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”どんなに辛い現実でも、目を閉じるな”


それがー

和哉の父の教えだったー。


目を閉じて、辛いことを見ようとしないのは簡単だー。

耳を塞いで、辛いことを知ろうといないのは簡単だー。


でもー

それじゃ、前には進めないー


辛いことも全て、見て、聞いてー

それらを受け入れて、乗り越えた先にこそー、

”未来”があるー。


和哉は、父のそんな教えの通り、

前向きに、色々なことに挑戦してきたー。


「---でもーー

 本当にーー

 本当にもうだめだ、って、そう思った時はー

 俺を頼れー。


 仲間を頼れー」


父は、そんな風にも言っていたー


”本当に困ったときは、俺がいつでも力になるから”

そんな、心強く、力に溢れた言葉を

父はいつも、和哉に投げかけてくれていたー


その父は、もういないー。

大学時代、交通事故で、和哉の両親はまとめて死亡しているー。


「--お前の両親が事故で死んだとき、

 最初にお前に知らせたのは誰だったかな?


 お前のアパートの隣人が死んだとき、

 真っ先にお前の部屋に駆け付けてやったのは誰だったかな?


 お前のーーー」


異世界で再会した親友・神崎省吾の言葉ー

それを思い出しながらも、和哉は思うー


”どんな辛い現実でも、目を背けるなー”


「父さんー」

和哉は、決意の眼差しで、

”本物のアリシア姫”を見つめるー


本物のアリシア姫から語られる真実ー


それが、

どんなに辛くー


どんなに衝撃的なものであったとしてもー


”逃げない”


事実を、受け入れるー。


そう、決意してー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


★主要登場人物★


藤枝 和哉(ふじえだ かずや)/アリシア姫

異世界に転生後、女体化。行方不明のアリシア姫と間違えられてしまうことに…。


高梨 亜優美(たかなし あゆみ)/ヒルダ

和哉の恋人。異世界ではヒルダと名乗り、敵対している。


神埼 省吾(かんざき しょうご)/ダーク将軍

和哉・亜優美の共通の友人。歪んだ嫉妬心から、敵対する。


ユーリス/ジーク/フェルナンデス/ミリア

王宮騎士団長。それぞれが、それぞれの騎士団を率いている。


ラナ

アリシア姫の侍女。和哉に対しては辛辣な接し方をする。


エックス

かつて王国に滅ぼされた”ミルト族”の生き残り。


グール伯爵

皇帝ゼロの腹心。闇の帝国の事実上の指揮者。ミリアの実の父。


皇帝ゼロ

闇の帝国の皇帝。強大なエナジーを持つ。エックスの兄。


※登場人物詳細

(↓に、¥300と出ていますが、このお話を読めている皆様は、既に

 プランご加入(ありがとうございます★☆!)済みですので、

 お金がかかったりすることはありません!ご安心ください)

