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「くくく…」

紗智が不気味な笑みを浮かべるー


いつも通りの”穏やかな”雰囲気の服装で、

紗智は、昨日に引き続き、祖母・富江の家にやってきていたー


インターホンを鳴らすー


祖母の富江は足腰が弱く、なかなか出てこないー


腕を組んでイライラした様子で

「おっせぇなクソババアが…」

と、呟く紗智ー。


紗智本人はー

”大好きなおばあちゃん”に対して

このようなことは絶対に思わないー。

祖母・富江のことを心から大切にしているからだー。


しかしー

今の紗智はー

詐欺グループの男・倉林に憑依されて

身も心も完全に乗っ取られてしまっていた。


「---」

イライラしながら、綺麗な生足を晒したミニスカート姿で

脚をトントンさせる紗智ー


そんな風にイライラしていると、

ようやく祖母の富江が出てきたー。


「---あら~!紗智!」


「--あ、おばあちゃん!わたしだよ~!」

紗智は笑顔を作って、手を振るー


「---二日連続で来てくれるなんて、嬉しいわ~」

富江が笑いながら、紗智を家の中に招き入れるー


可愛い可愛い孫娘はー

悪魔のような男たちに乗っ取られているとも知らずにー。


「-ーーそういえば、さっき、大学から電話があったんだけど、

 紗智、学費を滞納してるんだって?」

祖母・富江が心配そうに言うー


「---うん…」

紗智は、悲しそうに呟くー


「--バイト先も色々苦しくて、急にシフト減らされちゃったりして」

紗智が言葉を続けるー


紗智はー

大学の学費を滞納などしていないー。

バイト先のシフトも減らされていないー。


だがー、

”手筈通り”

紗智に憑依している倉林の仲間であり、リーダー格の本郷が、

大学の職員を装い、紗智の祖母の富江に、

学費の滞納について、連絡したのだー。


富江は、”その電話”だけでお金を振り込むほど

愚かではなかったし、

”確認してみます”と言って、電話を切ったー。


だがー

こうして今、紗智本人がやってきていることで、

”本当に学費を滞納してしまっているんだ…”と、

祖母の富江は思ってしまうー。


「ーーあ、でも、大丈夫…大丈夫だよ、おばあちゃん!

 わたし、なんとかするから」

紗智が言うと、

祖母の富江は「そんなこと言わないの」と

笑顔で紗智の肩を叩いたー。


富江が部屋の奥の方に向かっていくー。

厳重にしまわれていた箱を取り出す富江ー


「くくく…ババア…早く金を出しな」

富江の後ろ姿を見ながら、紗智は小声で呟くー


「--実の可愛い孫が、大好きな祖母を騙して

 金を巻き上げるなんてー

 最高だぜ」


紗智の身体が、倉林の意のままに興奮しているのを感じてー

紗智に憑依している倉林は、さらに興奮してしまうー。


「--ほら、紗智…」

富江が、封筒に入った大金を紗智に渡すー。


「---そ、そんな、おばあちゃん!いいってば!」

そう言いながらも、現金の枚数を数えだす紗智ー。


指をペロリと舐めて、

札束を数えるー


”へへ…”

紗智に憑依している倉林が笑うー。


だがー


「--これじゃ、足りないかも」

紗智が不安そうに言うー。


”このババアの金は、こんなもんじゃねぇ。

 残りは銀行か?”


紗智が、祖母の富江に現金を催促するー。


富江は、”紗智が父親や母親には学費のことを言いづらいのだろう”と

思い、可愛い孫のために、と紗智の両親に学費のことは確認せずに、

今、こうして紗智にお金を渡しているー


”紗智の祖母が、紗智の両親に確認の電話をしたりはしない”


