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「--おはよう」


入れ替わった翌朝ー。


美空になった哲司が低い声で言い放ったー


「---お・は・よ・う」

脅すような口調の美空(哲司)-


「お、、おはよぅ…」

哲司(美空)はすっかり怯えてしまっていたー


美空(哲司)の顔には打撲があるー。

昨日、哲司に”暴力を振るわれることの痛さ・辛さ”を

分かってもらうために、

哲司の身体になった美空が、

美空の身体になった哲司を殴った時のものだー。


圧倒的な身体能力の差ー

入れ替わったことにより、確かに、立場は”逆転”したはずだったー。


だが、すぐに形成は逆転してしまったー。


美空の身体になった哲司は、すぐに

”美空の身体を悪用すること”を思いついてしまったのだー


”女”という立場を利用してー

悪魔のようなことを口走ったのだー


”お前をDV夫に仕立て上げて、親権も奪ってやる”

とー。


哲司(美空)はゾッとしたー

そこまでは、考えつかなかったー


確かにー

入れ替わったこのままの状態で、

美空(哲司)に騒がれれば、

哲司の身体になっている美空は

”暴力夫”として扱われてしまうだろうし、

親権もほぼ間違いなく奪われるー。


「ーー昨日はよくもやってくれたなぁ」

美空(哲司)が、哲司(美空)の腕を掴みながら言うー。


哲司(美空)は、

”わたしがこんな怖い声を出せるなんて…”と

美空(哲司)の方を見つめながら怯えた様子を見せるー。


「--テメェのこと、絶対許さねぇからな」

美空(哲司)は、美空の声でそう言うと、

哲司(美空)を容赦なくビンタしたー。


「-これからは俺が、”お母さん”だー。

 お前は俺として働くんだ」


美空(哲司)がイスに座って足を組むー。

美空が最近は全然履いていなかった

ミニスカート姿で、哲司(美空)を見つめる美空(哲司)-


娘の愛は、今日も泣きじゃくったままー。


「--おら、さっさと仕事に行く準備しろよ」

美空(哲司)がうすら笑みを浮かべながら叫ぶー。


「--わ、、わたしの身体…返してよ!」

哲司(美空)が叫ぶー。


しかしー

美空(哲司)はニヤニヤしながら反論したー


「--入れ替えたのはお前だろ?

 お前のせいでこうなったんだよ。


 なんか文句あるのか?

 あぁ???」


美空(哲司)が怒鳴り声をあげるー

美空の声でも、こんなに恐ろしい声が出るー。


哲司(美空)は、「--それは、、あなたに、暴力の辛さを

分かってほしかったから!」と怒りの形相で言い放つー。


それでも、美空(哲司)は取り合わなかったー


「あ~~~~昨日殴られたここ、痛いなぁ~~~!

 夫にDVされましたぁ~って、言っちゃおっかなぁ~~~?」

美空(哲司)が笑いながら言うー。


「-そしたら~~暴力夫としてお前は逮捕かもなぁ~~

 親権も俺の、、いいや、わ・た・しのになるなぁ~~~」


美空(哲司)の悪魔のような言葉に、

哲司(美空)は震えながらーーー

仕事に向かう準備を始めるー


「--ほら、そうだよ!これからはお前が哲司だ!

