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「---なんだか、今日の智恵は、すごい明るかったけど、

 何か良いことあった?」

智恵の彼氏・勇吾が笑みを浮かべるー


「ふふふっ…勇吾くんにも分かっちゃった?」

智恵が嬉しそうに言うー。


いつも、ネガティブなオーラを振りまいていた智恵が、

今日はなんだか明るい気がするー

彼氏の勇吾は、そんな風に思ったのだったー


そして、智恵自身も、それを感じていたー


いつもだったらー

”どうせわたしなんて…”と考えてしまうような事柄も、

なんだか、前向きに考えることが出来るー


「---なんだか、今日の智恵は、いつも以上に

 こう、可愛いし、一緒にいて楽しいよ」

勇吾が言うと、

智恵は「勇吾くんにそう言ってもらえてうれしい!」と、

心から嬉しそうに微笑んだー。


いつもならー

”気を遣わせてしまってるのかな…?”と

マイナスに考えてしまう智恵ー。

しかし、今日は違ったー。


”ポジティブ・コア療法”

智恵はその効果を”強く”実感していたー


(わたし…今日はなんだかとっても…前向きに考えられる!)

智恵は、勇吾に手を振りながら

「勇吾くん!また明日!」と可愛らしく微笑むー


”今のわたし、可愛かったかも!”


自分のことを”かわいい”などと、少しでも思ったのは

人生でもこれが初めてかもしれないー。


”ふふふ…いい感じだ”


智恵の中には”男”が潜んでいたー


智恵は気づいていないー


”ポジティブ・コア療法”とは、

対象の人間を”皮”にして、その皮を着こみ、

その中に潜んだ状態で、その相手を褒め続けてー

ポジティブにしていくというものー。


智恵は、ポジティブコア療法の会場で

眠らされている間に、皮にされて、

知らない男に着こまれてー

今、自分の身体の中には、”男”が潜んでいるなどとは

夢にも思っていないー。


”-お前はかわいい”

”お前はかわいい”

”お前はかわいい”


皮にした智恵の中に潜みー

男は智恵を褒め続けるー


ポジティブな気持ちで埋め尽くされてー

変わっていく智恵ー


「--わたし…うん…かわいい!」

智恵は笑みを浮かべながら、

帰宅すると、自分でも信じられないようなおしゃれをして、

鏡の前で微笑んだー


「--わたしって…こんなに可愛かったんだ…♡」

無頓着だった髪型を整える智恵ー


智恵は、自分で自分の姿を見て、ドキッとしてしまうー。


「---かわいい…♡」

智恵は、自分のことを心から可愛いと思ったー。


”いいぞ…

 お前はかわいい

 お前はかわいい


 お前はー”


ポジティブな意思を内側から蔓延させていく男ー。


もちろんー

ポジティブコア療法を展開する”男”たちの目的は、

ただ単に、”ネガティブな性格に悩む子”を

助けることーー


などではないー。


”ククク”

男は笑うー。


智恵は、自分自身の”異変”が望まぬ方向に進むなどとは

夢にも思わずー

「ポジティブコア療法ってすごいなぁ…」と嬉しそうに微笑んだー。


・・・・・・・・・・・・・・


夜ー


「--へへへ…順調だぜ」

智恵が、ベッドの上であぐらをかきながら、

可愛らしいスマホを手に連絡しているー


連絡相手は

”ポジティブコア療法”を展開するリーダー格の男 だー。


”その女は、どのぐらいで”落ち”そうだ?”

相手の男の言葉に、智恵は笑ったー


「へへへ…まぁ~元々”自己主張”が無さそうな女だから、

 そう長くはかかねぇんじゃねぇかな」

智恵が、本人は絶対に口にしないような口調で、

耳をほじりながら笑うー。


”ははは…そうか。では、もうしばらく頼むぞ”


「--へへへ…任せろって」

智恵はそう言うと、スマホを放り投げて

「さ~て、夜、この女が寝てる間は、

 好き放題させてもらうぜぇ」と、笑みを浮かべたー


帰宅後ー

夜に智恵が寝てから、智恵の内側に潜む男は

智恵の身体を完全に乗っ取って

”お愉しみ”を始めるのだったー


・・・・・・・・・・・・・・・・


翌朝ー。


「--……」

智恵は、真剣な表情で、化粧をしていたー。


いつも、メイクなんてしないのに、智恵は

昨日の帰宅前に、メイク用品を大量に購入しー

そしてー

今日、学校に行く前にメイクをしていたー


鏡の前で、ポニーテールを作り、微笑む智恵ー。


「-わたし、かわいいじゃん」

智恵が、満足そううに微笑むー。


”そうだー

 お前は可愛いー”