事前調査で、本郷や倉林たち詐欺グループは

そう”確信”していた。


「---ごめんねぇ、紗智…今、家にあるのはこれだけなの」

富江が苦笑いしながら言うー


「--(いいから出せよ)」

紗智は内心でそう思いながら、

「おばあちゃんさぁ…銀行にお金、入ってたよね?」

と、富江の方を見つめるー


「え……」

富江の表情に戸惑いの色が浮かんだー。


「-ーーおばあちゃん、通帳貸して。

 わたしが、お金下ろしてくるから」

紗智が、祖母の富江に通帳を要求するー


だがー

富江は戸惑っていたー。


「---そ、、それは…

 ごめんね…紗智」


”おかしい”ー

そんな、疑いの色が富江の顔に浮かんだー。


これまで、数々の老人から、金を奪い取って来た詐欺グループ。


憑依で、実の孫や孫娘を乗っ取れば

簡単なことだったー。

それにー

ターゲットの高齢者がある程度、ボケていて、

判断能力が衰えているケースも多くー

スムーズにお金を奪うことが出来ていた。


しかしー

富江は年齢の割にしっかりとしておりー

紗智がいつも”おばあちゃん気を付けて”と、

一人暮らしのおばあちゃんのことを心配し、

いつも、詐欺について注意喚起をしていたために、

富江の警戒心は人一倍強かったのだー。


「---…わたしのために、おねがいっ!」

紗智が両手を合わせて、お願いポーズを作るー


「---…紗智…今日、、なんだか、変じゃない…?」

富江の表情が一気に不安そうな表情に変わるー。


「へ、変?わたしが!?

 何言ってるの~?

 ほら、どこからどうみても、わたし、

 おばあちゃんの可愛い可愛い孫の紗智だよ!」


紗智が両手を広げながら笑うー。


「---…でも…」

富江は戸惑っているー


目の前にいる”紗智”に違和感を感じているー。

そして、紗智からいつも”詐欺”に注意するように言われていたため

”お金”を欲しがる紗智の行動に強い違和感を覚えていたー。


「---でも、じゃないでしょ」

少しだけ苛立ちを見せる紗智。


「---ほら、可愛い孫のために、お金、出して。

 通帳、どこ?」

紗智がキョロキョロしながら言うー。


「--ごめん、紗智…ちょっと、、」

富江はそう言うと、紗智が以前、富江にプレゼントした

スマホを手に、紗智に連絡を入れたー。


”目の前にいる紗智が偽物なのではないか”

そう、疑っているのだろうー。


紗智は笑みを浮かべるー


”ククク…”身体”は本物だから、無駄だぜ?クソババア”


「---」

紗智は、自分の鞄から、鳴り響くスマホを取り出して笑うー。


「--わたし、本物だよ?

 おばあちゃんもしかして、疑ってるの?」

顔は笑っているー

だが、紗智は顔をヒクヒクさせていたー。


怒りを必死に隠しているー


「---……紗智…

 月々の学費なら、毎月、足りないときは助けてあげるから…


 まずはそれで、何か月かはー」


「---いいから、お金ちょうだい!さっさとして!」

紗智が、うんざりした様子で声を荒げたー


「さ、、紗智…?」

戸惑う富江ー


明らかにいつもの紗智と違うと気づくー


「--通帳。早く出して」

紗智が、イライラしながら富江に対して手を伸ばすー


”ここまで頑固なババアは初めてだ”と

紗智に憑依している倉林は戸惑いながら、

富江の方を見るー


富江は、首を振りながらー


「あなた…紗智じゃない…!」

と、後ずさるー。


「--はぁ?どこからどうみてもわたしは紗智よ!

 おばあちゃんの可愛い可愛い孫の紗智よ!」


紗智がそう言いながら、壁際に後ずさっていく富江を

追い詰めるー


「--通帳。出して。 ほら、、早く!」

紗智が声を荒げるー


富江が泣きそうになりながら

首を横に振るー


「--通帳出せって言ってるんだよ!このクソババア!」

紗智が鬼のような形相で叫んだー


「ひっ…」

富江が思わず尻餅をついてしまうー。


「--ふぅぅぅぅぅぅ~~~~」

”つい”素を出してしまったー


そんな風に思いながら、

紗智は無理やり笑顔を作るー


「--通帳、ちょうだい?おばあちゃん」

紗智の笑顔に、富江は「あ、、あなた、、誰!?」と叫ぶー


”勘のいいババアだ…”

紗智は面倒臭そうに舌打ちすると、

「--おばあちゃんの大事な大事な孫の紗智だよ!」

と、笑みを浮かべたー


「違う…!違う…!」

祖母の富江は、弱弱しく呟いているー


「---~~~~」

イライラした様子で髪をぐしゃぐしゃかきむしる紗智ー


「--どこが違うっての?」

紗智は舌打ちをしながら、富江を睨むー


「---……」

富江が泣きながら首を振っているー


弱弱しい老人のくせにー

と、紗智は思いながら富江の部屋を荒らし始めるー


「--やめて!」

富江が泣き叫ぶー。


「--通帳どこ?」

紗智が呟くー


「--やめてよ!」

”おばあちゃんを泣かせているー”

