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目黒警視正が、パソコンの画面を見つめているー。


”モルティング対策班”

警察署内ではなく、とある施設内にカモフラージュするかのように

設置された、この場所では

目黒警視正が”人を皮にする力を持った凶悪犯”黒崎 陣矢ー

通称”モルティング”の追跡を続けているー


そして、その裏に潜む”深淵”を暴き出すー。


それが、目黒警視正の使命だー。


「--メグちゃん!」

いかにもギャルという感じの風貌の三枝 真綾が、

笑いながら入って来るー。


ミニスカート姿で、大胆に脚を晒しー、

派手なネイルや化粧が目立つー。


その様子をアウトロー風な刑事・矢神 明信が

鋭い目つきで見つめるー


真綾は、目黒警視正の前に歩いていくとー

「メグちゃんに頼まれた”例の件”ばっちりだよ!」

と、軽い調子で口にしたー。


真綾よりはるか年上でー

階級も遥か上のはずの目黒警視正は、

”メグちゃん”と呼ばれても、気にも留めずに

淡々と答えたー


「そうですかー

 ご苦労様ですー」


と、穏やかな笑みを浮かべながらー。


・・・・・・・・・・・・・・


登場人物


長瀬 治夫(ながせ はるお)

若き警察官。”皮”にまつわる事件に巻き込まれていく


松永 亜香里(まつなが あかり)

治夫の彼女。現在同居中。


長瀬 聡美(ながせ さとみ)

治夫の妹。亜香里に激しいライバル心を燃やしている。


片桐 由愛(かたぎり ゆめ)

かつて治夫に助けられた女子高生。


目黒 圭吾(めぐろ けいご)

警視正。計算高い性格の持ち主で、出世欲も強い。


矢神 明信 / 堂林 幸成 / 三枝 真綾 / 剛

目黒警視正率いる「モルティング対策班」のメンバー。


黒崎 陣矢(くろさき じんや)

指名手配中の凶悪犯罪者


・・・・・・・・・・・・・・


”モルティング対策班”本部の地下駐車場で

車に乗り込む治夫ー。


”三日後には、片桐由愛を指名手配し、

 黒崎陣矢の追跡を始めますー

 それまでに、あなたが片桐由愛を救い出せるというのであれば、

 それまでは、待ちましょう”


目黒警視正の言葉を思い出すー


「-由愛ちゃんー…

 俺が必ず助け出すから」

運転席に座った治夫は、そう呟くー


片桐 由愛ー

真面目で明るい女子高生で、

治夫が以前、不良に絡まれていたところを助けた子だー。

その由愛が、凶悪犯の黒崎陣矢に皮にされて、

悪事に利用されているー。


「--何か、黒崎を追う手がかりはあるのか?」

一緒に車に乗り込んだ、対策班メンバーのひとり、

堂林 幸成が治夫に声を掛けるー。


好青年風の男で、最初の挨拶の時も、治夫に

好意的な対応をしていた幸成ー。


「---まずは、由愛ちゃんの家に行ってみようと思いますー。

 由愛ちゃんが帰宅してるとは思えませんけど、

 黒崎に繋がる手がかりがあるかもしれませんので」

治夫が丁寧にそう返すと、

幸成は「確かにそうだな」と頷く。


「---」

車を走らせながら、治夫はふと、口にしたー


「あの、いいんですか?」

とー。


目黒警視正は、由愛を指名手配して、強引に黒崎を

追い詰めようとしていたー。

”一度皮にされた人間はもう助からない”とー、

そう目黒警視正は言っていたー。


治夫は、その警視正のやり方に”反発”している状態ー

それなのに、この好青年風の堂林 幸成は、

積極的に治夫についてきてくれたー。


「--構わないさ。

 俺も、警視正のやり方は、ちょっと強引すぎると思ってるしな」

幸成が笑いながらそう呟くー。


「--でもまぁ、あの人は、そういう人だし、

 黒崎のような”人を皮にする凶悪犯”と戦うには

 あの人ぐらい、冷徹じゃないといけないのも、事実なんだけどな」

幸成は、そうも付け加えたー。


黒崎 陣矢は

”人を皮にする”恐怖の力を持っているー

並大抵のやり方では逮捕することは、難しいー


だからこそ目黒警視正は”多少の犠牲も厭わない”スタイルで

黒崎を追っているー。


「--それは分かってます」

治夫は、そう呟くー


自分のやり方は、やはり”甘い”のだろうー。


”他人を信じるには、まず、自分を信じることだー”


