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「----あ、、あっ…」

小太郎になった真美は、奇妙なうめき声をあげていたー。


周囲の乗客が、小太郎(真美)の方を見つめるー


「--あ…」

小太郎(真美)は、これまでに感じたことのない、

無気味な感覚を覚えていたー


”小太郎の身体”になった真美に

”小太郎の脳”に記憶されていた情報が

全て、一度に流れ込んだのだー。


入れ替わりの際に、起きる現象ー。

それは、入れ替わってからしばらくして

身体に馴染むと、

”その身体の記憶”が全て、流れ込んでくるー。


”記憶”は”脳”に保存されるー

だから、身体が入れ替われば、当然”脳”に保存された

記憶を、全て手に入れることになるー。


だがーーー

”入れ替わり”の場合、どういうわけか、”魂”も記憶を

持った状態で入れ替わるー。


本来、人の記憶は、脳に記憶されているはずなのだが、

実は”魂”にも、ある程度の記憶能力があるのだろうー。


しかしーー


小太郎(真美)は、茫然とした表情で、

イスに座るー。


「----……」

ぼーっと、窓の外を見つめるー


「--俺は…えーっと…」

そう呟く小太郎(真美)-


”精神”を強く持たないと、

”身体”から”記憶”が流れ込んでしまった際に

その記憶に飲み込まれてー

”中身の自我”を失ってしまうことがあるー。


そうなってしまえば、終わりだー。

小太郎になった真美は、

小太郎の記憶に飲み込まれて

中身ーー

真美としての自我を失いかけていたー。


「---俺は… ……え」

小太郎(真美)は、ギリギリのところで、

自我が飲み込まれることに、耐えたー


「-ち、、ちがっ!わ、、わたしは真美…!」

小太郎(真美)が立ち上がるー

慌てて、真美(小太郎)が向かった車両の方に向かうー。


「---」

真美(小太郎)が、小太郎(真美)が再び近づいてきたことに

笑みを浮かべるー


”ほぉ…身体の記憶に飲み込まれなかったのか”

真美(小太郎)は、にっこりとほほ笑んだー。


だがー

真美(小太郎)は、すぐに近づいてくる小太郎(真美)の様子が

おかしいことに気づいたー


さっきまでも、”焦り”が表情に出ていたがー、

今の小太郎(真美)には、さらに別の”焦り”が見えるー


「---どうしたんですか?」

ニコっと微笑む真美(小太郎)-


”小太郎になった真美は、小太郎の記憶に侵食されつつある”

