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「はははは!お前に彼女なんてできるわけないだろ!ははははっ!」

友人の石部 勝彦(いしべ かつひこ)が、面白そうに笑うー。


その反応を見て、ムッとしたのは、勝彦と同じ大学に通う

男子大学生・広沢 正也(ひろさわ まさや)-。


正也は小さいころから、「モテない」性格で、

そのことを度々友人の勝彦から揶揄われていたー。


「--そこまで言われると、なんだかイラっとするな」

正也が少しだけ笑いながら、髪を掻きながら言うと、

勝彦は「でも事実だろ?」と

笑いながら答えたー。


勝彦は”わるいやつ”ではない。

だが、勝彦の辞書に”デリカシー”という言葉は存在しない。

人のイヤな部分を平気でネタにするタイプの男だ。


とは言え、それでも勝彦に良い部分はある。

正也が、身の回りの人間が本当に困っているときには、

自分の時間を犠牲にしてでも、親身になって力を貸してくれるし、

友達を自ら裏切るようなことは、絶対にしないー


だからこそ、正也はこうして、勝彦と”友達”を続けているのだー。


だがー

それでもーー


「-やっぱむかつくぅ…」

正也が、勝彦の方を悔しそうに見つめると、勝彦はニヤニヤしながら

「--もしもお前に彼女が出来たら、俺はお前の言うこと何でも

 聞いてやるぜ~!」と勝彦はまたまたゲラゲラと

笑いだしたー。


「--その言葉、忘れるなよ~?」

勝彦の方を睨みながら正也が言うと、勝彦は

「おうよ!」と自信満々に笑みを浮かべたー


「--忘れないさ!でも、

 お前に彼女が出来ることなんて、絶対にないからな!」

勝彦は”断言”したー。


正也と勝彦は幼馴染の間柄でもあるー

それ故に、勝彦は正也が”モテない”ことを良く知っているー


その理由は簡単だったー。

”顔”と”性格”だー。


顔は、悪いわけではないー

だが、”モテない顔”なのだー。

人間中身だよ、なんていう人もいるが、

それは綺麗事でしかないー。

所詮、顔で決まるのだと、勝彦は思っているー


”性格”-

正也は、男友達は非常に多いー

だが、姉や妹はおらず、小さいころから男友達とばかり

遊んでいたため、女性への接し方を正也は知らないー。

しかも、一度高校時代に電車で危うく痴漢冤罪になりそうになったことも

あり、今では”女性恐怖症”状態だー。


だからー

正也に彼女が出来るはずがない、と

勝彦は断言していたー。


「--今、絶対って言ったな?」

正也は、あまりの悔しさに唇をかみしめながら呟くー


「--あぁ、言ったぜ!お前に彼女が出来ることなんてー」


「ーーできた」

正也が、勝彦に対して言い放つー


「--は?」

勝彦の表情から、笑顔が消えるー


「--彼女、この前できたー」

正也は、勝彦を見つめながら、そう呟くー。


当然”嘘”だったー。

彼女などいないー。


だが、勝彦があまりにも揶揄ってくるので、

咄嗟に見栄を張って嘘をついてしまったー


「------ア?」

勝彦は一瞬、正也が何を言ってるのか理解できない様子だったー。


しかし、すぐに笑いだしたー


「--は、ははははははははっ!

 無理すんなよ!嘘は、やめろって!な!」

勝彦は、笑いながら正也の肩をポンポンと叩くと、

「っと、まぁ、真面目な話、気にしてるなら

 いい子を見つけたら紹介してやるから、

 あんまり気を落とすな!」と

付け加えたー。


「--いるし!!嘘じゃねぇし!」

正也は、ムキになってそう叫んだー。


昔からー

正也は、ムキになってしまうと止まらない性格だったー


「-は~~??嘘だぁ~?

 お前に彼女なんてーー


「-い~る~し!マジでできたんだよ!彼女!

 何なら見せてやろっか?」

正也が感情的に言うと、勝彦もまた、ムキになったー。


この二人は小さいころからよく、ムキになっては

喧嘩したり、仲直りしたりを繰り返しているー。


大学生になった今でも、それは、変わらないー


「--お~~お~~お~~!なら見せてくれよ!

