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「---杉原、お前、男子トイレを使っているようだな」

先生に呼び出された七雄は先生から、そう言葉を

投げかけられていたー


「あ、え、はい。身体はこうでも、俺は男なので…」

七雄は”例えば女装しても、入るのは男子トイレだと思いますし”と、

付け加えたー。


「まぁ、確かにそうなんだがー…

 どうして、お前がトイレに入って来ると、目のやり場に困るって

 生徒が結構いてな…」

担任の先生の言葉に、七雄は「ちょ、ちょっと待ってください」と叫ぶー。


「-俺、男ですよ?確かに身体は女子になってるけど、

 俺のことなんて気にしなくてもいいですから…!

 気を遣わずに、男として接してくれれば、それでー」

可愛い声で叫ぶ七雄ー。


そんな七雄の前で担任の先生は困り果てた様子で頭を掻き始めたー。


「--お前は、そうでもなぁ…

 周りは、そうはいかないんだよ…

 お前が思っている以上に、みんな戸惑ってるー。


 正直ー

 俺もそうだー」


担任の先生は言うー。


「-どう見たって、今のお前は女子だしー

 こう、声もどう考えても女子高生だしー

 身体つきだって、そうだー


 完全に、女の子の身体…」


胸のあたりを指さす担任の先生ー


七雄が言い返せないで戸惑っていると

担任の先生が「調子、狂うなぁ」と続けるー。


「-ーセクハラとか…そういう問題もあるしー

 俺も正直どう接していいか、ちょっと戸惑ってるー。


 もちろん、お前が男だってことは分かってるし

 だからこそ、校長も、男子校であるうちに、

 そのまま置いてくれてるんだー

  

 でもーーー

 すまないなー

 俺も含めて、みんな気持ちの整理が追い付かないんだー。


 …校長にも話してあるー

 今日からお前は、女子トイレを使うんだー」


そう言われた七雄は、表情を暗くしながら

頭を下げてそのまま職員室から外に出たー


「---…俺は、男だっての…」

七雄は不貞腐れた様子でそう呟くー


七雄が女体化したとき、

最初に七雄が心配したのは

”朝、起きたら女になっていた”という

このとんでもない状況を、みんながちゃんと信じてくれるのかどうかー、

ということだったー。


しかし、実際には、周囲は七雄が女体化したことを

信じてくれたし、そこは心配する部分ではなかったー。


今、七雄が直面しているのは、別の問題ー。

七雄がどんなに男として振舞ってもー

七雄がどんなにいつも通り振舞ってもー

身体が女である以上、周囲は七雄に気を遣ってしまうー。


「----はぁ…」

ため息をつきながら教室に戻ると、七雄は不愉快そうに

自分の座席に座ったー。


「--ーーー」

”壁”を感じるー。

友達との間に”見えない壁”を感じるー


そう思いながら、七雄は疲れた様子で、午後の授業を受けたー。


帰宅すると、母・丸江が心配そうに声をかけて来たー


丸江にも、七雄が元気ない様子なのが、すぐに分かったからだー


「-俺さ…元に戻れるのかな?」

七雄が言うと、母・丸江は表情を暗くしたー。


正直、分からないー

”朝、起きたらいきなり女になっていた”

それ以外、何も分からないのだー。

七雄が女体化した原因も分かっていないー

前日の行動を、夫である功と共に、振り返ってみたものの

特に怪しい食べ物を食べたり、怪しい薬を飲んだり…

と、いうこともなかったー。


原因が全く分からないー


もちろん、急に女になったということは

急に元に戻る可能性もある、

けれどー


「--戻れなかったら…俺…どうしよう…?

