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「----助ける?笑わせないで」

亜優美が、笑みを浮かべるー。


「--わたしは助けなんて必要ないー。

 わたしは、ただ、この手で、あんたを殺したいの」

亜優美の言葉に、和哉は表情を歪めながらもー

亜優美をまっすぐと見つめるー


今度は、逃げないー。


逃げていても、亜優美を救うことはできないー。


洗脳されて、冷徹な女になってしまった亜優美の姿を見るのは、

心が痛むー。


その亜優美に罵倒されるのはー

とても、辛いー


けれど、

一番つらいのはー


洗脳されて、自分がしたくもないことをさせられている亜優美自身ー


「---俺は、この異世界で、色々なことを学んだよー」

和哉が言うー。


ラナが心配そうにその様子を見つめているー


「--それを全て、君にぶつける!!」

裕司が叫ぶと、

亜優美が剣を手に、笑みを浮かべたー


「御託はもう十分ー。

 さぁ、血祭にあげてあげるわ!覚悟なさい!」

亜優美=ヒルダとの戦いが始まるー。


”倒すべきは、”ヒルダ”-

 亜優美を何とか、目覚めさせてみせるー”


和哉も剣を抜き、ダークパレス中層で、亜優美=ヒルダと

剣をぶつけたー。


・・・・・・・・・


★主要登場人物★


藤枝 和哉(ふじえだ かずや)/アリシア姫

異世界に転生後、女体化。アリシア姫の意思を受け継ぎ、戦う決意を固めた。


高梨 亜優美(たかなし あゆみ)/ヒルダ

和哉の恋人。異世界ではヒルダと名乗り、敵対している。


神埼 省吾(かんざき しょうご)/ダーク将軍

和哉・亜優美の共通の友人。歪んだ嫉妬心から、敵対する。


ユーリス/ジーク/フェルナンデス/ミリア

王宮騎士団長。それぞれが、それぞれの騎士団を率いている。


ラナ

アリシア姫の侍女。和哉に対しては辛辣な接し方をする。


グール伯爵

皇帝ゼロの腹心。闇の帝国の事実上の指揮者。ミリアの実の父。


皇帝ゼロ

闇の帝国の皇帝。強大なエナジーを持つ。エックスの兄。


カイル

アクア王国隠密部隊長。闇の帝国と内通している。


※登場人物詳細

(↓に、¥300と出ていますが、このお話を読めている皆様は、既に

 プランご加入(ありがとうございます★☆!)済みですので、

 お金がかかったりすることはありません!ご安心ください)

fanbox post: creator/29593080/post/1260447

・・・・・・・・・・・・・・


鐘の音が鳴り響くー


「--ユーリス…これからは、わたしの一番近くで、

 わたしを支えてほしいのー」


アクア王国の王宮ー

アリシア姫が、ユーリスの方に近づきながら、微笑むー


この瞬間を、どれだけ夢見たことかー。

アリシアの側で、アリシアを支えたいー。


「---アリシア」

ユーリスは、アリシア姫の方を見つめるー


”姫”と

”一介の騎士の息子”


決して交わることのない”距離”がそこには、あるー


大人になるにつれて、

イヤでもその”現実”を思い知らされてー

この世界には決して”届かないもの”があると気づかされたー。


けれどー


「--ユーリス…

 わたしが姫とか、あなたが騎士とか、

 そんなことは関係ないの」


目の前にいるアリシアが微笑むー。


「---姫様」

ユーリスが呟くー


”公の場”では

騎士と姫ー

その関係を絶対に崩さないよう、

ユーリスは意識していたー。


「---昔のように、アリシアって呼んで」

アリシア姫が優しく微笑むー


周囲の大臣や民衆が、二人を祝福しているー。


アリシア姫が笑いながら、

ユーリスの方を見るー


「わたしは、あなたと一緒に、歩みたいのー。

 