”皮”にされた智恵の内側に潜む男の言葉は、

智恵に直接の意味では届いていないー

しかし、内側から褒め続けることによりー

人は、急激に変わるー。



「--おはよ~~~!」

彼氏の勇吾に声を掛ける智恵ー。


智恵を見て、勇吾は驚くー。


智恵が別人のように、おしゃれになっていたからだー。


「--ふふ、勇吾くん!どう?わたしに見とれちゃった?」

自信満々の笑みを浮かべる智恵ー


「ちょ!?どうしたんだよ急に…

 なんだか智恵じゃないみたいだぞ?」

勇吾が笑うと、智恵は「ふふ、これが本当のわたしよ!」と、

自信満々に微笑んだー


・・・・・・・・・・・・・・・


昼休みー


勇吾の悪友、洋一が、智恵を指さしながら言うー


「--な、なんか、昨日ぐらいから、彼女、イメージ変わってね?

 なんか滅茶苦茶明るいし」


洋一の言葉に、勇吾は苦笑いしながらー


「--まぁ、元気なのはいいことだし、彼氏として嬉しいよ」と、

洋一に対して答えたー。


「--(ふふん…男子の視線がわたしに釘付け)」

智恵は、優越感に浸っていたー

おしゃれをすれば、わたしは誰よりもかわいいー、と。


勇吾の悪友・洋一の彼女である真美子の方を見つめる智恵ー


「--ふん…真美子なんかより、わたしのほうが

 100倍も可愛いわ」


智恵が呟くー


”そうだー”

”お前はかわいい”

”お前は最高の女だ”

”お前は優秀な女だ”


智恵の内側に潜んだ男が、絶え間なく、智恵を褒め続けるー。


昼休みになると、智恵はトイレの鏡で、

まるで自分がアイドルかのような錯覚をしながらー

髪型を整えてー

化粧を直したー。


「--ふふ♡」

智恵が廊下を歩くー

男子の視線を感じるー。


「すごい効果…」

ポジティブコア療法によって、

自分はポジティブになったー


そして、大好きな勇吾くんにふさわしい明るい女になることが

出来たー


智恵は嬉しそうに、堂々と廊下を歩くー。


今まで、どこかで”怯えた感じ”で廊下を歩いていた智恵ー。

しかし、今は、もう違うー


”すごい…わたし、すごいーー”


智恵は、ポジティブな感情に支配されたー。


授業中も積極的に発言するようになりー

他のクラスメイトに怯える様子もなくー

まるで、別人のように豹変していくー。


”自身に満ち溢れた”智恵ー


クラスでの会話も増えてー

みるみるおしゃれになっていきー


勇吾が心配していた文化祭の当日も、智恵は、

嬉しそうに色々なクラスの出し物を見て回りー

挙句の果てに、メイド姿をクラスメイトに疲労したー。


「--わたし、かわいいでしょ?」などと、

得意げにポーズを決めていた智恵ー。


文化祭終了後のー

数週間後には、もはや別人のような智恵の姿が

そこにはあったー。


「--智恵ちゃん、可愛くなりすぎだろ~!」

勇吾の悪友・洋一が笑いながら、智恵に言うー。


「--え~~?そんなこと… あるぅ~♡」

智恵が笑いながら、洋一の方を見つめるー。


「----」

だがー

彼氏の勇吾は、そんな智恵を見つめながらー

ため息をついていたー。


ここ数週間の智恵の”豹変”に、驚きー

そしてーーー


「--勇吾く~ん!」

智恵が嬉しそうに手を振るー。

勇吾も、そんな智恵に応じるー。


だがー

勇吾は不安だったー


「智恵…最近、変だけど、大丈夫か?」

とー。


なんだかー

おかしいー


智恵が急にこんなにポジティブになるなんてー

いや、それだけではないー


度を越している気がするー。


「-ふふ、大丈夫に決まってるじゃない。


 あ、それより、来月のわたしの誕生日だけど、

 わたし、これが欲しいな~!」


智恵がスマホを手に、高額なバッグの写真を見せるー


「--宝石みたいなわたしに、ふさわしいと思わない?

