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「うるせぇ!俺に養ってもらってることを感謝するんだな!」

怒鳴り声をあげながら、妻に暴力を振るう男ー。


殴られた妻は、泣きながら「ごめんなさい…」と何度も何度も

謝罪の言葉を口にするー。

近くにいる、まだ2歳の娘が大声で泣いているー。


いつからだっただろうかー。

”こんな風”になってしまったのはー。


夫・森原 哲司(もりはら てつじ)は、

出会った当初はこんなではなかったー。

付き合い始めてからも、結婚してからも、

こんなではなかったー。


しかし、今の哲司は、もはや「DV夫」だー。

そんなことは分かっているー。


妻の美空(みそら)は、昔の”優しかった頃の哲司”を

思い出しながらも、”今の哲司”の睨むー。


今のふたりは、20代後半ー。

まだ、結婚してから、5年も経っていないー。

それなのに、このありさまだー。


「-なんだその目は?何か文句あんのか?」

哲司がそう叫ぶと、美空の胸倉を掴んだー。


「--この出来損ないが!」

哲司がそう叫びながら、美空をビンタするー


美空は「ごめんなさい!ごめんなさい!」とひたすら

謝りながらも、哲司のことを憎む気持ちで、心の中は

いっぱいになっていたー。


いつからー

こんな風になってしまったのだろうー。


美空は、夫の哲司から、暴力を振るわれるたびに、

そんなことを思うー。


娘・愛(あい)が、生まれてからだろうかー。


いやー

そうじゃないー。


哲司は、2年前ー

ちょうど、愛が生まれる頃に、勤務している会社で

“異動”となったー。


哲司が、だんだんとおかしくなっていったのは、

そのころからだー。

哲司が”異動”した先は、ブラックな部署で、

連日哲司は、遅くまで残業をするようになったー。


そんな最中、美空は子育てに専念するため、

哲司と話し合った末に、退職を決断、

当時の哲司は「美空と愛のことは、俺が支えるからー」

などと笑っていたー。


でもー

哲司は徐々に変わって行ったー。


過酷な労働環境ー

そんな中、「妻」と「娘」の絆だけが強まり、

まるで、自分だけ”孤立”しているかのような疎外感ー。


娘に”手を振り払われた”ときに、それが一層強まったー。


”仕事”で家にいない哲司を

娘は”知らないおじさん”だと思ったのだー。


激務、疎外感、そしてー

”嫉妬”-


妻だけが娘に愛され、

さらには”退職して家にいる”美空に激しい嫉妬を

抱くようになったー


その結果ー

優しかった哲司はDV夫になってしまったー。


「--ごめんな 美空ー」

哲司は、いつも、暴力を振るった挙句、最後には美空に謝るー。


美空の頬を触って、痛くないか?と聞いてくる哲司の姿は

”優しかったころの哲司”の姿と同じー。


それ故にー

美空はすぐに離婚に踏み切れなかったー。


分かっているー

これが”DV夫”によくある特徴の一つであることぐらいはー。


何度謝ろうと、

どんなに優しくして来ようと

哲司は、明日には、また、美空に罵声を浴びせて、

そして美空を殴りつけるだろうー。


そんな日々が続いて、美空も、もはや限界だったー。


”哲司に対する憎しみ”

それが、爆発する寸前だったー。


”離婚する前に、なんとかして、哲司を懲らしめたい”