 頭の中の妄想の彼女じゃないなら、見せてくれよ!」

勝彦も感情的になって叫ぶー


正也も負けじと

「ああ、、あぁ、!見せてやるよ!」

と、叫ぶー。


”嘘”なのにムキになってしまった正也ー


「--俺に本当に彼女がいたら、お前、俺の言うこと、なんでも聞けよ!?」

正也が言うと、勝彦も

「-お前の話が嘘だったら、お前が俺の言うことを聞くんだぞ!」と

言い返したー


「ふん!」

二人は、”今週末の土曜日に、南区のカフェで会う約束”をしー

そのまま立ち去って行ったー


・・・・・・・・・・・・・・


「やっべぇ…」

夜ー

帰宅した正也は絶望していたー。


今週末の土曜日に、南区のカフェで

勝彦と会う約束をしてしまったー。

”正也の彼女”同伴で、だー。


しかしー

正也に彼女などいないー

”架空の彼女”を連れて行くことはできないー


「くそっ!俺はどうすれば

 ついムキになっちまった!」

正也は頭を抱えるー。


勝彦との言い合いで、ついついムキになってしまった正也は

”彼女いるし!”と断言してしまったー。


もし、土曜日までに彼女を作ることが出来なければ

勝彦に大笑いされるのは目に見えているし、

勝彦の言うことを何でもひとつ、聞くことになってしまうー。


「くっそおおおおおおお!」

正也は慌てて、ツイッターを開くと

”急募 彼女”とツイートしたー。


当然、そんなことで彼女が出来るはずなどない。


1件だけ”男ですけどいいですか?”という冷やかしの返信が届いたが、

正也にそんなもの相手にしているほど、心の余裕はなかったー


何か、

何か方法はー?


レンタル彼女?

いや、そんなお金はないし、すぐバレるー


もっと、もっと確実な方法はないかー?


正也はスマホを慌ただしく操作したー。

なんとか、勝彦のやつを、びっくりさせてやるんだー!


一時的にでもいいー

彼女はいないかーーーー!!


「----------!!!」

検索すること2時間ー。


正也は、たどり着いたー。

”彼女”を手に入れる方法にー


「こ、これだー!」

正也が握りしめているスマホの画面には

”憑依薬”と表示されていたー。


他人の身体を乗っ取り、自由にすることが出来る薬・憑依薬ー


これさえ使えばーーー


「--い、、いやいやいや」

正也はすぐに”そんなもの現実にあるわけねぇだろ”と

自分で自分にツッコミを入れるー。


だがー

勝彦に笑われる未来を想像した正彦は、

一人、ムキになって、憑依薬を注文したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


憑依薬は、金曜日に届いたー。


正也は、憑依薬は”5回分”-

正也は”まずは動作確認しないとな”と思いながら

憑依薬を1回分、口にしたー。


「----!!!!!」

正也は驚いたー

まさかー本当に”憑依薬”なんてものがこの世に存在するなんて!


とー。

憑依薬を半信半疑で飲んだ正也は、幽体離脱に成功したのだー


「マジかー」

正也は、”早速”と、同じアパートにOLが住んでいたことを思い出すー。

そこそこ可愛い感じだったー。


まぁ、可愛いかどうかなんてどうでもいいー

まずは憑依のテストをしなくてはならないー。


そう思った正也は、同じアパートに住むOL・下崎 祥子(しもざき しょうこ)に

早速憑依したー。


「--うぁっ」

祥子がビクンと震えー

持っていたスマホを落とすー。


「--え…うそ…マジ??マジで憑依できてる!?」

乗っ取られた祥子は自分の頬を嬉しそうに触りながら叫ぶー。


「--や、や、、やった!!!やったああああああああああ!」

普段、そんなに大声を出さないタイプの祥子が、

狂ったような大声で叫び、ガッツポーズをするー。


スマホを落としたことも忘れて、がに股で

ガッツポーズを何度も何度も繰り返しながら、

「これで勝彦のやつを、ギャフンと言わせることができるぜ!」と

叫んだー。


憑依できたー!

