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何も分からない状態で目を覚ましてから3日ー。

女子大生の晴恵は、記憶喪失の状態が


大学の先輩で、今は社会人の彼氏・辰雄が色々気遣ってくれては

いるものの、不安が消えることはなかったー。


「---…やっぱ…変…」

晴恵は呟くー。


どうしても、晴恵は、”自分が記憶喪失になった”のだとは思えず、

困惑していたー。

理由は、いくつかあるー。

しかし、一番大きな理由は

”日常生活のことは普通にできるのに、無意識のうちに

 自分が”男”であるかのような行動を取ろうとすることー”


そしてー


「---はぁ~違和感がすごい」

晴恵は頭を抱えるー


”女”としての行動をすると、とにかく”違和感”が凄いのだー。


こうして、座ってトイレを済ませてー

という行為自体が、とても不思議に感じられるー。


もちろん、記憶喪失による影響である可能性もある。


しかし、

”男女共通の日常生活”には何も違和感を感じないのに

”女”としての日常生活には、強い違和感を感じるー。


やはり、何かがおかしい。

そう思わずにはいられなかった。


お風呂もそうー


晴恵は、自分の身体であるはずなのに、

少しドキドキしてしまうー

お風呂に入れば、当然、裸になる。


自分の身体であるはずなのに、

晴恵のスタイルの良い身体を見ると、

どうしても少しゾクゾクしてしまうー。

興奮してしまうー


そしてー

”いけないことをしている”ような気がして

罪悪感を感じてしまうー。


シャンプーで髪を洗いながらー

長い黒髪を洗うことにも違和感を覚えるー。


そういうことがあればあるほどー

”やっぱり自分は男だったんだ”と

思ってしまうー。


お風呂から上がった晴恵は、

髪の毛を乾かして、

服を身に着けるー。


可愛らしい服が多くー

そういう服を身に着けると

心臓がちょっと高鳴るー。


もちろん、自分が本当に晴恵なのであれば、

自分で購入した服なのだが、

やはり、そういう実感は持てないし、

違和感が強いー


”二重人格”

”憑依”

”入れ替わり”

”女体化”

”洗脳”

”皮”

”変身”


