<皮>モルティング~人を着る凶悪犯~②”不穏” (Pixiv Fanbox)
Content
凶悪犯罪者・黒崎 陣矢ー。
彼は、筋金入りの”狂人”-
常識では計り知れない、壊れた倫理観の持ち主ー
「---命が消える瞬間は…たまらない…」
ゾクゾクしながら、黒崎 陣矢は
また”ひとつの命”を消したー
「---ぁぁぁあああ…♡♡」
自宅のー
可愛がっていたハムスターの息の根を止めた
女子高生の由愛は、興奮した様子で
そのハムスターを何度も何度も足で踏みつけるー。
狂った笑みを浮かべる由愛ー
あまりの興奮に、由愛の後頭部が割れてー
由愛の中から、由愛を皮にして乗っ取った男ー
黒崎 陣矢の顔が飛び出してくるー
「--誰にも俺を止められやしねぇ…」
陣矢はそう呟くと、再び由愛の皮を身に着けて、
笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・
登場人物
長瀬 治夫(ながせ はるお)
若き警察官。”皮”にまつわる事件に巻き込まれていく
松永 亜香里(まつなが あかり)
治夫の彼女。現在同居中。
塚田 総司(つかだ そうじ)
先輩刑事。治夫の面倒を見ている兄貴分。
片桐 由愛(かたぎり ゆめ)
かつて治夫に助けられた女子高生。
目黒 圭吾(めぐろ けいご)
警視正。計算高い性格の持ち主で、出世欲も強い。
黒崎 陣矢(くろさき じんや)
指名手配中の凶悪犯罪者
・・・・・・・・・・・・・・
「--昨日は大変だったな」
交番の先輩刑事・総司が呟くー。
「--あ、いえ、」
治夫はそう呟くと、
由愛のことを心配しながら、総司に
逮捕された由愛の母親・藤江の様子を尋ねたー。
藤江は陣矢に”皮”にされて着こまれてー
乗っ取られた状態のまま、夫を殺害、
その後、陣矢は、娘である由愛を皮にして
由愛の方に移ったのだがー
治夫も、総司も、そんなことは知る由もなかったー
「それがだな…」
総司が言うー。
「聞いた話によると、由愛ちゃんの母親は、
「何も覚えていないんです!」の一点張りー
つまり、容疑を否認してるようだな」
総司の言葉に、
治夫は、そうですか…と呟くー。
由愛は、以前、柄の悪い男たちに絡まれているところを
パトロール中の治夫が助けてから、
治夫に懐いている女子高生だー。
勿論、治夫に恋愛方面の特別な感情はないがー、
顔見知りの子として、毎朝交番で挨拶をするような
間柄だー。
そんな、顔見知りの子の母親が事件を起こしたことで、
由愛のことも心配だったしー
もう一つ、気になることがあったー。
治夫が現場に駆け付けた時、由愛の母親・藤江は
既に返り血を浴びていて、パニックになっていたため、
その時は気づかなかったがー、
由愛の母親・藤江の顔写真を後から見て、
治夫は”あること”に気づいていたー
「--男?ふふふ、何を言ってるんですか?
ここには、わたし、一人ですよ」
事件の前日ー
黒崎 陣矢によく似た男にー
引き裂かれて”着られた”ように見えた女性ー
その時に、職務質問した女性は、
確かに由愛の母親である藤江だったー。
”夫を殺した記憶がないー”
「----」
治夫は暗い表情で考え込むー
「---おい長瀬、どうした?そんな暗い顔して」
先輩の総司の言葉に、治夫は「いえ…」と首を振るー。
由愛の母・藤江が、凶悪犯 黒崎 陣矢に”着られて”
操られていたー
なんてことはないだろうかー。
そんな、現実離れした考えが、治夫の中に浮かび上がったー
「----」
治夫は、事件の前日に目撃した光景を、先輩の総司に伝えたー
「--はははははっ!はははははははっ!」
だがー
総司は笑ったー。
「-ー逃亡中の黒崎陣矢が、由愛ちゃんの母親を
まるで着ぐるみのようにして着込んで
夫を殺したんじゃないか…って?
はははははっ!
刑事ドラマでもそんな犯人、出てこないぜ?
