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”お前はかわいいー”

”お前は美しいー”

”かわいいー”

”かわいいー”

”お前は優秀だー”


智恵を皮にして、智恵の中に潜む男は、

1か月間、智恵を内側から褒め続けたー。


智恵に、自分が皮にされたという自覚はないー。

男が”あえて”自我を智恵に譲り、自分は智恵の中に潜み、

ただただ、智恵にポジティブな言葉をだけだからだー。


”ククク…もう少しだー”


「---」

智恵は化粧を終えると、髪型を整えて

自信に満ちた表情で、微笑むー。


「--わたし、超かわいい…♡」

うっとりとした表情で鏡を見つめる智恵ー


1ヵ月前の智恵は、今とは別人だったー。

確かに可愛い顔立ちではあったものの、

本人が、”自分がおしゃれなんて”と思い込んでいて

髪も傷んでいるような子であった上に、

自信のなさが、ネガティブなオーラとして

常に噴き出ているような感じであったために、

”暗い印象”を与えるような子だったー。


彼氏の勇吾に対しても

”わたしみたいな女子と付き合ってるなんて、申し訳ない”という

考えを抱いているような、そんな感じだったー。


”勇吾くんのために、少しでも前向きになりたい”


そんな純粋な気持ちから、智恵は偶然見つけた

”ポジティブ・コア療法”を受けたー


それから1ヵ月ー

智恵は、もはや別人だったー。

傷んでいた髪は、少し茶色に染まっている感じになりー

化粧を積極的にするようになりー

私服もおしゃれになったー

性格は嘘のように明るくなりー

今では友達は増え、複数の男子と親しいー


智恵は”ポジティブ・コア療法ってホントにすごい”と

そんな風に考えていたー


実際は”自分が皮”にされて、

内側から褒められ続けることによって、

”ポジティブ”を通り越して高飛車になっているー、のだが、

そんなこと夢にも思わずにー。


「ーー智恵…ちょっと話があるー」

彼氏の勇吾から呼び出された智恵は

「話~?わたし、昼休み忙しいの!」と、勇吾の話に

適当に返事をして、友達とゲラゲラと笑い合っているー


「---」

男子からの視線を感じて”自分の美貌”に、酔いしれる智恵ー。


「---智恵、ホント可愛くなったよね!」

友達からの言葉に「ふふ、当たり前でしょ これが本当のわたし」と

自信満々に言い放つ智恵ー。


すっかり別人になってしまった智恵にー

勇吾は、”別れ”を告げるつもりだったー。


放課後ー

”昼休みは忙しい”と断られた勇吾が、なんとか智恵と

話の約束を取り付けるー。


智恵が髪をいじりながら、呼び出された空き教室に

入って来たのを見て、勇吾は口を開いたー。


「--智恵…最近ほんと、どうしちゃったんだよ…?」

勇吾は戸惑っているー


”勇吾くんのために、少しでも明るくなりたい”

そんな、純粋だった智恵の願いは、もはや

完全に消え失せ、智恵は笑みを浮かべたー。


「--わたし、す~っごくかわいくなったでしょ?

 こんなかわいいわたしが、”付き合ってやってる”んだから、

 感謝してよね!」


智恵は髪をふわっとさせながら言うー。

”まさか、自分がこれから振られる”などと、

夢にも思っていない表情ー。


勇吾は、悲しそうに智恵を見つめるー。


「---ごめん」

勇吾が頭を下げたー


智恵の表情から笑顔が消えるー。


「--ごめん。智恵。

 もう、限界だー。

 俺……もう、智恵とは付き合えないー。」


勇吾の言葉に、智恵は信じられないという表情で「は…?」と

首を傾げたー


「--え??い、意味わかんない… 

 え???は????

 勇吾くん、自分が何言ってるかわかってる?」

智恵が混乱した様子で、呟くー


「分かってるよー

 最近の智恵はーーー

 …なんかこう…イヤなんだー。

 俺には、耐えられないー」


勇吾の言葉に、智恵は笑みを浮かべたまま何度も何度も頷いたー


「--あっは♡ 照れてるんだよね?

 わたしが滅茶苦茶かわいくなっちゃったから、勇吾くんは

 照れてるんだよね!


 ふふ、心配しないで!

 わたしはーー」


「--そんなんじゃないよ!」

勇吾は叫んだー


智恵が少しだけびくっと震えるー。


”かわいいおまえを否定するとは何事だー”

”こいつはお前の可愛さに嫉妬してるだけだー”


内側から、智恵に脳裏に言葉が響くー


「---俺ーーー

 俺ーーーーー

 暗くてもー、優しい智恵が好きだったー」


勇吾は涙ぐみながら智恵をまっすぐ見つめたー


「--今の智恵はーー

 明るくて、可愛くてもーーーー

 大事なモノを見失ってるー」


勇吾の言葉に、智恵は、唖然としているー


「--今の智恵はーー

 俺、”嫌い”だよ」


勇吾はそれだけ言うと、空き教室から

立ち去っていこうとしたー


「--は???は???はぁあああああああ??????」

智恵が声を荒げるー


「--あんた何様!?

