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「あんた、自分の顔を鏡で見たこと、ある?」

雫が、不敵な笑みを浮かべながら、いじめられっ子の紀子のほうを見つめるー。


雫は、誰にでも優しくてー

決していじめに加担するような性格ではない。

今までも、いじめの中心的生徒あるお嬢様・千代や、

生徒会書記の男子・平八に対して、いつもやめるように言っていた。


だがー

その雫が、豹変したー。

雫が、優しい顔を歪めて、紀子をいじめているー


あの、雫が、だー。

決していじめを許さない、優しい雫が、紀子をいじめているー。



少なくともー

周囲には、そう”見えた”


雫と紀子が”入れ替わっている”ことを知らない周囲には…。


「---ーーどうしてそんなこと言うの…?」

紀子(雫)が悲しそうに、雫(紀子)の方を見るー。


”わたしって…こんな顔も出来るの…?”

と、紀子になってしまった雫が驚くほどに、

雫(紀子)は悪女の笑みを浮かべているー。


「ブス!ブス!ブスブスブスブスブス!ブーーース!」

雫(紀子)が声を荒げながら言うー。


いじめの中心的人物である千代と平八も

さすがに唖然としているー。

雫が、そんなことを言うなんて夢にも思ってなかったからだー。


「--ーーそんなこと言ってて…悲しくないの?」

紀子(雫)が泣きそうになりながら言うー。


自分が”ブス”と言われるならいいー。


でもー

今、目の前にいる”雫になった紀子”は、

”元・自分の身体”に対して、ブスと連呼しているー。


自分で、自分のことをブスと言い放っているー。


「--そんな悲しいこと、言わないでよ!」

紀子(雫)が泣きながら叫ぶー。


「---ふっふふふふふふ 悲しいこと???

 あんたの顔がゾンビなんだから、仕方ないじゃない」

雫(紀子)が微笑むー。


「--わたしってば…超かわいい♡」

自分の顔を、うっとりとした表情で触る雫(紀子)


「--ねぇ、かわいいでしょ???

 うらやましい???うらやましいよね?

 今まで散々、人を見下しておいて、、

 どう???見下される側になった気分は!?


 悔しいよね?

 ゾンビみたいなブスになって、泣きたいよね?」


雫(紀子)が、顔を悪魔のように歪めるー。

”顔芸”とでも言えば良いのだろうか。

もはや、雫の身体とは思えないぐらいに、

表情が歪んでいるー。


「----見下してなんかないってば…!

 なんで、そんな、ひねくれた考え方するの…?」

紀子(雫)が泣きながら言うー。

雫は、本当に紀子のことを見下してなんていなかったー。

心から、紀子のことを心配して、

助けてあげたいと思っていた。


「--はぁぁ????」

雫(紀子)が露骨に不愉快そうな表情を浮かべたー


「わたしが捻くれてる?????

 は~~~~~~~~あぁぁあ???????」

怒りの形相で雫(紀子)が紀子(雫)を見るー


雫の、あまりにもいつもと違う態度に、

「----あ、、あのさ、、もうそのぐらいにしとけば?」

と、千代が言うー。


千代や、平八からすれば、

雫(紀子)の発言の意味が分からないー。

雫と紀子が入れ替わったことを知らないふたりからすれば、

理解するのは難しいー。


「---ほら、ほら!

 ゾンビ!ゾンビ!ゾンビ!」

雫(紀子)が嬉しそうに笑いながら、手を叩いて、

ゾンビコールを始めるー


さすがの平八と千代も引いたのか、それに乗ろうとしないー。


「---ほら!みんなも!!!

 ゾンビ!ゾンビ!ゾンビ!ゾンビ!!!!」

雫(紀子)の強引な雰囲気に

平八と千代も気圧されたのか、嫌々、という雰囲気を浮かべながら

一緒にゾンビコールを始めた。


「---あっははははははははは!!!

 超愉快なんだけど!!!!

 あははははははははっ!」

雫(紀子)は、やがて満足したのか

自分の座席へと戻っていったー。


「---かわいい…かわいい…わたしかわいい…!」

興奮しながら雫(紀子)は自分の手を見つめるー


”わたしはもう、ゾンビなんかじゃないー

 美少女だもん!!”


