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「そんな……」

女子大生・須永 紗愛(すなが さら)は、

戸惑っていたー


明るく、おしゃれな感じでー

かつ、派手すぎるという感じもなく、

純粋に”可愛らしい”雰囲気の子だ。


そんな彼女はー

”罠”にはめられたー。


「--と、いうことでお嬢さん、残念だけどー」

サングラスをかけたいかにもヤバそうな男ー・五十嵐(いがらし)が、

紗愛のほうを睨みつけるー。


「---来月までに、1000万。

 きっちりと、返してもらうよ」

五十嵐はうすら笑みを浮かべながら言ったー


「--い、、、一千万!?!?」

紗愛は思わず声を上げてしまうー。


「あぁ、そうさー」

五十嵐はニヤリと笑ったー。


紗愛は絶望するー。

そんな大金、女子大生である自分に払えるはずがないー

いや、女子大生でなかったとしても

”1000万払え”などといきなり言われて

「あ、はい」なんて人はいないー。


紗愛は、

親友の”南雲 綾(なぐも あや)”に騙されて、

いつの間にか、とあるモノの”連帯保証人”にされていた。

連帯保証人になってくれ、なんて言われた覚えは

全くないし、そんなものに署名をした覚えもないー。


だがー

確かに、借用書の連帯保証人の欄には

”須永 紗愛”と書かれているー


”ひどい…”

紗愛はそう思ったー


綾との会話の中で、何回か、名前を書いたような気がするー

連帯保証人の記入欄に紗愛が名前を書くようー、

上手くはめられたのだろうー


「--ま、あんたの事情なんてどうでもいいんだよ。お嬢さん」

五十嵐はそう言うと、

”1か月で1000万。譲歩は一切しない。

 それまでに、用意するんだな”

と、脅すような口調で言い放ち、そのまま立ち去って行ったー。


「ど…どうしたらいいの…?」

紗愛は、その場にうずくまったー


1000万なんて、絶対にどうすることもできないー

実家を頼ることもできないー

1000万など、あるわけがないし、

迷惑をかけてしまうー。


親友の綾は、借金を紗愛に押し付けて雲隠れー。

連絡もつかないー。

彼氏の史郎(しろう)に相談しようとしたが、

優しい史郎に迷惑をかけるわけにはいかないし、

巻き込むわけにもいかないー。


何の手立てもないまま、半月が経過するー


「---」

もう、どうにもならないー

自暴自棄になった紗愛は、宝くじを購入するー。

もしも当たれば、何千万、場合によっては

億万長者だー。


だがー

そんなことが起こるはずはなくー

宝くじも全て、外れたー。


手立ては、もう、ないー。


1か月後ー

紗愛は、”とにかくなんとか切り抜けないと”と、

やってきた借金取り・五十嵐に対して

土下座をして、

”わたし、本当に無理やり、保証人にされて…

 どうしたらいいか…”と、

命乞いをするかのように涙を流す紗愛ー。


今の紗愛に出来ることは、それしかなかったー


「まぁなぁ、お嬢さんの気持ちもわかるよ」

五十嵐がサングラスを外すと、

静かに微笑んだー。


「--ま、大方、お友達にはめられたってのは

 俺たちにもわかる。

 俺たちも馬鹿じゃねぇ。


 でもな?

 それでも、お嬢さんは連帯保証人に

 なっちまってるんだよ。


 俺たちがそうしたわけじゃねぇ。

 お嬢さんのお友達がそうしたんだ。


 俺たちだって被害者だ。

 お友達が金を借りてそのまま

 逃げてるのは事実なんだからさぁ。


 な?わかるだろ?」


五十嵐の言葉に、

紗愛は泣きながら、

「で、、でも、、わたし、、1000万円なんて…」と

やっとの思いで口にする。


「------そうだなぁ」

五十嵐は考えるようなしぐさをしながら、

少しして、笑みを浮かべたー


”わざとらしい”演技のようにも感じるー。


「--”着ぐるみショー”のバイト、してみないか?」

五十嵐はそう言ったー。


「--着ぐるみショー…?」

紗愛が涙を流しながら五十嵐のほうを見る。


「おうよ。着ぐるみショーだ。

 それに出演してくれるんだったらー、

 1000万は、どうにかしてやってもいい」

五十嵐の言葉に、

紗愛は、「ほ、、本当ですか…?」と

涙を拭きながら言うー。


「あぁ、本当さ。

 何なら、誓約書を書いてもいい」


そう言うと、五十嵐は、誓約書をカバンから取り出して

机に置いたー。


”借金を帳消しにする”と、いうようなことが書かれているー


だが、紗愛も馬鹿ではない。

こういう男たちが誘う”仕事”と言えばー

”身体を売る”

