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”パラサイト”を植え付けられてしまった女子高生・樹里ー。


ナイトメアの狙いは、樹里の父親が経営する会社が開発した

新技術・α技術の略奪ー。

力づくで奪い取ることはたやすいが、そうすれば世間が騒ぎ出すー


そうならないためにも、娘である樹里の力が必要なのだー。


樹里にパラサイトを植え付けて、”解放”した

スーツ姿の男は笑みを浮かべるー。


「君は必ず、α技術を我々に提供するー

 必ずー」


横にいるラバースーツ姿の女、玖瑠美が微笑むー。

彼女もまた、かつて”パラサイト”を植え付けられて

今は完全に乗っ取られてしまっている被害者ー。


「---君は、狂気に飲み込まれていくー」

スーツ姿の男が、樹里の写真を見つめながら、微笑んだー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


「---おはよう。よく眠れた?」

兄の声で目を覚ました樹里は、

自分に異変がないかどうかをとっさに確認するー


「--大丈夫?」

樹里から、パラサイトのことも含め、全て聞かされた兄は、

心配そうに樹里のほうを見つめるー。


樹里は「うん…大丈夫」と、鏡を見つめながら呟いたー。


特に自分の外見に異変はないしー

意識もはっきりしているー

頭痛はまだ少しあるものの、昨日よりは、だいぶマシになっていたー


「-------」

スマホを手にする樹里ー。

彼氏の宅磨からは、ブロックされたままー


「--宅磨…どうして」

戸惑いながらそう呟く樹里ー。


「--じゃあ、支度が出来たら病院に行こう」

兄の言葉に、樹里は頷くー。


”パラサイト”なんて訳の分からないものに乗っ取られるわけにはいかないー


樹里は支度を終えると、兄と共に病院に向かったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


今日は休日ー


宅磨は、樹里とのメッセージのやり取りを

見ながら困惑していたー。


”わたし、何かした?”


”わたし、ごめんなさい…!許して、ブロックしないで!

 返事をして!!”


”お兄ちゃん さっきはありがとう”