見間違いだよ。
黒崎陣矢がこんな地域にいるわけないし、
人を皮にして着込むなんて、できるわけないだろ?」
総司の言葉に、
治夫は「まぁ…そうですね…はい」と、
納得いかない様子で頷いたー
「---おはようございます」
由愛がいつものように、交番の前を通りかかったー
「---あ、、由愛ちゃん… もう大丈夫なのか?」
治夫は心配そうに由愛を見つめたー
昨夜、父親が母親に殺されて
母親は逮捕されているー
そんな過酷な状況なのにー
由愛は案外落ち着いているように見えたー
「--大丈夫?ふふ、大丈夫に決まってるじゃないですか」
由愛が微笑むー。
「--そっか…ならよかったー」
治夫はそう言うと、
「そういえば、昨日の朝、事件の前も、
お母さんの様子がおかしいって言ってたよね?」
と、由愛に質問をするー
「いえ……ちょっと、今朝”お母さん”の様子がおかしくて」と
「あ、いえ、大したことじゃないんですけど…
なんか、、こう、、わたしを妙に触ってきてー」
昨日の朝、由愛が交番の前に来た時、そう語っていたことを
思い出したのだー
「---言いましたっけ?」
由愛が微笑むー。
「ーー確かに聞いた気がするけどー」
治夫がそう言いかけると、
由愛の足元に、少し大きめの蜘蛛が歩いているのに気づいたー
「--!」
由愛がそれに気づくと、由愛は足で蜘蛛をそっと踏みー
そのまま靴で踏みにじるようにして、蜘蛛を殺したー
ぐちゃっと潰れた蜘蛛を見つめて
由愛が不気味に笑ったー
気がしたー
「--あ、わたし、急いでるんで。
もういいですか?」
由愛の言葉に、治夫は、「あ、、あぁ、今日も頑張って」と
声を掛けると、由愛はにっこりと笑って
そのまま立ち去って行ったー
「---お前、あの子に惚れるんじゃねぇぞ?」
先輩の総司がいつものように治夫を微笑むー
「--ほ、惚れませんってば!」
治夫が笑いながら言うー
だが、その直後ー
治夫は、由愛に踏みつぶされた蜘蛛を見つめて
不安そうな表情を浮かべたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
高校ー
昼休みー
「---由愛、話ってなに?」
由愛の友達の一人・美海(みみ)が、呼び出されたトイレで、
先に待っていた由愛に話しかけるー
「---」
由愛はクスッと笑うと、突然美海の胸をわしづかみにしたー
「えっ!?由愛!?何してるの!?」
驚く美海ー。
「--お前、いいスタイルしてんじゃん」
由愛が低い声で笑うー。
「--ゆ、由愛?」
美海が怯えた様子で由愛を見るー
由愛の様子が、おかしいー
「--俺さ、輝いてる命を奪う瞬間ーー
すっげぇ興奮するんだよね」
由愛が、自分のことを”俺”と言ったー。
美海が「ど、どうしちゃったの!?」と言いかけた
その瞬間ー
由愛が隠し持っていた注射器を美海の首筋に刺したー
美海が悲鳴を上げながら、あっという間に”皮”に
なっていくー。
「--あぁああ、、、あ…」
スタイルの良い女子高生が、
あっという間に無残な皮になっていくー。
「--くくくっ…くくくくくく」
興奮した様子で由愛は、もう一つ、別の注射器を使うー。
美海の身体が人間に戻るー
怯えた様子の美海ー
さらに最初の注射器を使って、美海を再び皮にするー。
何度も何度もそれを繰り返してまるで”拷問”のように
楽しむ由愛ー
そして、最後にはー
「--ばいばい」
由愛は、美海の皮をトイレに押し込んでー
そのままトイレを流すとー
邪悪な笑みを浮かべながらトイレを出たー
「--はぁぁぁ…♡ やめられない…♡」
ペロリと唇を舐める由愛ー。
”殺し”はやめられないー
黒崎 陣矢に乗っ取られた由愛は、その手で、人の命を奪ったー
・・・・・・・・・・・・・・・
「どうしたの?」
夜ー
彼女の亜香里が心配そうに、治夫を見つめるー
「--ん?」
治夫は、帰宅後に、同居中の彼女・亜香里と
ご飯を食べながら、考え込んでいたー
もしー
もしも、
本当に、黒崎陣矢が、由愛の母親・藤江を皮にして
着込んでいたのだとすればー?
まだ、藤江の中に黒崎陣矢が潜んでいるのだとすればー
だがー
”何も覚えていない”という取り調べに対する藤江の言葉が
引っかかるー。
黒崎 陣矢が仮に藤江を乗っ取って、藤江の夫を
殺したのだとすればー…
藤江が記憶がない!と叫んでいるのには、
いくつかの理由が考えられるー
ひとつは、黒崎陣矢が、藤江の身体でとぼけていることー
ひとつは、黒崎陣矢は藤江の中に潜んでいるものの、
藤江は正気を取り戻していることー
そしてーー
もう一つはー
”既に、黒崎陣矢は藤江の身体の中にはいないということー”
もしーー
もし、そうだとすればーー
治夫は、現場に駆け付けた時、藤江がパニックになっていたことを思い出すー
”あの時点で、黒崎陣矢は、既に藤江の外に出ていたー?”