そう、確信したのだー


小太郎(真美)は半泣き状態で、真美(小太郎)を掴んだー。


「--わたしの、、わたしの、、からだ、、返して!」

自分が、真美であったことを忘れてしまいそうな恐怖に

襲われた小太郎(真美)は半泣き状態で叫ぶー。


真美(小太郎)は笑うー


”入れ替わり直後”が、身体と魂の定着が不安定な状況ー

小太郎のように、強い精神力と冷静さを持っていれば

真美の記憶が流れ込んできても、小太郎としての自我も保てるー

しばらくすれば、身体と魂は定着し、自我を失う心配も無くなるー


だが、真美のように、入れ替えられたことによる動揺、怯え、恐怖ー

そういったものがある状態で、身体の記憶が流れ込んでくるとー

それに精神が飲み込まれてしまい、

最悪の場合は”自我”を失うー。


入れ替わってから1時間前後が

”身体”と”魂”の繋がりが不安定だと、言われているー。

その間は、”精神が不安定”にならないよう、注意する必要があるー。

”身体”から流れ込む記憶に飲み込まれて、

一度自我を失えば、もう、自分が自分であったことを、思い出せないからー。


「---おじさん、妄想はやめてくれます?」

真美(小太郎)が、わざと強い口調で言うー。


「--ち、、ちが、、わ、、わたしは…真美…!」

小太郎(真美)が叫ぶー


「ほんとうに、そうなんですかぁ?」

囁くようにして、挑発的な声を出す真美(小太郎)-


「--自分を女子高生だと思い込んで中年のおっさん…

 見苦しいですよ?」

小声で囁く真美(小太郎)ー


”精神”を痛めつけるー。

そうすることで、真美としての自我が、小太郎(真美)から消えていくー


「お、、お、、俺は…俺は…おっさんじゃない!」

小太郎(真美)が叫ぶー


「--ふふ…

 ”俺” ね」


真美(小太郎)が笑いながら言うー。

すぐに小太郎(真美)がハッとした様子で叫ぶー


「--わたしは真美なの!!!!」

とー。


電車が駅に止まるー。


真美が降りる駅は、次の駅だー。


「--見てごらん」

真美(小太郎)が小声で呟いたー

周囲の乗客が、小太郎(真美)のことを冷たい目で

見つめているー。


「---ちがう!!俺が真美なんだ!」

小太郎(真美)が叫ぶー


「--俺…俺…ちがう、、、わたし」

小太郎(真美)が目に涙を浮かべながら

パニックに陥っていくー。


「---いい加減にしろよ、おっさん」

「あなたさっきから、何言ってるの?」

「その子がかわいそうだろ!」

「通報したほうがいいんじゃ?」

「-無様なおっさんだなぁ」


電車の乗客たちが呟くー


「--ちがっ…ちがっ…俺は、、俺はただ、女子高生になりたくて…」

小太郎(真美)が頭を抱えながらその場に膝をつくー。


「---…わたしに、近寄らないでください」

真美(小太郎)が嫌悪感を丸出しにして、小太郎(真美)から

離れていくー


”勝った”

真美になった小太郎は勝利を確信したー


小太郎になった真美は、小太郎の記憶に飲み込まれつつあるー

激しい動揺とパニックが、真美の精神を蝕んでいるー。


「--くくく」

真美(小太郎)は、真美の綺麗な手を見つめるー。


”俺は、自分の記憶を保ったまま、JKの身体をゲットだぜ”

ペロリと唇を舐める真美(小太郎)-


”入れ替わりを仕組んだ側”である小太郎には

動揺など全くないー

むしろ、女子高生の身体を手に入れることができて

超がつくほど”ハイテンション”だー。

もうじき、入れ替わって1時間を目安に

身体と魂が定着し、そこまで自我を保っていることが

できれば、基本的に自我を失う心配は、もうない。


真美(小太郎)は、”真美の家”の最寄り駅が

やってくるのを、心待ちにしていたー


帰宅したら、まずはボディチェックー


そしてー


”--へぇ 好きな男子がいるのか…

 試しに誘惑してみるのも面白いかもな”

真美(小太郎)はそんなことを思いながら

ニヤッと笑みを浮かべたー



「----俺は…」

小太郎(真美)は座席に座るー。


「--俺は、女子高生になりたかったんだ…」

小太郎(真美)は、自分が真美であることを

完全に認識できなくなりつつあったー


”そうだー

 今日は入れ替わるために、電車にー”


小太郎(真美)はそう思いつつも、

”--…入れ替わるなんて、できるわけないか”と

ネガティブな考えに支配され、

イスにただ、茫然と座り続けるー


”思えば、俺の人生は、無様な人生だった”

小太郎(真美)はそう思いながら

”小太郎の人生”を振り返るー。


このまま、会社内の窓際に追い詰められたまま

一生を過ごすのだろうー

生涯独身は確定しているし、エッチなこと以外に

特に趣味もないしー


「---ふぅ」

小太郎(真美)はため息をついたー


”あぁ…あのJK、かわいいなぁ”

真美(小太郎)のほうを見つめる小太郎(真美)-


「----」

真美(小太郎)を見ていた小太郎(真美)は、

完全に小太郎の記憶に飲み込まれるギリギリのところでー

再び思いとどまったー


”違う”


”違う!わたしはこんなおっさんじゃないー”


