<入れ替わり>あなたはわたしを見下している③~失われた輝き~ (Pixiv Fanbox)
Content
「あんた、自分の顔を鏡で見たこと、ある?」
雫が、不敵な笑みを浮かべながら、いじめられっ子の紀子のほうを見つめるー。
雫は、誰にでも優しくてー
決していじめに加担するような性格ではない。
今までも、いじめの中心的生徒あるお嬢様・千代や、
生徒会書記の男子・平八に対して、いつもやめるように言っていた。
だがー
その雫が、豹変したー。
雫が、優しい顔を歪めて、紀子をいじめているー
あの、雫が、だー。
決していじめを許さない、優しい雫が、紀子をいじめているー。
少なくともー
周囲には、そう”見えた”
雫と紀子が”入れ替わっている”ことを知らない周囲には…。
「---ーーどうしてそんなこと言うの…?」
紀子(雫)が悲しそうに、雫(紀子)の方を見るー。
”わたしって…こんな顔も出来るの…?”
と、紀子になってしまった雫が驚くほどに、
雫(紀子)は悪女の笑みを浮かべているー。
「ブス!ブス!ブスブスブスブスブス!ブーーース!」
雫(紀子)が声を荒げながら言うー。
いじめの中心的人物である千代と平八も
さすがに唖然としているー。
雫が、そんなことを言うなんて夢にも思ってなかったからだー。
「--ーーそんなこと言ってて…悲しくないの?」
紀子(雫)が泣きそうになりながら言うー。
自分が”ブス”と言われるならいいー。
でもー
今、目の前にいる”雫になった紀子”は、
”元・自分の身体”に対して、ブスと連呼しているー。
自分で、自分のことをブスと言い放っているー。
「--そんな悲しいこと、言わないでよ!」
紀子(雫)が泣きながら叫ぶー。
「---ふっふふふふふふ 悲しいこと???
あんたの顔がゾンビなんだから、仕方ないじゃない」
雫(紀子)が微笑むー。
「--わたしってば…超かわいい♡」
自分の顔を、うっとりとした表情で触る雫(紀子)
「--ねぇ、かわいいでしょ???
うらやましい???うらやましいよね?
今まで散々、人を見下しておいて、、
どう???見下される側になった気分は!?
悔しいよね?
ゾンビみたいなブスになって、泣きたいよね?」
雫(紀子)が、顔を悪魔のように歪めるー。
”顔芸”とでも言えば良いのだろうか。
もはや、雫の身体とは思えないぐらいに、
表情が歪んでいるー。
「----見下してなんかないってば…!
なんで、そんな、ひねくれた考え方するの…?」
紀子(雫)が泣きながら言うー。
雫は、本当に紀子のことを見下してなんていなかったー。
心から、紀子のことを心配して、
助けてあげたいと思っていた。
「--はぁぁ????」
雫(紀子)が露骨に不愉快そうな表情を浮かべたー
「わたしが捻くれてる?????
は~~~~~~~~あぁぁあ???????」
怒りの形相で雫(紀子)が紀子(雫)を見るー
雫の、あまりにもいつもと違う態度に、
「----あ、、あのさ、、もうそのぐらいにしとけば?」
と、千代が言うー。
千代や、平八からすれば、
雫(紀子)の発言の意味が分からないー。
雫と紀子が入れ替わったことを知らないふたりからすれば、
理解するのは難しいー。
「---ほら、ほら!
ゾンビ!ゾンビ!ゾンビ!」
雫(紀子)が嬉しそうに笑いながら、手を叩いて、
ゾンビコールを始めるー
さすがの平八と千代も引いたのか、それに乗ろうとしないー。
「---ほら!みんなも!!!
ゾンビ!ゾンビ!ゾンビ!ゾンビ!!!!」
雫(紀子)の強引な雰囲気に
平八と千代も気圧されたのか、嫌々、という雰囲気を浮かべながら
一緒にゾンビコールを始めた。
「---あっははははははははは!!!
超愉快なんだけど!!!!
あははははははははっ!」
雫(紀子)は、やがて満足したのか
自分の座席へと戻っていったー。
「---かわいい…かわいい…わたしかわいい…!」
興奮しながら雫(紀子)は自分の手を見つめるー
”わたしはもう、ゾンビなんかじゃないー
美少女だもん!!”