雫になった紀子は、自分の美貌に酔いしれていたー。


他人から奪った身体であることを、忘れそうになるほどにー。


・・・・・・・・・・・・・


「-----紀子ちゃん」

紀子(雫)は紀子の家で、、一人、悲しそうな表情を浮かべていたー


「---わたしは…紀子ちゃんのこと、見下したことなんて

 一度もないのに…」

紀子(雫)は悲しそうに呟くー

鏡には、悲しそうな紀子の顔が写るー。

紀子の身体が、紀子自身に「ブス」「ゾンビ」と言われて

悲しんでいるようにも見えたー。


いくら入れ替わったとは言え、元自分の身体を

あそこまで悪く言えるものなのだろうかー。

そこまで歪んでしまった紀子の心を思い、雫は

とても心を痛めていたー。


いじめは、いろいろなものを奪うー。


雫は、中学時代、”目の前で”クラスメイトを失っているー。


”さよなら”

と、だけ言い放って、目の前で飛び降りたクラスメイトー。


彼女もまた、いじめを受けていたー。

助けることができなかったー。


その”辛い過去”から、雫は、高校でいじめを受けていた紀子のことも

気にかけて、必死に励まそうとしてきたー


けれど、ダメだったー。


いじめは、色々なものを歪めてしまうー。


命を落とすものもいるー

心を歪めるものもいるー。


雫の中学時代のクラスメイトは、追い詰められて、命を奪われー

今、紀子は、追い詰められて心を歪めてしまっているー


「---紀子ちゃん…」

紀子(雫)は、”どうすれば…”と頭を抱えたー。

紀子の心を救ってあげたいー


「---」

紀子(雫)は思うー


この”救ってあげたい”という考えもー

”上から目線”になってしまうのかなー?


とー。


・・・・・・・・・・


数日後ー。


「きゃははははははははは!さいこ~~~~!」

雫になった紀子は、”自分の身体”の時とは

正反対の学校生活を楽しんでいたー


平八・千代たちと共に、

放課後のカラオケを楽しむ雫(紀子)-


わざとかわいい仕草やポーズをして、

盛り上がる仲間たちー


「---ふふふ♪」

”わたし、可愛すぎでしょ”

そんな風に思いながら、イスに座って、足を組む雫(紀子)-


美貌を手にした紀子は、有頂天になっていたー。


「---」

平八が表情を少し暗くしているー。


”表向き”優等生な平八は、雫のことが好きだったー。

紀子も、それは知っているー。


「----ねぇねぇ、わたしのこと、好きなんでしょ?」

雫(紀子)が笑みを浮かべながら言うー。


”彼氏”だって、この身体なら簡単に作れるんだからー。

雫(紀子)はそう思いながら平八に身体をくっつけるー。


「は、、ははは」

平八は苦笑いしているー。

雫(紀子)は、平八を誘惑したー


生まれて初めてー

誘惑したー


”みんな、馬鹿ばっかり”

紀子はそう思ったー


中身はおなじ”わたし”なのに、身体が違うだけで、これだ。

仮に自分が、元の身体で平八に身体を密着でもさせれば

下手をすれば叩かれているし、

”ゾンビ”だの”化け物”だの、罵倒されるー。

千代だってそうだー。


それなのにー

今、平八は、顔を赤らめているー

”外見”が変わっただけでー。


”はははっ…馬鹿ばっかり!!!バカバカバカ!!!”

紀子は優越感に浸るー


この雫の美貌があれば、

バカどもを従えることだってできる!

なんだって、できる!!!


もはやー

雫になった紀子は、平八や千代に対する恨みすら

無くしてしまっていたー。


「---ごめん」

平八が首を振る。


「--え?」

雫(紀子)が表情を歪めるー。


「--ちょ、、ちょっとさ…」

平八は気まずそうに雫(紀子)を見つめる-


「--ちょっと、、その…

 俺、、最近の上梨さんは…ちょっと…なんていうか…

 あんまり好きになれないや…」


平八はそう言うと、雫(紀子)から離れたー。


千代が、その様子を見つめているー。


「-----は??????」

雫(紀子)は思わずその場で舌打ちした。


「は??????ありえない…

 わたしのこと好きなんでしょ?照れなくていいのよ??

 ほら、何なら付き合ってあげよっか?

 ほら、わたしみたいなかわいい子と付き合えるんだよ!?

 最高でしょ!?」


雫(紀子)が言う-


「--え」

平八が困り果てた表情を浮かべるー


「ほら!そうよ!付き合お!決まり!

 なんならエッチなこともしちゃお!

 わたし、可愛いし、エッチな声もきっと、すっごいから!

 ほら!ね!

 よし!今日からわたしたち、カップルになりま~す!」

雫(紀子)は強引にそう言い放ったー


「---やめてくれ!」

平八は、声を荒げたー


「---やめてくれ!…ごめん…

 今の上梨さんとは、俺、、告白されても、付き合いたくない!」


平八はそれだけ言うと、

千代や、静まりかえる他の友人たちを見つめながら

「ごめん、俺、帰る」と、カラオケボックスから立ち去ってしまったー


「-----」

沈黙するカラオケボックスー


”え…???こんなかわいい女子から告白されたのに振るとかないでしょ?”

