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正也は”彼女がいないこと”を揶揄ってくる親友の勝彦に対して

ついついムキになってしまいー、

”俺の彼女を見せてやる”と宣言してしまったー。


焦った正也は、偶然見つけた憑依薬で、

見ず知らずの女子大生である京香に憑依、京香の身体で、

勝彦と接触したー。


”わたしが正也くんの彼女です”と

乗っ取った京香に言わせてー。


だが、勝彦の反応は、正也の予想に反するものだったー。

正也に彼女が出来たことを本気で喜び、

普段、正也の前では見せない態度を見せたのだー。


 あいつ、本当にいいやつなんです!

 だから、だから、

 どうか、あいつを、よろしくお願いしますー


勝彦は、そう言っていたー


「どうすっかなぁ~」

正也は、自分の部屋で悩むー。

なんとか、丸く収めたいー。


”勝彦の想いを無駄にせず”

”正也自身のプライドも保ち”


かつー

”憑依対象の京香に気づかれないように”


そう、丸く収めたいー。


「--実は憑依して…なんて言えないしなぁ…」

正也は、そんな風に考えながらー

”遠距離になって、徐々にフェードアウトして別れてしまった”

ってことにするしかないか、と頭の中で考えるー


とりあえず、まずはー


”残り1回分の憑依薬”を利用して、

再び明日、京香に憑依するつもりだー。

憑依されている間の記憶がないことは、

既に京香に憑依する前の憑依で確認済みだー。


何度憑依したところで、それは変わらないー。


勝彦と正也の共通の友人たちが、”正也の彼女”である

京香に会いたがっているといるのだー


できれば、あまり大勢の人に見せたくなかったが、

変に疑われるのも困るー、ということで、正也は再び

京香に憑依して、そこで”しばらく実家の方に帰らないといけなくて…”