 --結婚しましょう?ユーリス」


ユーリスは、アリシア姫の言葉に

”ずっと抑えてきた気持ち”があふれ出しそうになるー。


いつかー

いつの日かー

こんな日が来ることを、ずっと、夢見ていたー


決して届かないとは分かっていてもー

叶わぬ夢だと分かっていてもー


ユーリスは、アリシア姫のことが、

小さいころから、好きだったー。


「---さぁ、ユーリス、もう、何も考えなくていいのよ」

アリシア姫が笑みを浮かべるー


”そうーー

 何も考えなくて良いのだー”


魔界将アデンー


エナジーによる能力

”闇の記憶(ダーク・メモリーズ)”によって、

相手の心の闇を元に精神世界に相手を引きずり込みー

そして、その心の闇を元に、相手を”心の牢獄”に幽閉するー。


「---アリシア」

ユーリスが呟くー


アリシア姫が、ユーリスに手を差し伸べる。


「--さぁ…ユーリス…

 あなたの夢が、叶うのよー」


アリシア姫の微笑みー。


ユーリスはほほ笑んだー。


「--ああ、そうだな…

 アリシアー」


アリシアーーー

俺は、お前のことが、ずっと好きだったー

こんな風にーーーーー


こんな日をずっと、夢見ていたー


「---ーーー」

ユーリスは、フッと笑ったー


そしてー

剣に手をかけて、ドレス姿のアリシア姫を剣で貫いたーーー


「---な…に…?!」

アリシア姫が口から血を吐きながらユーリスの方を見るー


祝福の風景がーーー

鐘の音が、消えていくー


まるで、ガラスが砕け散るようにーーー


「---…以前の俺だったらーー

 お前の”幻術”に囚われていたかもなー」

ユーリスは、それだけ言うと、目の前にいる魔界将アデンに

突き刺した剣を引き抜くー。


魔界将アデンが、信じられない、という表情で

ユーリスの方を見つめるー。


「-ーー確かに昔の俺は、アリシアのことだけを

 守ろうー、そんな風に思ってたかもしれないー。


 でも、今は違うー。

 俺はー

 アリシアが愛したこの王国を守りたいー

 王国の仲間ー、民、そして王国そのものをー。


 ”友”をー。」


ユーリスは目をつぶるー。


異世界の友・和哉の姿を思い浮かべるー。


”あいつが、俺を成長させてくれたのかもなー”


「--き、、貴様…!黙って受け入れれば良かったものを…!」

魔界将アデンが叫ぶー。


「---アリシアは、俺と結婚なんてしないさー。

 アリシアにはアリシアのーー

 俺には俺の

 ”役割”があるー。


 それでー、いいんだ」


そして、そのアリシアはもう、この世にはいないー


ユーリスは少し寂しそうに笑うと、

魔界将アデンの方を見たー


「---ククク…我が力は”闇の記憶”だけではないぞ」

魔界将アデンが闇のオーラを充満させるー。


「---魔界将アデン!