雫(紀子)は、内心でそう呟くと、

「--だから童貞なのよ!」と捨て台詞を吐いてから、

「あんなやつほっといて、みんな、歌お!」と叫んだー。


だがー

千代も含む、周囲の表情は暗かったー


・・・・・・・・・・・・・


さらに数日が経過するー


紀子(雫)は相変わらず孤立したままー。

けれど、紀子になった雫は”入れ替わったこと”を

周囲に言わず、

自分なりに身だしなみを整えてー

いじめられながらも、周囲への気配りを見せー、

驚くことに、千代も平八も、紀子(雫)をいじめなくなってきていたー。


「---ほら!あんたにお似合いのゴミよ!」

雫(紀子)は、嫌がらせを続けているー。


自宅のゴミ箱から持ってきたゴミを、紀子(雫)の机に

ぶちまけるー


陰険な、嫌がらせー


紀子(雫)が、雫(紀子)の方を見つめるー


「これ以上ー、自分の価値を落とすようなこと、しないで」

紀子(雫)は、いつもより強い口調で言い放ったー


「--価値????

 あんたみたいなゾンビより、宝石のようなわたしのほうが

 100倍、いえ、1万倍も価値があるから!」

雫(紀子)はそう言うと、

紀子(雫)の髪を引っ張りながら笑みを浮かべたー


”いつもわたしを見下していたあんたには分からない”


とー。


「--片づけといてよ!ゴミ女!」

雫(紀子)はそう言い放つと、自分の座席に戻っていくー


紀子(雫)は、悲しそうにそれを片付け始めるー。


しかしー


「--!」

雫(紀子)は思わず叫ぶー

”あんた!何してんの!?”とー。


紀子をいじめていたはずの男子・平八が、

紀子(雫)の方に歩いていきー

ゴミを一緒になって片付け始めたのだー


「---ーーー…」

平八は答えない。


「--ちょっと!??!

 ゾンビ女にやらせなさいよ!

雫(紀子)がヒステリックに叫ぶー。


「----」

それを見ていた千代まで、紀子(雫)の机の方によって行き、

ゴミを片付け始めるー。


「--は????意味わかんない!何してんの!?!?!?」

雫(紀子)が鬼のような形相で叫ぶと、

平八は答えたー


「--ごめん。上梨さん…

 でも……なんだか、、こう…最近、やりすぎだなって…」

平八の言葉に、

千代も続けるー


「-ゾンビゾンビ言ってたあたしたちが言うのも

 なんだけど…

 最近の雫は……やりすぎよ」


平八と千代の言葉に、雫(紀子)は、怒りを爆発させたー


「はぁ!?!?!?!?

 今まで散々いじめておいて、何それ????

 はぁ???はぁ?????は~~~~~~~~あぁあああ??????」


怒り狂った様子の雫(紀子)-


わたしをいじめておいてー

入れ替わったら今度は”かわいそう”?


意味わかんないー


と、紀子は怒り狂っているー


「いじめろよ!!いつものように、そいつをいじめろよ!!!」

雫(紀子)が声を荒げるー


だがー

平八と千代は、返事をしなかったー


「--みんな…ありがとう」

紀子(雫)は、ゴミ拾いを二人と一緒にしながらそう呟いたー


そしてー

雫(紀子)の方を見るー


「--もう、やめようよ」

とー。


これ以上、続けたらー

もっともっと、紀子が傷ついてしまうー


雫は、今の紀子の状況も心配していたー。


このままじゃ、紀子の歪んだ心はさらに歪んでーーーー


「ーーうるさい!!!この…ゾンビ女!」

雫(紀子)はそう叫ぶと、教室から走り去っていったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「-うざい!!うざいうざいうざいうざいうざい!」


帰宅した雫(紀子)は、

雫の部屋で、怒り狂って暴れていたー


滅茶苦茶になっていく雫の部屋ー


髪を振り乱して、

鬼のような形相になった雫の顔が、鏡に映るー


「は~~~…は~~~~…は~~~~~…

 許せない…

 許せない許せない…!」


雫(紀子)は、机の上を見つめるー


雫の顔が歪んでいるー。

可愛いー

と、思っていたのに、

まるで悪鬼のようだー。


可愛くないー、と

雫(紀子)は思ったー


「--この身体のせいで、超不愉快!」


そう叫ぶと、机の上の”入れ替わり薬”を手にしたー


「こんなクソみたいな身体、クーリングオフよ」

そう呟くと、

雫(紀子)は、”再び身体を入れ替える”ことを

考え始めたー



④へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


入れ替わって立場が逆転してしまって…

と、よくある(?)展開ですネ~!


このあとは、その先に、進んでいきますよ~☆!

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