紗智本人がもしも今の光景を知ったら、

全力で止めに入るだろうー


だが、今の紗智は倉林に完全に乗っ取られていてー

身も心も完全に倉林の意のままー


大好きなおばあちゃんを自分が泣かせていようと、

何も関係はないー。


「-----どこなんだよ!」

紗智が、富江の方を見て怒鳴り声をあげるー。


「---…」

富江が首を振るー


”紗智と約束したから”

とー


”世の中には悪い人がいっぱいいるから、騙されないで”

と、紗智はいつも、おばあちゃんに

詐欺事件などが起きるたびに優しく注意していたー


そんな「孫」の言葉を

富江は、一生懸命守ろうとしているー。


「---わたしが紗智だって言ってんだろうが!」

紗智が怒りの形相で叫ぶー。


「---さ、、紗智だけど…紗智じゃない…!」

富江が泣きながら叫ぶー。


妙に勘の良いババアだー

と、紗智は怒り狂いながら、部屋を乱暴に探し回るー


”こうなったら実力コースだ”

紗智が髪を乱しながら、何度も何度も舌打ちして、

おばあちゃんの部屋を荒らしていくー。


倉林ら詐欺グループは、以前も”失敗”したことは

何度かあったー。


だが、そんな場合は”実力コース”で現金を奪い取るー。


今ー

倉林は、紗智の身体に憑依しているー


つまり、この状況であれば、罪を犯すのは紗智なのだー。

法律上、倉林ではなく、紗智が犯人になるのだー。


「---やめて!!!」

富江が泣きながら紗智を止めようとするー


「-邪魔すんじゃねぇ!ババア!」

紗智が鬼のような形相で叫んで、

富江を突き飛ばすー。


「-----」

富江が床に倒れて、涙を流すー


「--------!」

紗智は、そんな富江の姿を見て、

突然、激しい頭痛のようなものを覚えたー


”--!?!?”

紗智に憑依している倉林が、初めての感覚に驚くー


「---に、、、に、、、、」


”---!?

 この女の意識ー!?”


倉林は戸惑ったー

今までにこんなことは一度もなかったー


だがー


「---おばあ…ちゃん……逃げて…」

紗智の口が、倉林の意識とは関係なく、動くー


「--さ、、紗智…?」

富江が泣きながら紗智の方を見るー


”大好きなおばあちゃん”の涙を見て、

紗智自身の意識が、わずかに戻ったー



「--逃げ……て… 逃げ…

 

 うあああああああああああああああああああっ!

 うるせえええええええええええええええええ!」


鬼のような形相で叫び出す紗智ー


「--黙ってろ!このクソ女!」


”紗智へのお仕置き”と言わんばかりに

壁に頭を自ら叩きつけると、

頬から軽く血を流しながら、

紗智は、富江を乱暴につかむー


「--早く出せよ通帳。 な?

 可愛い孫がお願いしてんだよ。


 な?おい?」


紗智が低い声で富江を睨むー


だが、富江は通帳を出そうとはしなかったー


「---あなたは、、あなたは、、紗智じゃない!

 紗智を返して!」

とー。


「バ、、、ババア~~~~~~!」

紗智がギリギリと唇を噛みながら、怒りの形相で

富江を睨みつけるー


あたふたしながら、スマホを手にする富江ー

警察を呼ぼうとしているー


「--お~っと、待ちな!」

紗智が、そんな富江を見ながら叫んだー。


「---…おばあちゃんに理解できるかは分からないけどー

 ”身体”は、大事な大事な紗智ちゃんの身体だからーー

 警察を呼んだらー

 大事なわたしが逮捕されちゃうよ~?


 ふふ、、、ふふふふ、

 ほら、大人しく通帳だせよ?な?」


紗智の言葉に、富江は震えながらスマホを手から落としー

紗智の方を見つめたー



③へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


発覚した憑依…!

果たして、おばあちゃんと孫の絆の行方は…?


続きはまた次回デス~!


今日もありがとうございました!!

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