中学時代の恩師である、泉谷先生ー。

治夫は、泉谷先生の言葉を思い出すー。

泉谷先生の存在こそが、治夫が警察を目指したきっかけでもあったー。


泉谷先生は、こうも言っていたー

”自分の信じた道を進め

 信じた道を進めなくなった時、未来への扉は閉ざされる”

とー。


「--はは、面白い先生だな」

治夫から、泉谷先生の言葉を聞かされた幸成は笑うー。


「--でも」

幸成は運転中の治夫の方を見つめながら続けたー。


「-ー君と俺はどことなく似ているー。

 俺も、全力で力になるよー」


そう呟くと、幸成は静かに微笑んだー。


・・・・・・・・・・・・・


由愛の家に到着すると、

治夫は、誰もいない由愛の家の中に入っていくー。


由愛は黒崎陣矢に乗っ取られたままー

由愛の父親は、最初に陣矢に皮にされた母親・藤江に殺されー

陣矢に皮にされていた藤江は逮捕されたままー。


「--ーーー」

幸成も、由愛の家を慎重に調査しているー。


「--堂林さんは、どうして、モルティング対策班に?」

治夫が、由愛の家を調べながら呟くと、

幸成は苦笑いしながら答えたー。


「--俺も、君と同じさー。

 俺も君と同じように、偶然

 ”人を皮にする凶悪犯”と遭遇してさー

 それを追っているうちに、巻き込まれて

 目黒警視正にスカウトされたー」


幸成はそう言うと、

「-青臭い正義感って、俺も警視正に言われたよ」と、

自虐的に笑ったー


幸成は、3ヵ月ほど前から対策班に所属しているらしいー。


「--はは、なんだか俺と同じですね」

治夫も、幸成の方を見ながら笑うと、

由愛の家の調査を続けたー。


だがー

この日は結局、由愛の居場所や、黒崎陣矢に繋がる

手がかりを見つけることはできなかったー。


「----何か分かったら連絡するよ」

幸成が、スマホを手にしながら言う。


「-今日は、本当にありがとうございました」

治夫が頭を下げると、幸成は「いやいや」と

少しだけ照れ臭そうに首を振るー。


「--君と俺は仲間だー。

 これからも、よろしくな」


「はい」


治夫と幸成は握手を交わすと、

そのまま幸成は車に乗って立ち去って行ったー。


「--」

堂林 幸成ー。

治夫は、頼れる先輩との出会いに、

心強さを感じながら、そのまま家の方に向かって歩き出したー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


”たすけて”


”たすけて”


”たすけて”


ー薄暗い無気味な廃墟地帯ー

”皮”にされた人間たちが、まるで洗濯物のように

吊るされているその場所で、

片桐 由愛は笑みを浮かべながら

煙草を吸っていたー


「--へへへへ」

”壮観”

片桐 由愛の中に潜む黒崎陣矢は

満足げに由愛の身体で煙草を吹かせると、

静かに呟いたー


「--ひとり…しつこく俺を追う刑事がいる」

由愛の声でそう呟くと、

由愛の背後に立っていた男が呟くー


「-目黒か?」

目黒警視正の名前を呟くと、

「いやー」と、由愛は首を振ったー。


「-若造だー。

 若さゆえの勢いがあって、何をしでかすか分からねぇ」

由愛がそう呟くと、

背後に立つ男は、

「それは確かに厄介だなー」と呟くー


目黒警視正は”皮”の件が表に出ないようー、

”秩序を保つため”動いているー

それ故に、”暴走”はしないー。


だがー

治夫は、違うー。

いざとなれば、暴走するかもしれないー


「--若造の名は?」

背後に立つ男が呟くと、

由愛は煙草を踏みつぶしながら微笑んだー。


「---確か、長瀬 治夫とか言ったなー」

由愛の言葉に、

男がぴくっと反応するー


「長瀬ー?」


「-どうかしたのか?」

由愛が言うと、男は「いや」と答えたー。


そして、男は続けるー


「--その男、早めに始末すべきだな」

とー。


「--何か手はあるのかよ?」

由愛がニヤニヤしながらそう呟くと、男は少しだけ笑みを浮かべたー


「--あるー」


その言葉に、由愛は凶悪な笑みを浮かべて、

男の考えている”計画”を、聞き始めるのだったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「--それでね~、今日は~」

