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凶悪犯罪者・黒崎 陣矢ー。


彼は、筋金入りの”狂人”-

常識では計り知れない、壊れた倫理観の持ち主ー


「---命が消える瞬間は…たまらない…」

ゾクゾクしながら、黒崎 陣矢は

また”ひとつの命”を消したー


「---ぁぁぁあああ…♡♡」


自宅のー

可愛がっていたハムスターの息の根を止めた

女子高生の由愛は、興奮した様子で

そのハムスターを何度も何度も足で踏みつけるー。


狂った笑みを浮かべる由愛ー


あまりの興奮に、由愛の後頭部が割れてー

由愛の中から、由愛を皮にして乗っ取った男ー

黒崎 陣矢の顔が飛び出してくるー


「--誰にも俺を止められやしねぇ…」

陣矢はそう呟くと、再び由愛の皮を身に着けて、

笑みを浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・


登場人物


長瀬 治夫(ながせ はるお)

若き警察官。”皮”にまつわる事件に巻き込まれていく


松永 亜香里(まつなが あかり)

治夫の彼女。現在同居中。


塚田 総司(つかだ そうじ)

先輩刑事。治夫の面倒を見ている兄貴分。


片桐 由愛(かたぎり ゆめ)

かつて治夫に助けられた女子高生。


目黒 圭吾(めぐろ けいご)

警視正。計算高い性格の持ち主で、出世欲も強い。


黒崎 陣矢(くろさき じんや)

指名手配中の凶悪犯罪者


・・・・・・・・・・・・・・


「--昨日は大変だったな」

交番の先輩刑事・総司が呟くー。


「--あ、いえ、」

治夫はそう呟くと、

由愛のことを心配しながら、総司に

逮捕された由愛の母親・藤江の様子を尋ねたー。


藤江は陣矢に”皮”にされて着こまれてー

乗っ取られた状態のまま、夫を殺害、

その後、陣矢は、娘である由愛を皮にして

由愛の方に移ったのだがー

治夫も、総司も、そんなことは知る由もなかったー


「それがだな…」

総司が言うー。


「聞いた話によると、由愛ちゃんの母親は、

 「何も覚えていないんです!」の一点張りー

 つまり、容疑を否認してるようだな」

総司の言葉に、

治夫は、そうですか…と呟くー。


由愛は、以前、柄の悪い男たちに絡まれているところを

パトロール中の治夫が助けてから、

治夫に懐いている女子高生だー。

勿論、治夫に恋愛方面の特別な感情はないがー、

顔見知りの子として、毎朝交番で挨拶をするような

間柄だー。


そんな、顔見知りの子の母親が事件を起こしたことで、

由愛のことも心配だったしー

もう一つ、気になることがあったー。


治夫が現場に駆け付けた時、由愛の母親・藤江は

既に返り血を浴びていて、パニックになっていたため、

その時は気づかなかったがー、

由愛の母親・藤江の顔写真を後から見て、

治夫は”あること”に気づいていたー


「--男?ふふふ、何を言ってるんですか?

 ここには、わたし、一人ですよ」


事件の前日ー

黒崎 陣矢によく似た男にー

引き裂かれて”着られた”ように見えた女性ー


その時に、職務質問した女性は、

確かに由愛の母親である藤江だったー。


”夫を殺した記憶がないー”


「----」

治夫は暗い表情で考え込むー


「---おい長瀬、どうした?そんな暗い顔して」

先輩の総司の言葉に、治夫は「いえ…」と首を振るー。


由愛の母・藤江が、凶悪犯 黒崎 陣矢に”着られて”

操られていたー

なんてことはないだろうかー。


そんな、現実離れした考えが、治夫の中に浮かび上がったー


「----」

治夫は、事件の前日に目撃した光景を、先輩の総司に伝えたー


「--はははははっ!はははははははっ!」

だがー

総司は笑ったー。


「-ー逃亡中の黒崎陣矢が、由愛ちゃんの母親を

 まるで着ぐるみのようにして着込んで

 夫を殺したんじゃないか…って?


 はははははっ!

 刑事ドラマでもそんな犯人、出てこないぜ?