それらである可能性を、

どうしても自分の中で捨てきれない。

ただの記憶喪失かもしれないー


けれどー。


どうしてもー…


翌日ー

その気持ちを辰雄に吐き出すー。


大学は一時的に休みにして、

その間になんとか気持ちを落ち着けて、と

辰雄は色々配慮してくれたが、

それでもー

晴恵の気持ちが落ち着くことはなかったー


「わたし…自分が、、自分が男なんじゃないかって…」

晴恵が不安そうに言う。


「トイレだって、最初、無意識で立ってしようとしてたし、

 お風呂に入るだけで、なんだか、わたしが、

 女風呂で他の人の裸を覗いてるような、

 そんな罪悪感が止まらないの!」

晴恵が涙ながらに言うと、

辰雄は「落ち着いて。晴恵は記憶喪失で、混乱してるだけだよ」

と、晴恵を落ち着かせようとする。


病院の予約も既に取ってあるから大丈夫、と

辰雄は優しく呟くとー

”ちゃんと整理してみようか”とほほ笑んだー。


晴恵が記憶喪失になって目を覚ました日ー

その前日に晴恵は辰雄に「たすけて」とLINEを送っている。

そのため、辰雄が晴恵の家に駆け付けたのだ。

晴恵のスマホから辰雄に送られているから、晴恵が送ったのは

間違いないー


「助けてってことは、この日のこの時間に何かがあったのは

 事実だと思う」

辰雄は、そう言いながら、LINEの画面を、

初日と同じように見せてきた。


初日も、辰雄から「助けて」と自分がLINEを送ったことは

聞いているー。


「-そうなると、晴恵の言う通り、この日に誰かに襲われてって

 可能性も確かになくはない」

辰雄は、頭の良さを感じさせるような冷静な口ぶりで

淡々と説明する。


辰雄が

「まずー、」と、

言いながら”この前も言ったけど、女体化はあり得ない”と、

説明する。

それは、晴恵も同意だった。

晴恵が元男で女体化したというのならば

晴恵の学生証や戸籍は存在しないはずだー

あるとしても、女体化する前の”男としての自分”のものしかないはずだが、

晴恵の学生証はちゃんと存在していて

性別も”女”と書かれている。


だから、自分が元男で、女体化した、と言う可能性は0と言える。


残りの可能性は”何も証拠が無ければ”確かに0とは言えない、と

辰雄は言いながら

晴恵のほうを見つめるー。


憑依、洗脳、入れ替わり、二重人格、変身、皮ー

それらの可能性は確かにある。


今の晴恵は”晴恵に憑依した誰か”である可能性はあるし、

晴恵を誰かが洗脳して記憶喪失にした可能性もあるー。

誰かが入れ替わってる可能性ー

ここにいる晴恵は誰かが変身した姿で偽物である可能性ー

晴恵の中に生まれた別人格が表に出ている可能性ー

晴恵が皮にされていて、実は中に誰かが入っている可能性ー


「でもなー」

と、辰雄は言う。


晴恵が記憶喪失で目を覚ましたのは

18日のことだ。

その前日、17日の夜に「助けて」と晴恵は辰雄に

LINEを送っているー


そしてー

「俺、16日に晴恵の家に遊びに来てるんだよ」

と、辰雄は言ったー


16日の時点では晴恵に何の異変もなく、

16日は、晴恵は大学にもちゃんと行っているー

当然、15日以前にも何の異変もなかったー


だから少なくとも、16日、いや、

17日に「助けて」と、LINEを送ってきている

時間までは、晴恵が晴恵であったことは間違いない、と

辰雄は言ったー


「ここまでは、いいかな?」

辰雄が言うと、

晴恵は頷くー


ふと、自分がいつの間にか胡坐をかいていることに

気づいて、慌てて恥ずかしそうに足を整えるー


その様子を見て辰雄は苦笑いすると続けた。


17日は大学が休みで、

晴恵と会った人物はいないー。

そのため、異変が起きたのは”17日”なのは、

間違いない、とー。


辰雄は、あるものを手にしたー。

USBメモリー。


それを、「いいかな?」と許可を取ったうえで

晴恵の部屋にあったノートパソコンに入れて

映像を起動したー。


「事情を話して管理会社から、アパートの監視カメラの

 映像、借りて来たんだ」


辰雄は、”相当苦労したよ”と苦笑いしながら

アパート付近の監視カメラの映像を再生するー。


そして、近所の商店街にも必死にお願いして

アパートの裏側ー

ベランダ側が映っている監視カメラの映像も

辰雄は、回収していたー。


16日からの分を再生するー。

16日ー

晴恵の家に男が入っていくー

そして、数時間後に男が出ていくー。

晴恵が嬉しそうに手を振っているー。