 女の子として、生きて行かないと、ダメなのかな?」

七雄が自虐的に呟くと、母の丸江は首を振りながら答えたー


「--大丈夫。必ず、必ず元に戻れるからー…」

とー。


・・・・・・・・・・・・・


部屋に戻った七雄は、自分の胸を触りながら

悔しそうに叫んだー


「なんで膨らんでるんだよ…

 くそっ!」


意味がないことは分かっているのにー

胸を壁に押し付けて、ふくらみを無くそうとする七雄ー


「--くそっ…くそっ…!」


そう呟いて、今度は自分の声にいら立つー


「くそっ!!可愛らしい声なんか出してるんじゃねぇよ!」

そう叫んでもー

何も、意味なんてないのにー


「---……くそっ…!!俺は、、男だ…」

力なくそう呟くと、七雄はその場に座り込んだー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


髪をバッサリと切ってショートヘアーにした七雄が

教室に入ると、

クラスメイトたちが髪型の変化に気づくー


「-やっぱ、この方が男っぽいだろ?」

七雄が笑うー。


髪を切っても、肌の感じや胸ー

色々な部分が”女子”であることに変わりはないー

顔立ちも七雄を女の子バージョンにしたような感じで、

同じような顔であり、やはり、違うー


髪を短くしただけでは、”男”に戻ることは出来ないー

それでも、七雄は少しでも周囲に違和感を与えないように、

と、そう考えていたー


だがー


「--あ~!なんだよ!長い髪のほうが可愛かったのに~」

「俺はショートのほうが好みだな~」

「--ってかやっぱ可愛いなぁ」


クラスメイトたちは

”男子校唯一の女子高生”としてしか、七雄を見ていなかったー


「--おいおいおいおいおい!俺は男だって!」

七雄が叫ぶと、

「そんな可愛い声でかぁ~?」と、クラスメイトのひとりが笑ったー


「--俺は男だ!」

七雄がそう叫ぶと、

クラスメイトが「あ、そうだ!また胸を触らせてくれよ!」と

ニヤニヤしながら言うー


「--ダメだダメだダメだ!」

七雄は首を振ったー。


最初は”触ってみるか?”などと言っていた七雄ー。

しかし、最近は”女子扱い”されることに嫌気がさして

胸も触らせようとしなかったー。


「--男の胸なんて、触らないだろ~?絶対ダメだ」

七雄がそう言い放つと

「-けちけちするなよ~!」と笑いながらクラスメイトが

七雄の胸を触ったー


「ひゃっ♡」

変な声が出てしまう七雄ー


自分の声にもー

触られたことにもカチンと来た七雄はー


「-触るんじゃねぇよ!」

と、大声で怒鳴ったー


静まり返る教室ー。

七雄は「--いいから、やめてくれよ、そういうの」と、

悲しそうに呟きながら、そのまま教室から

立ち去って行ったー。


女子トイレに入り、みじめな気持ちになる七雄ー


七雄には、女の子になりたい、という願望は、ないー

とにかく、早く元に戻りたいー。


けれどー

戻ることが出来ないー


「どうすればいいんだ…」

七雄は女子トイレでようやく気持ちを落ち着けると、

自分の教室へと戻っていくー


「--さっきのマジでご褒美だったー」

「--女の子から怒鳴られるとか…くぅ~~」

「お前、変態だなぁ」


教室の入口でクラスメイトの会話を聞いた七雄は、

あくまでも自分が女として見られていることにいら立って

不機嫌そうに教室の中へと入って行ったー。


・・・・・・・・・・・・・


「ちょっと、いいか?」


放課後ー


親友の照也から声を掛けられた七雄は、

照也と共に空き教室に入ったー。


「--どうしたんだよ?照也」

七雄が言うと、

照也が少しだけ心配そうに、

「--大丈夫か?」と、七雄に対して言い放ったー


七雄の最近の振る舞いを、照也も心配しているのだー


「--まぁ、、その、、さ…

 なんていうか…今まで通り普通に接してほしいのに、

 みんな、、なんか、こう、壁を感じるんだ」

七雄が可愛らしい声で言うと、

照也は「そうだよな…」と呟くー。


髪を切っても、やっぱり、”女子”の身体つきであり、

今、七雄は正真正銘、身体は女子そのものだったー


男子校で唯一の女子となってしまった七雄に

”今まで通り接する”というのは

なかなか難しいかもしれないー。


「---……」