 見間違いだよ。

 黒崎陣矢がこんな地域にいるわけないし、

 人を皮にして着込むなんて、できるわけないだろ?」


総司の言葉に、

治夫は「まぁ…そうですね…はい」と、

納得いかない様子で頷いたー


「---おはようございます」

由愛がいつものように、交番の前を通りかかったー


「---あ、、由愛ちゃん… もう大丈夫なのか?」

治夫は心配そうに由愛を見つめたー


昨夜、父親が母親に殺されて

母親は逮捕されているー

そんな過酷な状況なのにー

由愛は案外落ち着いているように見えたー


「--大丈夫?ふふ、大丈夫に決まってるじゃないですか」

由愛が微笑むー。


「--そっか…ならよかったー」

治夫はそう言うと、

「そういえば、昨日の朝、事件の前も、

 お母さんの様子がおかしいって言ってたよね?」

と、由愛に質問をするー


「いえ……ちょっと、今朝”お母さん”の様子がおかしくて」と


「あ、いえ、大したことじゃないんですけど…

 なんか、、こう、、わたしを妙に触ってきてー」


昨日の朝、由愛が交番の前に来た時、そう語っていたことを

思い出したのだー


「---言いましたっけ?」

由愛が微笑むー。


「ーー確かに聞いた気がするけどー」

治夫がそう言いかけると、

由愛の足元に、少し大きめの蜘蛛が歩いているのに気づいたー


「--!」

由愛がそれに気づくと、由愛は足で蜘蛛をそっと踏みー

そのまま靴で踏みにじるようにして、蜘蛛を殺したー


ぐちゃっと潰れた蜘蛛を見つめて

由愛が不気味に笑ったー


気がしたー


「--あ、わたし、急いでるんで。

 もういいですか?」

由愛の言葉に、治夫は、「あ、、あぁ、今日も頑張って」と

声を掛けると、由愛はにっこりと笑って

そのまま立ち去って行ったー


「---お前、あの子に惚れるんじゃねぇぞ?」

先輩の総司がいつものように治夫を微笑むー


「--ほ、惚れませんってば!」

治夫が笑いながら言うー


だが、その直後ー

治夫は、由愛に踏みつぶされた蜘蛛を見つめて

不安そうな表情を浮かべたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


高校ー


昼休みー


「---由愛、話ってなに?」

由愛の友達の一人・美海(みみ)が、呼び出されたトイレで、

先に待っていた由愛に話しかけるー


「---」

由愛はクスッと笑うと、突然美海の胸をわしづかみにしたー


「えっ!?由愛!?何してるの!?」

驚く美海ー。


「--お前、いいスタイルしてんじゃん」

由愛が低い声で笑うー。


「--ゆ、由愛?」

美海が怯えた様子で由愛を見るー


由愛の様子が、おかしいー


「--俺さ、輝いてる命を奪う瞬間ーー

 すっげぇ興奮するんだよね」


由愛が、自分のことを”俺”と言ったー。

美海が「ど、どうしちゃったの!?」と言いかけた

その瞬間ー

由愛が隠し持っていた注射器を美海の首筋に刺したー


美海が悲鳴を上げながら、あっという間に”皮”に

なっていくー。


「--あぁああ、、、あ…」


スタイルの良い女子高生が、

あっという間に無残な皮になっていくー。


「--くくくっ…くくくくくく」

興奮した様子で由愛は、もう一つ、別の注射器を使うー。


美海の身体が人間に戻るー


怯えた様子の美海ー


さらに最初の注射器を使って、美海を再び皮にするー。

何度も何度もそれを繰り返してまるで”拷問”のように

楽しむ由愛ー


そして、最後にはー


「--ばいばい」

由愛は、美海の皮をトイレに押し込んでー

そのままトイレを流すとー

邪悪な笑みを浮かべながらトイレを出たー


「--はぁぁぁ…♡ やめられない…♡」

ペロリと唇を舐める由愛ー。


”殺し”はやめられないー

黒崎 陣矢に乗っ取られた由愛は、その手で、人の命を奪ったー


・・・・・・・・・・・・・・・


「どうしたの?」


夜ー

彼女の亜香里が心配そうに、治夫を見つめるー


「--ん?」

治夫は、帰宅後に、同居中の彼女・亜香里と

ご飯を食べながら、考え込んでいたー


もしー

もしも、

本当に、黒崎陣矢が、由愛の母親・藤江を皮にして

着込んでいたのだとすればー?


まだ、藤江の中に黒崎陣矢が潜んでいるのだとすればー


だがー

”何も覚えていない”という取り調べに対する藤江の言葉が

引っかかるー。


黒崎 陣矢が仮に藤江を乗っ取って、藤江の夫を

殺したのだとすればー…


藤江が記憶がない!と叫んでいるのには、

いくつかの理由が考えられるー


ひとつは、黒崎陣矢が、藤江の身体でとぼけていることー


ひとつは、黒崎陣矢は藤江の中に潜んでいるものの、

藤江は正気を取り戻していることー


そしてーー

もう一つはー

”既に、黒崎陣矢は藤江の身体の中にはいないということー”


もしーー

もし、そうだとすればーー


治夫は、現場に駆け付けた時、藤江がパニックになっていたことを思い出すー


”あの時点で、黒崎陣矢は、既に藤江の外に出ていたー?”