「これは俺ね」

辰雄がそう言うと、

映像の晴恵を指さして

「この時点では晴恵も普通なんだ。」と呟くー


晴恵も「そうみたいね…」と頷くー


晴恵が辰雄と別れて、部屋に戻っていくー


そしてー

16日の夜ー

「助けて」LINEを送ってきた17日ー

記憶喪失で目を覚ました18日ー


”人の出入り”は一切なくー

ベランダ側から誰か入った映像もなかったー。


「--誰も…来てない」

晴恵が言う。


「そう。少なくとも晴恵に何か異変が起きた日ー

 晴恵はずっと部屋にいたし、晴恵の部屋に誰も言ってないー

 だからー」


”変身”は絶対に無理だとー。

16日は普通だったし、偽物とすり替わるには、

偽物が、監視カメラに映るはずー。

だから、今の晴恵は「誰かが変身して記憶を失った偽物」ではない、と

辰雄は説明したー


「-同じように”皮”とかいうのも無理だよな」

辰雄は、晴恵のほうを見て笑うー


今の晴恵が、皮にされていて、

中に誰かが入っているのならー

16日に辰雄と別れてから、異変が起きるまでの間に

誰かが晴恵の部屋に行ってないとおかしいー

だが、”出入り0”である以上、

”晴恵を皮にする”ような人間はいなかったということになるー。


「洗脳も、入れ替わりも、無理だと思うんだ」


晴恵の部屋に誰も出入りしておらず

晴恵が外出もしていない以上、

晴恵に誰も憑依してないだろうし、

洗脳も無理だと、そう辰雄は推察したー。


「---じゃあ…」

晴恵が不安そうにつぶやくと、

辰雄は「唯一可能性があるとすれば、

二重人格ぐらいじゃないかな?」と少しだけ微笑んだー


「うん…」

釈然としない部分はあるが、

監視カメラの映像まで、晴恵のために回収して

こうして理論的に説明してくれる辰雄の存在は

ありがたいと思ったー


「--でも、二重人格で、わたしが晴恵…の中に生まれた

 別人格だとしたら、本当の晴恵の人格もいなきゃ

 おかしいはずだよね?」


晴恵が言う。


辰雄は頷くー


「それに、晴恵は何か悩んでいた様子も、トラウマとかもなかったし

 人格が分裂するとは考えられにくいんだよなぁ…


 だからやっぱ、記憶喪失じゃないかなぁ…


 ”助けて”は、頭痛とか、そういうものを感じて

 俺に送ったんじゃないかな…?」


辰雄はそう解説したー

既に、記憶喪失翌日に辰雄に連れられて

脳の病院で検査は受けている。

その結果、脳に異常はなかったー


そして今度は心療内科の予約を入れてあるのだー


何らかの原因で、

脳に異常が生じて、

急に激しい頭痛を感じた晴恵が辰雄に「助けて」と

LINEを送ったー。


そして、気を失い、

18日の朝ー

記憶喪失になった日の朝に目を覚ましたー


そういうことじゃないかな?と

辰雄は説明したー


「---うん…」

晴恵は頷くー


確かにー

それしかないかもしれないー


「でも…男の人っぽい行動を無意識でしちゃう理由は…?」

晴恵は、”それだけが説明がつかない”と呟くー


それとー

目が覚めた直後に

”丸山 源吾”という男が”テスト”とLINEを送ってきているのも気になるー。


「-----晴恵さ~…

 前に”男に生まれたかった”って言ってたことがあるんだよなぁ」

辰雄が頭を掻きながら言うー。


「-たぶん、記憶を失ったことで、そういう願望が

 出て来たんじゃないかな、表にさ」


「--ほら、見て」

辰雄が晴恵のツイッターアカウントを見せるー。


”男に生まれたかった!!”

と、何度もツイートしているのが分かるー。


部屋の写真もあるから、晴恵のアカウントで

おそらく間違いはないー。


「そっか」

晴恵は納得したー


”丸山源吾”は意味不明だけどー、と

辰雄は苦笑いするー。


「--わたしは…わたしはやっぱり晴恵なんだね」

晴恵は少し安心した様子で呟くと、

辰雄は「そう。晴恵は晴恵だよ。安心してー」

と、晴恵を抱き寄せたー


心療内科の診察を受けー

晴恵は徐々に落ち着いていくー。


記憶は戻らず、原因は不明だがー

晴恵は、1か月後、大学に復帰してー

”また新しく1から”と、周囲に記憶喪失のことも話し、

辰雄との関係も良好のままー、

”新たな人生”をスタートさせたのだったー


今ではすっかり、”女の子”になった晴恵ー


デートを終えて、

そんな晴恵の後ろ姿を見つめていた辰雄は

静かに微笑んだー


”わたしと、デートしたかったんだよね…ふふふ”