 わたし、勇吾くんと”付き合ってやってた”のよ?


 あんた、わたしに付き合ってもらってた分際で、

 何様なの!?」


智恵が怒りの形相で叫ぶー


「--だいたい、滅茶苦茶かわいいわたしと

 あんたみたいなどこにでもいそうな男子高校生が

 釣り合うと思ってたの!?


 ばっかじゃないの!?

 わたしを振るとか、、わたしを馬鹿にするのもいい加減にしろ!」


智恵が怒りの形相で叫んだー


もはやー

”勇吾くん”に対する思いは、高飛車になりすぎた智恵からは

はじけ飛んでしまっていたー。


「---そういうとこだよ」

勇吾が立ち止まって呟くー。


「---今の智恵の、そういうところがーー

 俺は、”超”がつくほど、大っ嫌いだ」


勇吾は、智恵の方を悲しそうな目でまっすぐ見つめると、

そのまま立ち去って行ったー


「--うあああああああああああああ!!!!!!」

智恵が怒りの形相で叫ぶー。


「--う…う…う…」

智恵がその場に座り込んで、涙を流すー。


元々自分は、勇吾のために明るくなりたいと願ったのでは

なかったかー。

智恵に、そんな感情が沸き上がって来るー


しかしー

「--わたしの可愛さを理解できないなんて……」

智恵は、やがて怒りに埋め尽くされるー。


”くくく…そうだ。

 あいつは馬鹿だー

 お前の美しさにまったく釣り合わないー”


智恵にはー

男の言葉自体は直接届いてはいないー


だが、脳に直接響いているその言葉は

確実に智恵に影響を与えているー


「そうよーー

 あんなやつ、、あんなやつ…

 わたしには釣り合わないっ!」


智恵はそう言って立ち上がるとー

そのままよろよろと歩き出したー


・・・・・・・・・・・・・・


勇吾に振られてしまったー。

その事実が、智恵の本来の心に強い精神的ショックを与えたー。


その影響かー

智恵は”内側に潜む男”の”誉め言葉”の影響をさらに

強く受け始めていたー。


おしゃれ好きの女子高生に変わり果てて、周囲を見下すような

言動が増えたー


「--あんた、わたしより可愛くないくせに生意気!」

智恵が、クラスメイトの女子をビンタするー。


「--身の程を知りなさい!」

智恵は、クラスでも次第に孤立し始めていたー


”明るくなって、ポジティブになったー”

そんな段階を通り越して

”まるで女王様のように高飛車に”なり始めたー。


友達に対して”わたしを女王様として扱いなさい”と

言わんばかりの態度ー


”男子はわたしに尽くして当たり前”と言わんばかりの態度ー

自分の身体や、男女の駆け引きに絶対の自信を持ち、

男子を落とすことに快感を感じ、同学年の男子の何人かを誘惑して

身体の関係を持ったー


先生に対してまで、見下すような言動が増えー

智恵は、もはや、完全に智恵ではなくなってしまっていたー


”完璧だー”

男は笑みを浮かべるー


”お前は、女王だ”


褒めてー

褒めてー

褒めてー

褒めまくるー


褒めれば、人は伸びるー


だがー

”度が過ぎればー”

人は、いとも簡単に道を踏み外すー。


”内側”からの声であれば、なおさらだー。


ネガティブだった智恵は、

今や完全に”わたしは女王”と信じて疑わない

高飛車な女に変わり果てていたー。


自宅で化粧をする智恵ー

唇を触って妖艶に微笑むー。


休日ー

智恵は、ミニスカートを履いて、大胆に生足を晒しー

胸元をチラ見させるかのような、格好で外へと出かけようとしたー


「--智恵…」

母親も、智恵の豹変に困惑していたー


”わたしみたいなかわいい娘を持てたことを、誇りに思いなさい”

智恵は、そんなことまで言いだすようになっていたー。


「--わたし…可愛すぎる…♡」

駅前の鏡で、自分の姿を見つめながら

智恵は自分を抱きしめるー


”お前は可愛いー”

”お前は可愛いー”

”お前は可愛いー”