と、なるとー


由愛の顔が一瞬浮かび、治夫がヒヤッとするー。


「--は~~る~~お~~!!!」

彼女の亜香里が、そんな考えを打ち消すかのように、

治夫の肩をぺしぺしと叩いたー


「も~~~!!!!難しい顔ばっかりして~~~!!!」

亜香里が頬を膨らませながら言うー。


「--ご、ごめんごめん」

治夫が苦笑いしながら亜香里の方を見るー


そうだー

黒崎陣矢が他人を皮にして着込むー…

なんて、あり得るはずがないー


考えすぎだー。


”単純に、藤江が容疑を否認ーつまり、とぼけている”

だけなのだろうー。


「---何か悩んでるの?」

亜香里が心配そうに呟くー。


「--悩んでる…というか、心配してる…って感じかな?」

治夫が言うと、亜香里は「わたしで良ければ、いつでも聞くからね」と

微笑んだー。


治夫は「ありがとう」と穏やかな笑みを浮かべると、

亜香里と共に晩御飯を済ませて、

事件のことは、ひとまず考えるのを、やめたー。


・・・・・・・・・・・・・・・


「昨日から、行方不明?」


翌日ー

治夫が声を上げたー。


「ええ」

”近寄りがたいオーラ”を出している女性刑事・奈々子が

愛想なく返事をしたー。


「---」

奈々子はパソコンの画面に、”それ”を表示するー。


「--郷原 美海(さとはら みみ)-

 昨日から、行方不明で、捜索願が出ています」

奈々子の言葉に、

治夫は、その生徒を見つめるー


由愛と同じ制服を着ているー。


「--行方不明って…最後に目撃されたのはいつなんです?」

治夫が言うと、

奈々子は「昨日のお昼ごろ」と、だけ呟いたー。


学校で行方不明になったのだというー。


行方不明になった美海はー

由愛と同じクラスであることも判明したー。


治夫は、由愛の母親・藤江を皮にしていた黒崎陣矢が

まるで”脱皮”するかのように藤江を脱ぎー

そして”由愛を着る”イメージが、頭に浮かんでしまい、

それを振り払ったー。


「---……何か?」

奈々子が、そんな治夫を見て、不思議そうにしているー


「あぁ、いえ、なんでもないです」

治夫は、そう呟くとため息をついたー


・・・・・・・・・・・・・・・・


夕方ー

パトロール中に、治夫は由愛の家の前に

やってきていたー。


「----」

深呼吸する治夫ー。


そんなことあるわけがないー

そう、思いながらー。


けれどー


”他人を信じるには、まず、自分を信じることだー”


治夫が刑事の道に進むきっかけを作った

中学時代の恩師・泉谷先生の言葉を思い出す治夫ー。


「-----」

”自分の勘を信じるー”


治夫は意を決して、インターホンを鳴らしたー。


中から、黒いミニスカート姿の由愛が出て来るー。


いつも交番で挨拶するときは、制服姿だからー

由愛の私服はあまり知らないー。


思ったより、派手な印象を受けるー。


「--急に、どうしたんですか?」

由愛が微笑むー。


治夫は、「少しお母さんのことで気になることがあってー」

と、そう呟いたー


由愛は、父親が殺されて

母親が逮捕されたのにー

まるで動揺している様子がないー


そのことにも、少し違和感を覚える治夫ー


「-ーー実は、前の日にー

 由愛ちゃんのお母さんがーー

 ”男の人”と一緒にいるのを見たんだー」


治夫は、単刀直入にそう呟いたー


もしー

もしも、由愛の中に黒崎陣矢がいるのであればー

当然、黒崎陣矢も、治夫のことを知っているはずー。


あの日ー

皮にされた藤江としゃべっているのだからー。


治夫は、由愛の方を見るー


由愛に、驚いてほしかったー


”いつもの由愛”なら、

治夫がそういう話をすれば、驚くはずだからー、だ。


だがー

由愛のリアクションは薄かったー。


「それで?」

由愛はそれしか言わなかったー。


「---…」

治夫は、由愛の母親・藤江が黒崎陣矢と一緒にいてー

その時に、黒崎陣矢が藤江を引き裂いて、

藤江を着たように見えたー


と、そう、全てを告げたー


もしもーー

由愛の中に黒崎陣矢がいるならーーー


由愛が豹変する可能性が高いー


もしもー

ただの杞憂ならーー

それでいいー


「----くっ…くく」

由愛が突然笑いだしたー


「--!!」

治夫は思わず身構えるー


「--くくくく…あは、、あはははははははははっ!」

狂ったように笑い始める由愛ー


そんな由愛を前に、

治夫は警戒心をあらわにしながらー

由愛の方を見つめたー。


③へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


”他人を皮にする凶悪犯罪者”との戦いは始まったばかり…!

今後”乗り換え”も沢山出てきます~☆


今日もありがとうございました!

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