楽しそうに雑談している彼女の亜香里ー。


夜、帰宅した治夫は、亜香里と楽しいひと時を過ごしていたー


亜香里は、

”治夫が何か大きな事件に立ち向かっている”ことを

知りながらも、それを応援してくれたー。

亜香里の身にも危険が迫るかもしれない、ということも

覚悟している、と亜香里は言っていたー。

そして、その上で、治夫が立ち向かっている事件について

深堀りすることもなく、

治夫が暗くならないように、と、明るく振舞ってくれているー


亜香里は、治夫にとって

本当に”灯”のような存在だったー

希望の、光ー。


亜香里と出会った時のことを思い出しながら

治夫は”亜香里のことは、絶対に守るからー”と、意を決するー。


黒崎陣矢に、亜香里が狙われる可能性は、

残念ながら否定できないー。


目黒警視正も、その点は配慮してくれて、

周辺のパトロールを強化するように手配してくれているー。


「--亜香里ー」

治夫が、亜香里の方を見てほほ笑むー


「いつも、本当に、ありがとうー」

治夫が、心からの感謝の気持ちを述べると、

亜香里は一瞬、きょとんとした後に

顔を少しだけ赤らめて

「そ、そ、そういうの、、その、、テレちゃう!」と

言いながら台所の方に向かって

逃げるように立ち去って行ったー。


「---」

治夫が笑いながら、キッチンに向かって、治夫に背を向けている

亜香里の方を見つめるー


「--でも」

亜香里が背を向けたまま口を開くー


「でもーーわたしこそ、いつも本当にありがとう」

亜香里は背を向けたまま、静かにそう呟いたー


・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


治夫は”目黒警視正との約束”が

あと2日であることに焦りながらも、今日も捜査を続けていたー


とは言え、出来ることと言えば由愛の写真と

黒崎陣矢の写真を手に、聞き込みをすることぐらいだー。


「--お疲れ」

好青年風の幸成が、昼食を手に、車の中にやってくるー。


「あ、ありがとうございます」

治夫が頭を下げて、幸成が買ってきたサンドイッチを手に、

スーパーの駐車場に止めた車の中で一息つくー。


「--俺のほうも、手がかりなしだ」

商店街の方に聞き込みをしていた幸成が言うと、

治夫は「そうですか…」と残念そうに言葉を口にしたー。


「---あまり気負い過ぎるなよ?

 焦って追い詰められるほど、甘い相手じゃないからさ」

幸成が優しく笑いながら、治夫を心配するー


治夫が「はい」と、返事をして、サンドイッチを平らげると、

車から外に出て、”聞き込みに行ってきます”と、幸成に対して

言い放ち、そのままスーパーの方に向かって行ったー


一人残された幸成は笑うー


「--ははは、ホントに、昔の俺を見てるみたいだなー」

とー。


・・・・・・・・・・・・・


スーパーでも手がかりなしー。

諦めて外に出た治夫ー。


しかしー

そこに、怪しげな老婆が近づいてきたー。


「---片桐由愛を助けたいか?」

すれちがいざまに老婆が呟くー


「---!?」

治夫が驚いて老婆の方を見ると、

老婆は、顔には似合わない邪悪な笑みを浮かべていたー


「--まさかババアが凶悪犯罪者だとは、思わないだろ?」

老婆は笑みを浮かべたー


「く、黒崎、陣矢ー!」

治夫が怒りの形相で老婆を見つめると、

老婆は笑みを浮かべたー。


「--ここで叫べばこのババアを八つ裂きにするし、

 片桐由愛の”皮”も焼却するー」


その言葉に、治夫は歯ぎしりしながら老婆を睨むー


「--お前…何人巻き込めば気が済むんだ!」


「--へへ…このババアはホームレスだったし、

 誰も悲しみやしねぇよ」

そう呟くと、老婆の姿をした陣矢が、

治夫に紙切れを渡したー


”今日の夜ー

19:00-

西地区の第7倉庫で待ってる”