と、”嘘”を打ち明けるつもりだったー


遠距離になった設定にし、

後は適当にフェードアウトさせるー。


そうすれば

少なくとも正也の憑依の件も、正也のプライドも、

勝彦の想いも守ることが出来るー。

それが、一番良い方法のはずだー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


憑依薬を飲んだ正也は、早速京香のもとまで、

霊体の状態で飛んだー


京香は家にいたー。

特に、変わった様子はないー。


先日、京香を乗っ取って京香の身体で

勝彦に会った日の記憶は、京香にはないはずー。


つまり、京香の記憶はその間飛んでいるはずだが、

少なくとも、霊体の状態で、京香の行動をしばらく

観察してみた感じ、そのことを気にしている様子はなかったー。


「--ま、憑依から抜け出す前に、適当に布団にもぐっておいたからー

 寝落ちだと思うよな」


正也はそう呟くと、

スマホをいじっている京香に向かって、霊体を移動させたー。


「-ごめんな、もう一度だけ、身体、借りるよ」

正也がそう呟いて、京香の身体に飛び込むと、京香は「うっ…」と

うめき声をあげてー

身も心も、正也に支配されたー。


「--乗っ取る瞬間の、この子の声…なんかこう…

 ゾクゾクするな」

京香の声でそう呟くと、「っと、変な気を起こす前に

勝彦たちに会いに行かないとな!」

と、颯爽と、京香が持っている服の中で比較的おしゃれな

部類の服に着替えて、そのまま外へと出かけて行ったー


「-今日まで、京香ちゃんは俺の彼女だ」

京香の口でそう呟くと、

「-わたし、今日まで正也くんの彼女♡」と笑みを浮かべたー


憑依薬は、これで最後ー。

もう、京香の身体を好き放題することはできないし、

京香に”正也くんの彼女”を名乗らせることも出来ないー。


京香は、勝彦たちとの合流場所に到着したー。

手を振る勝彦と友人ふたりー。


京香は「あ、よろしくお願いします」と

ドキドキしながら、座席についたー。


ファミレスで、雑談する4人ー。


京香は”勝彦以外の友人に、バレるんじゃないか”と

心配したものの、そんな心配はなかったー。


まさか”正也の彼女”を名乗って、今ここにやってきている

京香が、その正也に憑依されて乗っ取られている”他人”で

あるなどとは、夢にも思わないだろうー。


何の問題もなく、勝彦と同じように、

他の友人たちも、憑依されている京香を、正也の彼女だと信じたー


「正也はホント、いいやつだからさ…」

勝彦がそう呟くと、他の友人二人も頷いたー。


勝彦は、正也との思い出を嬉しそうに語ったー。


「--あいつさ~~それで、なんて言ったと思う?」

笑いながら思い話を語る勝彦ー


当然、京香はそれを全て知っているー

京香に憑依しているのは、正也なのだから、

勝彦との思い出話は、当然知っているのだー。


「ほ、ほんとですか~?」

わざとらしく驚いて見せる京香ー。


「そうそう、あいつ、お人よしすぎだろ?それがいいところなんだけどさ」

勝彦は、心底、正也のことを大事な親友だと思っている様子で、

目の前にいる京香が正也に憑依されている女子大生=中身は正也そのもの、

であるなど、夢にも思わない様子で、話を続けたー。


「----」

ふいに、京香の目から涙がこぼれたー


「--え…?あ、ごめん、何か…悪いこと言ったかな?」

勝彦が戸惑うー


他の友人二人が「おい!勝彦!何泣かせてるんだ!」と揶揄い始めるー。


「--あ、いえ…」

京香は慌てて涙を拭きながら呟いたー


京香の身体の涙腺が脆いだけなのかー

勝彦の、正也に対する友情に感動したのかー

勝彦を騙している罪悪感かー


京香に憑依している正也には分からなかったー


けれど、もうこれ以上”彼女を演じる”ことは出来ないー

憑依薬は今回で最後だー


”遠距離恋愛”を演出するしかないー


「---あの…」

京香は口を開いたー


「実は、実家の父が倒れて、わたし…

 北海道に戻らないといけないんです」

京香の言葉に、勝彦は「えぇ!?」と悲しそうな顔をするー。


「-----」

京香は、勝彦の表情を見つめるー。


「--------……」

どうする?

どうする??


京香に憑依している正也は、頭をフル回転させるー。


このまま

”京香は実家の父親が倒れたことにより実家の方に戻り、

 そのまま遠距離恋愛となった”という設定にした上で

半年ぐらいかけて、少しずつフェードアウトしていき、

別れることになってしまったーーー


そういう、設定で、正也は、乗り越えようとしていたー。


実家が北海道なのかどうかも知らないが、

そう言っておけば、少なくとも勝彦たちはそう思うだろうし、

自然な形で、正也は京香と距離を置くことが出来るー

”一緒にいない”状態でも不自然に思われないー


彼女を見せてやる!と見栄を張り、

なんとかごまかすために、見ず知らずの女子大生である京香に憑依し、

京香の身体で「わたしが彼女です」などと名乗ってしまったー


それを、終わらせるためには、これしかなかったー。


「そっかー」

勝彦が悲しそうに呟く。


「--正也には、もう言ったのか?」

勝彦の言葉に、京香は「今夜、お話しようと思います」と

適当に返事をしたー


「--だ、大丈夫です…また、帰ってきますし、

 遠距離でも、今はLINEもツイッターもありますから!」


京香の身体でそう微笑みながらもー

”もう、帰って来ることはないけどな”と、京香に憑依した

正也は思うー。


憑依から抜け出せば、京香は正也のことなど知らない

全くの他人だー。

”彼女としての京香”は、もういなくなるー。


勝彦ら友人と雑談を交わして、京香は頭を下げて立ち去るー。


勝彦から連絡先の交換を持ちかけられたが

「正也くんが嫌がるかもしれないので」と、苦笑いして

そのまま立ち去ったー


連絡先交換は、まずいー

正気を取り戻した京香に、何も知らない勝彦が

連絡したら、大変なことになるー。


「----はぁ」

帰宅した京香は鏡を見つめたー


「こんなかわいい子が、本当に彼女ならなぁ…」

京香は、そう呟きながらも、

「まぁ、俺には無理か…そもそも女子を前にすると、

 トラウマがよみがえるしー」

と、過去に痴漢冤罪被害に遭いかけた正也は

京香の身体でそう呟いたー。


あとはー

京香は”北海道の実家に戻った”という設定にして、

遠距離恋愛をしているうちに、お互いになんとなく冷めてしまって

”フェードアウトした”という設定にすれば、

この件は上手く収まるだろうー。


実際には、京香は北海道になど、行かないはずだが、

3駅離れた場所に住んでいて、

勝彦とも正也とも全く面識のない女子大生だから、

特に何も問題はないはずだー。


”名残惜しいなぁ”

