<入れ替わり>身体を奪った相手がやべぇ奴だった③~崩壊~ (Pixiv Fanbox)
Content
「---お姉ちゃん…痛いよ…」
目の前で小さな少女が苦しそうにこちらを見ているー。
「--ーー美穂(みほ)ー」
必死に、呼びかけるー。
美穂と呼ばれた少女は、苦しそうに血を流しているー。
瓦礫に押しつぶされるような状態でー。
なんとか、助けようと手を伸ばすー。
だが、美穂に”お姉ちゃん”と呼ばれた彼女も、
崩れた建物の下敷きになっていて、
致命傷ではなかったが、自分で身動きが取れない状況だったー。
”早く助けなくちゃ”
そう思ってもー
身体を動かすことが、出来ないー。
美穂が泣きながら助けを求めているのにー
何もすることが出来ないー
「おねえちゃん…」
”妹”の美穂が弱っていくー。
どんどん弱っていくー
泣いていた美穂は、
次第に口数が減っていきー
顔色が悪くなっていきーーー
最後にはーそのまま動かなくなったー
”命あるもの”が、
弱っていきー
死んでいくー。
その様子を、助けることも、目を逸らすことも許されずー
見つめることしかできなかったー。
突然の自然災害はー
無残にも、妹の命を奪ったー。
やがてー
美穂から”お姉ちゃん”と呼ばれた
彼女は、その後少ししてやってきた救助隊に
無事に救出されたー。
だがーー
「-----ふふ、、、ふ、、、ふふふふ…
美穂… 美穂…
ふふふ、、、ひ、、ひひひひひひひ
あははははははっ」
彼女は、泣きながら笑っていたー
まだ幼かった彼女には、
あまりにも過酷すぎる出来事ー
彼女は、その時ー
壊れたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「----!!
はぁ…はぁ…」
入れ替わり薬で萌美の身体を奪った男子大学生・尚樹は、
萌美の身体で目を覚ましたー
悪夢を見たー。
「--はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
萌美の荒い息遣いー。
女子の息遣いを聞いて、萌美(尚樹)はドキッとしてしまうー
”そうだー…
俺、羽村さんと入れ替わって…”
入れ替わってから数日ー。
未だに、寝起きのタイミングでは、頭が混乱するー
当たり前と言えば当たり前だー
大学生になるまで、ずっと”尚樹”として生きて来たのだからー
他人の身体にー
ましてや女性の身体になっている現状に、違和感を感じないはずはないー。
「--今のは…?」
萌美(尚樹)は起き上がって、”狂気”の部屋を見つめながら呟くー。
悪夢を見たー。
拷問機具や、遺体ー
無残に殺された動物が散乱する萌美の部屋で寝ているからー
変な夢を見たのだろうかー。
萌美は、とても優しくて可愛い子だったが、
”恐ろしい裏の顔”があったー。
「-わたし、動物が死んでいくのを見るのが、趣味なの」
尚樹になった萌美が、満面の笑みで言った言葉を思い出すー。
とても、正気とは思えないー。
しかも、身体を入れ替えられてしまったというのに、
萌美はほとんど気にしていない様子だったー。
「はぁ………」
萌美(尚樹)は、鏡で萌美の顔を見つめるー
本当に綺麗だし、見ているだけでドキドキしてしまうー
「これが…俺…」
可愛い声が口から出るー。
それだけで、ドキドキしてしまうー。
だがーー
それ以上に、”萌美の本性”に恐怖を感じていたし、
身体を堪能するどころではなかったー。
いや、それどころか、もう、元に戻りたいー。
萌美は、同じ大学に通う詩織という子を入れ替わる前に殺害していたー
つまり、殺人鬼なのだー。
入れ替わった相手がやばいやつ過ぎたー。
早く、元に戻りたいー。
そんな風に思いながら、着替えて大学に向かうー
着替える最中も”こんな美人なのに、こんな…やばい子なんて…信じられない”
と、思いながら、
今朝見た夢のことを少しだけ考えていたー。
”美穂”とは誰だー?
夢なのに、頭に焼き付くように残っているー
「-ーーー」
大学に到着すると、尚樹(萌美)が笑みを浮かべながら、
何かをしていたー
「---……羽村さん」
萌美(尚樹)が声を掛けると、
尚樹(萌美)は振り返って、クスっと笑うー。
そしてー
「ーー”羽村さん おはよう”」と、
笑みを浮かべながら言ったー
あくまでも尚樹になりきるつもりのようだー。
萌美(尚樹)のことを、あえて”羽村さん”と呼び、
挑発的に笑っているー
「---!」
尚樹(萌美)の足元には、苦しんでいるナメクジの姿があったー。
そして、尚樹(萌美)の手には”塩”が握られているー。
その塩をナメクジに向かって振る尚樹(萌美)-
「知ってる?
