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「お疲れ様でした~!」


現役女子大生アイドルが頭を下げて、

収録現場を後にするー。


最近、人気のアイドルで、

ドラマからバラエティ番組まで、活動の幅を広げているアイドルだー。


「---」

そんな背後に”忍び寄る影”に彼女は気づいていなかったー。


「-----?」

ようやく、背後から忍び寄る”影”に彼女が気づいたときには

手遅れだったー。


一見すると穏やかそうな、スーツ姿の男が

優しくほほ笑んだー


「-君の身体、使わせてもらうよー」

男が、優しい口調のまま、そう言うと、

彼女は、その言葉の意味を理解する間もなく、

注射器を打ち込まれてー


”皮”にされたー。


・・・・・・・・・・・・・・


登場人物


長瀬 治夫(ながせ はるお)

若き警察官。”皮”にまつわる事件に巻き込まれていく


松永 亜香里(まつなが あかり)

治夫の彼女。現在同居中。


長瀬 聡美(ながせ さとみ)

治夫の妹。亜香里に激しいライバル心を燃やしている。


片桐 由愛(かたぎり ゆめ)

かつて治夫に助けられた女子高生。


目黒 圭吾(めぐろ けいご)

警視正。計算高い性格の持ち主で、出世欲も強い。


矢神 明信 / 堂林 幸成 / 三枝 真綾 / 剛

目黒警視正率いる「モルティング対策班」のメンバー。


黒崎 陣矢(くろさき じんや)

指名手配中の凶悪犯罪者


・・・・・・・・・・・・・・


あれから数日ー


「-----」

治夫は、モルティング対策本部に顔も出さず、

落ち込んでいたー


対策本部のひとりで、好青年風の

堂林幸成が何度か電話をかけてきてくれたもののー

それでも、治夫は気力を失ったままだったー


「-ーー由愛ちゃん…」


守れなかったー。

何の罪もない、女子高生の由愛を守ることができなかったー。


凶悪犯・黒崎陣矢に皮にされて、

散々悪事に利用された挙句ー。

最後には、対策本部の矢神明信によって、射殺されてしまったー


「---お巡りさんを…殺さずに済んで…よかったです…」


由愛の最後の言葉が、何度も何度も、頭の中で再生されるー。


黒崎陣矢が、由愛の身体から抜けている状態にー

治夫は”油断”していたー


まさか、人を皮にする凶悪犯、通称”モルティング”が

黒崎陣矢以外にもいるとは思わなかったー


由愛は別のモルティングである、班目順太郎という男に

着られて乗っ取られている状態だったのだー


黒崎から、班目にー。


まるで洋服のように、使いまわしされー、

そして最後には、死んだー


「由愛ちゃん…」

元気のない治夫ー


「----」

同居している彼女の亜香里も、なんとか治夫を励まそうと

していたものの、治夫の悲しみは、晴れないままだったー。


♪~~~~


「---わたしが出るね」

亜香里がそう言いながら、インターホンの方に向かうー


だがーー


「----あれ?誰もいない?」

亜香里が不思議そうに首を傾げるー。


そして、治夫の方に戻って来るー。


するとー


♪~~~


もう一度、インターホンが鳴ったー


「--も~~何~?」

亜香里が戸惑った様子でそう呟いて、

今度は玄関の方に向かうー


「-----!」

治夫はハッとしたー。


「--亜香里!」

思わず叫ぶ治夫ー。


イヤな予感がするー


黒崎陣矢かー?

それとも、他のやつらか?