そういう仕事が多いことを紗愛も知っているー


紗愛を風俗店で働かせるかー

紗愛をAVにでも出演させるかー


そういうことなのではないか、と

紗愛は思うー


「----不安って顔だな お嬢さん」

五十嵐はそう言うと、

サングラスを再びかけて、

紗愛のほうを見たー。


「大丈夫。安心しなよ。

 お嬢さんが出演するのは

 ただの”着ぐるみショー”だー。


 遊園地とかでヒーローショーとか

 見たことあんだろ?

 ああいうやつだよ」


五十嵐はそう言いながら

「ま、いやだって言うんなら、1000万

 返済してもらってもいいんだぜ」と

不安を煽るような言葉を口にしたー


「---…本当に…着ぐるみショーなんですか?」

紗愛は不安そうに言う。


「あぁ、間違いない。

 お嬢さんは何もしなくていいしー

 脱いだりとか、そんなこともしなくていいー。

 ただ、ショーに”出演”してくれりゃいいんだ。


 お嬢さんには台詞もないし、

 簡単なショーだから、悪くねぇだろ?」


五十嵐の言葉に、

紗愛はまだ不安そうだー


「---ここまで言っても信じてもらえないってんなら

 1000万、返済してもらうっきゃねぇな」


紗愛はー

戸惑いながらも

「わ、、分かりました…出ます…

 で、、でも、、わたし…その、そういう…その、、

 なんというか、風俗とか…そういう…」

と、不安を口にするー


「わ~ってるよ!ただの着ぐるみだ、安心しなよ!」

五十嵐はそう言うと、

”じゃあ、週末にこの雑居ビルに来てくれ”

と地図を渡したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


週末ー。


五十嵐に言われた雑居ビルにやって来るー。


紗愛は不安そうな表情だー。


雑居ビルの一室に入ると、

五十嵐が、紗愛を出迎えたー。


「よ~!ちゃんと来たな。偉いぞ」

それだけ言うと、五十嵐は煙草を吸いながら

”ショーはこの地下で行う”と、呟いたー


”地下”

嫌な予感を覚えながらも、

紗愛は”逃げられない”と、思いー

五十嵐のほうを見るー


「そんな不安な顔すんなってー。

 お嬢さんは何にもしなくていいんだよ」


五十嵐はそう言うと、

”借金”の証明である書類にー

”返済済み”の印鑑を押したー。


完全に”返済されたこと”を証明するものだー。


「---はい、ご苦労さん。返済おしまい!」

五十嵐の言葉に、紗愛は少しだけホッとするー


”着ぐるみショー”が終わっても

”やっぱ借金返してくれよ~”と言われる可能性も

あったからだー


「あの…念のため、それ、貰ってもいいですか?」

紗愛が”返済完了”の証明を貰おうとするー


五十嵐は「あぁ、好きにしな」と答えたー。


「--それで、着ぐるみショーなんだが、

 今日1日だけやってみて、

 あとは自由だー。

 もう出たくないなら、言ってくれりゃそれでいい。


 とりあえず、今日1日だけ、出演してもらって、

 あとは、出たくないなら、俺に言ってくれれば

 それでおしまいだ。」


五十嵐の言葉に、

「1000万…分も価値のあるショーなんですか?」と

紗愛は不安そうにつぶやくー。


「--まぁな」

五十嵐は笑ったー。


紗愛の疑問はもっともだー。


”紗愛が1日出演するだけで、1000万の借金をパーにできるほどのショー”

いったい、どんなショーなのかと、紗愛は疑問に思うー


「さ、地下に行こうか」

五十嵐はそう言うと、

地下の”着ぐるみショー”が行われる場所へと

紗愛を案内したー。


”着ぐるみショー”

