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「-------」

神崎省吾は、写真を見つめていたー。


和哉ー

亜優美ー

そして、省吾ー


三人で仲良く写ってる写真をー。


「---俺はさ」

省吾は、漆黒の鎧に身を固めた姿で、写真を見つめるー。


「---俺はさ、お前のこと、今でも”親友”だと思ってるー」

”憎しみ”と”寂しさ”

相容れぬ感情が、省吾の中で交じり合うー


「けどよー」

省吾は、呟くー


「--だからこそ、憎いんだよー。

 分かるか?お前に、”手に入らなかった側”の悔しさがよー」

省吾は、写真に写る亜優美のほうを見つめるー


三人組の”余り物”-

親友と、幼馴染の亜優美ー

カップルになった二人を誰よりも祝福すると同時に、

省吾は誰よりも憎んだー。


”どうして、俺はー”余りの1”なのかー”

とー。


考えれば、考えるほどー

憎しみは、増幅されたー


「--引き返せないと思ったよ」

省吾は呟くー。

想像以上に追い詰められていた亜優美は

自ら命を絶つ道を選んだー


亜優美がそこまでするとは思わなかったー


そんな矢先に、この異世界への転生ー。


「---もしもー」

省吾は悲しそうに呟いたー


「もしもー

 ”少しでも”何かが違っていればーーー」


運命はーーー

変わっていたのかも、しれないー


・・・・・・・・・


★主要登場人物★


藤枝 和哉(ふじえだ かずや)/アリシア姫

異世界に転生後、女体化。アリシア姫の意思を受け継ぎ、戦う決意を固めた。


高梨 亜優美(たかなし あゆみ)/ヒルダ

和哉の恋人。異世界ではヒルダと名乗り、敵対している。


神埼 省吾(かんざき しょうご)/ダーク将軍

和哉・亜優美の共通の友人。歪んだ嫉妬心から、敵対する。


ユーリス/ジーク/フェルナンデス/ミリア

王宮騎士団長。それぞれが、それぞれの騎士団を率いている。


ラナ

アリシア姫の侍女。和哉に対しては辛辣な接し方をする。


グール伯爵

皇帝ゼロの腹心。闇の帝国の事実上の指揮者。ミリアの実の父。


皇帝ゼロ

闇の帝国の皇帝。強大なエナジーを持つ。エックスの兄。


カイル

アクア王国隠密部隊長。闇の帝国と内通している。


※登場人物詳細

(↓に、¥300と出ていますが、このお話を読めている皆様は、既に

 プランご加入(ありがとうございます★☆!)済みですので、

 お金がかかったりすることはありません!ご安心ください)

