<他者変身>実家暮らしの他者変身④~ピンチを超えて~(完) (Pixiv Fanbox)
Content
床に、コップが落ちてジュースが零れ落ちるー
尻餅をついてしまっている母親ー
ラバースーツ姿の直幸は、絶望の2文字が頭の中に浮かんだー。
「--あ、、あ、、、あ、、、あなた、、、え…」
母親は完全に戸惑った様子で、ラバースーツ姿の直幸を見つめているー
「---え…」
直幸も戸惑うー
”今、変身を解除するところを、見られたー?”
もし、見られていたら終わりだー。
大学の意中の相手・絵美里に、変身薬で変身して
色々楽しもうとしていた直幸ー。
そのために、両親と妹の奈緒子が、祖父母の家に遊びに行く日を
見計らって、入念に準備を行ってきたー。
それなのにー
それなのにーー
どうしてー?
どうしてこうなったー?
「--あ、あなた…なんで、そんな格好ー」
母親の言葉に、直幸は、闇の中に光を見たー。
”そんな格好ー”
つまり、ラバースーツ姿の直幸のことを言っているー。
”ってことはー”
直幸は、すぐに頭をフル回転させたー。
もしも、絵美里から直幸の姿に戻る場面を見られていたとすればー
母親の第1声は、
”ラバースーツを着ていること”ではないはずだー。
絵美里の姿から、直幸の姿に戻ったことについて、聞いてくるはずー。
だがー、
今、母親は”直幸がラバースーツ姿で立っていること”について
疑問を口にしているー
ならばー
”変身を解除する瞬間”は見られていない、と考えられるー。
「---あ、、あは、あははは 見られちゃったかぁ~」
直幸は頭を掻きながら、母親に向かって
「ジュース落とすぐらい、驚かないでくれよ~」と笑うー。
「---そ、、そ、、その格好はーー
さ、、さっき、彼女さんが着ていた服、、、よね?」
母親は直幸の方を唖然とした表情で見つめているー。
絵美里に変身した直幸は、
咄嗟に”直幸の彼女”だと説明したー
さっき、ラバースーツ姿で外出したり、帰宅するのを見られているー
直幸の母親は
”直幸が彼女の服を勝手に着ている”
そう思っているのだー
「ん?あ、いや、違うよ。
これはさ、来月の文化祭で劇をやる予定なんだけど、
その衣装でさー。
俺と絵美里…あ、いや、幸恵は暴走族役だから、
その練習を今日してたんだよ」
絵美里に変身していた直幸は
変身を解除後にトラブルにならないよう
絵美里姿の状態で、両親と妹の前では、”幸恵”と偽名を
名乗っていたー。
”絵美里”と本名を名乗っても良かったのだが、
もしも家族が”本物の絵美里”と今後出くわすようなことが
あれば、厄介なことになるー
だから、”絵美里の姿”だが、絵美里とは名乗らずに
幸恵と偽名を名乗ったのだー。
一瞬、つい、”絵美里”と言ってしまったが
すぐに名前を言い換えたー。
「---そ、、そ、、そうなの」
母親が”腑に落ちない”という感じの表情を浮かべながらも
なんとか納得するー
「で、幸恵さんは?」
今、直幸は変身を解いたー
”絵美里姿の直幸”はもう、この場にはいないー
「--あぁ、さっき急用が出来て帰ったよ」
直幸が苦笑いをしながら言うと、
母親は首を傾げていたものの、なんとか納得した様子だったー
「--セーフ」
母親が立ち去ったのを見て、直幸は、ドキドキする心臓に
手を触れたー
危なかったー
本当に、終わるところだったー
「あとはーー」
直幸は、ラバースーツから、手早く自分の普段の私服に
着替えると、そのまま妹の奈緒子が帰宅するのを待ったー
タイミング悪く、奈緒子と足を運んだコンビニに、
”本物の絵美里”が、やってきて、
奈緒子が絵美里に気づいてしまったー。
当然、兄が絵美里の姿に変身していた、なんて夢にも
思っていなかった奈緒子は、本物の絵美里に普通に
声をかけてしまい、本物の絵美里は戸惑っていたー。
あのあと、どうなっただろうかー。
「---大丈夫だ、落ち着け、俺」
直幸は深呼吸しながら奈緒子の帰りを待つー。
本物の絵美里と、どんな会話をしたのだろうかー。
まさか、本物の絵美里と意気投合して、
奈緒子と絵美里がここまでやってくることはないはずー
絵美里は”人違いだと思いますけど”みたいなことを
言っていたし、奈緒子もきっとー
そんな風に考えていると、奈緒子が帰宅したー。
コンビニで買ったお菓子を持っている奈緒子ー
「あ、お兄ちゃん!いつの間に帰ってたの?
