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検死官ジョーは、手にしていたグラスを見つめたー


紫色の液体ー

ぶどうジュースが注がれているグラスだ。


検死官として働いているうちに、彼は死体から

悪の部分だけを取り出せる能力を得た。

何故かは分からない。


そして、その魂を生きている人間に投げ込めることに

気づいた。


それに気づいたジョーは、今まで98人の人間に

悪の魂を放り込んできた。


すると、

悪の魂を憑依させられてしまった

人々はたちまち、悪の道へと転がり堕ちるー。


小学生の子に放り込んだときは、悪餓鬼へと変貌した。

今も、手がつけられないほどのワルで、親元を飛び出して

何度も補導されている、と噂を聞いているー。


スーパーの人気女性店員に放り込んだときには、

着服を繰り返す様になり、その女は逮捕された。

その後はどうなったのか知らないー。


温厚そうなおばあさんに放り込んだときには、

周りになんでもケチをつける近所でも迷惑がられている

おばあさんに成り下がってしまった。

最近では、事件沙汰も起こしたのだとかー。


そして、この前ー。

優等生の女子高生、西原愛華に投げ込んだときには、

彼女は不良へと成り下がった。

今では地元のワルとつるんで、好き放題やっているらしい。


「ふぅ…」

ジョーはため息をついた。


人の心とはそんなに弱いモノなのか。


死人から取り出した”悪”が混ざるだけで

そんなにも堕ちてしまうものなのか。


ジョーはグラスのワインを見つめながら呟くー


「今度こそは……乗り越えてくれよ」


いつの日かー

”悪の魂”に打ち勝つ人間を見てみたい。

そんな好奇心を持っている一方でー、


悪の魂に憑依された人間が、

悪の道に転落していくー…

”変貌”していく様子を見るのが楽しい、という

”歪んだ好奇心”もジョーは持ち合わせていたー


さてー

”次”は、どのような豹変ぶりを見せてくれるだろうかー。


検死官ジョーは、そんな風に思いながら

静かに笑みを浮かべたー。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


藤森彩乃(ふじもりあやの)-。


24歳の彼女は

会社の同僚、倉木毅(くらき たけし)と結婚し、

幸せな新婚生活を送っていた。


会社は既に退社して、今は家事に専念している


「いってらっしゃい!」

彩乃が笑顔で夫を送り出す。


彩乃は近所でも評判の良妻だった。


いつでも笑顔を絶やすことなく、

おしとやかな雰囲気の彼女は

近所でもすぐに良いイメージを持たれた。


「あ、…毅ったら忘れ物してる」

彩乃は時計を見る。


そして一人微笑むと、

「しょうがないなぁ、持って行ってあげよっと!」


そう呟いて、出かける支度をし、

玄関から飛び出すー。


ちょうど、毅が勤務している会社の休憩時間に会社についた彩乃は、

会社内へと入って行った。


元々働いていたこともあり、中小企業なので

退職したとは言え、そのあたりは融通が利くのだ。



「---毅!」

彩乃が休憩室で夫を呼ぶと、夫の毅は驚いた表情を浮かべる


「彩乃~ どうしたんだよ?」

毅が笑ながら言う。


彩乃は、毅が午後の会議で使う資料を鞄から

取り出し、毅に手渡した。


「あ、--これ、忘れてたのかーー

 悪い!助かったよ!」

毅が言う。

とても申し訳なさそうにしながらー。


「もう、、ドジなんだから」

彩乃が、苦笑いしながら言う。

少し頬を膨らませるようなしぐさをしながらも

「迷惑」という感じのしぐさではなく、

二人の仲の良さが伝わってきたー



その様子を見た毅の後輩が

「ラブラブですね~」

と茶化すー。


「ちょっと~やめてくださいよ!」

彩乃が顔を赤くしながら言った。


笑う後輩と毅ー


少しだけ三人で雑談をして、

しばらくすると、毅が時計を見つめて、


「…まぁ、とにかく、助かったよ!ありがとう」


と、彩乃に心からのお礼を告げたー。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「♪~~」

毅の会社の昼休みが終わり、

彩乃は警備員に頭を下げて、会社を後にする。


”帰りに何か買っていこうかな”と、

晩御飯のことを考える彩乃ー


しかしー

”姿”を消した男が、帰路についた彩乃の後ろから

静かに歩いていた。


その手には謎の光る物体がある。

ーーーそう、悪の魂だ。


ジョーは目を細めた。


悪の魂も、取り出した元々の人間によって

少しずつ性質が違う。


勿論、死人の魂だから、もう意識はないし、

誰かを操ったりできるわけでもない。


だが、生きている人間の体に入った魂は

次第に溶けていき、その宿主と同化する。


そして、心弱い人間はーその魂の影響を受け、

変貌してしまうのだ。



人によって悪の部分は異なる。


この前、西原愛華に投げ入れた魂は

交通事故で死んだ暴走族の魂だった。


だから、その魂にあった”暴走”の部分が

愛華と同化し、今ではすっかり彼女は不良少女になってしまっている。



「今回はー」

ジョーは呟いた。


男好きの浮気女の魂ー

散々浮気を繰り返した挙句、性病になって

それが原因で、体調を大きく崩し、

最終的に命を落とした女の”悪の魂”だー。


浮気女の悪の魂をこの清楚で奥手な

藤森綾乃に投げ入れたらどうなるのだろう?


彼女の清楚な部分が勝つのだろうかー

それともーーーー


ジョーは唇をゆがめて笑うと、

目の前に居る彩乃に悪の魂を投げ入れた


彩乃の身体に、悪の魂が命中しー

彩乃がビクンと震えるー。


「うっ…… え?」

彩乃が振り返るー


「あれ?今、何かぶつかったような…」

彩乃が不思議そうに背後を見ているが、

そこには誰の姿も無い。


ーーー否、

姿を消したジョーが立っているが彼女には目視できない。



「気のせいかな…」

そう呟いてほほ笑むと、彼女は家に向かって歩きはじめた。



彩乃はまだ知らなかった。

これから自分に起きる”変化”をーーー


”今”この瞬間から、

自分の身体に、”悪”が少しずつ、侵食を始めたことにー。



⑤へ続く


・・・・・・・・・・・・


コメント


今月初めましての方もいらっしゃると思いますので

念のため説明しておくと、

毎週火曜日だけ、私の都合で、執筆の時間が取れないので、

火曜日の更新だけ、いつもより文字数が少なめの

リメイク作品になっています

(始めた当初は更新なしも考えたのですが

 やっぱり、毎日少しでも皆様に恩返しできれば…ということで

 このスタイルで更新していますー!)


※そのため、毎週火曜日のリメイク作品だけ100円プランでも

 読めるようにしてあります!


(普段は大体4000文字~多いと8000文字書いてます)


ちょっと本題から逸れましたが、

今日もお読み下さりありがとうございました~!!

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