも、お姉ちゃんがこんなことしてるなんて、

 絶対悲しむからー”


その言葉に、尚樹(萌美)は涙声で「うん…」と呟くー


”明日ー、入れ替わり薬、持っていくから、入れ替わろうー”


明日ー

大学の授業が終わったら、会って再度入れ替わる-。

そのあと、尚樹が付き添いで、萌美は自首をする約束をするー。


円満解決ー。


電話を切った萌美(尚樹)は

「よかった…」と、安堵の表情を浮かべたー


萌美の過去を知った尚樹は、

萌美に同情していたー。


元に戻ったら、羽村さんを支えたいー、と

そう思っていたー。


「----」

購入しておいたもう1本の入れ替わり薬を手に、

萌美(尚樹)は、安心した表情で、安堵のため息をついたー



しかしーーーー


「------」

電話を切った尚樹(萌美)の方は、ひとり、クスクスと笑っていたー


「----------」

今から、ゾクゾクが止まらないー


「--------------」

今からー

明日のことを考えるだけでー


ゾクゾクがー



萌美の精神はー

尚樹が思う以上に”崩壊”していることを、

尚樹は理解できていなかったー


④へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


次回が最終回の予定デス~!

果たして、無事に元に戻れるのでしょうか~?


今日もお読み下さり、ありがとうございました~!

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Comments

みのむー

萌美が怖い…… 何考えてるか気になりますわ

無名

コメントありがとうございます~! いったい何を考えているのでしょうネ~笑 次回のお楽しみデス~!

飛龍

素直に説得に応じるわけがないよなぁ…… どうなっちゃうのか気になります~!

無名

コメントありがとうございます~! ぶるぶるぶるぶる…