驚く亜香里に「下がってて」と言い放ち、

部屋の奥へと亜香里が下がるのを確認してから、治夫は玄関の前に立つー。


玄関の扉の穴から外を覗くー

しかし、やはり誰もいないー


「--な、、何なの…?」

亜香里が不安そうにしているー。

治夫は、亜香里の方を振り返って頷くー。


「-大丈夫ー。亜香里のことは、必ず守るからー」

治夫は、力強く、そう呟いたー


亜香里は少し戸惑った様子を見せてから、

頷き返すー。


「--うん。治夫のこと、信じてるー」

とー。


治夫が、危険な事件に関わっているのは

亜香里もこの前、聞かされているー

その覚悟も出来ているー。


治夫は深呼吸してーー

玄関の扉を開けたー。


アパートの廊下の

左右を見渡すー。

だが、誰の姿もないー。


「---誰だ」

治夫が、鋭い声で”姿の見えない相手”に向かって呼びかけるー


返事はないー

治夫が、警戒しながら、反対側を振り返ったその時だったー


「ばああああああああああ!!!!!!!」


「--!!!!!!!!!!!」

治夫は、思わず声を失ってドキッとしてしまうー


心臓が止まりそうなほど驚いた治夫はーー

すぐに叫んだーーー


「--聡美~~お前か!!!」

とー。


物影から姿を現したのは、治夫の妹・聡美だったー


「やっほ~!びっくりした?ふふ♡」

聡美は笑いながらそう言うと、

「お邪魔しま~す」と家の中に入っていくー


「--お前なぁ~…子供みたいなことするなよ」

治夫は、呆れ顔でそう言いながらも

どこか、安心していたー


”黒崎陣矢”たちではなかったー。

その、安心感で、急に力が抜けていくのを感じたー。


「--でも、聡美、到着明日の予定じゃなかったっけ?」

治夫が言うと、聡美は

「お兄ちゃんを驚かすために、1日早く来ちゃった♡」と

悪戯っぽく笑ったー。


悪戯好きの聡美は、小さいころからずっとこんな感じだー

女子大生になった今でも、それは変わらないー。


「亜香里さん!お久しぶりです!」

聡美が部屋の中にいた、治夫の彼女・亜香里に挨拶をするー


「あ、聡美ちゃん…こんにちは!」

亜香里が安心した様子で笑うと、聡美は亜香里に近づいて

目をバチバチさせながら言うー。


「-お兄ちゃんの一番は、わたしだってこと、

 今日こそ、証明してあげますからねっ♪」

聡美が一方的なライバル心を、亜香里にぶつけると、

亜香里は「ふふ、聡美ちゃんは相変わらずね」と、

苦笑いしたー。


「どのぐらい、こっちにいられるんだ?」

治夫が聞くと、聡美は、「う~ん、1、2週間だね!」と、

笑みを浮かべたー。


聡美が来たことでー、

失意のどん底にいた治夫は、少しだけ明るい気持ちになれたー。


それと同時にー

亜香里も、聡美も、絶対に守って見せるー、

と治夫は決意を新たにするのだったー


・・・・・・・・・・・・・・・・


「---彼は、どうですか?」


モルティング対策本部では、目黒警視正が

好青年風の幸成に、治夫の様子を尋ねていたー。


「ーーーーーダメですね」

幸成が首を振るー。


「-ーもう何日も経ってますよ

 このまま戻ってこないんじゃ?」

アウトロー風の明信が、ガムを噛みながら

うんざりした様子で言うー。


「--それなら、彼は所詮そこまでの男だったということです」

目黒警視正は表情を変えず、淡々とそう答えたー。


「-こんなこと言いたくないんですがね…」

明信がボサボサの頭を掻きながら目黒警視正の方に近づいていくと、

目黒警視正を見つめながら呟いたー


「こんな少人数で、本当にモルティングどもを追い詰め

 その裏に潜む黒幕を暴くことなんて、出来るんですかね?」

明信の言葉に、目黒警視正は静かに微笑むー。


「そのために、我々はここにいます。違いますか?」

目黒警視正が淡々と答えると、

明信はなおも不安そうに続けたー


「それにー”剛”とはいったい何者なんですか?

 同じ仲間だって言うのに、俺たちは一度も”剛”に会えていないー」


その言葉に、好青年風の幸成と、ギャルの真綾も、

目黒警視正の方を見つめるー


モルティング対策班の”剛”はー

目黒警視正としか会わない謎の人物で、

治夫はおろか、治夫よりも前から対策班に所属している

明信、幸成、真綾も、一度も会ったことがないー。


「--”剛”は私としか会いません」

目黒警視正は即答したー。


「ーー”剛”は、あなたたちを常に見ていますー。」


その言葉に、明信たちは表情を歪めるー。


「---…安心してください。

 ”剛”は敵ではありませんよ」

目黒警視正のその言葉に、明信も、他の2人もそれ以上

”剛”については詮索しなかったー。


気まずい空気が流れるー。


「-あ~~わたし、こういう空気、マジ無理」

ギャルな真綾はそれだけ言うと、

「メグちゃん、ちょっと表に空気吸ってくるね~!」と、

警視正に対する言葉とは思えない口調で、そのまま

外へと向かって行ったー。


「-----…」

目黒警視正は、静かに笑みを浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・


「--お前のせいで、わたしは死んだー」

由愛が凶悪な笑みを浮かべながら、治夫の周囲を歩くー


「--真面目に頑張ってた、かわい~い、わたしが、

 お前のせいで死んだんだ」

由愛が、治夫の肩を叩くと、ククク、と笑うー。


「---違う…由愛ちゃんを殺したのは、お前だー」

治夫が怒りの形相で言い返すー。


「--言っただろ?

