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妹の静江の様子がおかしいー。

兄の直之がそのことに気づいたのは、

静江が、カリスマアイドル”J"のCDを友達から借りて来た日の

翌日のことだったー。


静江が、大音量で、Jの曲を聴きながら

自分もJの曲を熱唱しているのだー


「--おい!静江!」

直之が静江の部屋に入ると、

静江は身体を激しく動かしながら

Jの曲に合わせて踊っていたー


「--♪~~~~!」

Jの曲が部屋中に大音量で流れているー。


「--おいってば!」

直之が曲を止めると、

静江がぽかんとした表情で、ぼーっとしているー。


「--どうしたんだよ?昨日から。

 「-むりむり、わたし、ああいう女の人、苦手~」

 って言ってたじゃないか?」


直之が言うと、

静江は、「--ううん…わたし、Jのこと大好き…」と

少し虚ろな表情で呟いたー。


「---な、、どうしたんだよ…急に…

 昨日とずいぶん言ってることが違うぞ…?」

直之は首をかしげるー。


「--うるさいなぁ、わたしはJが好きになったの」

静江はそう言いながら、再びCDを再生するー。


♪~~!

Jの歌が大音量で流れ始めるー。

正直、あまり歌も上手くないように思えるし、

そんなにいい歌でもないー


だが、静江は嬉しそうに、熱唱を始めるー。


「---」

直之は、戸惑いながらそんな静江の様子を見つめるー


そしてー

”意外といい歌じゃんか… 可愛い声だし…”


「--!?」

直之は、一瞬、そう思ったー


”え…”

ふいに、歌を口ずさみかけた直之は

違和感を覚えて、とっさに静江の部屋から外に出たー


「---……今のは?」

直之は、戸惑うー。


静江の部屋から出て、その場から離れたことで

歌はほとんど聞こえなくなるー


だがーーー


今のはーー?


まるで、自分がJに魅了されてしまうかのような

不気味な感覚を感じたー。

あの場にとどまりたいー、

そんな危険な感覚を感じたー。


「----…どういうことだ…?」

直之は、深呼吸しながら、なんとか気持ちを

落ち着かせると、不安そうな表情で、

静江の部屋がある方向を見つめたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「--妹が、Jにはまったって?」

親友の健司が苦笑いしながら言う。


「あぁ…なんかさ、急にはまっちゃって

 おかしい感じがするんだ」

直之の言葉に、健司は「ははは、心配性だなぁ~」と笑う。


「--ーー静江ちゃんは、来年高校生だったよね?」

彼女の真凛が微笑みながら言うー。


直之の彼女である真凛と、直之の妹・静江は

何度か会っていて、面識もあるー。


「--あぁ…。」


「--ちょうど、”J"を好きになる年頃だと思うし、

 一度その人の曲を聴いて好きになるってことは

 あると思うから、あんまり気にしなくてもいいんじゃないかな?」


真凛がそう言うと、

親友の健司も「そうそう」と頷くー。


「---でもさ…」

直之は不安に思っていることを口にしたー。


昨日、静江の部屋でJの曲が耳に入ってきている最中ー

まるで”Jの虜”になってしまうかのような

不気味な感覚を感じたー


そうー

まるで”洗脳”されるかのような

そんな感覚でもあったー。


咄嗟に部屋から飛び出した直之は、

こうして無事だが、

もしーあのまま曲を聞き続けていたらー。


直之が、体験したこと、

そして感じたことを口にすると、

健司が笑ったー


「だっはははははは!直之!冗談きついぜ!」


「--ふふっ」

真凛も横で笑っているー。


「--じゃああれか?

 Jが急に大人気になったのは、Jが歌を通じて

 人々を操っていて、

 妹さんも操られちゃった…って、そう言いたいのか?」


健司の言葉に、

直之がうなずくと、

健司は、笑いながらも、少ししてから呟いたー。


「--ま、妹さんが心配なのはわかるよ。

 

 だったらさ、放課後、俺がこれでJの曲聞いてみるよ」


健司が鞄からヘッドホンを取り出しながら言うー。


”どうしてそんなもの学校に持ってきてるんだよ”と

直之は思いながらも、

「--は?」と首をかしげるー


「--俺がこれでJの曲聞いて、なんともなけりゃ、

 大丈夫ってことが分かるだろ?」

健司がそう言うと、直之は「やめとけよ…」と不安そうに呟くー


「もし、お前までおかしくなっちまったらどうするんだよ?」

直之が心配そうに言うと、

健司は笑みを浮かべたー。


”目を覚ませ 俺 Jなんて好きじゃない”