 俺を止められると思うな!」


ユーリスが炎を纏った剣を手に、アデンの方に向かうー。


「---愚かな!」

魔界将アデンの周囲に闇の球体のようなものが出現し、

アデンがそれを放つー


「うおおおおおおおお!」

ユーリスは自らのエナジーで炎の球体を作り出すと、

魔界将アデンの闇の球体にそれをぶつけるー


ユーリスの身体に激しい衝撃が走るーーー


「----!!!!」

ユーリスが、闇の球体を突破してーーー

魔界将アデンを引き裂いたーー


「--ぐあああああああああっ…」

魔界将アデンが膝をつくー。


「--はぁ…はぁ…」

少なからずダメージを負ったユーリスが振り返るー


魔界将アデンがなおも向かってくるー。


だがー

ユーリスは剣を手に、目をつぶるとー


「-----俺は、王国を守るー」

と、決意の言葉を口にして、

魔界将アデンを真っ二つに引き裂いたー。


断末魔と共に、溶けるようにして消えていく魔界将アデンー。


「--------」

ユーリスは少しだけ寂しそうに、アリシアのことを思うと、

そのまま上の階に向かって走り出したー


長い通路を超えて、

少数の魔物を蹴散らすー


ユーリスは、身体のダメージを気にしながらも、

先に進むー。


魔界将アデンの攻撃で、ユーリスもある程度のダメージを受けた。


まだ、行動に支障は出ていないが、

これ以上ダメージが積み重なることは避けたいー。


皇帝ゼロー

ダーク将軍こと神崎省吾ー

ヒルダこと高梨亜優美ー

裏切者のカイルー。


まだ、他に誰かがいるかもしれないー


「--和哉ー」

ユーリスは、別の方角からダークパレスに突入した

和哉とラナのことを心配しながらも、先に進むー。


ボゥゥゥウ…


「--」

ユーリスは、溶岩が溢れ出る部屋に出たー。


その先には、さらに上へと続く階段ー。


「--何かのエネルギーでも、作っているのかー?」

そんな風に思いながらユーリスが歩いていると、

声が聞こえて来たー


「--ーここは、裏切者を処刑する場所ですよー」

とー。


「--!」

ユーリスが振り返ると、

背後から、アクア王国の隠密部隊長だったカイルが姿を現したー。


「--カイル…」

ユーリスがカイルの方を見るー


闇の帝国と内通していたカイルー。

世界に絶望し、全てを滅ぼそうとしているカイルー。


その男が、今、ユーリスの目の前に再び立ちはだかったー。


溶岩が吹き出す中、

カイルが笑うー。


「--魔物の指揮官を倒すとは、さすがはユーリス様ー」

カイルがわざとらしく拍手をしながら呟くー。


「--カイル…もうやめるんだ」

ユーリスがカイルの方を見つめるー


アクア商会本部で、カイルと戦ったときー

カイルに懐いていた少女の話をしたー。

その時、確かにカイルは涙を流していたー。


カイルには、まだ”人の心”があるー。


「----…この世にあるのは、絶望のみー」

カイルが武器を構えるー。


「-----…」

ユーリスは少しだけ寂しそうに首を振るー。


「----あなたのような者に、”絶望”は理解できない!」

カイルは、それだけ言うと、分身して、

エナジーで作り出した手裏剣を、あらゆる方向から

ユーリスに飛ばすー。


ユーリスが炎の竜巻を作り出してそれを防ぐー


「--無駄ですよ、

 ユーリス様」


カイルが、あらゆる方向から、手裏剣を飛ばし続けるー。


ユーリスは防戦一方ー。


「先ほどの戦いで、あなたも万全ではないのでしょう?

 私とて、隠密部隊の隊長ー

 そんな状態で、どこまで戦えますか?」


カイルの手裏剣があらゆる方向から飛び交うー。


落下すれば溶岩の中ー

そんな場所で、カイルと、その分身は縦横無尽に動き回るー。


「--チッ!」

ユーリスの頬を、カイルの手裏剣がかすめるー。


”闇”を歩み続けた”日陰者”のことなどー

分かるまいー。

私がどのような闇を見て来たのかー

どのような絶望を見て来たのかー。


カイルは、多数の分身を展開しながら、

ユーリスに向けて、手裏剣を飛ばし続けるー。


ユーリスは反撃の隙を伺いながらも

足場も不安定なために、なかなか反撃に転じることが出来ないー。


「----カイル!そんな手裏剣だけでは、

 俺を倒すことはできないぞ!」

ユーリスが叫ぶー。


それは、事実ー。

ユーリスに少しずつダメージを与えてはいるが、

それだけで倒されるほど、ユーリスはヤワではないー。


「ククククー」

カイルは笑みを浮かべるー


”そんなことは、分っていますよ”