雫になった紀子は、自分の美貌に酔いしれていたー。
他人から奪った身体であることを、忘れそうになるほどにー。
・・・・・・・・・・・・・
「-----紀子ちゃん」
紀子(雫)は紀子の家で、、一人、悲しそうな表情を浮かべていたー
「---わたしは…紀子ちゃんのこと、見下したことなんて
一度もないのに…」
紀子(雫)は悲しそうに呟くー
鏡には、悲しそうな紀子の顔が写るー。
紀子の身体が、紀子自身に「ブス」「ゾンビ」と言われて
悲しんでいるようにも見えたー。
いくら入れ替わったとは言え、元自分の身体を
あそこまで悪く言えるものなのだろうかー。
そこまで歪んでしまった紀子の心を思い、雫は
とても心を痛めていたー。
いじめは、いろいろなものを奪うー。
雫は、中学時代、”目の前で”クラスメイトを失っているー。
”さよなら”
と、だけ言い放って、目の前で飛び降りたクラスメイトー。
彼女もまた、いじめを受けていたー。
助けることができなかったー。
その”辛い過去”から、雫は、高校でいじめを受けていた紀子のことも
気にかけて、必死に励まそうとしてきたー
けれど、ダメだったー。
いじめは、色々なものを歪めてしまうー。
命を落とすものもいるー
心を歪めるものもいるー。
雫の中学時代のクラスメイトは、追い詰められて、命を奪われー
今、紀子は、追い詰められて心を歪めてしまっているー
「---紀子ちゃん…」
紀子(雫)は、”どうすれば…”と頭を抱えたー。
紀子の心を救ってあげたいー
「---」
紀子(雫)は思うー
この”救ってあげたい”という考えもー
”上から目線”になってしまうのかなー?
とー。
・・・・・・・・・・
数日後ー。
「きゃははははははははは!さいこ~~~~!」
雫になった紀子は、”自分の身体”の時とは
正反対の学校生活を楽しんでいたー
平八・千代たちと共に、
放課後のカラオケを楽しむ雫(紀子)-
わざとかわいい仕草やポーズをして、
盛り上がる仲間たちー
「---ふふふ♪」
”わたし、可愛すぎでしょ”
そんな風に思いながら、イスに座って、足を組む雫(紀子)-
美貌を手にした紀子は、有頂天になっていたー。
「---」
平八が表情を少し暗くしているー。
”表向き”優等生な平八は、雫のことが好きだったー。
紀子も、それは知っているー。
「----ねぇねぇ、わたしのこと、好きなんでしょ?」
雫(紀子)が笑みを浮かべながら言うー。
”彼氏”だって、この身体なら簡単に作れるんだからー。
雫(紀子)はそう思いながら平八に身体をくっつけるー。
「は、、ははは」
平八は苦笑いしているー。
雫(紀子)は、平八を誘惑したー
生まれて初めてー
誘惑したー
”みんな、馬鹿ばっかり”
紀子はそう思ったー
中身はおなじ”わたし”なのに、身体が違うだけで、これだ。
仮に自分が、元の身体で平八に身体を密着でもさせれば
下手をすれば叩かれているし、
”ゾンビ”だの”化け物”だの、罵倒されるー。
千代だってそうだー。
それなのにー
今、平八は、顔を赤らめているー
”外見”が変わっただけでー。
”はははっ…馬鹿ばっかり!!!バカバカバカ!!!”
紀子は優越感に浸るー
この雫の美貌があれば、
バカどもを従えることだってできる!
なんだって、できる!!!
もはやー
雫になった紀子は、平八や千代に対する恨みすら
無くしてしまっていたー。
「---ごめん」
平八が首を振る。
「--え?」
雫(紀子)が表情を歪めるー。
「--ちょ、、ちょっとさ…」
平八は気まずそうに雫(紀子)を見つめる-
「--ちょっと、、その…
俺、、最近の上梨さんは…ちょっと…なんていうか…
あんまり好きになれないや…」
平八はそう言うと、雫(紀子)から離れたー。
千代が、その様子を見つめているー。
「-----は??????」
雫(紀子)は思わずその場で舌打ちした。
「は??????ありえない…
わたしのこと好きなんでしょ?照れなくていいのよ??
ほら、何なら付き合ってあげよっか?
ほら、わたしみたいなかわいい子と付き合えるんだよ!?
最高でしょ!?」
雫(紀子)が言う-
「--え」
平八が困り果てた表情を浮かべるー
「ほら!そうよ!付き合お!決まり!
なんならエッチなこともしちゃお!
わたし、可愛いし、エッチな声もきっと、すっごいから!
ほら!ね!
よし!今日からわたしたち、カップルになりま~す!」
雫(紀子)は強引にそう言い放ったー
「---やめてくれ!」
平八は、声を荒げたー
「---やめてくれ!…ごめん…
今の上梨さんとは、俺、、告白されても、付き合いたくない!」
平八はそれだけ言うと、
千代や、静まりかえる他の友人たちを見つめながら
「ごめん、俺、帰る」と、カラオケボックスから立ち去ってしまったー
「-----」
沈黙するカラオケボックスー
”え…???こんなかわいい女子から告白されたのに振るとかないでしょ?”