ナメクジって塩をかけるとね、死んじゃうんだよ」
尚樹(萌美)が嬉しそうに笑うー
塩をかけながら、ナメクジに顔を近づけて
「しーね! しーね! しーね!」と
満面の笑みで呟く尚樹(萌美)-
「おい!やめろってば」
萌美(尚樹)が、たまらず止めに入るー。
「--ーーふ~~」
尚樹(萌美)は立ち上がると、
萌美(尚樹)の方を見つめたー。
「---で?何か用?」
尚樹(萌美)の言葉に、
萌美(尚樹)は「頼むから、身体を返してくれ」と
嘆願するー。
「ーーーえ~?だって、藤堂くん、
わたしの身体が欲しかったから、身体を入れ替えたんでしょ?
藤堂くんの好きなように、わたしの身体をカスタマイズして
楽しめばいいじゃん。
ほら、髪型変えたり、メイク変えたりー
服もおしゃれも、藤堂くん色の萌美にしちゃっていいんだよ?」
クスッと笑う尚樹(萌美)-
よく見ると、尚樹になった萌美は、服装や髪型を少し変えていたー
「-わたしも、わたし色の藤堂くんに変えちゃうから♡」
尚樹(萌美)の言葉に、
「-ーーは、、羽村さんが、殺人してるなんて、知らなかったんだ!」
と、小声で叫ぶー。
尚樹(萌美)は立ち止まるー。
「--だって、つい殺しちゃったんだもん」
全く悪びれる様子なく言う尚樹(萌美)-。
「--頼む…頼むよ…!どうしても、、どうしても…!
ぜ、、絶対言わないから…!
謝るから、、俺の身体を、返してくれ!」
萌美(尚樹)の言葉に、尚樹(萌美)は
「わたしの身体で必死になってる藤堂くんみると
ゾクゾクしちゃうなぁ…」
と、言いながら、舌で唇をペロリと舐めたー
ゾクッ…
萌美(尚樹)は底知れない恐怖を感じたー
今の尚樹(萌美)の目は、確実に殺人鬼の目だったー
「あ、そういえば昨日ね、金魚を買って、家で
水から出して弱っていくの見てたんだけど、
めっちゃくちゃ興奮したの!
男の人ってすごいんだね!
金魚見てたら、ここ、すっごく大きくなっちゃって!
勃起って言うのかな?」
尚樹(萌美)が笑うー。
”早くこのサイコパス女から身体を取り戻さないと”
萌美(尚樹)は強い危機感を覚えたー。
「-ー蝶の蛹を開けちゃうのとかも、滅茶苦茶興奮しちゃう!」
尚樹(萌美)の狂気は止まらないー
「---美穂」
萌美(尚樹)は思わず、”夢”のことを口にしたー。
瓦礫の下敷きになっていた”美穂”という子が
弱って、死んでいく夢ー
「--美穂って知ってるか?」
なんとなくだったー。
夢のことが気になって、
その言葉を口にした萌美(尚樹)-
尚樹(萌美)は、その名前を聞いた瞬間、
表情を悪魔のように歪めたー。
「---……とにかく、邪魔するなら、あんたのこと、通報するからー。
自分で入れ替えたんだから、責任持ちなさい」
尚樹(萌美)は強い口調でそう呟くと、そのまま立ち去って行ったー。
「--------」
萌美(尚樹)は、立ち去っていく尚樹(萌美)の
後ろ姿を見つめながらー
”いったい、あの夢は…?”と、首を傾げたー
・・・・・・・・・・・・・・・・
帰宅後ー
萌美(尚樹)は、気になってあることを調べ始めたー
”羽村 美穂”とスマホで検索してみるー。
”美穂”の名前を出した時、尚樹(萌美)の反応が
明らかにおかしかったー
あの反応は、萌美が”美穂”という子を知っていることを意味するー。
そしてー
今朝見た、夢の中で美穂という子は、”お姉ちゃん”と、
尚樹のことを呼んでいたー
瓦礫のようなものに押しつぶされた状態で、
美穂という子は徐々に弱っていき、死んだー
夢とは言え、あまりにもショッキングで、残酷だったー。
スマホで、羽村 美穂という名前を検索して、
徹底的に情報を調べているとー
だいぶ前のニュースの記事が、そこに表示されたー
地震が発生しー
姉妹が瓦礫の下敷きになったニュース。
瓦礫の下から救助された姉妹のうちー
姉は助かり、妹は死んだ、というニュース-
救助された方の名前は、存命だからか、
そのニュースには書かれていなかったがー
助からなかった”妹”の名前は、そこに記されていたー
”羽村 美穂”とー。
「-----」
萌美(尚樹)は、萌美の身体が悲鳴を上げているような気がして
スマホから目を逸らしたー。
「---あの夢…」
萌美(尚樹)は思うー。
あの夢は、萌美が過去に体験した過酷なトラウマー
それが、尚樹が萌美の身体になったことで、その夢を見たのかもしれないー
夢の中で、妹・美穂は死んだー
徐々に弱っていきー死んだー
そして、夢の中で”お姉ちゃん”は救助された時、狂ったように笑っていたー
地震で妹を失ったー
しかも、身動きが取れず、目の前で弱っていく妹を、
目を逸らすこともできず、見せつけられたー
羽村 萌美が、サイコパスになってしまったのはー
過酷な、トラウマからー?