意味不明ー。

昨日の夜から、樹里が意味不明なメッセージを送ってきていることにー

宅磨は戸惑いを隠せずにいたー。


今朝も早速メッセージを送ったが、変身はないー。


「どうしたんだよ、樹里ー」


”異変”は樹里のツイッターにも現れていたー。


樹里のとあるツイートを見つめながらー

宅磨は心配そうに、表情を歪めたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


病院にやってきた樹里は、再び頭痛を感じていたー。


「ーー検査結果ですがー」

病院にやってきた樹里は、

脳外科の先生からMRI検査の結果を知らされるー


脳の中の様子を確認するために受けた検査だー。


だがー

そこにはー


「--特に異常はありません」

先生が優しくほほ笑むー。


「---え…でも…」

樹里が不安そうに言うと、先生も「お兄さんから話は聞いたのですが…」と、

脳の中に”パラサイト”なる存在は、いないと説明したー。


「人間に寄生する寄生虫… 

 そんなものが存在するとは思えませんが…

 ですが、仮に存在していたのだとしても、

 今、あなたの脳の中に異物は確認できません」


先生の言葉に、樹里が戸惑っていると、

「--樹里の中に寄生したパラサイトが、

 溶けるようにして…

 その…検査に写らないような状況になっているということは

 ありませんか?」

と、兄が口を挟んだー


先生は首を振るー。


「先ほど、同時に脳波の確認も行いましたが

 特に異常は見当たりませんでしたー。


 おそらくは植え付けられたというパラサイトとやらが

 嘘であったか、

 あるいはあなたの身体に適合することが出来ず、

 そのまま排出されたと考えるのが妥当でしょうー」


病院の先生の言葉に、

MRI検査の結果の画像を見つめながら、樹里は

一安心するー。


「-頭痛に関してはー」

頭痛は”片頭痛の一種でしょう”と、

頭痛薬を処方してくれた先生ー。


樹里は「ありがとうございました」と頭を下げて、

そのまま病院を後にしたー。


「--あ、樹里!」

兄と共に病院から出ると、樹里のクラスメイトのひとり・美津穂(みつほ)と

偶然遭遇したー。


「あ、美津穂!」

樹里が手を振るー。


兄が「友達?」と小声で言うと、

樹里は「うん!」とほほ笑むー。


美津穂が少しだけ表情を歪めながら

「え~!樹里もこんなところ利用するんだ~!?」と

脳神経外科を指さすー。


樹里は「ちょっとね」と苦笑いしたー。

まさか、美津穂に”パラサイトがどうこう”なんて

説明するわけにはいかないー


頭がおかしくなったと思われる可能性があるー。


「---……」

美津穂が、樹里の手を見つめるー。


「----?」

美津穂は一瞬、そう思いながらも、

「あ、もう行かなくちゃ!」と別の友達と待ち合わせしていることを

思い出して、そのまま立ち去って行ったー。


「---…はは、かわいい友達だな」

兄はそう呟きながら、「ま、とにかく樹里が平気そうで良かったー」

と、微笑んだー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


帰宅した樹里ー。


なんだか、寂し気な感じを感じるー。

こうなってしまったのは、いつからだっただろうかー。


そうだー


「--お母さんとお父さんが、離婚してからだよねー」

樹里は寂しそうに呟いたー。


父親も、最近は仕事でこの家を不在にしていることが多くー

あまり話すことも出来ていないー。


何か、相談したいことがあったのにー

なかなか会えずに、それも忘れてしまったー。


部屋に戻った樹里は、病院で貰った片頭痛の薬を

飲み終えると、そのまま胸を触り始めたー


樹里の、息抜きー

いつも、やっていることー。


「--気持ちいいなぁ…♡」

樹里がニヤニヤしながら胸を揉むー。


「--いつもより、気持ちいいかも」

そんな風に呟く樹里の耳からは

パラサイトが飛び出していたー


がー

樹里はそれに全く気が付かなかったー。


・・・・・・・・・・・・・・


翌朝ー。


樹里が目を覚ますと、

兄が樹里の様子を見に来たー。


「---調子はどう?」

兄の言葉に、樹里は「うん、だいぶ良くなったー」と、微笑むー。


「そっか、良かったー」

兄が安心した様子で部屋から出て行こうとすると、

樹里は笑顔で呟いたー


「でも、わたしが片頭痛に苦しむことになるなんて

 思わなかったなぁ」

とー。


「---」

兄が振り返って樹里の方を見るー


「-片頭痛?」

兄が表情を歪めたー


「--うん。昨日、病院に行ったじゃんー」

樹里が言うと、

兄は表情をさらに歪めたー


”パラサイト”

樹里は、そのことを忘れてしまっていたー。


「---ーー…もう少し、安静にしていたほうがいい」

兄はそれだけ言うと、そのまま部屋の外に出て行ったー。


樹里は、窓の外を見つめるー。


「そうだー」

樹里は、スマホを手にすると、

幼馴染の廉太郎(れんたろう)に向かってLINEの

メッセージを作り始めたー


・・・・・・・・・・・・・・・・


月曜日ー


樹里は、制服を身に着けてー

”学校”へと向かったー。


「--ほんとに大丈夫なのか?」

戸惑う兄に、樹里は「もう大丈夫!頭痛もカンペキ!」とほほ笑むと、

そのまま、玄関から飛び出したー


・・・・・・・・・・・・・


彼氏の宅磨はさらに戸惑っていたー


樹里からの奇妙なLINEが止まらないー


”薬が効いて頭痛もなくなった!よかった~”

と、いう内容のLINEと共に送られてきた写真ー


だが、樹里が持っているのは、薬などではなく、

得体の知れない、不気味な形状のドロドロした団子の

ような物体だったー


”おい!樹里!?なんだそれは!?”

宅磨は、昨日のうちにそうLINEを送ったー


だが、次の樹里からの返事は

”廉太郎くんがいつもそばにいてくれるー”

という意味不明な内容だったー。


「-廉太郎って誰だ?」

宅磨は首を傾げるー

そんな名前のクラスメイトはいないー。

樹里の学校外の友達だろうかー?

だが、そんな名前も聞いたことがないー


浮気でもされているのではないか、と

少しだけ心配になるー。


宅磨は、”今日学校で聞かないと”

とー、樹里に何があったのか、不安に思いながら

学校に向かったー


学校に到着する宅磨ー

だがー

学校には、樹里の姿はなかったー


「------」

戸惑う宅磨ー

結局、樹里は学校にやってこなかったー。


そうこうしているうちに、授業が始まるー。


「---ねぇ…」

昼休みのタイミングでー

樹里の友人である美津穂が、宅磨に声をかけるー。


「ん?」

宅磨が美津穂の方を向くと、

美津穂が小声で宅磨に伝えたー。


「一昨日、樹里が、風俗店から出て来たの…」

とー。


「--!?」

宅磨は困惑した表情を浮かべたー


「--え?」

宅磨が、やっとの思いで言葉を吐き出すと、

美津穂はさらに言葉を続けたー


「それとーーー」


宅磨は、美津穂からの言葉を聞いて、さらに表情を歪めたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ただいま~~~!」

樹里は学校から”帰宅”したー


「---どうだった?」

兄が樹里に向かって微笑むー。


「ーー今日は、保健体育の授業ばっかりだった~!