美空は、そんな風に思い始めていたー。


疲れているのも理解できるー

娘との時間が取れず、疎外感を感じるのも理解できるー

嫉妬も理解できるー


だから、この2年、美空は必死に哲司をフォローしようとしたー。

なのに、哲司の暴力はエスカレートするばかりー。


もう”優しかった哲司”は死んだのだー。


そしてー

美空はある日、夫の哲司が会社に行っている間に

ネット上で”DV夫への復讐方法”と検索していたところ、

”あるもの”を見つけたー


それが”入れ替わり薬”だったー。


「-ーーー」

すやすやと寝息を立てている2歳の娘・愛の方を見つめながら

美空は少しだけ寂しそうに微笑むー。


出来ればー

夫の哲司と3人で、歩みたかったー。


でも、もう、限界ー


偶然”入れ替わり薬”と出会った美空は

”復讐”を企てたー。


それはー

”DV夫”と自分が入れ替わって、

”逆にDVしてやる”ことー。


DVされる側の立場を夫である哲司に味合わせてー

美空がどんなに辛い思いをしたか、思い知らせてやろうー、と

そう思ったー


DVの恐怖を、夫である哲司に思い知らせたら、

離婚届を叩きつけて、そのまま離婚してやるー、


それが、美空の考えた”復讐”



けれどー


もしもーーー


もしも、それで、

哲司が”今まですまなかった”と気づいてくれたらー


その時はーー

その時は、もう一度ー。


美空は決意した。

”入れ替わり薬”を購入する決意をー。


夫と身体を入れ替えて、

夫に復讐するー。

”DVされる側の怖さ”を身をもって体験させるー。


これはー

”復讐”であり、”最後の警告”-。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


数日後ー

入れ替わり薬が届いたのを確認した美空は、笑みを浮かべたー。


今の美空の、夫に対する感情は、”憎しみ”に染まっていたー。

毎日のように、理不尽に怒鳴られて、理不尽に暴力を振るわれれば、

誰だってそうなるー。


それほどまでに過酷な時間を、美空は過ごしてきたのだー。


娘の愛の方を見つめながら「愛ちゃん…こんなわたしとお父さんで、ごめんね」と

悲しそうに呟く美空ー。


「---」

夫の哲司が帰宅したー。


不機嫌そうに鞄を置くと、哲司はため息をつきながら、

そのままイスに座ったー。


「--」

もはや、ほとんど会話もないー。


哲司が、ビールを飲み始めるー。


そしてー

程なくして”いつもの”が始まったー


哲司が美空を罵倒し始めるー。

優しかった頃の哲司の面影は、もう、そこにはないー。


暴言から始まり、哲司は、暴力を振るおうとするー。


だが、今日の美空は引かなかったー。

美空は、哲司が帰宅する前に、既に”入れ替わり薬”を飲んでいるー。


これを飲んだ状態で、相手とキスをすればーーー


「----!」

美希は哲司を睨みつけると、有無を言わさず哲司にキスをしたー


「---な、なにしや」

そう言いかけた哲司は、突然頭に強い衝撃を感じるー。


美空も、これまで感じたことのないような違和感を感じるー。


「---なんだ、これは…!?」

先に異変に気が付いたのは、哲司だったー。


哲司の口から漏れ出たのは、哲司の声などではなく、

今から自分が暴力を振るおうとしていた美空の声だったー


「な、、!?」

哲司はーー美空になっていたー。


自分の手とは、異なる、手ー。

色白の、綺麗な手ー。


「---いい加減にして!」

困惑している美空になった哲司に対して、

哲司になった美空が叫ぶー。


入れ替わりに成功して、

哲司になった美空は、哲司の身体で、美空(哲司)を突き飛ばしたー


美空(哲司)は”入れ替わり”の意味も理解できないまま、

激しく動揺して、そのまま机の角に腰を打ち付けて

苦痛に表情を歪めながら、しゃがみこんだー


「--いつもいつも、わたしがどれだけ我慢してきたか、

 分かってるの!?」

哲司になった美空は、哲司の身体でそう叫んだー


哲司(美空)の目から涙が浮かぶー

乙女のように泣きじゃくる哲司(美空)を見て

美空(哲司)は、反論しようとしたー


”テメェが出来損ないだからだ!”

とー。


けれどー

美空(哲司)の口から出た言葉には、

力強さはなく、乱暴な口調でも、どこか迫力がなかったー。


「---どうして暴力を振るうの!?」

哲司(美空)は、哲司の身体の”力”を感じながら、

美空になった哲司の髪を引っ張りながら問いただすー。


”どうして、自分に暴力を振るうのー?”