照也は、少しだけ考えてから、口を開くー


「--あのさ、七雄 頼みがあるんだ」

照也はそう言うと、鞄から何かを取り出したー


「--え」

七雄は唖然とするー。

照也は取り出したのはー

”ナース服”だったからだー。


「--こ、、これ…今のお前にスゴイ、似合うと思うんだー


 あ、いや、お前が女の子扱いされるのはイヤだってことは

 分かってるー


 でも、その…

 1回だけ…」


照也が顔を赤くしながら七雄の方を見つめるー


七雄にナース服を着てほしいー

照也は、そう言っているのだー


「は……は、、はぁ?ふ、、ふざけんなよ!」

七雄は思わず叫んだー


親友の照也だけは、自分のことをちゃんと男として

見てくれていると思っていたのにー

それなのにー


「--だめなんだ、、どうしても、意識しちゃうんだー

 分かるだろ…???

 頼む、1回でいいから、着てくれよ」

照也の言葉に、七雄は心底失望した、という表情で

大きくため息をついたー


「--俺は男だー」

それだけ呟いて空き教室から出て行こうとする七雄ー。


しかしー


「-もう!!我慢できないんだよ!」

照也が突然七雄の腕を掴んで、壁に叩きつけたー。


「--ひっ!?」

七雄が思わず変な声を出してしまうー


「--わかるだろ?七雄ー

 今のお前、姿も声も、めっちゃ可愛いんだよ」

照也がニヤニヤしながら言うー


「--男子ばっかのこの高校で、お前は唯一の女子なんだよー

 わかるだろ…?

 頼むよー」


はぁはぁ言いながら照也が七雄にキスをするー


「やめ、、馬鹿!!やめろ!」

七雄が必死に叫ぶー


しかしー


「--!!!!!!!!!!!!!!」


七雄は表情を歪めるー。


”照也の力に抵抗できない”


「---え ちょっ!?」

女体化したことで、男子と”力”の差が出てしまっていたー


性欲に狂った照也に押し倒されて

七雄はそのまま好き放題されてしまうー


まるで、本当の女子のように悲鳴を上げた七雄ー。

七雄は、女子としてイカされてしまいーー


放心状態になっていたー


「あ……あ」

目から涙があふれて止まらないー


そんな七雄を見て、

照也は「ごめんな、本当にごめんな」と、謝罪の言葉を口にするー


「でも、、でも、、お前…ダメだよ!そんな…

 そんな可愛い振りまくの…ダメだよ!」

と、照也はそれだけ言うと、そのまま空き教室の

外に立ち去って行ったー


一人残された七雄はー

涙を流すことしかできなかったー。


そしてー

男子が怖い、という感情が芽生え始めていたー。


・・・・・・・・・・・・・・・


”恐怖”を感じたからだろうかー。

”親友の裏切り”に絶望したからだろうかー。


その日を境にー

七雄は急激に大人しくなりー

女子のような振る舞いが増えたー


「--ーーー」

クラスでも怯えた様子を見せるようになったー


”男子に囲まれている状態が怖い”とでも

言いたそうな、そんな振る舞いだったー


だがー

それでも、親友の照也は、七雄に対して、”女の子扱い”の

接し方を続けたー


「-俺、彼女一度もいたことないんだ…でも、お前なら…

 頼むよ!」

照也は、七雄に告白したー。

彼女として付き合ってほしいー、と。


「---……ごめん。無理」

七雄はそれだけ言うと、立ち去ろうとしたー。


照也が再び七雄に無理やりキスをしようとするー


「男同士なんだから、いいじゃねぇか!」と叫ぶ照也ー


七雄はパニックになって、悲鳴を上げながら逃げ出したー。


そしてーー

偶然通りかかった担任の先生がーー

七雄を助けてくれたー


結果ー

照也は、停学処分を受けたー。


「-----」

自分のせいで、親友の照也が停学になってしまったー。


そんな風に思いながら、七雄は、家の中でもふさぎ込むように

なってしまったー。


④へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


次回が最終回デス~!


女体化したことで、崩れていく日常の先に待つ

結末を、ぜひお楽しみ下さいネ~!


今日もありがとうございました~!





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