 俺は人殺しじゃなく、芸術家だってな!」

由愛の声で、そう口にする黒崎陣矢ー。


「--こうやってー」

由愛が自分の後頭部を掴み、自分を引き裂いていくー


「--他人の人生を一瞬にして、壊すのが

 たまらねぇんだよ…!


 桜が散るのを見て、美しいと思ったことはねぇか?

 それと同じさー!

 俺は、人間が散る様に芸術を感じるんだ!


 ひゃははははははっ!」


自分を引き裂きながら笑う由愛に向かって、

治夫は「やめろーーーーーーーーーーー!」と

叫びながらーーベッドから飛び起きたー


「----はぁ…はぁ…」

冷や汗をかく治夫ー。


あの日からー

由愛を助けられなかったあの日からー

毎晩、治夫は悪夢にうなされているー


「--大丈夫…?」

隣で寝ていた亜香里が心配そうに言うー。


「---ごめん…起こしちゃったか…」

治夫が言うと、亜香里はほほ笑んで首を振るー。


「--いいの。」

亜香里はそれだけ言うと、

何も聞かずに、治夫の頭を優しくなでるー。


「-ーーー」

亜香里は、何も聞かなかったー


治夫の側にいる彼女として、

治夫が今、”重要な事件”に立ち向かっていることは

よく分かっているからだー。


治夫はそんな亜香里の配慮に感謝しながら

「ありがとう…」と呟いたー。


「-------」

少し離れた場所で寝ていた妹の聡美は、

寝たふりをしながら

”お兄ちゃんにくっつくな”と呪文のように

何度も何度も繰り返したー


・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


「---」

治夫は、中学時代の恩師・泉谷先生と自分が

一緒に写っている写真を見つめるー


治夫が警察官を目指すきっかけを作った人物ー


”自分の信じた道を進め

 信じた道を進めなくなった時、未来への扉は閉ざされる”


泉谷先生の”教え”を思い出すー。


信じた道を進んだ結果が、これだー

片桐由愛は死んだー。

助けられなかったー


「ーーー先生」

治夫は、泉谷先生の写真に向かって語り掛けるー。


「--先生だったら、今の俺を見て、

 なんて言いますか…?」


悲しそうにそう呟く治夫ー


♪~~~


「--!」

亜香里と妹の聡美が、玄関の方を見つめるー


治夫はすぐに「俺が出る」と、インターホンで映像を確認するー


するとそこにはー

ギャルがいたー


”やっほ~!ハルくん!真綾だよ!

 なかなか顔出してくれないから、寂しくなってきちゃった!きゃはは!”