fanbox post: creator/29593080/post/1260447

・・・・・・・・・・・・・・


テンペスト高原に、

漆黒の鎧を着た騎士と、女剣士が姿を現すー。


「クククク…」

漆黒の鎧を身にまとう騎士…闇の帝国のダーク将軍こと、

和哉と同じ世界から転生してきた和哉の親友・神崎省吾は

テンペスト高原を見渡して笑みを浮かべたー


「-ーーーヒルダちゃん」

省吾が笑みを浮かべながら言うー。

隣にいる女剣士は、闇の帝国軍のヒルダー。

和哉の最愛の恋人、高梨亜優美が、洗脳された姿ー。


皇帝・ゼロに洗脳された亜優美は

ヒルダを名乗り、残虐な女剣士となってしまったー。


「--かつての恋人を、その手で殺せるのかぁ~?」

省吾がニヤニヤしながら言うと、

ヒルダは答えたー。


「--わたしは、皇帝ゼロ様に忠誠を誓う女よー。

 邪魔をするものは、誰であろうと、この手で八つ裂きにするわ」

ヒルダが言うー。


省吾はニヤニヤしながら微笑むー。


あの”亜優美ちゃん”が、そんな言葉を口にするなんてー

そんな冷たい表情を浮かべるなんてー


「たまんねぇな…ゾクゾクするぜ」

省吾はそう呟くと、ヒルダを名乗る亜優美から

視線を逸らして、遠くを見つめたー


「--和哉…

 俺はこの世界でお前から全てを奪ってやるぜー」


・・・・・・・・・・・・・


「----あなたたちに、すべてをお話しますー。

 ”何が”起きたのかー」


ミルト族の生き残り・エックスに案内されてやってきた

廃墟の奥の地下神殿ー。


そこにはー

”本物のアリシア姫”がいたー。


「ーーーあなたが…アリシア姫…」

女体化して、アリシア姫そっくりの姿になった和哉が言うー。


本当に、そっくりだー。

これなら、王宮の人間が、和哉をアリシア姫と

思ってしまうのも、無理はないー。


「--アリシア、無事でよかった」

騎士団長のユーリスが、アリシア姫の方に近づくー


だが、ユーリスはすぐに表情を歪めたー。


「--ごめんなさい、ユーリス」

アリシア姫は悲しそうに首を振るー。


女性騎士団長のミリアは、少し離れた場所から

神妙な面持ちでアリシア姫のほうを見ているー。


「---わたしはもうーーーー

 死んでいるのですーーーーーーー」


「--!?!?」

「---!!!!」


ユーリスとミリアが、激しい動揺を浮かべるー。


「---……黙っていてすまないー

 姫サマはもうーー、死んでいるんだ」

エックスが呟いたー

”アリシア姫”は、もう死んでいるー。

ここに来るまで、それを隠していたのはー

そう言えば、ユーリスもミリアもエックスのことを

信用してくれないー、そう思ったからだー。


「貴様…!」

女性騎士団長のミリアがエックスに刃を向けようとするー


「待ちなさい!ミリア!」

アリシア姫が、叫ぶー。


ミリアが「しかし…!」と呟くー。


「--良いのですー

 わたしは、エックスに殺されたわけではありませんー


 今、こうしてわたしがここに存在できているのも、

 エックスのおかげー」


光に包まれたアリシア姫が悲しそうに呟くー。


エックスが呟くー


「姫サマの魂は今ー

 俺の能力”思念伝言”で、ここに辛うじてとどまっているんだ」


とー。


エックスらミルト族は、戦闘には適さないが

強力なエナジーを持っているー。

死んだアリシア姫がここに、こうして存在しているのも

ミルト族であるエックスならではの力ー。


「---ごめんなさい。ユーリス、ミリアー

 

 わたしの口からー

 全部、説明したくて、あなたたちをー

 そしてー”異世界からの希望”であるあなたをー

 呼んでもらったの」


和哉とユーリス、ミリアの3人は

本物のアリシア姫のほうを見つめるー


「---何が起こったのかー

 全てを、お話しますー」

アリシア姫は、目を閉じて、全てを語り始めたー。


アリシア姫は、ミルト族のエックスが倒れていたのを偶然見つけ、

それを助けたことで、エックスと知り合い、

エックスとの付き合いは、長かったのだと言うー。


けれどー

アクア王国がかつてミルト族の強大なエナジーを恐れ、

ミルト族の故郷を襲撃し、ミルト族を滅ぼした過去から、

エックスはアリシア姫以外には決して心を許さず、

姿を見せることもなくー、

アリシア姫も、そんなエックスの境遇を理解し、

エックスの存在は、自分の中だけにとどめておき、

ユーリスたち騎士団長や宰相のローディスにも話すことはしなかったー


「ここはーーー」

アリシア姫がユーリスたちのほうを見ながら呟くー


「ここは、遠い昔、わたしたちの王国が滅ぼした”ミルト族の故郷”の

 跡地ですー」

アリシア姫が言うー。


「ここが?」

和哉が言うと、アリシア姫は頷いた。


この地下の神殿、そして、ここに来るまでに見た廃墟は、

かつて滅ぼされたミルト族の跡地なのだと言う。


「---でもどうして…?