とー、

心の中でユーリスをあざ笑うー。


宰相ローディスのような、醜い権力争いをするものー

騎士団長ジークのような、歪んだ感情を持つものー

かつてーー

ミルト族を破滅に追いやったアクア王国ー


それに、語ることのできない

数多くの醜い人間の現実ー


そうー

この世の中は、腐っているー


だからこそーーー


カイルは、多数の分身を展開しながら、ユーリスの背後に忍び寄るー。


”ユーリスの首筋”に

とどめの一撃を加えるためー。


短刀を手に、ユーリスに忍び寄るー。


私はーーーー

カイルは、心の中で叫ぶー。


色々な思いが交錯する中ー

カイルの分身が飛ばす手裏剣に防戦一方のユーリスの背後からー

とどめの攻撃をーーー


「--”心の乱れ”は”忍”の死ー。」

ユーリスが呟いたー


「--!」

ユーリスの間合いに既に入っていたカイルが

目を見開くー。


「----せっかく気配を消してもーー

 今のお前じゃ、俺は倒せないー」


ユーリスは素早く身をかがめて、

カイルの短刀による攻撃をかわすと、

カイルに反撃の攻撃を加えたー。


「--ぐっ!」

カイルがバランスを崩し、

溶岩に転落しそうになるー。


ユーリスがとっさにカイルの手を掴むー。


「----…なぜ?」

カイルが呟くー。


ユーリスが悲しそうに言うー。


「確かに、この世界には目を逸らしたくなる光景もあるー…

 でも、それでも、俺たちは生きて行かないといけないんだー。


 闇の中にも、光は存在するんだー」


ユーリスの言葉に、カイルは笑ったー。


「---……甘いですよ、あなたはー」

カイルはそれだけ言うと、

少しだけ間を置いてから呟いたー


「-------少しだけーーーー

 あなたがまぶしいー


 闇に生きる私のようなものにはー」


カイルは、ユーリスの方を見つめながらそう呟いたー。


「---カイル…

 闇の帝国が滅んだら、たくさんやることがあるー。

 お前にもーー」


カイルの”裏切り”は許されることではないー


けれどー

ユーリスは、そんなカイルにも手を差し伸べようとしていたー。


「---今よりも良い”未来”を作れるとでも?」

カイルが言うー。


ユーリスは「必ず、今よりも平和な未来を作って見せる!」と

すぐに返事をするー


まっすぐなユーリスの瞳ー

”闇”を見て来た、自分とは違うー


”甘いー”

やはり、甘すぎるー


しかし…

もしかしたらー…。


カイルは首を振ったー。


そして、続けるー。


「---さっき言ったでしょう?

 「--ーここは、裏切者を処刑する場所ですよー」

 とー」


カイルの言葉ー

ユーリスがその意味に気づくと同時にーーー


カイルを掴むユーリスの手に、

カイルが手裏剣で攻撃を加えたー。


”私のような、裏切者をーー”


「---カイル!」

ユーリスは察したー。


カイルは、最初からここで、死ぬつもりだったのだーーー


ユーリスの手から離れて、溶岩に落ちていくカイルー


”やっぱりーーー

 勝てなかったかー”


カイルは笑うー。


だがー

”これだけの力”があればー

闇の帝国を止めることもできるかもしれないー


”わたしは疲れたーーー

 先に地獄で待ってますよー

 ユーリス様…”


カイルは最後にフッと笑うと、そのまま溶岩の中に、姿を消したー


「----……カイル」

ユーリスは、連戦の傷に、少し表情を歪めながらも

立ち上がるー。


そして、溶岩地帯を背に、ユーリスは呟いたー


「--みんなが笑って暮らせる世界ー…

 そんな、夢のような世界は作れないかもしれないー


 でもーー

 それでもーーー

 今よりも、 少しでも、平和な世の中に変えて行って見せるー。


 --この世界は絶望だけじゃないってところをー

 お前にも見せてやるー。


 だからー、

 地獄から、見てろよ、カイルー」


言葉を終えると、ユーリスはもう振り返らなかったー。


過去との決別ー

未来への決意ー


二つの戦いを終えたユーリスは、

闇の帝国との決着をつけるためー

本拠地、ダークパレスの最上階を目指して、

再び歩み始めたー。


㊱へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


「異世界の星空」は、

去年夏から連載していますが

いよいよ完結の時が近づいてきました!


今日もお読み下さりありがとうございました~!

(Fanbox)


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