「ーーえっ!?」

治夫は驚くー


モルティング対策班のひとり、三枝真綾ー

どう見てもギャルな彼女が、治夫の家を訪ねて来たのだー


「--ーー」

治夫はハッとして、背後を振り返ると、

亜香里と、妹の聡美が首を傾げているー。


「---誰?」

亜香里が不安そうな言葉を口にするー


「あ!お兄ちゃんの浮気相手!?お兄ちゃんもやるなぁ~」

妹の聡美がニヤニヤしながら言うー


「ば、、ばかっ!ちがっ!」

治夫が慌ててそう叫ぶと、「ちょっと待ってください!」と、

慌てて玄関の扉を開けたー


玄関から入って来た、ギャルな真綾はいきなり治夫に抱き着いたー


「ハルくん~!寂しかったんだぞ!もぅ!」

その言葉に、治夫は、「ちょっと!誤解されますから!やめてください!」と

叫んだー。


「---え~?」

真綾がニヤニヤしながら治夫から離れると

亜香里と聡美に向かって

「わたし、真綾!よろしくね!」と、笑いながら自己紹介をしたー。


「--やばっ…ギャルじゃん…

 お兄ちゃん、ギャルが好きなの?」

妹の聡美の言葉に、治夫は「違う!違う!」と、戸惑いながら叫ぶー


「ーーーは、、治夫…、その人…」

亜香里は、信じられない、という様子で治夫を見つめるー


「--ちがっ!ちがう!」

治夫が何度も叫ぶと、真綾は

「わたし、ハルくんと付き合ってるの~♡」と、悪い冗談を口にしたー


「--ちがーーーーう!」

治夫は大声で叫んだー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


真綾がちゃんと説明してくれて、

亜香里と聡美の誤解は解けたー


真綾が警察手帳を見せて”マジで同僚なんで”と、亜香里と聡美に

説明したのだー。


”警察手帳を持ってるってことは、

 やっぱただのギャルじゃなくて、警察官なんだな”

と、治夫は思いながら、真綾に呼び出されて、近所の空き地に

やってきていたー。


「ハルくん、いつまで顔出さないの?

 わたし、マジで寂しいんだけど?」

立ち止まると、真綾はそう言いながら治夫の方を振り向いたー


「--だって…俺…由愛ちゃんを助けることができませんでしたし…

 俺……もう…」


「-ふ~ん」

真綾はそう言うと、言葉を続けた。


「ダサッ」

とー。


「--は?」

治夫が不快感をあらわにするー


「--最初、ハルくんと出会ったとき、

 かっこいいな~って思ったのに、

 マジでダサッ…」


ギャルな真綾にきつい言葉を言われて

治夫は反論するー


「-さ、、三枝さんに何が分かるんだ!」

悔しさを滲ませて叫ぶ治夫ー。


「---だってさ、諦めるんでしょ?

 マジでださくない?


 由愛ちゃんのことは残念だけど

 そうやっていつまでもクヨクヨクヨクヨ」


真綾がそこまで言うと、

治夫は「三枝さんみたいに適当にやってる人には分かんないよ!」と

反論したー。


「-----」

真綾が突然鋭い目つきで治夫を睨むー


「--あたしが適当?ざけんじゃねぇよ」

低い声で治夫を睨みつける真綾ー


「--ひっ!?」

治夫が真綾の豹変に驚いていると、真綾は少ししてから

ニコッと笑ったー


「--ま、いいよ。怖いもんね。


 ハルくんがまた、普通の交番勤務に戻れるように

 わたし、行っとくから


 これで元通り!

 よかったねハルくん!


 あんたみたいなダッサイ男にはお似合い!

 きゃははははは!


 じゃあね~!」


真綾はそれだけ言うと、立ち去ろうとするー


治夫は拳を握りしめたー


「--待てよ!」

とー。


「---」

真綾が背を向けたまま立ち止まるー。


「--そんなに言われて、黙ってられるかよー…

 それに、俺は諦めたんじゃない…!

 びびってるんじゃない!


 ただ…

 ただ、、、由愛ちゃんを守れなかった自分が

 腹立たしいだけだー」


治夫は目に涙を浮かべながら拳を握りしめたー。


「---」

振り返った真綾は少しだけ笑みを浮かべるー。


「--俺がダサいだって?

 俺が逃げてるだって??


 ふざけんな!

 

 必ずー

 必ず、黒崎たちを捕まえて見せるし、

 これ以上、犠牲者を出させはしないー!」


怒りに震える治夫を見て、

真綾はクスッと笑ったー


「--それでこそハルくん!

 そういうハルくんの方が好きだよ!」


真綾が小悪魔っぽく言うと、

顔を赤くした治夫に向かって

「-わたしに惚れちゃだめだぞ!」と言いながら、

「本部で待ってるから、じゃあね~」と、そのまま立ち去って行ったー。


「-----」

治夫は拳を握りしめながら”モルティング”たちに立ち向かうことを

改めて決意したー。



「---ー」

立ち去った真綾はほほ笑むー


治夫のような、若くて正義感の強い男は、

”挑発”すれば、逆に立ち直るー


思った通りだったー


「---期待してるからね…

 長瀬治夫くんー」


真綾はそう呟くと、クスッと微笑んだー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


モルティング対策本部の扉が開くー


「ハルくん!おかえりぃ!」

ギャルの真綾が手を振るー。


「--やっと、復活か」

好青年風の幸成が、安心した様子で笑うー。


「---世話のやける奴だ」

呆れた様子で、ガムを噛みながら明信が言うー。


目黒警視正の前に歩いていくと、治夫は

「数日間、勝手に休んで申し訳ありませんでした」と頭を下げたー


「--構いません」

目黒警視正は、そう呟くと、淡々と

”新たな動きがありました”と、スクリーンに動画を流し始めたー


スクリーンに人気アイドルの”美桜”が映し出されたー。


「---やっほ~~!今日ね、美桜から大事な報告があるのー!