 そして、俺が…いえ、わたしが美空…♡ふふふ」


美空(哲司)にそう言われてー

哲司(美空)は震えながら、そのまま哲司の職場へと向かったー


「---ふふふふふ あのバカ女、身体だけはエロイからなぁ」

家で一人になった美空(哲司)は笑いながら

胸を揉み始めるー


「くくくっ…へへへへへへ!あはっ…気持ちイイ…やべぇ♡」

美空(哲司)が下品な笑みを浮かべながらエッチなことをし始めるー


興奮した獣のような表情で、服を脱ぎ捨てると、

そのままその場で、激しいエッチを初めてしまう美空(哲司)-


娘の愛が泣きじゃくっているのもお構いなしで、

泣き声を打ち消してしまうぐらいの大きな喘ぎ声をあげると、

やがて、美空(哲司)は娘の愛のすぐそばで

激しくイってしまったー


・・・・・・・・・・・・・・・・


哲司(美空)は出社したー


何も、分からないー

哲司の仕事の内容は、ある程度は知っているー

けれど、”外部の人間として”ある程度知っているレベルでは

職場内での仕事のやり方も

人間関係も、何もかもが分からないー


案の定ミスを連発してしまいー


上司から罵倒されー

先輩から罵倒されー

後輩から蔑まれたー。


人間性を否定されるようなことまで言われたー。


職場の雰囲気は”最悪”-


何人もうつ病になって退職した部署ー

夫・哲司の勤務先部署は美空の想像以上に酷い部署だったー


恐らく、哲司が悪魔のような人間に変わってしまったのは

この部署が最大の原因なのだと思うー。


とは言えー、

今までの暴力や暴言を許すつもりはないー。

美空だって最初は必死に哲司を支えようとしたし、

そもそも哲司は、ほとんど相談もしてくれなかったー。


「----」

哲司(美空)は、お昼になるころには、耐えられなくなって

逃げるようにして、トイレに引きこもったー


「---どうしよう…どうしよう…」

哲司(美空)は座ったまま、慣れない”男としてのトイレ”を

済ませるー


”入れ替わって復讐してから離婚しよう”

などと、余計なことを考えた結果が、これだー。


「--復讐なんて考えたから、罰が当たったのかな…」

哲司(美空)は悲しそうにそう呟いたー。


トイレの個室から出て、トイレの鏡を見つめる哲司(美空)ー


皮肉なことに、今の”哲司の顔”は、

優しかった頃の哲司の顔だったー。

最近は険しい表情、怒った表情ー

そういうのばかりだったー

こういう、悲しそうな表情や、穏やかな表情は、

もう1年以上見ていない気がするー。


「----哲司ーー」

仲良しだったころー

幸せだったころー


そんな日々を、ついつい思い出してしまう哲司(美空)ー


最初から、哲司の本性はこうだったのかー

それとも、過酷な勤務体系や環境が、哲司本人の人格を捻じ曲げてしまったのかー


それは、分からない。


それでも、もう”離婚”しか道は残されていないことを悟るー。


「ーー早く、身体を取り返して、離婚しなくちゃ」

哲司(美空)は、改めて”離婚”以外の道がないことを確信するのだったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


「---」

夜遅くー

ようやく帰宅した哲司(美空)ー


それに気づいた美空(哲司)が、

「-おら!早く飯作れよ!」と叫んだー。


「---え」

哲司(美空)は唖然とするー。


「--ほら!お前がいねぇから、ごはんも、お風呂も、洗濯物も

 何も終わってねぇぞ!」

美空(哲司)は乱暴な口調で叫んだー


「む…無理に決まってるでしょ!

 そ、それに、そういうのはいつもわたしが…!」


美空はちゃんと家事をしっかりこなしていたー。

それなのに、美空になった哲司は”何も”していなかったー


「--あ~~~~~~~~~~~!!!!」

美空(哲司)が突然大声を出したー


「昨日、殴られたところ、いったいなぁ~~~~~~~~~~~!!」

とー。


”口答えすんな”

そういう、メッセージ。


”お前をDV夫に仕立て上げて、親権を奪うことなんか、簡単なんだぞ”

と、いう、メッセージ。


「--いい加減にして!」

哲司(美空)は、鋭い目つきで美空(哲司)を見つめたー


にらみ合う二人ー

娘の愛が目を覚まして再び泣き出してしまう。


「おら!!飯作れよ!洗濯しろよ!風呂も準備しろよ!