fanbox post: creator/29593080/post/1260447

・・・・・・・・・・・・・・


「-----」

和哉は、長い地下空洞を抜けて、

アクア商会本部へ到着していたー。


「----……」

和哉は暗い表情を浮かべているー


「----…大丈夫?」

共にアクア商会にたどり着いた、侍女のラナが心配そうにつぶやくー。


「--俺は、もう逃げないよー」

和哉は、静かに、けれども強い決心を持ってそう呟いたー


”闇の帝国”と戦うー

そして、この王国に平和を取り戻すー。


それがー

散っていった者たちに対するー手向け。


世話役のルベール、

ミルト族のエックス、

本物のアリシア姫、

宰相のガディウス、

騎士団長のフェルナンデスー


みんなー

それぞれ想いを抱いたままー

命を落としたー。


「--」

この世界に来てから、何度も何度もくじけそうになったー


今もそうだー。

けれどー

和哉は、変わったー。


クヨクヨしても、始まらないー。


この王国に平和を取り戻すためー

元の世界に戻るためー

死んでいったものたちの願いを果たすためー

そして、最愛の亜優美を取り戻すためー


どんなに辛くても、足を止めるわけにはいかないー


「--強くなったね…」

ラナが呟くー


「--ラナに、ガミガミ言われ続けたからかも、な?」

和哉が笑いながら言うと、

そこにアクア商会のメンバーがやってきたー。


「--”会長”がお呼びでございます」

頭を下げるアクア商会のメンバー。


和哉はラナに「ここで待っててくれ」と告げると、

すっかり慣れた様子でドレスを整えて、

そのまま案内された場所へ向かうー。


以前、商談に参加した会議室のような場所でー

綺麗な女性が待ち構えていた。


「----…ーーー久しぶりですね。」

アクア商会の会長である女性は、そう呟いたー。


「-----」

和哉は戸惑うー。

この女性のことは他の誰からも聞いていないー。


「---姉上」

笑みを浮かべる女性ー。

まるで、女神のように美しくー母性に溢れる雰囲気ー


「---え…」

和哉が戸惑うと、アクア商会会長の女性は、笑みを浮かべたー


「ふふっー

 なんて…

 あなたは”姉上”ではありませんね?」

クスッと笑うと、女性は、

「わたしはアクア商会会長のアリスー。

 姫様のーーアリシアの妹ですー」

と、頭を下げたー。


和哉が戸惑っていると、

「---安心しろ」と、背後から声が聞こえたー。


「ミリア!」

和哉が振り返ると、そこには一足先に城下町から

民を避難させるべく脱出していた

女性騎士団長のミリアがいたー。


「無事でよかった」

和哉が言うと、

ミリアも「お前も無事で何よりだ」と、少しだけ笑みを浮かべて、

「--アリス様は、姫様の妹君だーー

 事情は私が既にご説明した」と、和哉に告げたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


和哉は王宮からの脱出の際に

宰相ローディスの後任であった宰相ガディウス、

そして騎士団長のフェルナンデスが戦死したことを伝えたー


「--そうか」

ミリアはザンネンそうに、呟くー。


「--ユーリスとジークは?」

ミリアの言葉に、和哉は「分からない」と首を振るー。


「--ーーそれより、ここも攻撃されるかもしれない」

和哉が、既に違和感も覚えないぐらいに慣れた”アリシア姫の声”で

そう告げると、

アクア商会会長のアリスは、微笑んだー。


「--その心配はありません」

とー。


それだけ言うと、イスから立ち上がったアリスは、

和哉を見晴らしの良いテラスに案内するー。


そしてー

アリスは、呟いたー


「ーーアクア商会本部はーー

 私の”エナジー”によって、守られていますー」


アリスの身体が黄色い光に包まれるー


「--!」

和哉が、上空を見上げるとー

ドーム状に黄色いオーラのようなものが

アクア商会全体を包み込んでいるのが見えたー。


「--聖光領域(シャイン・フィールド)