 どうして、王宮から急に姿を消したりしたんだ?」

ユーリスがアリシア姫のほうを見て尋ねるー。


和哉がこの世界に転生して来る直前からー

アリシア姫は突然王宮から姿を消し、行方不明だったと

ユーリスたちは言っていたー。

和哉が救出されたのも、ユーリスたちがアリシア姫を捜索

しているときのことだったー。


「----ーーわたしは、ミルト族の故郷をー

 この目で見たかったー」

アリシア姫は呟いたー。


アクア王国が、ミルト族を滅ぼしたのは、

アリシア姫が生まれるよりも以前ー。


しかし、心優しいアリシア姫は、

エックスと出会い、”アクア王国がミルト族を滅ぼした”という

事実にひどく心を痛め、

そしてーーー

”せめて、祈りだけでも捧げたい”とそう思うようになったー


「姫サマはずっと前から俺に

 ”ミルト族の故郷に案内してほしい”って、そう言ってたんだ」

エックスが言うー。


けれどー

そんなこと”承認”が下りるはずがないことを

アリシア姫は理解していたー。


歴史上、ミルト族を忌み嫌うものは、今のアクア王国にもいるし、

エックス自身も、アリシア姫以外の前に姿を現すことを嫌がったー。

それでも、アリシア姫は、かつて、王国が犯した過ちの

償いをー、自分たちが滅ぼしてしまった種族の故郷に足を運び、

一言だけでも、償いの言葉を口にしたかったー


ある日ー

アリシア姫は、エックスに対して、

”王国が滅ぼしてしまったミルト族の故郷を一度この目で見てみたい”

と、そう口にしたー。


エックスは”危険だ”と最初は拒んだー。


だが、アリシア姫は

自分たちの王国が滅ぼしてしまった、ミルト族の故郷を

どうしてもこの目で見て、心からの謝罪の言葉を伝えたい、と

心からの真剣な想いをエックスに伝えたー。


「二度と、他の種族を滅ぼすような過ちを繰り返さないためにもー

 わたし、自らの足でミルト族の故郷の惨状を見ておきたかったー」

アリシア姫は言う。


ユーリスとミリアは、黙ってその話を聞いているー。


光に包まれた本物のアリシア姫の隣にいるエックスが言うー。


「--俺は、姫サマの熱意に負けてー

 姫サマをここに案内したんだ」

エックスの言葉に、ユーリスが呟くー


「それで、急に姿を消したのかー」

とー。


姫に仕える騎士ではなく、

アリシア姫の幼馴染として、アリシアのほうを見つめるー。


「--ええ」

アリシア姫がうなずくー。


”黙って王宮から離れて、ごめんなさいー”

とー。


「でもー

 あなたたちに話をすれば反対されただろうし、

 宰相のローディスも反対したでしょう…?」


アリシア姫の言葉に、

ユーリスは少しだけ、笑うとー


「変わらないなー

 昔から、穏やかそうに見えて

 無茶ばっかりー。」


と、言いながら、アリシア姫を見るー


幼少期ー

まだ、”立場の違い”など関係なく

一緒に過ごしていた頃からー

アリシア姫は、お転婆だったー。

ユーリスはそんなアリシアのことを、よく知っているー


「--まったく…

 俺たち騎士団は振り回されっぱなしだ」

ユーリスはそう言いながらも、

その言葉に敵意はなくー

”そんなアリシア、いいや、姫様を守るのが俺たちの仕事だからな”と

笑みを浮かべたー。


アリシア姫は、ユーリスのほうを見てほほ笑むと、

「あなたには昔から助けられてばっかりですね」と呟いたー。


すぐに、和哉のほうを見ると、

アリシア姫の表情から、もう笑みは消えていたー


「そしてわたしは、エックスと共に”お忍び”でここにやってきましたー。」


アリシア姫は、エックスと共に、このミルト族の故郷の廃墟で、

祈りを捧げー、そして、その惨状を目に焼き付けー、

あとは王宮に戻るー

それだけのはずだったー。


「----姫様は、その帰路に、闇の帝国軍の襲撃を受けてー…」

エックスが悲しそうに呟くー。


「---死んだんだー…」

とー。


「---……」

ユーリスと和哉が悲しそうな表情を浮かべるー。


「--…貴様が、闇の帝国と通じていて、

 姫様をはめたんじゃないだろうな?」

女性騎士団長のミリアが鋭い目つきでエックスを睨むー


「いいやー」

エックスは首を振ったー


その目はーーー

”嘘を言っている目”ではなかったー。


ミリアもそれを感じ取るー。


「では、何故ー?」

ミリアの言葉に、エックスとアリシアが顔を見合わせてから、

アリシア姫が口を開くー


「--王宮にーー”内通者”がいますー。

 わたしがここに来ることを知っていてー

 グール伯爵と皇帝ゼロに伝えた者がー」


「内通者…」

ユーリスが呟くー。


アリシア姫とエックスがお忍びでここに来ることを知り、

闇の帝国に伝えた者が王国内にいるー。

そして、情報を手に入れた闇の帝国が、帰路についたアリシア姫を強襲ー

エックスだけでは守り切ることができずー

アリシア姫は、テンペスト高原で、命を落としてしまったのだったー。


ユーリスら騎士団長もここのところ”情報が洩れている”ことは

察知していたー。

だが、その内通者の正体が分からないー。


「----」

”反姫派”の騎士団長ジークか…?