「---!!」

治夫が表情を歪めるー。


「--必ず、一人で来い

 そこで、片桐由愛を引き渡してやるー」


老婆はそれだけ言うと、「ひっひっひ」と笑いながら

立ち去って行ったー


「-----」


明らかに”罠”だー。


でもー

由愛ちゃんを助けるためには、従う以外に道は、ないー。


治夫はそう思いながら、

19:00-

第7倉庫に向かう決意をして、

歩き始めたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「--お疲れ様でした」

治夫が車から降りた幸成に頭を下げるー。


対策班の刑事のひとり、好青年風の幸成が

「結局、今日も片桐由愛の居場所は分からず…か」と呟くー。


しかし、すぐに明るい表情を浮かべて

「まだ明日もある。あまり気を落とすなよ」と、治夫を励ましたー。


「--はい。ありがとうございます」

治夫が言うと、幸成は「じゃ、また明日」と、そのまま立ち去っていくー。


一人になった治夫は表情を曇らせたー。


”今日の夜ー

19:00-

西地区の第7倉庫で待ってる”


「---すみません。堂林さんー」

立ち去っていく幸成の後ろ姿を見ながら、ひとり呟く、治夫ー。


”一人で”

それが、黒崎陣矢の指定だー。

罠なのはわかっているー


けれど、由愛を助けるためには、罠であっても行くしかないー。


治夫は、車の中で銃を確認するー。

弾は6発入っているー。


「----」


 ”自分の信じた道を進め

 信じた道を進めなくなった時、未来への扉は閉ざされる”


恩師である泉谷先生の言葉を思い出す治夫ー


また、目黒警視正に”青臭い正義感”と怒られるだろうかー。


けれどー


「--由愛ちゃんを救うー

 これが、俺の信じた道だー」


治夫はそう呟くと、第7倉庫に向かって車を走らせ始めたー


・・・・・・・・・・・・・・


「--メグちゃん、ハルくんの車が、変な場所に向かってるよ~」


モルティング対策本部-

ギャルな真綾が、モニターを見つめながら、そう呟いたー


「-そうですか」

目黒警視正が微笑むー。


目黒警視正は、真綾に頼み、治夫が使う車に”発信機”を取り付けておいたー。

治夫がもしも、”暴走”した時のために備えて、だー。


「---おそらく、片桐由愛をするとでも言われて

 おびき出されたのでしょうね」

目黒警視正は微笑みながら言う。


「--チッ、馬鹿な野郎だ」

ガムを噛みながらアウトロー風の刑事・矢神明信が呟くー。


「--ーーー」

目黒警視正と明信の目が合うー。


「--矢神さん、お願いできますか?」

目黒警視正の言葉に、明信は少し面倒臭そうにしながらも

「-分かりました。現場に向かいます」と、対策本部の部屋の外に向かって

歩き出すー


「やがみん!頑張って~!」

ギャル風の真綾が、笑いながら明信にエールを送るー


「-ったく、真綾ちゃんはホント、緊張感ねぇなぁ」

明信は頭を掻きながらそのまま、部屋の外に出るー。


「-----」

目黒警視正は、穏やかな笑みを浮かべながらー

治夫の現在地を示すモニターを静かに見つめたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「---」

第7倉庫にやってきた治夫は、銃を手に、

奥へと進むー。


そしてーー


「--ようこそ!」

倉庫の奥から黒崎陣矢が姿を現したー


その横には、イスに縛られて悲鳴を上げる由愛の姿ー。


「--な、、長瀬さん!」

泣きそうになりながら由愛が叫ぶー


「--由愛ちゃん!」

治夫は黒崎陣矢に銃を向けながら、「今、助けるから!」と叫ぶー。


黒崎陣矢が”由愛の外”にいるー

今がチャンスだー。

由愛を着こまれた状態では、うかつに手出しは出来ないー


けれどー

今ならー


治夫が黒崎陣矢の方を睨むー


死んだふたりー

交番の先輩、塚田総司と宮辺奈々子の顔を思い出すー


「お前は、絶対に許さない!」

治夫が叫ぶと、

黒崎陣矢は、狂気的な笑みを浮かべたー。



⑧へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


次回も、驚きの展開がある…かも!?


今日もお読み下さり、ありがとうございました~!

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