探したんだよ~!
彼女さんと一緒に!」
奈緒子が頬を膨らませながら言うー
「ははは、悪い悪い」
直幸はドキドキしながらそう言うと、
奈緒子が「あ、そうだ!さっきコンビニで、幸恵さん
そっくりの人がいたよ~!」と笑うー。
「ははは、マジか~」
直幸は笑いながら背を向けるー
”本物の絵美里”のことを言っているのだろうー
「でもね~、人違いだったみたい!悪いことしちゃった!」
奈緒子の言葉に、
直幸は「ふ~~~」と、ほっと、胸を撫でおろしたー
これでー
これで、なんとか、家族に対して誤魔化すことができたはずだー。
「幸恵さんは~?」
奈緒子が笑いながら聞くー
「ん?あ、あぁ、もう帰ったよ」
直幸がそう言うと、奈緒子は「え~~~~!そんなぁ~」と呟くー
「もっとお話したかったのにぃ~」
奈緒子の言葉に、直幸は
「ま、今度また遊びに来てくれるよ」と笑ったー
”もう、二度と来ないけどなー”
直幸は内心でそう呟くー
もう、こんなことごめんだー。
大学の同級生に変身して
あんなことやこんなことをしようとしていた、なんて
家族に知られるわけにはいかないー。
あとはー
タイミングを見計らって、絵美里姿で着ようとしていた
エッチな衣装を捨てて、メイク用品を捨てれば
”完璧”のはずだー。
”幸恵とは別れた”と言えば、なんとかなるだろうー。
「--ふぅぅ~~~あぶなかったぁ~~」
部屋に戻った直幸は、へとへとな様子で、そう呟いたー。
「--実家暮らしのうちは、他人に変身して
遊ぶなんて、するもんじゃないな…」
直幸はどこか寂しそうにそう呟くー
もしも、両親と妹がそのまま祖父母の家に
予定通り、遊びに行って、宿泊していたのであればー
今頃、絵美里の姿で、コスプレしたり、
エッチしたり、お風呂に入ったり、
自撮りを楽しんだり、色々な言葉を口にさせて
それを録音したりー
たっぷりと楽しめていたはずなのにー。
そう思ってしまうと、どうしても、
”祖父が風邪を引いてしまって、ドタキャン”に
なってしまった状態に”運が悪すぎるだろ”と
思わずにはいられなかったー。
けれどー
最悪の事態は免れることができたー。
家族に、”同級生の女子に変身して、エッチなことをしようとしていた”
なんてばれたら、もう最悪だー。
「--この服は、捨てよう」
メイド服やチャイナドレス、ラバースーツを袋に詰めて
自分の部屋の押し入れの中に放り込むと、
直幸は寂しそうにそう呟いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
直幸が大学の食堂で昼食を食べていると、
絵美里が近づいてきた。
「--ちょっと、いいかな?」
絵美里の言葉に、「あ、、うん」と、直幸は
昼食を済ませて、人の気配のない場所に移動したー
絵美里とは、恋愛関係には全くないものの
高校時代からの間柄で、それなりに話す間柄ではあるー。
「---田宮くんの、妹さんに昨日、コンビニで会ったんだけど…」
妹とは、奈緒子のことだー。
直幸は少しドキッとしながら絵美里の方を見るー
「ーーなんか、わたしのこと”幸恵さん”と呼んできたりー
”お兄ちゃんの彼女さん”って言ってきたりしてたんだけど…」
絵美里が戸惑った様子で直幸を見つめるー。
「---…え…あ、、妹はほら、ちょっとドジだから」
直幸が苦しい言い訳をすると、絵美里は表情を歪めたー。
「---わたしのこと、勝手に彼女扱いしてるの?」
絵美里が不満そうに呟くー
「え、、い、、いやいや、そんなことしてないよ!」
直幸は戸惑いながら答えるー。
「-だって、妹さん、わたしのこと、完全に田宮君の
彼女だと思い込んでたよ?