 わたしの能力によりー

 このアクア商会には、魔物を1匹たりとも、通しません」

アリスの言葉に、

和哉は「すごい…」と呟きながら

ドームのように張られているバリアのようなものを

見つめたー。


「----…ただ」

アリスは和哉のほうを見るー


「”人間”はわたしの能力では防げません」


その言葉に、和哉は”闇の帝国”の人間を思い浮かべるー


闇の帝国の勢力は、

大半が皇帝ゼロが、その能力で魔界より召喚した”魔物”たちだ。

故に、アクア王国が攻められたときのように、大軍勢に攻められることはない。


人間の兵士も、闇の帝国軍には、所属していないー。


だがー。


皇帝ゼロー

グール伯爵と、その側近の仮面の騎士ー

省吾に、洗脳された亜優美ー

裏切者の隠密部隊長カイル、

そして、和哉と同じ世界から召喚されて洗脳された少女・ソフィアー。


”人間”は、何名か存在しているー。


「----私の騎士団が全方位、警備にあたっている」

ミリアが言うー


「--そう簡単にアクア商会に、侵入することはできない」

ミリアの言葉に、和哉は頷いたー。


「--でも、これからどうすれば」

和哉が少しだけ気弱に呟くと、

アリスが和哉の手を握ったー。


「--あなたは、兵士や民衆にとっては”アリシア姫”ですー。

 みんなにとっての、希望ー

 希望があれば、必ず、チャンスは訪れますー」

アリスの言葉に、和哉は

「俺が、希望…か」と、呟きつつもー

「やってみるよー…

 俺に、出来る限りのことは、何でもー」と、決意の表情で頷いたー。


・・・・・・・・・・・・


「----どういうことだ?」

グール伯爵が、表情を歪めるー。

背後には、側近の仮面の騎士・サイラスも控えているー。


「---言った通りよー」

皇帝ゼロに洗脳されている亜優美ー

ヒルダと名乗る亜優美が、コツコツと音を立てながら

グール伯爵のほうを見つめるー


「--あなたには、陥落させたアクア王国王宮の守りに

 ついてほしいの」

亜優美の見下すような口調に、

グール伯爵は笑うー


「いつから貴様如きが、この私に命令できるようになったのだ?」

とー。


仮面の騎士・サイラスは剣に手を掛けるー。


クスッと笑う亜優美ー。


「---わたしは皇帝様直属の女よー

 わたしに歯向かうのかしら?」

挑発的な亜優美ー


「---貴様…」

グール伯爵が、闇のオーラを放つー。


「---あら?わたしとやるのかしら?」

亜優美が、悪女の笑みを浮かべるー

洗脳される前の亜優美が、絶対に見せない、笑みー。


「--我はグール伯爵ー

 闇の帝国の最高司令官にして

 皇帝ゼロ様より直々に全権を預かっている者ぞ」


グール伯爵が威圧するように、亜優美に対して言い放つー。


「-----ふぅん」

亜優美は笑みを浮かべたー


「--誰が、支配者か、

 よく自覚することね」

亜優美は脅すような口調で言うと、

高飛車な笑い声をあげながら、そのまま立ち去って行ったー


「---ゼロ様に選ばれたのはーこの私だ」

グール伯爵は、歯ぎしりをしながら、立ち去っていく亜優美の背中を見つめたー。


・・・・・・・・・・・・・・


数日後ー

アクア商会で、体制を整え直していた和哉たちー


「は~~~姫業務つかれたぁ~」

アクア商会本部内の一室で、和哉がだらしない格好で豪華なソファーに

腰掛けると、

「こら!姫様はそんな格好しない!」とラナがいつものように、

苦言を呈したー


「はは…どこにいてもラナはうるさいなぁ」

和哉はそんな風に呟くと、

机の上に書類を広げたー。


襲撃から逃げのびた兵士たちが、続々とアクア商会に

落ちのびてきているー。


だんだんと体制は整いつつあるものの、

騎士団長のフェルナンデスは死亡、

ユーリスとジークは行方不明のままー


まだまだ、戦力は足りずー、

更には、いつ闇の帝国側が襲撃を仕掛けて来るかもわからず、

当面は、防備を固めるしかなかった。


「----それにしても…」

和哉は外を見つめながら呟くー


「--アリシア姫は、この身体で、頑張って来たんだよなぁ…」

和哉の言葉に、ラナが、和哉のほうを見つめるー。


「--いや、悪い意味じゃなくてさ、凄いなぁ…ってさ」

和哉は思うー。


姫とは言え、身体は普通の若い女性ー。

この世界のエネルギー「エナジー」による能力を使えるとは言え、

和哉の身体に比べると、やっぱり力仕事だとか、

そういったことをすると激しく疲れるし、

体力的なものでの「差」を感じるー。