智恵に潜んだ男の”目的”は、

間もなく達成されるー


”ポジティブ・コア療法”と称して

美少女を皮にし、その中に男を潜ませてー、

褒め続けー

その少女を、高飛車な女へと変えていくー。


そして、その果てにー


数日後ー

智恵は学校で問題を起こしたー


「--わたしは女王よ!どいつもこいつも、

 わたしの美しさを前に嫉妬してるの!」

智恵が、智恵の態度に苦言を呈した元彼氏・勇吾を

グーで殴りつけたー


「--わたしに謝れ!」

智恵が怒り狂っているー


勇吾が「--何が女王だ!」と智恵を睨むー。


「---はぁ?こんなに可愛くて、優秀なわたしに

 話しかけてもらえるだけで、幸せなコトなのに、

 あんたにはそれが理解できないの?」

智恵の偉そうな態度はさらにエスカレートしているー。


「---わたしは女王よ!」

智恵が叫ぶー


「--お前は…」

元彼氏の勇吾が、智恵を睨みつけるー


「お前は偉そうで嫌味な最低な女だ!」

勇吾の叫びに、智恵の怒りは爆発したー


「---はあああああああああああああああ??????」

智恵が怒りの形相で叫ぶー


”このわたしが侮辱されたー許せないー”


だがーー


周囲を見渡した智恵はー

”自分の味方”が誰もいないことに気づいたー


友達も、

先生もー

智恵の最近の態度に、すっかり呆れてしまっていたのだー。


「---なによ!!なによその目!

 みんなみんなわたしに嫉妬して…!

 ふざけんな!

 これだからバカは困るのよ!

 どいつもこいつもバカばっかり!」


智恵は怒り狂ってそう叫んだー。


その夜ー

智恵は両親とも大喧嘩して、

怒りの形相のまま、家を飛び出したー。



そこにーーー


「---こんばんは」

黒いスーツの男が姿を現してー

智恵の前で、膝を折ったー。


「---女王様」

黒いスーツの男が笑みを浮かべるー。


男はー

智恵がポジティブコア療法を受けた際に姿を現した

医師のような恰好をした女の”中”にいた男だー。


「---あら?分かってるじゃない」

智恵は、”知らない男”に対しても、高飛車な態度で答えるー。


「--女王様ー

 女王様の美しさを生かすことのできる世界を

 ご用意しておりますー」


黒スーツの男が、笑みを浮かべながら

”夜の店”を智恵に紹介したー


「--わたしの……美しさを…」

智恵が嬉しそうに呟くー


「そうですー

 あなたの家族・友達・先生ー

 そういう馬鹿なやつらとは違ってー

 ここではあなたの美しさをみんなが理解し、

 共に高め合っていけるんです」


男が言うと、智恵はほほ笑んだー


「--夢のような世界ねー。

 どこ?案内してちょうだい」


智恵は女王様のようにそう言い放つと、

黒いスーツの男は笑みを浮かべたー


・・・・・・・・・・・・・・・


後日ー


智恵の内側に潜んでいた男は

智恵の外に出てー

智恵は”皮”から普通の人間に戻っていたー


「--よくやった」

黒いスーツの男が言うと、

智恵を褒め続けた男は笑みを浮かべたー。


”店内”を覗く男ー


そこには、豪華なドレス姿の智恵が、”客”と話しながら

女王のような笑い声を発しているー。


「-ーーーまた”新しい女”が見つかったー

 次も、頼むぞ」

黒スーツの男が言うと、

智恵に潜んでいた男は、笑みを浮かべたー。



”ポジティブ・コア療法”を謳い、

ネガティブな少女をおびき出しー、

その中から、”可愛い素質を持つ女”を選ぶー。


本人に知られずに”皮”にして、男が内側に潜みー

1、2カ月かけて内側から褒め続けてー

高飛車な女へと変貌させるー。


そしてー

周囲に不満を抱き始めて孤立したタイミングで

”女王様”と、高飛車になった女の自尊心をうまく刺激し、

言葉巧みにお店に誘い、お店で働かせるー


これが、この男たちの目的だったー。


智恵は居心地がよさそうに、店の売上トップを目指しているー


”わたしより、可愛い女なんて、この世にいないの!”と、

ライバルたちを蹴落としているー。


この店で働く”7人”は、智恵と同じくー

かつてはネガティブだった少女たちー。


男たちに利用されていることも知らずに

智恵は”わたしは女王様”と、今日もご機嫌そうに、

お店に立ち、客の男たちを誘惑するのだったー



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


”乗っ取らない”皮モノでした~!


皮にされた人間が、内側から、呪文のように

何かを言われ続けたらどうなるのか…と、いう

ネタ?みたいなものが私の中に浮かんできて、

それを元に書いた作品ですネ~!


ここまでお読み下さり、ありがとうございました!!


皮モノは、現在、長編(こっちは乗っ取り・乗り換え放題な感じデス~)も

連載中なので、そちらもせひお楽しみください~!

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