「--俺は、、わたしは、、おっさんじゃないい!!!!!」

小太郎(真美)が怒りの形相でイスから立ち上がったー


電車が真美の降りる駅に近づくー


真美(小太郎)は”なかなかしぶといな”と思いながら、叫んだー


「いい加減に、気持ち悪いのよ!おっさん!」

とー


真美(小太郎)の鋭い言葉に、

小太郎(真美)は強いショックを受けてーー


急速に、自分が真美だという”自我”がはじけ飛んでいくー


「俺は、、俺は…」


電車が駅に停車したー。


真美(小太郎)は、激しく動揺している小太郎(真美)を

見つめながら、憐みの表情で微笑んだー。


「--さようなら”哀れな中年のおっさん”」

挑発的な言葉を口走り、真美(小太郎)はにこっと笑うと、

そのまま電車から降りたー


しかしーー


「--うあああああああああああっ!!!!!

 俺が真美だあああああああああああああああ!!!」


小太郎(真美)は、もう自分が真美なのか小太郎なのか

分からなくなっていたー

それでも、あまりの屈辱に叫びー

真美(小太郎)に襲い掛かったー


強い力で、真美(小太郎)を駅のホームに押し倒す小太郎(真美)-


「-俺は、俺は、、俺はああああああああああ!」

小太郎(真美)は、真美(小太郎)の胸倉を掴んで、

物凄い力で真美(小太郎)を揺さぶるー


「--ひっ!?」

真美(小太郎)は、急に駅のホームに押し倒されたことで驚くー


しかもー


”--えっ!?なんだこの力!?

 ひっ!?”


女子高生の身体になった小太郎はー

小太郎になった真美の”力”に驚くー


真美(小太郎)は、真美の身体が想像以上に非力で、

元・自分の身体(小太郎の身体)が、想像以上に力持ちなことに驚くー


小太郎(真美)は、

拳を握りしめて、真美(小太郎)に向けるー

怒り狂っているー


「--ひっ、、や、、やめっ!」

元々臆病な小太郎はーー

真美(小太郎)は激しく動揺して、泣きそうになりながら

小太郎(真美)を見たー


「や、、や、、やめてえええええええ!」

真美(小太郎)が悲鳴を上げるー


だが、その直後ー

”駅のホームで中年のおっさんが女子高生を押し倒した”騒ぎを

聞きつけて駆け付けた駅員が、小太郎(真美)を取り押さえたー


「くそっ!俺は、、俺は、、おっさんじゃねぇえええええええ!」

小太郎(真美)は叫びながら連行されたー。

もう、小太郎になった真美は、自分が真美であることを

思い出せなかったー



「--ひ、、ひ、、、あ…ぅ」

身体を震わせながら、目から涙をこぼす真美(小太郎)-


急に襲われたことー

”この身体”が予想以上に非力で、

元自分の身体を振り払うこともできなかった恐怖ー


それがーー

真美になった小太郎を激しく”動揺”させたー。


そしてー


「---大丈夫ですか?」

駅員の言葉に、真美(小太郎)は「は、、はい…」と頷くー


「--あの男は、知り合いですか?」

駅員から聞かれた真美(小太郎)は-

「わ、、わかりません…急に…急にわたしを…」

と、泣き出してしまうー。


これはーー

”演技”ではなかったー


真美になった小太郎は、

小太郎(真美)に襲われたことで、

激しく動揺しーー


”自我”がはじけ飛んでしまったー

真美の身体の”真美の記憶”に飲み込まれてー

小太郎の自我は、身体に定着する一歩手前のタイミングで

はじけ飛んでしまったー


「こわい…こわい…」

真美(小太郎)が震えるー。


その姿は、もはやー

”女子高生の身体を奪った男”ではなくー

”男に襲われて怯える女子高生”そのものだったー


自分が小太郎であることを忘れてしまった真美(小太郎)は、

”小太郎(真美)に襲われた”ことで、強いショックを受けー

以降、しばらくの間、人間恐怖症に陥り、

部屋に引きこもるようになってしまったのだというー。



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


ふたりとも自我を失って、

元々の自分のことを忘れてしまいました~!


真美になった小太郎は、余計な挑発をせずに

そのまま駅に降りれば…

小太郎としての自我を持ったまま、女子高生ライフを

送ることができたかもしれませんネ!


お読み下さりありがとうございました~☆!



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