いや、宰相のローディスかー

それとも…?


ユーリスは、”仲間を疑いたくはない”と思いつつ、

色々な人間の顔を浮かべるー


「そしてーーー

 藤枝和哉さんー」

アリシア姫が和哉のほうを見るー。


「--はい」

和哉は”姫”などという立場の人間と今まで会ったことがないー

緊張した面持ちで、本物のアリシア姫のほうを見つめるー。


アリシア姫は少しだけ微笑むとー


「本当にーわたしと同じ姿形にー」

と、呟いたー。


そしてー

「あなたが、わたしの姿になったのはー

 あなたが、女になったのはーーーー」


アリシア姫は、”和哉が女体化した理由”を語ったー。


和哉がー

この異世界に飛ばされてきたのは、アリシア姫が

闇の帝国軍の刺客に殺害されたすぐあとー。


「--以前、話をした通り

 お前は、お前の彼女と一緒に、皇帝ゼロによって

 この世界に”召喚”されたー。

 俺がそれを察知して、とっさにお前を助けたーって

 話は前にしたな?」


エックスが言う。


和哉は「あぁ」と答えるー。


和哉も本来、皇帝ゼロの目の前に召喚されるはずだったのを

エックスが妨害しー、この場所に召喚されたのだとー。


「--わたしは、あなたに、わたしの残された力を…

 エナジーを全て、捧げたのです」

アリシア姫は、そう呟いたー


「え…」

和哉が戸惑っていると、エックスは付け足したー。


和哉が”召喚”された場所は、

アリシア姫が死んだ場所のすぐそばだったのだと言うー。


姫を守れず、アリシア姫の亡骸の傍で、

茫然としていたエックスが、異世界から召喚される

人間の気配を察知して、とっさに和哉を救出したー。


「---わたしの肉体は既に、あなたがこの世界に着た時には

 死んでいましたー

 あなたがこの世界で最初に見た”骸骨”