 おら!!このクソ野郎が!」

美空(哲司)はそう叫ぶと、哲司(美空)に暴力を加え始めたー


咄嗟にガードしようとすると、美空(哲司)が

「ーー親権、奪っちゃおっかな~?」と、笑うー。


哲司(美空)は、もはや何もすることができなかっうたー。


哲司の身体であれば、美空の身体を押しのけることは簡単だー。

でも、抵抗できなかったー


”抵抗すれば、女という立場を悪用して親権を奪う”

そう、宣言している美空(哲司)に手出しなど、

出来るはずもなかったー。


「ーーおら!おら!調子に乗りやがって!おら!!!クソが!」

美空(哲司)が、荒々しく、哲司(美空)を

グーで何度も何度も殴りつけたー


哲司(美空)はひたすらそれに耐えるー


”わたしは、わたしに殴られているー”

そんな状態になってしまっている哲司(美空)-


「俺をなめるんじゃねぇぞ!おら!」

怒鳴り声をあげる美空(哲司)-。


哲司(美空)は反撃することもできなかったー

哲司の身体なら、反撃できるのにー

それでも”DV夫に仕立てる”と脅されて、

”親権を奪う”とまで言われてしまったらー

どうすることも出来ないー。


「-はははは!それでいいんだよ!

 お前は俺に従ってればいいんだ」

美空(哲司)はそれだけ言うと、

ボロボロになった哲司(美空)の側に近寄って

哲司(美空)の頭を乱暴に掴んだー。


「---俺は、お前を守りたいんだ」

優しい口調で言う美空(哲司)-


「--お前はさ、社会で生きていくための能力がないー

 お前は、馬鹿だからさー

 俺が守ってあげなくちゃいけないんだ」


美空(哲司)が哲司(美空)の頭を優しくなでるー。


いつものことだー。

暴力や暴言ー

それらを散々繰り返したあとに、哲司はいつも美空に優しくするー。


無意識なのかー

意図的なのかー

それは、分からないー


ずっと泣いている愛ー。


このままじゃいけないー。


美空は、なんとかこの状況を逆転する方法を考えたー。


反撃することも許されないー

今の哲司は、美空の身体ー

世間からすれば”女”であり、”母親”だー。


美空の身体で、”夫から暴力を振るわれた”と叫びー、

親権を取ろうと、美空(哲司)が本気で思えばー

恐らく哲司(美空)は簡単に親権を奪われてしまうー


とは言え、

”このまま”美空になった哲司の言いなりになり続けるわけにもいかないー


もう、哲司の改心は望めないー。


「--」

哲司(美空)は数日後、会社に辞表を叩きつけたー。


忍耐力がないー、のではないー

”明らかに”おかしいのだー。

こんな部署にいれば、哲司が狂ってしまうのもよく理解できるー。


もちろん、哲司のしていることは許されないけれど、

哲司が豹変してしまった点については、一定の理解を示さざるを得ないほどに

この部署は酷かったー。


部長がギャーギャーと騒いでいたものの、

哲司(美空)はそれを無視するー。


”言ってくれればー…

 言ってくれれば、わたしもまた働いて…一緒になんとか

 やっていくこともできたかもしれないのに”


そんな風に思いながら、辞表を叩きつけた哲司(美空)は、

ため息をついたー。


「------」

入れ替わり薬の販売元は、姿を消していたー


もう、入れ替わり薬を手に入れることは出来ないー。


「---どうしよう…」

哲司(美空)は、空を見上げるー


このままじゃいけないー。

元の身体に戻りたいー。


けれど、もしも、それが無理ならー

とにかく、哲司の暴力を止めないといけないー

哲司を愛から、引きはがさないといけないー


話し合いで解決できるレベルではないー


もうーー

戻れないー


美空の身体を手に入れて

”悪女”と化した哲司をどうにかしないといけないー。


「--哲司」

拳を握りしめた哲司(美空)は、”ある決意”をしていたー



④へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


次回が最終回デス!

DV夫との入れ替わりの結末は

ダーク?それともハッピー?


ぜひお楽しみくださいネ~!


今日もありがとうございました!!



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