とー。


辰雄は邪悪な笑みを浮かべたー


「--そう、あなたはー”元・男”」

晴恵の後ろ姿を見つめながら辰雄は呟くー


「あなたが、”辰雄”-」

辰雄は歪んだ笑みを浮かべるー


「---正解は”入れ替わり”-」

辰雄の口元がさらに歪むー


辰雄と晴恵は、そもそも”彼氏彼女”の関係にないー。


そしてー

記憶喪失の晴恵の中身こそがー

本物の”辰雄”


記憶喪失の晴恵の前に姿を現した辰雄の

中身はー”晴恵”


わたしはー

自分が大好きで仕方がなかったー

自分を愛したかったー。

だからー

わたしは、イケメンの身体を奪ってー

イケメンとして、自分を愛したかったー

イケメンに愛される自分を間近で”彼氏”として

見つめていたかったー


男になりたかったのはー

男じゃないと”大好きな自分”と結婚できないからー。

わたしは、わたしが大好きで、

わたしと結婚したかったー


だからー

”入れ替わり薬”を手に入れてー

”計画”を実行したー


わたしと辰雄は何の接点もなかったー。


わたしは街中で辰雄に一目ぼれしてー

”この人として、わたしは、わたしを愛したい”

そう思ったー


わたしのスマホに保存されていた辰雄の写真は

わたしが勝手に撮影したものー

LINEは、わたしが勝手に送ったものー。


そしてー

”17日の夜”わたしは、

入れ替わり薬を飲んだー


・・・・・・・・・・・・・


16日ー

辰雄が、

晴恵のアパートに遊びに来た、というのは”嘘”だ。

晴恵になった辰雄を信じ込ませるための罠ー。

監視カメラに映っていた

”晴恵のアパートに遊びに来ていた男”は、

辰雄ではないー

あの男は、晴恵に”テスト”というLINEを送った

丸山源吾ー

晴恵の知人男性だー。


”監視カメラに映った男性”が必要だったために、

源吾を自宅に呼んだのだー

”テスト”というLINEは、晴恵になった辰雄が

意識を取り戻したかどうかを確認するために

辰雄になった晴恵が丸山に指示をして送らせたものだー。

意識を取り戻していれば、既読がつくはずだからー、と。


17日の夜ー

晴恵は”計画”を実行したー

入れ替わり薬を部屋で飲み込むー。


そして、机の上に飾った辰雄の写真を見つめるー。

”入れ替わり”は

”離れた場所から”でも出来るのだー


晴恵は「わたし…これからあなたになるの」と

狂気的な笑みを浮かべながら、

辰雄の写真を見つめるー。


そしてー

笑みを浮かべながら、勝手に調べた辰雄のLINEに

”たすけて”と、LINEを送ったー

”後で、晴恵になった辰雄”を信じ込ませるための材料としてー


「---ふふふ」

晴恵は、入れ替わり薬の効果が出てきたことを感じながらー

そのまま意識を失いー

17日の夜ー

晴恵と辰雄は入れ替わったー


”入れ替わり薬を飲んで入れ替わった側”

晴恵は自分の記憶を持ったまま辰雄にー


何も知らずに”入れ替えられてしまった側”

辰雄は、自分の記憶を持ったまま晴恵になってしまったー


記憶喪失は入れ替わりの副作用ー

そして、晴恵(辰雄)の思っている通りー

”今の晴恵の中身は、晴恵じゃない”


けれどー

もうーー

遅いー


晴恵になった辰雄は、

辰雄になった晴恵の巧みな言葉によってー

”自分は記憶喪失になった晴恵”だと信じ込んだー


「これからはー

 たっぷり大好きなわたしを、男として愛することができるー

 ふふふふふ…」


自分が大好きすぎる晴恵はー

辰雄の身体で、自分の身体を愛でる光景を浮かべてー

歪んだ笑みを浮かべたー



おわり


・・・・・・・・・・・


コメント


真相は”入れ替わり”でした~!


記憶喪失の晴恵の中身が、辰雄だった、ということですネ~!

晴恵が被害者ではなく、晴恵が加害者だったのデス…!


お読み下さり、ありがとうございました~!

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