怪しげな男たちが、薄汚い観客席に集まっているー

中には”金持ち”な雰囲気の男もいるー。


舞台裏に案内された紗愛は、

不安そうな表情を浮かべるー


「あの…わたしは何をすれば…

 役名とか、台詞とか、まだなにも…?」

紗愛の言葉に、

五十嵐は「あぁ、台詞とかはないから、心配すんなよ。

お嬢さんが脱いだりする必要もない。簡単さ」

と、答えたー。


蛍光灯がチカチカする薄汚い事務所ー。


そこにー

ハゲのおじさんがやって来るー。


”スーツアクター”だ。

と、五十嵐は呟くー


「---あ、よろしくお願いします」


紗愛は、ハゲのおじさん、スーツアクターに挨拶をするー


おじさんは

「いい着ぐるみだね」と呟いたー。


「---?」

紗愛が周囲を見渡すー


部屋に着ぐるみらしきものは見当たらないー


「あの…そういえば、わたしは何を着ればー?」

紗愛が五十嵐に聞くと、

五十嵐は笑みを浮かべたー


「---お嬢さんがーー”着ぐるみ”だよー」

とー。


「--!?!?」

紗愛が後頭部にチクっという痛みを感じるー


紗愛が慌てて振り返ろうとしたが、

身体が動かないー


「--さ~~さ~~~!

 ショータイムだ」

五十嵐はそう言うと、紗愛の前に、

部屋の隅に置いてあった姿見を持ってくるー


五十嵐がたばこに火をつけるー


「--お嬢さんが、”着ぐるみショー”の着ぐるみだよ」


鏡に映った光景ー


それは、紗愛の後頭部が、スーツアクターのおじさんによって

引き裂かれてー

まるで、チャックを開かれた着ぐるみのように

垂れさがっていく光景ー


「え…あ…????」

紗愛は、恐怖を覚えるー


自分が”真っ二つ”に引き裂かれているー


そして、スーツアクターのおじさんが、紗愛の”皮”を

着こもうとしているー


「う…あ…ああああ…」

紗愛が目に涙を浮かべるー


身体に力が入らないー


五十嵐は呟くー


「---美少女の皮を着たストリップショーだよ。へへへ

 言ったろ?

 ”お嬢さんは”何もしなくていい、ってー

 セリフもないし、お嬢さんが脱ぐ必要はないってー


 こっちで勝手に脱ぐからさぁ」


五十嵐は笑いながら、さらに紗愛のほうを見つめたー。


「今日1日だけやってみて、

 あとは自由だー。

 もう出たくないなら、言ってくれりゃそれでいい。


 とりあえず、今日1日だけ、出演してもらって、

 あとは、出たくないなら、俺に言ってくれれば

 それでおしまいだ。」


さっきも言ったセリフをもう一度言う五十嵐ー


そして、邪悪な笑みを浮かべたー


「”もう出たくない”って、言えたらーな?」

とー。


「---!!」

紗愛は悲鳴を上げようとするが、声が出ないー


スーツアクターのおじさんが、紗愛の中に入っていくー


”たすけて…!たすけて…!”


紗愛は悲鳴を上げるー

心の中でー


そして、紗愛の皮の中にスーツアクターのおじさんが

入り込んだのを確認すると

五十嵐が「よぉし、スタンバイOK」と呟き、

紗愛の後ろに回り込んだー


紗愛の背中から後頭部にできたチャックを引き上げるとー


スーツアクターのおじさんが、紗愛の皮を着こみー

完全に”紗愛”になったー


鏡に映る紗愛が、邪悪に微笑むー


”やめて…”

紗愛の意識はーー

そこで、”途切れた”


・・・・・・・・・・・・・・


薄汚い地下のショー会場に

五十嵐が蝶ネクタイをして姿を現したー


「え~~~、エッチな野郎ども、お待たせいたしました」

五十嵐が微笑むー。


「これより、女子大生・須永紗愛の

 ストリップ&エンターテイメント、オークションショーを

 はじめさせていただきます」


五十嵐がそう叫ぶとー

会場の男たちが拍手をしたー


そしてー

舞台の幕が上がりー

バニーガールの格好をした紗愛が、

モデル歩きをしながら、舞台の真ん中にやってきたー


「--紗愛です♡ ふふふふ」

乗っ取られた紗愛はそう微笑むと、唇の近くに指をあてて

甘い表情でウインクしたー


会場に歓声が上がるー


「さぁ、エロ野郎ども!!!

 最高のショーのはじまりだ!!!」


五十嵐は嬉しそうに、高らかにそう宣言したー



②へ続く


・・・・・・・・・・・・


コメント


久しぶりの「皮」デス!

次回はさらにゾクゾク強めでお送りしますネ~☆!


全2話なので、ちゃんと今月中に完結します~!


今日もありがとうございました!!

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