 あれがーーわたしです」


アリシア姫は悲しそうに呟いたー


和哉はー

この世界に来て、女体化する直前に見た”骸骨”を思い出したー


和哉が、戸惑いながら歩いているとー

すぐ近くにー

骸骨が転がっていたー


「--あれが…姫の…?」

和哉は、当時のことを思い出しながら、そう呟くと、

アリシア姫は頷くー


そしてー

アリシア姫の意識は、強いエナジーによって辛うじて

この世に留まっていてー

異世界に転生してきた和哉を見て、必死に和哉に呼び掛けたのだと言うー。


異世界に転生したばかりの和哉はーー

”かすかに女性の声が聞こえた”気がしていたー


和哉は、かすかに女性の声が聞こえた気がして

振り返るー

そこには、何もいないー


当時のことを思い出す和哉ー


「--あの時、声が聞こえた気がしたのは…」

その言葉に、アリシア姫は「きっとわたしの声です」と呟くと、

和哉が女体化した理由を明かしたー。


「---事情を説明する時間も、何もないままー

 わたしは、見ず知らずのあなたにーーー…

 わたしのわずかに残っていたエネルギーを全て注ぎましたー」


アリシア姫は、異世界にやってきた和哉に、

咄嗟に自分の残されたエネルギーを全て注ぎ込んだー

自分が完全に消えてしまう前にー。


和哉を一目見てー

アリシア姫は、そこに”希望”を感じたー


だからー

自分が消えてしまう前にー

全ての残されたエネルギーを、和哉に注ぎ込んだー。


王国をどうか救ってくださいー。

そう、願ってー。


「--あなたがわたしの姿になったのはー

 あなたがわたしと同じ”光のエナジー”を使えるのはー

 わたしの一部が、あなたに宿ったからです」


アリシア姫の残留思念とも呼ぶべきものが

身体に宿った和哉はー

アリシア姫の思念の影響を受け、

女体化、アリシア姫そっくりの姿になりー

アリシア姫が使っていた”光のエナジー”を

受け継いだのだと、アリシア姫は説明したー


「---勝手なことをして、本当に申し訳ありませんー。

 異世界から来たあなたに、

 わたしの代わりを背負わせるような真似をしてー」


アリシア姫はそこまで言うと、

和哉は呟いたー


「--じゃあ、俺は、あなたに勝手にあなたのエネルギーを

 注ぎ込まれて、それで女体化して、あなたと同じ姿になって、

 挙句の果てに、あなたの代わりをやらされている、

 と、そういうことですか?」


和哉がそう言うと、

近くにいたユーリスとミリアが表情を曇らせたー


「--本当に、ごめんなさいー

 姫としての重荷を勝手に背負わせてー」

アリシア姫が、和哉に頭を下げるー。


「----はははは、

 異世界でまで、厄介ごとを押し付けられるなんてー」

和哉は、苦笑いしながら言うと、

アリシア姫のほうを見たー


「---いえ、謝らないでくださいー。

 望むところですー。


 確かに最初は

 ”いきなり姫になれ”とか、何考えてるんだよ!って

 思ったりもしましたけどー」


和哉が、アリシア姫のほうをまっすぐと見つめるー。


「---でも、今はー

 俺も、この世界を守りたいー。

  

