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”人間”は、

人間自身が自己分析しているほど、

優秀な生き物ではないー。


人は、”力”を手にすると、いとも簡単に力に飲み込まれてしまうー。


”力”-

人間は、”力”を手に入れると、

いつの間にか自分が支配していたはずの”力”に支配されてしまうー。

人間が、”力”を支配していたはずがー

”力”が、その人間を支配してしまうー。


権力もそうー

名誉もそうー

富もそうー。


そしてー

”過ぎたる力”も、そうー。


人は、”過ぎたる力”を、正しく使うことが出来るほどー、

優秀な生き物ではないー。


「---」

男は、目を細めるー。


人間は、愚かだー。

これはー

その”証明”-


何かのモニターを見つめながら、男は静かに微笑んだー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


”人を操る力”

それを手に入れた久義も、例外ではなかったー。


最初はー

”「大丈夫さ。悪用したりは絶対にしないし、

 この力を使うとすれば、佳菜恵を守るためだけ、

 喜ばせるためだけにするからさ!」”


などと口にしていた久義ー。


しかしー

久義は、彼女である佳菜恵にしつこく言い寄っていた男を

”洗脳”して、自殺させたー。


その時からだっただろうかー。


久義の中で”自分が命令さえすれば何でもすることができる”という

考えが次第に強まっていきー、

当初の想いは、あっという間に消えてしまったー。


「--佳菜恵は、これから仕事を辞めて、俺にご奉仕するんだ」

久義が笑みを浮かべながら言うー。


家の中で、”エッチな服装を着る”ということが

当たり前であると洗脳されてしまった佳菜恵は、

メイド服を着て、不安そうに久義を見つめていたー


「え…で、、でも…?」

戸惑う佳菜恵ー。


「-ー佳菜恵はさ、未熟だからー

 俺が守ってあげないといけないんだ」

久義は、優しい笑みを浮かべながらもー

同時に、その顔に”狂気”も浮かべていたー。


笑う久義ー。

戸惑う佳菜恵ー。


「ーー全部、佳菜恵のためなんだ」

久義は、”真剣”だったー。

本気で、それが佳菜恵のためになると思っているー。


「---ひ、、久義…あ、、あのさ…」

佳菜恵は”自分がメイド服を着ていること”を何も疑問に思わないまま、

久義の方を見るー。


今の佳菜恵には、”自我”はちゃんとあるー。

しかし、久義に”洗脳”された部分に関しては、

もはや久義に完全に言いなりの状態で、

それを、疑問にすら感じていなかった。


「--わ、、わたしに最近、何かしてるよね…?」

不安そうな佳菜恵。


佳菜恵は、久義が”人を操る力”に目覚めたことを知っているー。

”操られた部分”に関しては、自覚はできないものの、

”何かがおかしい”と、そういう疑問は、抱いているー。


「---なにって?」

久義は首を傾げるー。


「わ、、わたしを、、わたしを操ってるよね…!?」

佳菜恵は不安そうにそう呟いたー

メイド服を着ていること自体は、何も疑問に思わずにー


「--言っただろ?佳菜恵を守るためだけに、力を使うって」

久義の言葉に、

佳菜恵は、困惑した表情を浮かべながら、久義の方を見るー。


「--そんな顔するなよー

 佳菜恵は何も不安に感じなくていい」

久義はそう呟きながら”何も不安を感じるな”と強く念じたー


佳菜恵が満面の笑みになっていくー

「うん…!ありがとう」

と、久義にお礼の言葉を口にするー


「いいかい?仕事を辞めるんだ。明日にでも退職してきて。

 未熟な佳菜恵は、俺が守るから」


その言葉にー

佳菜恵は静かに頷いたー。


そして、翌日ー

佳菜恵は、退職届を提出したー。


困惑する会社ー。

佳菜恵の面倒を見ていた先輩の女性社員も戸惑っているー。


理由を聞かれた佳菜恵は

「ーー彼氏に言われたので」と、満面の笑みで微笑んだー。


「--か、、佳菜恵ちゃん…最近、佳菜恵ちゃん、変だよ」

先輩の女性社員が言うー。


入社当初から、佳菜恵の面倒を見て、

まるでお姉ちゃんのように接してくれていた人物だー。


「--変…?

 わたしは、未熟なので…彼にいっぱいご奉仕しないといけないんです」

佳菜恵がそう言うと、

先輩は困惑の色を浮かべながら呟くー


「あの…その彼氏…佳菜恵ちゃんに、暴力振るったりしてない?」

先輩は、佳菜恵の言葉に”彼氏からのDV”を疑ったー。

まさか、佳菜恵が彼氏に洗脳されている、などとは夢にも思わずにー


「--久義のことを悪く言わないで!」

佳菜恵が突然鬼のような形相で怒鳴り声をあげたー。


「--久義は、、久義はわたしの全てなんです!