そう思いながら萌美(尚樹)は、部屋の中を調べ始めるー。
”元に戻るための、説得材料があるかもしれない”
と、思いながらー。
”断食”
そう書かれたハムスターにエサをあげる萌美(尚樹)-
♪~~~
インターホンが鳴るー。
玄関から顔を出すとー
警官が2人いたー。
「----!!!!」
萌美(尚樹)は青ざめるー。
萌美は入れ替わる前に、
同級生の詩織を殺しているー。
逮捕されるのは、時間の問題かもしれないー
”早く、元に戻らないとー”
幸いー
警官は、世間では”行方不明”の詩織を
探すため、同級生に話を聞いて回っているだけだったがー
そう長くはもたない気がするー。
「---…」
萌美(尚樹)は、困惑しながら、尚樹(萌美)に連絡を入れようとしたー。
・・・・・・・・・・・・・・
「-ーーー」
買ってきた大きな魚を入れた水槽に、
金魚を入れて笑みを浮かべる尚樹(萌美)-
「--ふふふふふふ♡」
おしゃれをした尚樹(萌美)が嬉しそうに笑うー
水槽に入れられた金魚は、
大きな魚を見て、あわてて逃げようとするー。
しかしー
逃げられるはずもなくー
「--がんばれ!がんばれ!がんばれ!」
ゾクゾクしながら尚樹(萌美)が言うー。
言葉とは裏腹に、全く金魚を助ける様子も見せない尚樹(萌美)-
やがて、金魚は、大きな肉食魚に食べられてもがきだすー
頭の部分だけ、飛び出していて、
パクパクと口を動かして助けを求める金魚。
「---あぁぁぁぁ~~がんばれ!がんばれ!がんばれ!」
尚樹(萌美)はそう呟いたあとにー
最後に「ばいばい♡」と、丸飲みされる直前の金魚に手を振ったー
♪~~~
「---」
電話が鳴り、スマホを手にする尚樹(萌美)-
萌美(尚樹)からの電話だー。
萌美(尚樹)は、萌美の妹・美穂の夢を見たことを告げたー。
そして、その上で、過去の地震での悲劇を知ったことも告げるー。
萌美は小さいころは別の地方にいたため、尚樹自身は、
その地震を経験していなかったー。
全て理解したことを告げた上で、
”妹さんも喜ばない”と、必死の説得を続ける萌美(尚樹)-
するとー。
「---…わかったわよ」と、
尚樹(萌美)は、尚樹の声でそう呟いたー。
「--わかった…身体、返すからー。」
尚樹(萌美)がそう言うと、
萌美(尚樹)は
”ほんとか!?よかった”と安心した様子で呟いたー
”俺も一緒に、サポートするから…
まず、罪を償ってー…
妹…美穂ちゃんも、お姉ちゃんがこんなことしてるなんて、
絶対悲しむからー”
その言葉に、尚樹(萌美)は涙声で「うん…」と呟くー
”明日ー、入れ替わり薬、持っていくから、入れ替わろうー”
明日ー
大学の授業が終わったら、会って再度入れ替わる-。
そのあと、尚樹が付き添いで、萌美は自首をする約束をするー。
円満解決ー。
電話を切った萌美(尚樹)は
「よかった…」と、安堵の表情を浮かべたー
萌美の過去を知った尚樹は、
萌美に同情していたー。
元に戻ったら、羽村さんを支えたいー、と
そう思っていたー。
「----」
購入しておいたもう1本の入れ替わり薬を手に、
萌美(尚樹)は、安心した表情で、安堵のため息をついたー
しかしーーーー
「------」
電話を切った尚樹(萌美)の方は、ひとり、クスクスと笑っていたー
「----------」
今から、ゾクゾクが止まらないー
「--------------」
今からー
明日のことを考えるだけでー
ゾクゾクがー
止
ま
ら
な
い
萌美の精神はー
尚樹が思う以上に”崩壊”していることを、
尚樹は理解できていなかったー
④へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
次回が最終回の予定デス~!
果たして、無事に元に戻れるのでしょうか~?
今日もお読み下さり、ありがとうございました~!