ノートに大きくそう文字を書く健司。


直之の彼女の真凛が「なにこれ…?」と苦笑いするー。


「--もし、Jの曲を聴いて、俺がおかしくなったらー」

ノートを破って直之に渡す健司ー。


「これを俺の顔面に叩きつけてくれ。

 そうすりゃ、俺も正気を取り戻すさ」


健司の直筆のノートの切れ端を手に、

直之がそれでも不安そうにしていると、

彼女の真凛が

「--まぁ…お願いしてみたら?

 直之もいつまでも暗いままじゃ、辛いでしょ?」と

優しく微笑んだー。


直之は迷った挙句、渋々と健司の提案を受け入れたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


じゃらじゃらとアクセサリーの音を立てながら

微笑む”J”ー


マネージャーの男が横に控える中、

Jは廃工場のような場所で微笑むー。


「--ふふふ…

 全国放送の日も、近いわね」


Jが笑うー。


「ええ」

マネージャーの男が言うと、

Jは、足を組みながら、周囲の女たちに

自分の脚を掃除させているー


まるで、”女王様”のようにー


”J"は、歌声で人々を洗脳しー

自分を崇拝させたり、崇めさせたりして

ファンをどんどん増やしていたー。


「--ふふふふ」


そうして、Jは瞬く間に人気者の階段を駆け上がったー。


そして、ついに来週には

全国放送の歌番組に初出演するー。


今まで断り続けてきたが

”このタイミングがチャンス”とJは判断したのだー。


「--ふふふ」

周囲の女をどけると、Jが立ち上がるー


顔立ちは優しそうなJが、

このような悪魔の計画を思いつくなど、

誰も想像していないだろうー。


Jが笑うー


「-今、わたしの人気が絶頂のこのタイミングで

 地上波の番組に出れば

 多くの人が、わたしを見るー


 そうなればー

 大勢の人間を一気にわたしの歌声で

 洗脳して、下僕にすることができる」


彼女は、ファンのことを”下僕”と呼んでいるー

Jは、それだけ呟くと、マネージャーの男を見て笑ったー


「---ふふふふふふ…

 わたしの歌声で、全てを魅了してあげるー」


・・・・・・・・・・・・・・・・


放課後ー。


健司がヘッドホンを手に、

ネット上の「J」の動画を再生し始めるー


Jのライブ映像を聞く健司ー。


健司は指を立ててサインを出すと

「全然問題ないぜ!」と

笑みを浮かべたー


直之が、その様子を不安そうに見つめるー。


彼女の真凛は、別の用事があるため、

ここにはいないー


健司と直之だけが、このパソコン室にいるー。


「---」

直之は、ふと、健司が次第に、身体を軽く動かしながら

リズムを取っているのに気づいたー。


妹の静江とは違い、イスに座ったままだし、

音楽が好きな健司のいつもの癖ーと、いうこともあり

直之は、気にしなかったー。


だがー

「-いい曲だな」

と、健司が呟いた時点で、

直之は不安になったー


「--おい…大丈夫か…!?」

直之が言う-。

だが、健司は返事をしないー


ヘッドホンをしているからだろうかー。


やがて、健司が虚ろな目になっていくー


「おい!」

直之は慌ててヘッドホンを健司から外したー


「---あ…?」

健司が不思議そうな表情を浮かべるー


「--大丈夫かよ!?なんか様子がおかしいぞ!

 やっぱ、、…Jの曲、おかしいよ」


直之が言うと、健司は舌打ちした。


「ったく、いいところだったのによ~!」

それだけ言うと、Jの曲を再び聞こうと

ヘッドホンを取り戻そうとする健司ー


「待てって!もう十分だから!」

直之は、昼休みの会話の内容を口にしたー。


だがー

健司は「もう少し聞かせろよ…Jちゃんの曲!」と

嬉しそうに呟くー


顔を赤らめる健司ー。

明らかに様子がおかしいー。


「--」

直之は、先ほど貰ったノートの切れ端を

健司に見せつけたー。


「--健司!」


”目を覚ませ 俺 Jなんて好きじゃない”


健司が先ほど書いたノートの切れ端だー

それを見せる直之ー。


「----」

健司が、それを見つめるー。


しかしーーー


「--さっきまでの俺が馬鹿だったってことだ」

健司は、ノートの切れ端を奪い取ると、それを破り捨てたー


「--へへ、、今まで何でおれはJに興味なかったんだろうな…?