 久義のことを悪く言うのは、許さない!」

佳菜恵の普段の性格からは想像もできないような怒りぶりに、

先輩も上司も、困惑してしまうー


「--わたし、辞めるんで」

佳菜恵はそれだけ言うと、社員証や、会社から貸与されたものを

怒りの形相で放り投げたー。


「---」

戸惑う同僚たちー。


立ち去る佳菜恵ー。


しかしー

それでも、佳菜恵の面倒を見て来た先輩は、

佳菜恵を呼び止めたー


「佳菜恵ちゃん!」


その言葉に、立ち止まる佳菜恵ー。


「--……ちょっと、お話できるかなー。

 わたし、佳菜恵ちゃんを、助けたいの」


”お姉ちゃんのように慕っていた先輩”のとても悲しそうな表情に、

佳菜恵は、戸惑いの表情を浮かべながら頷いたー


・・・・・・・・・・・・・・・・


「---おはようございます」

久義は、会社での態度も”横暴”になりつつあったー。


「--あ、これやっておいてくれませんか?」

面倒な仕事をー


”やれ”

心の中で強く念じて、相手を操り、やらせるー


「--あ、、ぁあ、わかった。俺に任せろ」

上司のひとりが、笑いながら久義から”押し付けられた”

仕事を引き受けるー。


「--最近、彼氏とうまくいかないんだって?」

同期の女子社員に声を掛ける久義ー。


「ーーなら、そんな彼氏と別れちゃえばいいじゃん」


”別れろ”

心の中で念じる久義ー


「--う、、うん…!そうだね、別れることにするー」


同期の女性社員も”意のまま”に出来るー


そう思ったら、久義は止まらなくなってしまったー


控室にその子を連れ込んで、洗脳してー

キスを何度も何度もしたー

洗脳してー胸を触りまくったー。


最後に”もっとエロくなれ”と洗脳して、

久義はそのまま、控室から外に出たー。


”すごい…俺が命じれば何でもできるー

 すごいーー”


デスクに戻った久義を、静かに見つめる視線に、

久義は気づいていなかったー


・・・・・・・・・・・・・・・・


「--メイド服を着て、久義にご奉仕してー

 それからー」


佳菜恵は、先輩の女性と一緒に喫茶店に

やってきていたー。


佳菜恵の様子を不審に思った先輩は

佳菜恵から、家での出来事を聞いていたー


彼氏である久義のことを、悪くは言わずに、だー。


「--前からそういう、、その、コスプレとかしてたの?」

先輩の言葉に、佳菜恵は、表情を歪めるー


「さ、、最近…ですね…久義が喜ぶので…

 わたしが、ご奉仕しないといけないので…」

佳菜恵の目には、確実に”戸惑い”が浮かんでいるー


「--どうして、そういうこと始めようと思ったの?」

先輩は、冷静に佳菜恵にひとつひとつ質問していくー


「それはーー」

佳菜恵が明らかに動揺し始めたー。


「--退職しようと思ったのは、どうして?」

先輩の言葉に、佳菜恵は頭を抱え始めたー


「久義に…言われたから…」

佳菜恵が”混乱”しているー。


「---……でも、佳菜恵ちゃん、

 この仕事好きだったはずなのにー…」


「----……わからない…わたし…辞めたくない…」

佳菜恵が目に涙を浮かべながら首を振るー


「でも、、久義が言ってるからー

 わたし、、辞めるんです」

そう言いながらー


「----」

先輩は、佳菜恵の方を見て決意するー


”佳菜恵ちゃんー

 きっと彼氏に束縛されてるんだわ”

とー。


「ーー佳菜恵ちゃん!」

先輩が、佳菜恵の肩を掴んで、真剣な表情で佳菜恵を見つけたー


「--佳菜恵ちゃん、自分でも、今の自分の状況に

 疑問を感じてるんでしょ?


 今のままじゃダメー。」


先輩の言葉に、佳菜恵は「--でも、、でも、、ご主人様が…」と、

困惑した様子で呟くー


さっきから佳菜恵は、時々彼氏のことを”ご主人様”と呼ぶー。

明らかにおかしいー


先輩は、佳菜恵に対して

「-しばらく、わたしの家に泊めてあげるからー

 いったん、彼氏から距離を置いた方がーー」


「--久義のこと悪く言わないで!」

佳菜恵が突然怒り狂ったように先輩をビンタしたー


それでも、先輩は止まらなかったー


「---ーー佳菜恵ちゃんー

 自分で自分がおかしいと、思ってるんでしょー?