とー。


今まで哲司に散々やられてきたことだー。

日常茶飯事のように、美空は哲司に髪を引っ張られて、

痛めつけられたー。


「---や、、やめろ…!何が起きてるんだ!?」

美空(哲司)が叫ぶー。


自分が美空の身体になってしまっているー

美空が哲司の身体になってしまっているー。


入れ替わりを仕組んだ美空はともかく、

”何も知らない”哲司からすれば、”困惑”の二文字以外は、何もないー。


「やめない!!!」

哲司(美空)が叫びながら、美空(哲司)の胸倉を掴んだー。


「わたしがどれだけ今まで我慢してきたか、

 わたしがどれだけ今まで辛い思いをしてきたか!

 ちゃんとわかってるの?


 どうして!?

 どうしてこんな風に暴力ばっかりふるうの!?

 わたしのこと、嫌いになったの!?」


哲司(美空)が泣きながら叫ぶー。

周囲から見れば、夫が泣きながら妻の胸倉を掴んでいる状態ー


「--あなたの仕事が大変だってことは分かってる!

 愛のことも、

 色々ストレスが溜まってるのも、分かってる!


 でも、どうしてそれを暴力で発散しようとするの!?」


哲司(美空)は目から涙をボロボロとこぼしながら叫ぶー。

泣かずには、いられないー。

哲司に対しては、今でこそ憎しみでいっぱいになってしまったが、

それでも、哲司のことが”好き”であることには、変わらないー。


あの優しかった頃の哲司に戻ってほしいー。

どうか、戻ってほしいー、

そう、願わずには、いられないー


「--うるせぇな!」

美空(哲司)が大声で叫ぶー

いつもは泣いていたり、ビクビクしている美空とは

思えない表情で、美空(哲司)は叫んだー


いつものように、”暴力”を振るおうとする美空(哲司)-


”やっぱり、言葉で言っても分かってもらえないー”

哲司になった美空は、心底残念に思いながらー

殴りかかって来る美空(哲司)の拳を押さえたー


「--!!!」

美空(哲司)が表情を歪めるー


美空の身体は、運動神経が悪いー。

学生時代の体育の授業でも、悪い成績をつけられてしまうことが

とても多かったー


逆に、哲司の身体は、運動神経が良いー。

スポーツ万能な、学生だったー


「---くそっ…!やっぱ出来損ないだ…!」

美空になった哲司は、美空の身体を呪うような言葉を口にしたー。


「---…暴力、暴言ーー

 なんでそんなことばっかりするの!」

哲司(美空)は怒りの形相で叫ぶー。


「--お前が、、出来損ないだからだ!」

美空になった哲司は、なおもそう叫んだー。


哲司(美空)は拳を握りしめるー。


”わたしの身体を殴るのはー

 他人への暴力には、ならないよねー”

と、そう、寂しそうに心の中で呟きながらー。


「---哲司…!」

哲司(美空)は美空(哲司)の方を、鋭い目つきで睨んだー


「---これが、暴力の痛みよ!」

哲司(美空)はそう叫ぶと、グーで、美空(哲司)の顔面を

思いっきり殴りつけたー


「--ぐあっ!」

美空(哲司)の身体がよろめいて、背後の棚に背中をぶつけるー。


目を覚ました2歳の娘、愛が泣いているー


「--ーーうぅ…」

美空(哲司)が、自分の頬を押さえながら、表情を歪めているー。


「--これで分かった!?

 これが、わたしが受け続けて来た、暴力の痛みよ!」

哲司(美空)がそう叫ぶと、

美空(哲司)は悔しそうに哲司(美空)の方を睨みつけたー



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


DV夫と、DVを受ける妻の入れ替わりデスー!

入れ替わって立場が逆転した…

ところまでが、①でした~!


②以降は…!?


次回もぜひお楽しみくださいネ~!

今日もありがとうございました~!

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