と、なるとー
由愛の顔が一瞬浮かび、治夫がヒヤッとするー。
「--は~~る~~お~~!!!」
彼女の亜香里が、そんな考えを打ち消すかのように、
治夫の肩をぺしぺしと叩いたー
「も~~~!!!!難しい顔ばっかりして~~~!!!」
亜香里が頬を膨らませながら言うー。
「--ご、ごめんごめん」
治夫が苦笑いしながら亜香里の方を見るー
そうだー
黒崎陣矢が他人を皮にして着込むー…
なんて、あり得るはずがないー
考えすぎだー。
”単純に、藤江が容疑を否認ーつまり、とぼけている”
だけなのだろうー。
「---何か悩んでるの?」
亜香里が心配そうに呟くー。
「--悩んでる…というか、心配してる…って感じかな?」
治夫が言うと、亜香里は「わたしで良ければ、いつでも聞くからね」と
微笑んだー。
治夫は「ありがとう」と穏やかな笑みを浮かべると、
亜香里と共に晩御飯を済ませて、
事件のことは、ひとまず考えるのを、やめたー。
・・・・・・・・・・・・・・・
「昨日から、行方不明?」
翌日ー
治夫が声を上げたー。
「ええ」
”近寄りがたいオーラ”を出している女性刑事・奈々子が
愛想なく返事をしたー。
「---」
奈々子はパソコンの画面に、”それ”を表示するー。
「--郷原 美海(さとはら みみ)-
昨日から、行方不明で、捜索願が出ています」
奈々子の言葉に、
治夫は、その生徒を見つめるー
由愛と同じ制服を着ているー。
「--行方不明って…最後に目撃されたのはいつなんです?」
治夫が言うと、
奈々子は「昨日のお昼ごろ」と、だけ呟いたー。
学校で行方不明になったのだというー。
行方不明になった美海はー
由愛と同じクラスであることも判明したー。
治夫は、由愛の母親・藤江を皮にしていた黒崎陣矢が
まるで”脱皮”するかのように藤江を脱ぎー
そして”由愛を着る”イメージが、頭に浮かんでしまい、
それを振り払ったー。
「---……何か?」
奈々子が、そんな治夫を見て、不思議そうにしているー
「あぁ、いえ、なんでもないです」
治夫は、そう呟くとため息をついたー
・・・・・・・・・・・・・・・・
夕方ー
パトロール中に、治夫は由愛の家の前に
やってきていたー。
「----」
深呼吸する治夫ー。
そんなことあるわけがないー
そう、思いながらー。
けれどー
”他人を信じるには、まず、自分を信じることだー”
治夫が刑事の道に進むきっかけを作った
中学時代の恩師・泉谷先生の言葉を思い出す治夫ー。
「-----」
”自分の勘を信じるー”
治夫は意を決して、インターホンを鳴らしたー。
中から、黒いミニスカート姿の由愛が出て来るー。
いつも交番で挨拶するときは、制服姿だからー
由愛の私服はあまり知らないー。
思ったより、派手な印象を受けるー。
「--急に、どうしたんですか?」
由愛が微笑むー。
治夫は、「少しお母さんのことで気になることがあってー」
と、そう呟いたー
由愛は、父親が殺されて
母親が逮捕されたのにー
まるで動揺している様子がないー
そのことにも、少し違和感を覚える治夫ー
「-ーー実は、前の日にー
由愛ちゃんのお母さんがーー
”男の人”と一緒にいるのを見たんだー」
治夫は、単刀直入にそう呟いたー
もしー
もしも、由愛の中に黒崎陣矢がいるのであればー
当然、黒崎陣矢も、治夫のことを知っているはずー。
あの日ー
皮にされた藤江としゃべっているのだからー。
治夫は、由愛の方を見るー
由愛に、驚いてほしかったー
”いつもの由愛”なら、
治夫がそういう話をすれば、驚くはずだからー、だ。
だがー
由愛のリアクションは薄かったー。
「それで?」
由愛はそれしか言わなかったー。
「---…」
治夫は、由愛の母親・藤江が黒崎陣矢と一緒にいてー
その時に、黒崎陣矢が藤江を引き裂いて、
藤江を着たように見えたー
と、そう、全てを告げたー
もしもーー
由愛の中に黒崎陣矢がいるならーーー
由愛が豹変する可能性が高いー
もしもー
ただの杞憂ならーー
それでいいー
「----くっ…くく」
由愛が突然笑いだしたー
「--!!」
治夫は思わず身構えるー
「--くくくく…あは、、あはははははははははっ!」
狂ったように笑い始める由愛ー
そんな由愛を前に、
治夫は警戒心をあらわにしながらー
由愛の方を見つめたー。
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
”他人を皮にする凶悪犯罪者”との戦いは始まったばかり…!
今後”乗り換え”も沢山出てきます~☆
今日もありがとうございました!