そんな、この上ない興奮が少し冷めて来ると、

祥子になった正也は自分の口から”女の声”が出ていることを

ようやく、改めて自覚して、顔を真っ赤にしたー


「--う、、、あ…」

口を手でふさぐ祥子ー。


何の意味もない行動なのだが、

女性に対して耐性が全くない正也は、

そんな意味のない行動をしてしまうー


「--ひっ!」

胸に手を触れてしまった祥子ー


今は”自分の胸”なのに、

咄嗟に「ご、ごめんなさい!」と叫んでしまうー


「---う、、あああああああ!」

胸を直視できないー


今は”自分の身体”なのだから、こんな状況じゃいけないのだがー

上から”胸”を見下ろすだけで、祥子に憑依している正也は

ドキドキが止まらなくなってしまい、恥ずかしさから

はじけ飛んでしまいそうになるー


「ん、う~~ううう~~~」

奇声を上げながら、近くに落ちていた布で、慌てて目隠しをして

深呼吸をするー


”ダメだー”

正也はそう思ったー


髪ー

綺麗な手ー

胸ー

服装ー


それら全てにドキッとしてしまうー。

我ながら異性に対する耐性というモノが全く持って存在しないー。


とは言えー、

友人である勝彦との約束は明日だー。


なんとか”誰かに憑依して”

”これが俺の彼女だ”という風にしなくてはならない


”---”

祥子は目隠しをしたまま体育座りをして、考え込むー。


「でもなぁ…憑依だから、”自分の身体”とは

 一緒に勝彦に会いにいけないんだよなぁ」


祥子は呟くー。

ようやく”自分の口から女の声が出ている”という状況には

慣れたー。


「どうすっかなぁ…」

祥子は色々考えた末にー


”彼氏の正也くんは体調不良で来れないので、

 彼女のわたしだけ来ました”

ということにしよう、と決めたー。


”女の子が、わたしが正也くんの彼女です って言ってればー

 勝彦も信じるだろ?”と、

思いながらー。


「---!」

目隠しに使っていた布のようなものが、

ズレて、目から落ちてしまうー。


そしてーーー

自分が咄嗟に掴んで目隠しにしていたものがーー


祥子のブラであることに気づいてー

祥子は、そのまま鼻血を噴いて、失神してしまったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「---!!!」

霊体の状態に戻った正也ー


眼下では、鼻血を噴いたまま、だらしない格好で失神している

祥子の姿ー


「--や、、やべぇ…つい失神しちまったー」

正也は、自分の身体に戻ると、そう呟くー


本番中ー

勝彦と会う明日までに、なんとか、”女性に憑依すること”への

耐性をつけなくてはならないー


”そうだー”

なんとかー

なんとかしないと!


正也はそう思いながら、”慣れる”ために

憑依薬をさらに飲み、

大学の同級生のひとりに憑依ー、

それが終わってから、3回目の憑依薬を飲み、

今度は路上を歩いていた、見ず知らずの女に憑依してー

”練習”を繰り返したー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


正也は、”女の身体”で、勝彦との待ち合わせ場所に向かっていたー


色々な候補者を考えたー


大学の同級生ー

正也のバイト先の人間ー

正也の近所の人間ー


だが、そのいずれも、却下したー。

理由は簡単だー

”万が一、勝彦と面識があると困る”ためだー。


そして、正也は、わざわざ三駅ほど電車で移動した場所に

住んでいる一人暮らしの女子大生に憑依したー


名前も知らないし、面識もないー。


”彼氏がいない”ということだけは、昨夜からずっと見張っていて

調べがついたー。


結構可愛いし、この子がちょうどいいー

正也はそう思い、この女子大生に憑依したのだー。


松永 京香(まつなが きょうか)-

それが、この”身体”の名前らしいー


「ごめんね 松永さん…

 でもー」


京香が持っていた服の中で一番かわいい感じの

服装を選び、京香は、勝彦との約束の場所にやってきていたー


「---!」

先にカフェで待っていた勝彦は、京香に声を掛けられて驚くー


「--はじめまして。おr、、わ、わたしがー

 正也くんの彼女の京香ですー」


京香が、ぎこちないながらも、そこそこ上手に

自己紹介をすると、

勝彦は「ま、、、マジか…」と驚いた様子で、京香の方を見つめたー。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・


コメント


今月最初のお話デス~!


見ず知らずの他人に憑依して、自分の彼女のフリをする…

果たしてうまく行くのでしょうか~?


今日もお読み下さり、ありがとうございました!!

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