なのに、背負う重圧は、和哉とは比べ物にならずー

まだ若い女性が「一つの王国」を背負うことのすごさを

和哉は感じていたー


「---ふふん。姫様はすごいのよ。あんたとは違って」

ラナがまるで自分のことのように得意げになって笑うー


まるで自分が褒められているかのようなラナに、

和哉は「はは、ラナをほめてるわけじゃないんだけどな」と

笑いながら呟いたー


頬を膨らませるラナにー


「まぁーー

 ラナも、ホントにすごいと思うけどな」

と、笑いながら呟いたー


和哉の世界なら、ラナは女子高生の年齢なのだからー。


・・・・・・・・・・・・


翌日ー


「---姫様」

一人の兵士がやって来るー。


「--ユーリス様のご無事が確認されました」

兵士の言葉に、

和哉は思わず”本当か!?”と叫びそうになりながらも

「ほ、本当ですか?」と答えたー。


「--はい。ここから西側の地方に、ユーリス様率いる騎士団と共に

 避難されているようです」

兵士の言葉に、和哉は「よかった…」と呟いたー


騎士団長ユーリスが無事だったー。

戦力としても、人間としても、とても頼りになる存在ー。


「--アリス様にもご報告したいのですが」

兵士の言葉に、和哉は「わかりました」と頷くー。


アクア商会会長のアリスに1兵士が会うことは難しいー。

そのため、和哉がこの兵士を、アリスの元に案内するー。


和哉がアクア商会本部中心にあるタワーのような建物に向かうー。


「--アリシアです。会長に急ぎお話が」

和哉がそう言うと、アクア商会のメンバーが「はっ!」と頭を下げたー。


メンバーが、アリスに確認を入れているー。


それを待つ和哉ー


背後に立つ兵士がーー

不気味な笑みを浮かべたー


「---(クククク)」

歪んだ笑みを浮かべる兵士ー


”我が能力”変身(メタモル)-”


ユーリス生存の”偽りの報告”を持ってきた兵士はー

闇の帝国と内通している隠密部隊長・カイルだったー。


王国陥落の際に本性を現し、行方を晦ましていたが

自分の能力で、兵士に変身しー

アクア商会に潜り込んだー


アクア商会会長・アリスの能力により、

アクア商会には、魔物が1匹たりとも侵入できないー


そのためー

人間であるカイルが、アリスを始末しに来たのだー。


「----」

和哉が、振り返るー。


「---あとは私が伝えておきます。

 あなたはご苦労様でした」


和哉は、目の前にいる兵士がカイルだとは気づいていないー。

単純に、兵士を同行させる必要はなく、和哉がアリシア姫として

アリスにユーリスの生存を伝えればいい、とそう判断しての言葉ー


「--いえ、私も同行いたします」

兵士に変身したカイルが頭を下げるー。


”暗殺”は私の最も得意とするものー。


カイルは笑みを浮かべるー


宰相ローディスを始末したのも、カイルだー。

王国の内部争いに乗じて、

”政治家”としては優秀な宰相ローディスを始末したー


「---」

和哉が兵士を見つめるー


兵士に化けたカイルが和哉を見つめるー


「----どうしても、会長にだけお伝えしたいこともございますー

 商会関係のことでございます。

 どうか、私を直接、アリス様に合わせてください」


その言葉に、和哉が戸惑っているとー


背後から、別の男の声がしたー。


「-!?」

「--!?」

和哉とカイルが、その声の主のほうを振り向くとー


そこにはー

騎士団長のユーリスがいたーーー


「---ユーリス!?」

和哉が叫ぶー。


「--待たせたな。ついさっき、無事にここにたどり着いた」

ユーリスは和哉のほうを見て、それだけ言うと、

兵士に化けているカイルに剣を向けたー。


「--偽の生存報告で、アリス様を暗殺でもしようとしたのだろうがー、

 残念だったなー。

 本物が、帰還したぞ」


ユーリスが言うと、

兵士が「くっ…」と声をあげてーーー

本性を現したー


「お前は…!」

和哉が声をあげるー。


周囲の兵士も身構えるー


「----謀反人・カイル!もう貴様の逃げ場はないぞ!」

ユーリスの言葉に、隠密部隊長のカイルは「チッ」と舌打ちしながら

武器を構えたー


㉚へ続く


・・・・・・・・・・・・


コメント


今年最後の女体化X異世界長編でした~!

来年はラストスパートを描いていきます!


ありがとうございました!!


1年間休まず更新まであと1日!

頑張ります~☆!

(Fanbox)


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