 実はね、知ってる?最近、

 ”人を皮にして着る”犯罪者がいるのー!

 着られた人間はね~乗っ取られて

 身も心も思いのままにされちゃう!」


現役女子大生の人気アイドル・美桜が今朝配信した動画ー


目黒警視正と、他の3人はその様子を、見つめているー。


「--でもね、警察はそれを隠してる?

 どうしてかなぁ…?


 ”人を皮にする凶悪犯”モルティングー

 警察が必死に隠したがってる凶悪犯ー


 あ、こんなこと言っちゃうと、やばいかも!

 わたし、消されちゃう!


 ファンのみんな、もしもわたしが、死体で見つかったりしたら、

 わたし、警察に消されちゃったってことだから、

 その時はよろしくね!」


にっこりとほほ笑んでウィンクする美桜ー。


そこで、動画は終わったー


治夫が「これはいったい…?」と

首を傾げるー。


「--”モルティング”が動き出した、ということです」

目黒警視正は淡々と答えたー


今まで”人を皮にする凶悪犯”モルティングは、

影で暗躍してきたー

”人を乗っ取って悪用する”には

世間が”人を皮にする凶悪犯”の存在を知らないほうが、都合がいいー。


しかしー

ここに来て”あえて”それを世間に広めたー。


黒崎らにとっても”不利になる”はずなのにー。


目黒警視正は笑うー。


「おそらくは、”人を皮にする凶悪犯”の存在をあえて、

 世間に知らせて、世間の混乱と

 その存在を隠しながら捜査を続ける我々警察への

 バッシングの誘発を狙って、このような動画を流したのでしょう」


目黒警視正は淡々と呟いたー。


「--アイドルの美桜が、奴らとつながっているということですか?」

治夫が言うと、目黒警視正は「いえ」と首を振るー


「--おそらくは、発信力の強い”女子大生アイドル”を

 皮にして、乗っ取ったのでしょうー。」


目黒警視正が、動画が流れる画面を見つめるー


モルティングたちは、

”女子大生アイドル・美桜”を皮にして乗っ取り、

美桜の身体で”人を皮にする凶悪犯”の存在を世間に公表する

動画を流したのだー


そしてー


「先ほど、そのアイドルは遺体で発見されました

 既にニュースになっていますー」


目黒警視正がネットのニュースサイトをスクリーンに

映し出すーー


”女子大生アイドル惨殺体で発見ー

 警察の隠蔽か?”


 あ、こんなこと言っちゃうと、やばいかも!

 わたし、消されちゃう!

 ファンのみんな、もしもわたしが、死体で見つかったりしたら、

 わたし、警察に消されちゃったってことだから、

 その時はよろしくね!


この発言の数時間後に惨殺体で発見ー

警察の恐るべき隠蔽ー


「---女子大生アイドルの身体を乗っ取り、

 動画を流し、そして、始末したー


 これで、世間は我々警察の仕業だと盛り上がりはじめるでしょう」


目黒警視正は淡々とそう呟いたー


既に、ネット上では警察へのバッシングが始まっているー


唖然とする治夫ー


「黒崎陣矢が、そのアイドルを皮にして、動画を流して、

 動画配信後に、皮を脱いで、その子を殺しー

 警察へのバッシングが発生するように、仕組んだってことですか」


治夫が言うと、

目黒警視正は首を振ったー


「いえ、黒崎陣矢は、直接的な暴力で相手を支配する男ですー


 これはーー」


目黒警視正がモニターに男の顔を写しだしたー


「ーー臼井隼人ー。

 黒崎以外の”人を着る凶悪犯”

 

 この狡猾なやり口はー

 裏社会の天才詐欺師でもある彼の仕業とみて、間違いありません」


治夫は、モニターに映し出された臼井隼人の顔を見つめるー。


”人を着る凶悪犯”の脅威は、

すぐ、そこまで迫っていたー


⑩へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


モルティングの第9話でした~!


まだまだ、色々なことが起こっていきます~!

今後もぜひお楽しみくださいネ~!


今日もありがとうございました!!

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