 今の自分を疑問に思ってるんでしょ?


 だったら、逃げてー」


先輩の言葉に、佳菜恵は震えながらもー

”自分でも感じている違和感”があるのは確かだったー


それにー


「---実は、久義がー」


佳菜恵は、久義が”人を操る力に目覚めた”と

少し前に言っていたことを、先輩に伝えたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


夜ー


「--佳菜恵…!?佳菜恵…!?どうして帰ってこないんだ!?」

久義は、家でパニックに陥っていたー


佳菜恵が、帰ってこないー。


”佳菜恵”

”佳菜恵、返事をしてくれ”


何度も何度もスマホから連絡する久義ー。

しかし、佳菜恵から返事はないー


”佳菜恵!俺へのご奉仕はどうした!?”

”何かあったのか?”

”会社のやつらに何かされたのか!?”

”佳菜恵は未熟だから、俺が守らないといけないのに”


何度も何度もスマホで連絡を入れる久義ー。


久義は”人を操る力”を手に入れたことにより、

完全に自分を見失ってしまっていたー。


その時だったー


久義のスマホに、佳菜恵からの電話が入ったー


しかしーー

電話の相手は佳菜恵ではなく、

佳菜恵の先輩女性だったー。


「--誰ですか?」

久義が言うー。


”佳菜恵ちゃんの、先輩ですー”


その言葉に、久義が表情を歪めるー


佳菜恵の先輩は、

”佳菜恵が、自分の家に今日から泊まること”を告げたー


「--な、なんで…!?いったい、何のつもりですか!?」

久義が叫ぶー。


電話越しでは、相手を洗脳できないー。


”------”

佳菜恵の先輩は、久義に対して、佳菜恵から聞いた

”恐ろしい事実”を口にしたー。


”あなたーー

 佳菜恵ちゃんを”洗脳”してませんか?”


とー。


「---!!!!!!!!!!」

久義は表情を歪めたー。


”人を操る力”-

まだ、それを手に入れたばかりの久義は、

”このことを誰にも言うなよ”だとか、

そういう命令を佳菜恵に対してしていなかったー


そこまで、頭が回らなかったー


「---そ、、そんなこと…

 か、、佳菜恵は、、自分の意思で…


 お、、俺は佳菜恵を守ろうとしてるだけです!」


久義が電話に向かって叫ぶと、


”--佳菜恵ちゃんは今、わたしの家で泣いてます!”

と、佳菜恵の先輩が叫び返してきたー。


”頭の中がごちゃごちゃになって、怖くて、悲しくて

 ずっと泣いてるんですよ!

 彼女を洗脳するなんて、あなたは、最低よ!”


相手の先輩が叫ぶー


「---……泣いてる…?佳菜恵が…?

 そんなはずない!!

 あなたが、いいや、お前が泣かせてるんだろうが!」

久義は大声で叫び返すと、

「--佳菜恵を必ず取り戻してやるー

 俺が念じれば、佳菜恵は笑うんだ!」

と、怒りの声で呟いたー


”操って笑わせても、それは佳菜恵ちゃんの笑顔じゃないの!

 あなたも彼氏なら、それに気づいて!”


佳菜恵の先輩の言葉に、

久義は「うるさい!必ず佳菜恵を取り戻すからな!」と大声で叫びー

スマホの電源を切ったー


すぐに立ち上がり、外出の準備をする久義ー。


”佳菜恵…待ってろー

 俺が、お前を幸せにするんだー”


”人を操る力”に憑りつかれた久義の暴走は、止まらないー


・・・・・・・・・・・・・・・


「---…佳菜恵ちゃん」

電話を終えた佳菜恵の先輩は、

佳菜恵を奥の部屋に移動させるー。


”念のため”

だー。


佳菜恵の彼氏が、この家の場所を

知っているとは思えないし、

万が一やってきても、玄関を開けなければいいー


佳菜恵の先輩は、そう思いながら、

佳菜恵の彼氏である久義の存在に、

わずかな恐怖を覚えてー

ゴクリと唾を飲み込んだー



③へ続く


・・・・・・・・・・・・・・


コメント


次回が最終回の予定デス~!

お読み下さりありがとうございました~!


それにしても今日はとっても暑いですネ~…!

皆様も熱中症には気を付けてくださいネ~!

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