そう思った京香は、鏡に向かって呟いたー


「短い間だったけど、正也くんの彼女になれて

 わたし、嬉しかったー」


京香の身体で、そう言わせてみる正也ー


「--あぁ、俺もだよ」

顔を赤くしながら京香の身体で一人二役を始める正也ー


「--お別れのキス…しよ♡」

京香の声はとても甘い声だったー


鏡に向かってキスをすると

京香は無我夢中で音を立てながら何度も何度も鏡にキスをして、

興奮した様子で、鏡を抱きしめたー



そしてーー

満足した京香は、布団にもぐり込みー

京香に憑依していた正也は、そのまま京香の身体から抜け出したー。


乗っ取られている間の記憶は、何もないー

何も、問題はないはずだー。


”この子もさすがに2回の意識飛んでると

 不安がるかもだけど…

 ま、大丈夫だろ”


正也はそんな風に思いながら、京香の家から、

霊体のまま自分の家の方に飛び去って行ったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


それから、2ヵ月が経過したー。

最初は、勝彦も”京香ちゃんとは、どうなんだ?”と

頻繁に聞いてきていたが

”遠距離恋愛”という設定にして

フェードアウトしていく戦術は、正也の読み通りだったー


最近では、勝彦も”京香ちゃんどうなった?”と

聞いてこなくなったし、

このまま”フェードアウト”できそうだー。


半年ぐらい経過したタイミングで、適当に

”別れることになっちゃったよ”とでも、告げれば、

何も、問題はないだろうー。


正也のプライドは保たれー

勝彦の想いも踏みにじることなくー

乗っ取られていた京香にとっても、影響が出ることはないー


完璧だったー。


今日は学園祭ー

大学内がにぎわいを見せている中、

正也と勝彦は、憎まれ口をたたき合いながらも、

一緒に行動していたー


そんなときだったー


「おい、、、あれ…!」

勝彦が呟くー


「ん?」

正也が笑いながら、勝彦が指さした方向を見つめたー


すると、そこにはーー


「--清太郎くん、大好き!」

彼氏と思われる人物と、手をつないでー

嬉しそうにしているー京香の姿があったー


「--ゲッ!!!!!!!!」

正也は思わず叫んでしまったー


2ヵ月前、京香に憑依した時点では

京香に彼氏はいなさそうだったのだがー

実はいたのか、そのあとに出来たのかー


しかもーー

よりによってー

うちの大学の学園祭に来るとはー


”やべぇ…確かに3駅ぐらいの距離じゃ、学園祭に来てもおかしくはないよな…”


正也がそう思っていると、

勝彦が言ったー


「あれ、京香ちゃんだよな…北海道に帰ったはずじゃ…

 しかも、、あれ、、浮気…!?」

勝彦が呟くー


「--おい、勝彦、人違いだー」

正也がそう言いかけた時には、勝彦は、京香の方に向かって

歩き出していたー


「ーーー京香ちゃん!

 なんで…どうして…!?


 正也を、、正也を裏切ったのか…!?


 浮気するなんて…!」


勝彦が怒りの形相で京香の方に向かって叫ぶー


京香と、彼氏の清太郎が戸惑うー。


「--え…?あ、、あの、どちら様ですか?」

京香が首を傾げるー

憑依されていた間の記憶はないー

当然だー。


「-ふざけんな!!!!

 浮気女!!!

 ぜってぇ許せねぇ…!


 人生初の彼女で、正也がどれだけ喜んでいたか…

 京香ちゃんには分からないのか!」


正也のために、と大声で叫ぶ勝彦ー


周囲がざわめき始めるー


「-----ぁ、、、、ぁ」

正也は”終わった”と思いながらーーー

咄嗟にその場から逃げ出してしまったー



震えながら自分の家に帰って来た正也はー

体育座りをしながら「おわった…」と呟いたー。


明日から、大変なことになりそうだー。



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


この後は、皆様のご想像にお任せします~☆

色々、大変そうですネ…!


お読み下さり、ありがとうございました~~!

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