 勇吾くん、買ってよ。

 バイトの給料、入ったでしょ?」


智恵が言うと、

勇吾は、その金額を見て、戸惑いー

そして、「ご、ごめん…これは」と、智恵の方を見たー


智恵はーー

不満そうだったー


「あのさ、勇吾くんー。

 わたしが”付き合ってあげてる”ことを忘れちゃだめだよ?」

智恵が、真顔で言うー。

その表情に、笑顔はないー。


「--こんなに可愛いわたしが、勇吾くん”ごとき”と

 付き合ってるんだよ?

 ちゃんと感謝してる?」

智恵の言葉に、勇吾は激しく戸惑い、そして、口を開くー


「ちょ…?と、、智恵…?」

勇吾の言葉に、智恵は、見下すような笑みを浮かべたー。


「--よく考えたらさ、わたしって滅茶苦茶かわいいじゃん?

 前は、勇吾くんにわたしなんかじゃ…って思ってたけど、

 逆だよね?


 わたしに勇吾くんなんかじゃ、本当は釣り合わないんだよ?」


智恵が、少し怒りっぽく言う。


「---な、、何言ってるんだよ…?」

勇吾は戸惑いを隠すことができないー。


最近の智恵は、おかしいー

急激に明るくなって、容姿も、自信に満ち溢れたものに変わりー

クラスは”滅茶苦茶可愛くなった”と智恵を称賛しているー


だが、彼氏の勇吾からすれば、寂しかったー

智恵が智恵でなくなってしまっているような感じー。

まるで、”別人”になってしまっているような感じー。


「---智恵…無理するなって…

 どうしちゃったんだよ…?」

勇吾は悲しそうに呟くー


智恵が”わたし、ネガティブでごめんね”

”少しは明るく慣れるような頑張るから”などと、

いつも口にしていたことを、勇吾も理解しているー


だからこそー

文化祭の直前から、智恵が、少しずつ明るくなってきたときもー

”智恵が頑張っている”と、そう思っていたー


けどー

”最近は、度を越えているー”


ネガティブからポジティブにー

を、通りこして、まるで高飛車な女になってしまっているー。


「ーーねぇ、勇吾くん、お・ね・が・い♡」

自分が”可愛い”ことを計算した上での智恵のおねだりー


勇吾は「わ、、わかったよ…考えておくから」と言うと、

智恵は「やった~~~~!」と、わざと喜んで見せるー。


”お前はかわいいー”

”お前はかわいいーー”


智恵の後頭部にわずかに亀裂が入るー

智恵はそれを認識していないー

自分が皮にされて”着られて”いてー

自我と身体の主導権を”与えられている”立場で

あることに気づいていないー


「---かわいい…かわいい…わたしはかわいい…!」

智恵は、あまり趣味がなくて、使っていなかった貯金を

狂ったように使い始めたー


自分の美容にー。


服装は派手になりー

アクセサリーや化粧用品が増えてー

智恵は、”自分に自信を持っているお嬢様”のような

雰囲気に変貌してしまうー


成績はみるみる上がりー

友達も増えー

男子からも言い寄られるようになったー


”ポジティブ・コア療法”を受けてから1ヵ月ー


”内側”から男に褒め続けられた彼女はー

今や、休み時間ごとにトイレで自分を見つめながら

メイクや髪型を整えるほどにー

自分の”美貌”に自信を持っているほどになってしまったー


・・・・・・・・・・・・・


夜ー


大胆に生足を晒したミニスカート姿で街を歩く智恵ー。


本来の智恵であれば、恥ずかしがって外すら出れないような格好ー

しかし、今の智恵は堂々とその格好で街を歩いていたー


「あぅっ…」

智恵が急にビクンと震えるー


”智恵を皮にして内側に潜んでいる男”が

智恵を完全に乗っ取ったー。


白衣を着た女と接触する智恵ー。


「--どうだ?」

白衣を着た女が微笑むー


「--”落ちた”

 あとは、仕上げだー」


智恵が邪悪な笑みを浮かべると、

白衣を着た女も、不気味な笑みを浮かべたー


智恵は、”高飛車な女”になったー

やがて、現状に不満を持ち始めるー


”自分を認めてくれない周囲”を見下すようになるー


あと、少しだー


「---”仕上げ”が終わったら連絡するぜ」

智恵がそう呟くと、

白衣の女は「わかった」と頷いて、

そのまま二人は、夜の闇に消えたー



③へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


皮にして、着込んで、あえて身体の主導権は本人に返して、

褒め続ける…!

かなり、変わったタイプ?の皮モノですネ~!


高飛車になり始めた彼女の運命は…?

続きはまた次回デス~!

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