 王国もー王国で暮らす人々もー

 ここにいるユーリスも、ミリアもー。

 みんなみんな、いい人ばかりー。


 そんな人たちの笑顔を、俺も守りたいー」


和哉の言葉に、アリシア姫が少しだけ嬉しそうに微笑むー


「-----本当に、ありがとうございますー」

深々と頭を下げるアリシア姫ー


アリシア姫の姿が薄れ始めるー。


エックスのエナジーにより、

”死んだアリシア姫の魂”を呼び出している状態ー

しかし、それには、限界があるー。


そろそろ”本当のお別れ”が近づいているー。


「-----俺、どこまでやれるか分かりませんけどー

 元の世界に戻れる日が来るまでー

 姫様の代わりーーー

 やりますよ」


和哉が力強く言うと、

アリシア姫は、嬉しそうに「ありがとう」と、ほほ笑んだー。


そして、アリシア姫はユーリスとミリアのほうを見るー。


「--ユーリス…

 あなたには、いつも迷惑かけてばかりー」

アリシア姫の言葉に、

ユーリスは「もう慣れてるさ」と、悲しそうに微笑むー。


「---小さいころから一緒だったんだー。

 今は騎士と姫で立場は違うけど、

 もう、アリシアに振り回されるのは、慣れてるー」

ユーリスが少しだけ笑いながら言うと、


「-ーーーふふ、ごめんね」

と、”姫”としてではなく”幼馴染”として、アリシア姫が微笑んだー。


ユーリスは、ふっと、笑うと、

「--必ずや、王国を、そしてこの者をお守りします」

と、今度は”騎士”として頭を下げたー。


アリシア姫は笑うと、ミリアのほうを見て、

「--ミリアには、本当に感謝しています」

と、頭を下げたー


女性騎士団長のミリアは、父であるグール伯爵が

王国を裏切ったことで、”裏切者の娘”として弾圧されているところを

アリシア姫が救った過去を持つー。

その恩返しとして、ミリアは、王宮騎士団長になるほどに、姫に尽くし、

そして、支えてきたー


「いえ、感謝するのはわたしのほうです。姫様」

ミリアが頭を深々と下げると、

アリシア姫は、ミリアのほうを見て、優しく呟いたー


「ーー本当にありがとうー。ミリア」

アリシア姫はそう呟くと、最後に和哉のほうを見たー。


「--ここにあなたを呼んだのには、もう一つだけーー

 目的があります」


そう呟くと、アリシア姫の身体が、さらに光に包まれた。


「--エックス、お願いしますー」

アリシア姫がそう言うと、エックスがうなずくー。


「--わたしの残された力を全てー

 あなたに捧げますー。」


そうすればー

和哉は、アリシア姫の光の力を自在に操れるようになるのだと言う。


「-ーーーーーー」

和哉は一瞬驚くも、姫の覚悟を受け取り、頷いたー。


エックスが呪文のようなものを唱えるー

アリシア姫の光に包まれた身体が消えていくー


「アリシア!」

「姫様!」

ユーリスとミリアが叫ぶー。


アリシア姫は、薄れていく自分を見ながら、微笑むとー

「わたしが消えてもーわたしの想いは、この者と共にありますーー」と、

和哉のほうを見つめて、

最後に優しく呟いたー


「--王国をーーお願いしますー

 最後まで、迷惑かけて、ごめんなさいー


 ”姫”を、あなたに託しますー」


とー。


”本物のアリシア姫”からー

”これからはあなたが本物”とー

そういう意味合いの言葉を受け取った和哉はー

アリシア姫の光を浴びー、

そして、静かに呟いたー


「----俺…必ず、この王国を守って見せますー」

とー。


ユーリスとミリアのほうを振り返ると、

和哉は頷くー


もちろん、やるべきことを終えたら、元の世界に戻るー。

だがー

この世界で暮らして、和哉はこの世界を守りたい、と

心から強く、そう思っていたー。


これからはー

姫の影武者ではなく、

姫の、後継者としてー。


ミルト族の故郷の廃墟から出てー

テンペスト高原に戻るとー

そこにはーー


「---!!!!」

和哉とユーリスとミリアー

そして、エックスが表情を歪めたー


「--よ~!!和哉!

  いつ見ても美人だなぁ!しゃぶりたくなるぜ!」


闇の帝国軍の大軍勢ー

和哉の親友である神崎省吾が笑うー。


「-ー省吾!」

和哉が叫ぶと、省吾が笑みを浮かべたー


”ここが、貴様らの墓場だー”

上空に邪悪な渦のようなものが現れてー

その中から不気味な声が響いたー


聞いたことのない声ー


「兄さん!」

エックスが叫んだー


上空から響き渡る声はー

闇の帝国・皇帝ゼロの声ー。


”--貴様らと話すのは、これが初めてだなー”

憎しみと憎悪に満ちた声ー


上空の渦から響く皇帝ゼロの声に、

ユーリス、ミリア、和哉ー

そして待機していた騎士団の騎士たちが、身構えるー


”我らが積年の恨みー

 ここで、終わらせてくれようー”

皇帝ゼロが、テンペスト高原全体に轟くほどの不気味な声で

上空の渦から呟くとー、

省吾が笑みを浮かべたー


「--全員ぶっ殺せ!」

叫ぶ省吾ー。


魔物の大軍勢が、和哉たちの方に向かってくるー


「--くっ」

ユーリスが表情を歪めるー


やはりー

”王国”に内通者がいるのだろうー。

ここに来ることは、ごく一部の人間しか知らなかったはずなのに、

こうしてー

待ち伏せされていたとはー


それともー

ユーリスは横目でエックスのほうを見つめるー


「---!」

ユーリスが、突進してきた省吾の攻撃をかわすー


「--へへへ、和哉がお世話になってるみたいだなぁ~!」

和哉の親友・省吾が、ユーリスに向かって笑みを浮かべるとー

容赦なくユーリスに襲い掛かったー。


「--ユーリス!」

援護に入ろうとするミリアー。

そこに、父でもある闇の帝国No2のグール伯爵が突然姿を現すー


「我が娘よ、元気だったか?」

グール伯爵が笑みを浮かべるー。


ミリアが父でもあり、敵でもあるグール伯爵を睨むー


「貴様など、父と思ったことは、ないー!」

と、叫びながらー


・・・・・・・・・・・


和哉の前にはーー


「---ふふふ、久しぶりねー」

最愛の恋人である亜優美ー


皇帝ゼロに洗脳されて、ヒルダと名乗り、冷徹な悪女に成り果てた

亜優美が立ちはだかったー


「亜優美…目を覚ましてくれ」

和哉が呟くー


「--あ・ゆ・み???

 わたしはヒ・ル・ダー」


ヒルダが微笑みながら言う。


「違う!君は亜優美だ!」

和哉が叫ぶー


「--わたしは生まれた時から皇帝ゼロ様のしもべよ!」

ヒルダが声を荒げるー。


「---亜優美……」

皇帝ゼロに完全に洗脳されてしまっている亜優美を前にー

和哉は悲しそうな表情を浮かべるー


「--王女アリシアー。

 わたしが、地獄に送ってあげるー」

亜優美が、ヒルダを名乗る亜優美が、剣を構えるー。


和哉は、なんとか亜優美の心を取り戻そうとー

剣を構えるのだったー。



㉑へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


今月最初の長編でした~!

語りが長くなってしまいましたが

次回からは、物語がスピーディに動いていく…はずデス!

(実際書いてみると意外と進められなかったりすることも…汗)


今日もありがとうございました~~!

(Fanbox)


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