普段、わたしの写真見せながら「これ俺の彼女なんだ~!」
とかやってるんじゃないの?」
絵美里が少し怒りっぽい口調で言うー
「そ、、そ、、そんなこと、しないよ!」
直幸は引きつった笑顔で答えるー。
”そんなことはしてない”
それは、事実だー。
だが、もっとヤバいことをしていたー
勝手に変身薬で絵美里の姿に変身して、
あんなことやこんなことをしようとしていたー
「--そういうの、やめてよね。
田宮君の彼女になるとか、マジでありえないから」
絵美里はそれだけ言って立ち去っていくー
”ついでにハッキリ振られたー”
直幸の片思いの夢は、どさくさに紛れて、終わったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
悲しそうな表情で帰宅した直幸ー
「ただいま」
直幸が元気なく呟くとー
そこに家族の姿はなかったー
「ん?」
首を傾げる直幸。
今度こそ、祖父母の家にでも出かけたのだろうかー。
そんな風に思いながら、自分の部屋に戻るとー
そこには、両親と妹の奈緒子がいたー。
「--え」
目を点にする直幸ー
部屋にメイド服とチャイナドレス、ラバースーツ、
バニーガール衣装、巫女服ー
メイク用品が並べられているー
「いっ!?!?!??!?!」
直幸は思わず変な声を出してしまったー
しかもーーー
机にしまってあった”変身薬”の残りや
変身を解除するための”吸引機”ー
さらには、印刷していた”やりたいことリスト”までー
「--あ、、、ぅ…あ?」
直幸は、過酷な現実に表情を歪めたー。
「--お兄ちゃん、変態!」
奈緒子が、軽蔑の眼差しで直幸を見つめるー
「--直幸、、こ、、これ、どういうことなの?」
戸惑う母親ー
「--直幸、ちゃんと説明しなさい」
父親が強い口調で言うー
「--あ、い、、いや、それは、、幸恵が
勝手に置いて行ったやつでー」
”絵美里姿の自分”の時に名乗った偽名を口にするー
”俺の彼女が勝手に置いていったんだ”と叫ぶー。
「---変身薬」
妹の奈緒子が呟くー
「昨日ここにいた”彼女”さんってー
もしかしてお兄ちゃん!?」
奈緒子がハッとした様子で言うー
「コンビニでわたしが出会った絵美里さんって人が本物で
お兄ちゃんが勝手にあの人に変身して
ここに置いてある「やりたいことリスト」のこと
やろうとしてたんじゃないの!?」
妙な推理力を発揮した妹の奈緒子に絶望する直幸ー
「--ひっ!?違う!俺は、、俺は、何も、知らない!」
サスペンスドラマで追い詰められた犯人のような
無様な醜態をさらす直幸ー
「---俺は、、知らない!」
直幸は部屋から逃げ出そうとするー
しかしー
「ひぃっ!?」
直幸は尻餅をついたー
そこに、絵美里がいたからだー。
「--な、な、、なんで、、ここにぃ!?」
直幸が叫ぶと、妹の奈緒子が言ったー
「昨日、コンビニで連絡先交換したのー。」
とー。
絵美里が言うー。
コンビニで会った奈緒子が、絵美里のことを
”お兄ちゃんの彼女”と思い込んでいたため、
絵美里が事情を聞いて、奈緒子は、”絵美里姿に変身していた直幸”との
出来事を全て話したー。
この時点で、奈緒子は、”お兄ちゃんが変身している”などと
夢にも思っていなかったものの、
話の食い違いを不審に思った絵美里と奈緒子は、連絡先を交換、
奈緒子が”お兄ちゃんの部屋、わたしが調べてみる!”と
約束してー
今日ーー
直幸が大学に行っている間に、奈緒子が直幸の部屋を
調べてしまったのだー
そして、変身薬を見つけ、奈緒子が、絵美里に連絡して
絵美里を呼び出したー
「--その変身薬で、わたしの姿に変身してー
そこのリストに書かれてること、やろうとしてたって、こと?」
絵美里が低い声で呟くー
直幸は、観念したー
「----はぃ です」
もはや、言い訳もできないー
「--馬鹿!!!!!!!!!!!変態!」
絵美里の怒声と、ビンタの音が部屋に響き渡ったー
怒りの形相の両親ー
軽蔑の眼差しの奈緒子ー
泣き出してしまう絵美里ー
おわったー
直幸はこう思ったー
そして、天井を向きながら、静かに呟いたー
「実家暮らしで、あんまり変なことしちゃ、ダメだな…」
とー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
実家暮らしで、あんなことやこんなことをするときは
注意ですネ~☆笑
お読み下さりありがとうございました!!