 なんか変だけど、でも、身体も褒めて貰えたし、

 お薬も貰えた!」


「体育?ふ~ん」

兄がそう呟くも、笑みを浮かべるー。


「---!」

その”会話”を、部屋から出て来た”母親”が、表情を歪めながら見つめるー。


樹里はそんなことにも気づかず、自分の部屋に戻るー。


樹里の耳からパラサイトが飛び出し、

樹里が、涎をこぼしながら、

ぶつぶつと何かを呟くー


樹里がふらふらと歩きながら、

脳外科で貰った”薬”を口にするー


ドロドロとした泥団子のようなものを口元に運ぶと、

パラサイトが口から顔を出して、それを食べるー


”片頭痛の薬”と称して与えられたのは

パラサイトが樹里の中で成長するための

促進剤だったー


パラサイトはー

着々と樹里を乗っ取っているー。


樹里の脳に定着し、樹里を完全に支配するため、

着々と、侵略を続けているー


・・・・・・・・・・・・・・


「---ねぇ」

樹里の”母親”が樹里の父親に声をかけるー。


「樹里が最近”独り言”しゃべってるんだけど」

母親の言葉に、樹里の父は「樹里が独り言を?」と首を傾げたー


「そういえばここ数日、

 変だよなー」

父親も首を傾げるー。


”樹里に話しかけても、反応があいまいなのだー

 まるで、樹里が半分夢を見ているかのよう”なー、

そんな感じの反応しか返ってこないー


「---学校で、何かあったのか?」

父は心配そうに、そう呟いたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


宅磨は、学校が終わると、樹里の家に向かっていたー


昨日、美津穂から聞かされた言葉ー


”風俗店から出て来た樹里がね、

 誰もいない隣に向かって「うん!」って言ってて、

 まるで手をつないでるような仕草をしてたのー


 ”見えない誰か”が見えているみたいにー”


美津穂の言葉からー

樹里に何かあったと確信した宅磨は、

「--樹里…お前に何があったんだ!」と呟きながら

樹里の家へと走ったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「-----えへ♡」

樹里が口から涎を垂らすー


パラサイトが、脳の中に入り込んだことにより、

”異物混入”状態にある脳は、

記憶障害と幻覚、妄想ー

数々の障害を起こしていたー


彼氏・宅磨にブロックされたのは、暴走した脳の”妄想”

幼馴染の”廉太郎”も、脳の暴走による妄想ー

廉太郎など、存在しないー

母の離婚は、記憶障害ー


さらにはー

パラサイトが、樹里の脳に”偽りの信号や命令”を送りー

母と父の存在が、目に入らないようになっていてー

”ナイトメア”の研究施設を脳外科だと思い込んでいるー。

同じく、ナイトメアの養成施設を学校だと思い込まされていてー

樹里は完全に、”悪夢”の中にいたー。


パラサイトが人間を完全に乗っ取るためには

脳の抵抗力を弱め、その隙に支配する必要があるー。


強引に脳を支配しようとすればー

身体が拒絶反応を起こし、死に至る危険があるー


だから、少しずつ、支配していくのだー。


「---お兄ちゃんー」

樹里が”何もない空間”に向かって呟くー


「---樹里は何も心配しなくていいーー

 ”なにもー”」


”兄”はそう呟いたー


樹里に、”兄”などいないー


”兄”は、

パラサイトが作り出した”幻”


パラサイトが脳に刺激を与えて

生み出している”偽りの存在”-


パラサイト、そのものー。


「ーーお兄ちゃん、大好きー」

何もいない空間に向かってそう呟くと、

樹里は、部屋の鏡に向かって抱き着いて、

そのまま「お兄ちゃん」と呟き始めたー



③へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


寄生された人間が”狂っていく様”を描いている作品なので、

事後よりも、狂っていく様を中心に描いています~!

(ゾクゾク要素は乗っ取られたあとに!)


狂気が次第に深まっていますネ~!


今日もありがとうございました~!

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