 今日から俺は女王様に貢ぐぜ!」

健司が嬉しそうに、他の曲の動画を再生し始めるー


「おい!!健司!!おい!」

直之が叫ぶー


だが、ヘッドホンもつけずに、

パソコン室に大音量でJの曲が流れ始めたのを聞いて、

直之は、慌てて、そのままパソコン室から退散したー。


「くそっ…健司…!」

パソコン室の方を振り返るー。


「---くそっ!…”J”…どうにかしないと…!」

直之は唖然としながら走り出すー。


”J”の歌ー。

絶対におかしいー

Jは歌で人々を洗脳して、ファンを増やしているのだろうかー。


直之は恐怖を感じながら、

家に向かって走り出したー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


直之は、その日から”J"のことを

徹底的に調べ始めたー


妹の静江や親友の健司のように

”急にファン”になった人間が多く存在することが分かりー、

急にファンになった人間の中には

Jに心酔するあまり、Jの側で働き始め、

友人関係や家族関係を全て絶ってしまった人間まで

いるらしいー。


しかし、直之は調べるうちに、

”違和感”を覚えたー。


Jの周囲にいる女はわずかで、

Jのライブ会場に集まっているのは、

ほとんどが男ー。

イベントにも男が集結している様子だー。


”J"の洗脳は無差別だー。

妹の静江も洗脳されてしまっている感じだし、

静江にCDを渡した子も怪しいー。


だがー

ライブの映像などを確認しても、

”男”ばかりなのだー。


「---”女”はどこに?」

直之は戸惑うー。


洗脳してファンを増やすー。

それがJの目的なのだとすれば

”女”たちはどこに行っているのだろうかー。


「---」

静江がおしゃれをして出かけようとしているー


直之は咄嗟に「どこに行く!?」と叫ぶー。


静江は「--女王様のところ。邪魔しないで」と、

呟いたー。


「---……」

直之は、静江を止めようとしたー。


だがーー

直之は”あえて”そのまま静江を外に向かわせたー。


”---くそっ…俺がどうにかみんなを助けてやる”


健司もあれから3日ー

すっかりJの虜になり、おかしくなってしまったー。


Jの歌声が、何らかの影響を与えているのは、

間違いないー。


静江を尾行する健司ー。


すると、静江は廃墟地帯のような場所に入っていくー


「--(こんな場所に、Jがいるってのか?)」

直之は、そう思いながら、静江をさらに尾行するー。


するとー

廃墟地帯の奥に、栄えている謎の場所があったー。


まるで、

”夜の街”のような場所ー。


「--(ここは、なんだー?)」


”闇吉原”

そう書かれた場所にはー

色っぽい女たちがたくさんいてーー

柄の悪い男たちを誘惑していたー


「--なんだ…ここは…?」

直之は戸惑うー。


「---!」

直之は表情を歪めたー


静江が、メイド服姿にいつの間にか着替えていてー

”闇吉原”の、メイドカフェに入っていくー。


「--…!」

直之が、そのメイドカフェを覗くとー

中では、やはり柄の悪い男たちが、笑みを浮かべながら、

静江や、他の女を抱いていたー。


「---!!!」


直之が唖然としているとー

”会長!”という声が聞こえて来たー


直之が振り返ると、

そこには白い縦縞模様のスーツの男がいたー


危険な、目つきの男ーーーー


♪~~~

「--!」


スマホが鳴り、

直之は慌ててその場を離れて、闇吉原の近くの

廃墟地帯に戻るー。


”--”J"が第2ホールでライブをやってるみたい”


彼女の真凛からの連絡だったー。

真凛もJの調査に協力してくれているー。


「--第2ホールでライブ?」


第2ホールとは、高校近くのコンサートなどがよく行われているホールだ。


「--ってことは、ここにJはいないってことかー」


”闇吉原”の入口を見つめる直之ー

”J"と”闇吉原”の関係はー?

あのスーツの男はー?


そしてー

何より静江が心配だー


だがー

”J"を何とかしなければ、静江も救えないー。


直之は戸惑いながらも

”J"に直接会って話をつけるー、

と、第2ホールを目指して、走り出すのだったー。


③へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


カリスマアイドル・Jと

闇吉原の関係は…?


続きはまた今度デス~!

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