雫(紀子)は、内心でそう呟くと、
「--だから童貞なのよ!」と捨て台詞を吐いてから、
「あんなやつほっといて、みんな、歌お!」と叫んだー。
だがー
千代も含む、周囲の表情は暗かったー
・・・・・・・・・・・・・
さらに数日が経過するー
紀子(雫)は相変わらず孤立したままー。
けれど、紀子になった雫は”入れ替わったこと”を
周囲に言わず、
自分なりに身だしなみを整えてー
いじめられながらも、周囲への気配りを見せー、
驚くことに、千代も平八も、紀子(雫)をいじめなくなってきていたー。
「---ほら!あんたにお似合いのゴミよ!」
雫(紀子)は、嫌がらせを続けているー。
自宅のゴミ箱から持ってきたゴミを、紀子(雫)の机に
ぶちまけるー
陰険な、嫌がらせー
紀子(雫)が、雫(紀子)の方を見つめるー
「これ以上ー、自分の価値を落とすようなこと、しないで」
紀子(雫)は、いつもより強い口調で言い放ったー
「--価値????
あんたみたいなゾンビより、宝石のようなわたしのほうが
100倍、いえ、1万倍も価値があるから!」
雫(紀子)はそう言うと、
紀子(雫)の髪を引っ張りながら笑みを浮かべたー
”いつもわたしを見下していたあんたには分からない”
とー。
「--片づけといてよ!ゴミ女!」
雫(紀子)はそう言い放つと、自分の座席に戻っていくー
紀子(雫)は、悲しそうにそれを片付け始めるー。
しかしー
「--!」
雫(紀子)は思わず叫ぶー
”あんた!何してんの!?”とー。
紀子をいじめていたはずの男子・平八が、
紀子(雫)の方に歩いていきー
ゴミを一緒になって片付け始めたのだー
「---ーーー…」
平八は答えない。
「--ちょっと!??!
ゾンビ女にやらせなさいよ!
」
雫(紀子)がヒステリックに叫ぶー。
「----」
それを見ていた千代まで、紀子(雫)の机の方によって行き、
ゴミを片付け始めるー。
「--は????意味わかんない!何してんの!?!?!?」
雫(紀子)が鬼のような形相で叫ぶと、
平八は答えたー
「--ごめん。上梨さん…
でも……なんだか、、こう…最近、やりすぎだなって…」
平八の言葉に、
千代も続けるー
「-ゾンビゾンビ言ってたあたしたちが言うのも
なんだけど…
最近の雫は……やりすぎよ」
平八と千代の言葉に、雫(紀子)は、怒りを爆発させたー
「はぁ!?!?!?!?
今まで散々いじめておいて、何それ????
はぁ???はぁ?????は~~~~~~~~あぁあああ??????」
怒り狂った様子の雫(紀子)-
わたしをいじめておいてー
入れ替わったら今度は”かわいそう”?
意味わかんないー
と、紀子は怒り狂っているー
「いじめろよ!!いつものように、そいつをいじめろよ!!!」
雫(紀子)が声を荒げるー
だがー
平八と千代は、返事をしなかったー
「--みんな…ありがとう」
紀子(雫)は、ゴミ拾いを二人と一緒にしながらそう呟いたー
そしてー
雫(紀子)の方を見るー
「--もう、やめようよ」
とー。
これ以上、続けたらー
もっともっと、紀子が傷ついてしまうー
雫は、今の紀子の状況も心配していたー。
このままじゃ、紀子の歪んだ心はさらに歪んでーーーー
「ーーうるさい!!!この…ゾンビ女!」
雫(紀子)はそう叫ぶと、教室から走り去っていったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「-うざい!!うざいうざいうざいうざいうざい!」
帰宅した雫(紀子)は、
雫の部屋で、怒り狂って暴れていたー
滅茶苦茶になっていく雫の部屋ー
髪を振り乱して、
鬼のような形相になった雫の顔が、鏡に映るー
「は~~~…は~~~~…は~~~~~…
許せない…
許せない許せない…!」
雫(紀子)は、机の上を見つめるー
雫の顔が歪んでいるー。
可愛いー
と、思っていたのに、
まるで悪鬼のようだー。
可愛くないー、と
雫(紀子)は思ったー
「--この身体のせいで、超不愉快!」
そう叫ぶと、机の上の”入れ替わり薬”を手にしたー
「こんなクソみたいな身体、クーリングオフよ」
そう呟くと、
雫(紀子)は、”再び身体を入れ替える”ことを
考え始めたー
④へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
入れ替わって立場が逆転してしまって…
と、よくある(?)展開ですネ~!
このあとは、その先に、進んでいきますよ~☆!